福島大などの研究チームが、福島原発事故後、福島県内の空間放射線量が高い地域でアカマツの形態異常が多く発生している原因の一つとして、放射線による植物ホルモンへの影響も考えられるとする調査結果をまとめました。
調査したのはウクライナ出身で、同大環境放射能研究所のバシル・ヨシェンコ教授(放射生態学)らのチームです。
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高線量地域のアカマツの形態異常、放射線が影響か 福島大など調査
河北新報 2020年12月3日
東京電力福島第1原発事故後、福島県内の空間放射線量が高い地域でアカマツの形態異常が多く発生している原因の一つとして、放射線による植物ホルモンへの影響も考えられるとする調査結果を福島大などの研究チームがまとめ、2日の同大の定例記者会見で明らかにした。調査したのはウクライナ出身で、同大環境放射能研究所のバシル・ヨシェンコ教授(放射生態学)らのチーム。
アカマツは通常、茎の先端の頂芽(ちょうが)が脇から出る芽よりも活発に成長する。県内の高線量エリアで頂芽の成長が止まった個体が多く見つかったため、そのメカニズム解明を試みた。
チームが植物ホルモンの濃度を分析した結果、線量が比較的低い福島市内に比べ浪江、大熊両町の帰還困難区域内に自生する個体の方が、頂芽や幹の成長を促進するオーキシン、ジベレリンの濃度が低い傾向が明らかになった。
染色体異常についても調べたが、正常な個体と形態異常の個体で発生頻度に有意差はなく、形態異常の直接的な原因ではないとみられる。
アカマツのような針葉樹は他の樹種に比べ放射線の影響を受けやすく、ヨシェンコ教授は「被ばくによって植物ホルモンのバランスがなぜ変化するのか、詳細に調べたい」と話した。