福島原発事故で森林に降り積もった放射性セシウムの大部分が土壌の深さ5センチ程度にとどまっていることが、23日までに日本原子力研究開発機構の調査で分かりました。
調査は北茨城市内の落葉広葉樹林で実施され、研究チームは「セシウムは土壌に沈着して動きにくいという従来の説が裏付けられた。表土を5センチ程度削り取るという除染の手法は問題ない」ことが、データで裏付けられたとしています。
データが得られたこと自体は貴重ですが、安心材料と考えるのは勿論間違っています。
現実には山野の表層の削土などは予定されていません。
比較的表層に固定されるということは降水の度に低地に流れ、最終的に池や河川に流れ込んで流出先を汚染させます。
また表層に固着しているセシウムは、そこに生成する植物に吸収されます。今年も東北地方をはじめ長野県や山梨県の山菜・キノコ類の放射能汚染や、それらを食用としているイノシシや熊などの野生動物(肉)の放射能汚染が報告されていますが、この汚染状況は今後もずっと継続するのは確実で、30年経ってやっと半減し、100年経ってようやく10分の1になるだけです。
現実にチェルノブイリでは原発の事故から30年近くになりますが、いまもキノコなどが多大に汚染されていて、それを食用としている住民に深刻な放射能被害を与え続けています。
極くごく限定された居住地域の、しかも不完全な除染しか念頭にない今の日本は、チェルノブイリの現実を確実に後追いしているといえます。
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森林のセシウム土壌5センチに沈着 周辺流出しにくく
原子力機構 北茨城で調査 移動ごくわずか
茨城新聞 2013年11月24日
東京電力福島第1原発事故で、森林に降り積もった放射性セシウムの大部分が土壌の深さ5センチ程度にとどまっており、地下水を通じた周囲への汚染は拡大しにくいことが、23日までに日本原子力研究開発機構の研究チームの調査で分かった。調査は北茨城市内の落葉広葉樹林で実施。研究チームは「セシウムは土壌に沈着して動きにくいという従来の説が裏付けられた。表土を5センチ程度削り取るという除染の手法は問題ない」としている。
研究チームは事故から約2カ月後の2011年5月から今年7月にかけ、福島第1原発の南西約65キロの北茨城市内の落葉広葉樹林で調査を実施。落ち葉の層と土壌の深さ5センチ、同10センチの計3層の土と水分に含まれるセシウム134と同137の濃度を計測、各層の濃度がどのように変化したかを調べた。
調査の結果、落ち葉に付着した大半のセシウムは、事故から約9カ月後の11年12月ごろまでには降水量の多い時期に雨水で洗い流され、深さ0〜5センチの土壌に浸透。さらに落ち葉や枝の分解で土壌への浸透が進んだ。
しかし、その後の土壌中でのセシウムの移動はごくわずかで、11年12月と12年8月の各層のセシウム137の蓄積量や割合に、大きな変化は見られなかった。
深さ10センチに到達したセシウム137は、11年度が年間で全体の0・2%程度、12年度は0・1%程度とわずかだった。
調査期間中、深さ10センチまでのセシウム137の量は1平方メートル当たり約20キロベクレルとほぼ変わらなかった。
チームの中西貴宏研究員は「(セシウムが)土壌中を移動する割合はごくわずかで、地下水によって森林地帯から周辺には流出しにくいと考えられる」と説明。ただ「今後も長期的な調査が必要」としている。
調査結果について研究チームは、福島県山間部の約7割を占める落葉広葉樹林に降り積もったセシウムの移動の実態解明と、将来予測につながると期待している。(小池忠臣)