2020年12月22日火曜日

審査の長期化 脱原発へ転換探る時だ(北海道新聞)

  北海道電力が泊原発1~3号機再稼働を申請して7年半になります(他所は4年以内で合格)。規制委の更田委員長は今月、藤井裕社長との意見交換会で「長期化の原因は北電の態勢、姿勢にある」と北電自体の適格性疑問を呈しました。

 北電は地震、津波、火山など災害リスクを指摘される度に受け身の対応を重ね、規制委の現地調査は8回に上りました。
 折しも大阪地裁が、大飯原発での基準地震動を「過去の地震データより大きい方向にばらつきが生じる可能性を考慮しないで定めた」との判決を出しました。今後の審査が厳しくなる可能性があります。
 北電業績は好調9月中間連結の純利益は前年同期の3倍の241億円に膨れあがりました。北海道新聞は、経営体力が十分なうちに脱原発の道筋を考えるべきだと提案しました。この際是非発想を転換して欲しいものです。
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社説 審査の長期化 脱原発へ転換探る時だ
                           北海道新聞 2020/12/21
 北海道電力が泊原発1~3号機再稼働を申請して7年半になる。
 同時期に審査が始まった福井県の関西電力大飯3、4号機など5原発9基は、4年以内にすべて原子力規制委員会の合格を得た。
 泊はいまだ敷地内の活断層の有無が確定しておらず、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の設定にすら至っていない
 規制委の更田豊志委員長は今月、藤井裕社長との意見交換会で「長期化の原因は北電の態勢、姿勢にある」と対応の不備を責めた。きわめて異例なことだ。
 東京電力福島第1事故を踏まえた新規制基準の審査では、制度上不許可にすることはできる。現在までその例はないが、泊が第1号となる可能性は否定できない。
 北電自体の適格性が疑問視されている。立ち止まり、脱原発や廃炉を模索する時機ではないか。
 原発再稼働を巡っては、大飯3、4号機の耐震性を適合とした規制委の許可を、大阪地裁が取り消す判決を出したばかりだ。
 規制委は審査の内規で、過去の地震データより大きい方向に「ばらつき」が生じる可能性を考慮するよう定めていた。だが、実際には検討はなく、判決は「看過しがたい過誤、欠落」と指弾した。
 正当性を主張して国は控訴したが、審査に合格した他の原発に対する同様の訴訟も予想される。
 その影響で規制委が厳格化を余儀なくされれば、泊の審査はさらに長引く。そもそも北電は地震、津波、火山など災害リスクを指摘される度に受け身の対応を重ね、規制委の現地調査は8回に上る
 委員から「危機感がほとんど感じられない」と北電の資質を問う発言が相次ぎ、更田氏も「福島第1事故以前の思想」と安全意識の低さを断じた。不信感すら漂う。
 泊では非常用電源が9年間も接続不良だったミスなどが相次いだ。納入業者任せで当事者意識を欠いており、事故時の不安材料だ。原発停止の長期化でノウハウを持たぬ若手社員も増えてきた。
 北電は新型コロナ禍の影響も少なく、業績は好調だ。9月中間連結の純利益は前年同期の3倍の241億円に膨れあがった。
 経営体力が十分なうちに脱原発の道筋を考えるべきだ。北電グループは稚内や石狩湾の洋上風力計画に協力するなど、再生可能エネルギー分野にも踏み出している。
 道内は太陽光、地熱など再エネの宝庫だ。原発依存の他の電力大手と一線を画した道を進めば、道民や国民の支持も広がるはずだ。