2020年12月6日日曜日

大飯原発「世界一厳しい」新規制基準揺らぐ

 東京新聞が、「  大阪地裁判決に原子力規制委ぼうぜん」とする記事を出しました。
 冒頭で、「世界一厳しい」と自負する新規制基準司法がノーを突き付けたことで、土台となる審査の信頼性が揺らいだと述べ、16年に地震学の権威、島崎邦彦東大名誉教授14年まで規制委員長代理基準地震動に「不確かさを考慮すべきだ」と規制委に対して忠告した時点でその予兆はあったとしました。
 現行の基準地震動(最大の揺れ)の算定では、活断層の長さなどから地震の規模の平均値をとっているものの実際の地震動にはバラツキがあるので、その分を上乗せする必要があり島崎教授の計算では18倍になるというものでした。
 実際に島崎教授は17年4月、大飯原発差し止めの控訴審で証人として出廷し上記を陳述をしました。
 そこで数々の問題点を指摘したのですが裁判官はその解明を行うどころか、島崎氏に一言も質問することなく証人尋問を終え住民側が求めた他の証人尋問を全て却下予定調和的に樋口判決を簡単に覆したのでした。
      ⇒18.7.19) 大飯原発再稼働判決の裏側!
 当時の田中俊一規制委委員長は、「島崎氏のお蔭で無駄骨を折った」とまで述べました。
 要するに規制委も司法も都合の悪い点には目を瞑り、ひたすら再稼働に向けて突き進んだ結果が今日の事態を招来したのでした。

 時事通信の記事「大飯原発再稼働に不透明感 関電の経営に影」を併せて紹介します。
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大飯原発「世界一厳しい」新規制基準揺らぐ 大阪地裁判決に原子力規制委ぼうぜん
                          東京新聞 2020年12月4日
 原発を動かしていいかを審査した原子力規制委員会に、司法がノーを突き付けた。4日の大阪地裁判決は、関西電力大飯原発3、4号機(福井県)で想定される地震の揺れの評価を巡り、規制委が「不確かさ」を十分に考慮しなかった点について、「看過しがたい過誤がある」と指弾。原発再稼働を進める政府が「世界一厳しい」と自負する新規制基準は、土台となる審査の信頼性が揺らぐ。(小川慎一、小野沢健太、福岡範行)

◆4年前の予兆 地震学の権威が再考を促していた
 「正直言って負けるとは思っていなかった…」。東京・六本木の高層ビル内にある規制委で取材に応じた村田真一・原子力規制庁広報室長はぼうぜんとした。
 しかし、予兆はあった。大飯原発で想定される地震の揺れの評価で「不確かさを考慮すべきだ」と、2016年、規制委員長代理を務めた地震学の権威、島崎邦彦東大名誉教授が再考を促していたのだ。島崎氏の試算では、関電が示した値の2倍近くとなり、これが採用されれば、原子炉建屋などにより厳しい耐震性が求められることになる。
 耐震設計の目安となる基準地震動(最大の揺れ)の算定では、活断層の長さなどから地震の規模の平均値をとる。これは実際の地震の規模と大きくかけ離れるため、不確かさを考慮して何らかの数値を上乗せする必要がある。判決は、この点の検討が「不十分」と断じた。


◆「再計算は不適切」認めるも見直さず
 規制委は、島崎氏の指摘を受けた再計算で「問題なし」とした。16年7月には島崎氏との面談で「再計算は不適切だった」と一転非を認めつつ、見直さないと突っぱねた。田中俊一委員長(当時)は記者会見で、「島崎氏の言っていることには根拠がないというところまで、われわれも勉強した」と言い切った
 ところが同じころ、規制委の審査姿勢に、地震動の計算方法をつくる政府の地震調査委員会内でも疑問視する声が上がっていたことが、本紙が情報公開請求で入手した議事録で判明している。16年4月の熊本地震後、複数の計算方法を併用するよう求めていた。にもかかわらず、規制委は地震学者の警鐘を無視した。

◆「おかしさ、誰にでも分かる」
 14年5月に福井地裁裁判長として大飯3、4号機の運転禁止を命じた樋口英明さん(68)は、今回の判決を「地震規模を求める方法は大きな矛盾を抱えており、おかしさは誰にでも分かる。高裁でも維持されやすいと思う」と評価する。

 地震動の想定は、設備に必要な耐震性を判断する根幹。判決が確定すれば、規制委の審査はやり直しが必至となり、新基準適合済みの9原発16基は運転資格そのものを失いかねない。
 50年までに国内の温室効果ガス実質ゼロを目指す菅政権にとって、二酸化炭素を排出しない原発は重要な電源だ。梶山弘志経済産業相も「安全性が確認された原発は最大限活用する」と明言している。
 安全性を担保する規制委の審査が、足元から揺らぐ事態となった。規制委は8日、非公開の会議を開き、判決を受けた今後の対応を話し合う。


大飯原発再稼働に不透明感 関電の経営に影
                          時事通信 2020年12月4日
 大阪地裁が関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転を容認した設置許可の取り消しを国に命じたことを受け、原発再稼働に不透明感が強まっている。関電は原発依存度が高く、判決は経営に影を落とす
 新電力との競争激化に加え、新型コロナウイルスの影響による電力需要減少で、関電の2021年3月期連結決算は、純利益が前期比3割減の900億円となる見通しだ。
 関電では原発1基が稼働すれば、1カ月で30億円程度の収益改善効果が見込めるという。火力発電に比べ燃料など発電コストが低いとされるためだ。それだけに、再稼働に向け地元自治体との協議などを進めてきた。
 関電は福井県に大飯のほか、美浜(美浜町)、高浜(高浜町)の各原発を持つ。ただ、定期検査などで11月からは全基が停止している。判決が確定するまでは稼働できるものの、収益改善への懸念がくすぶる。
 関電の原発をめぐっては、昨年、高浜町元助役(故人)から同社幹部が多額の金品を受領した問題が発覚した。信頼回復の途上で、関電は新たな課題を抱える形となった。