伊方原発から出た使用済み核燃料を保管する乾式貯蔵施設について、愛媛県と伊方町が新設計画を了解しました。愛媛新聞が、中村時広知事は「一時保管が必須条件」などと強調したものの四電は使用済み核燃料の具体的な搬出時期を示しておらず、永久に留め置かれる懸念があるとする社説を掲げました。そして「乾式貯蔵施設がなし崩し的に最終処分場になるような事態は断じて認められない」としました。
当然の主張ですが、現実に六ケ所村以外には使用済み核燃料の受け入れ先がない以上、永久に留め置かれる可能性の方が大きいと言えます。
基本を疎かにして数十年前にスタートした原発の矛盾がこうした形でクリアになっています。
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社説 伊方乾式貯蔵了解 将来世代に重い課題を残す判断
愛媛新聞 2020年12月24日
四国電力伊方原発から出た使用済み核燃料を保管する乾式貯蔵施設について、県と伊方町が新設計画を了解した。四電は2024年度の運用開始を目指し準備を進めることになる。
県庁で四電の長井啓介社長と面会した中村時広知事は「一時保管が必須条件」などと強調した。しかし、四電は使用済み核燃料の具体的な搬出時期を示していない。永久に留め置かれる懸念が拭えない中での判断であり、将来世代に重い課題を残すことに強い危惧を覚える。
乾式貯蔵施設は、使用済み核燃料を放射線を遮る専用容器の「キャスク」に入れて空気で冷やす仕組み。従来の貯蔵プールが満杯に近づいていることから四電が新設を計画し、18年に安全協定に基づく事前了解を県と伊方町に申し入れていた。
新たな施設の必要に迫られたのは、国の核燃料サイクル政策が行き詰まっているからだ。長井社長は、再利用する予定の使用済み核燃料について「計画的に搬出する」と述べたが、政策の現状を踏まえると、見通しが甘いと言わざるを得ない。
政策の中核施設である、青森県の使用済み核燃料再処理工場や、取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を造る工場は国の審査に合格した。だが、MOX燃料を使うプルサーマル発電を実施しているのは伊方3号機など4基にとどまる。工場が順調に稼働しても、再処理できる量は限定的となる。
搬出が滞り、資源であったはずの使用済み核燃料が「核のごみ」となる可能性は高まっている。乾式貯蔵施設がなし崩し的に最終処分場になるような事態は断じて認められない。
使用済み核燃料の搬出は、安全協定にも明記されている四電と県、伊方町の重要な約束事でもある。ただ、今回の乾式貯蔵施設の新設は、貯蔵容量を増やして搬出時期を遅らせ、原発の運転を続けたいという目的が色濃い。四電の都合で活用の見通しが立たない使用済み核燃料をこれ以上増やすのは無責任だ。
中村知事は、一時保管を確約に近づけるため「経済産業相に明言していただいた」などと述べたが、実現するかどうかは不透明だ。原発に長年向き合ってきた立地自治体として、国に対し、事実上破綻した政策の見直しを問い続けることこそ役割ではないか。
住民の理解も深まったとは言い難い。愛媛新聞が2月に実施した県民世論調査では、乾式貯蔵施設の設置に否定的な意見が57・7%に上っていた。
乾式貯蔵施設は、電気を使わないため有事にプールよりも安全性が高いとされている。事前了解を巡る議論では、設置に理解を示す意見があったものの、永久保管になることへの懸念がなお根強かった。四電は「丁寧な説明を続ける」としているが国を含めて根本的な解決策が示されなければ、不安は拭えないと認識しておくべきだ。