日本の原子力村(ムラ)は東日本大震災で原発が全て止まったときに、原発が停止すれば電力が足りなくなるとか、古い文化の時代に逆戻りするとかと脅しをかけて、国民を洗脳しようと実際に関東地方の一部で「計画停電」までを演出しました。しかし元々が不要な「計画停電」であったのでいつの間にか中止されました。
その後も政府や電力会社の警告とは裏腹に、夏・冬の電力消費のピーク時でも火力・水力発電だけで、一度も電力不足の事態には陥りませんでした。
結局原子力村(ムラ)は狼少年だったのでした。
「東洋経済オンライン」に、「原発なしでも日本が経済成長している理由」という記事が載りました。同誌の在ニューヨーク特約記者による分析です。
以下に紹介します。
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原発なしでも日本が経済成長している理由
景気が回復しても電力消費は低水準
リチャード・カッツ※ 東洋経済オンライン 2013年11月9日
※ 同誌特約記者(在ニューヨーク)
狼少年の寓話のように、日本の原子力ムラは、国内の原子力発電所をすべて運転停止させたら、すぐに大変な事態に陥ってしまうと警告して評判を落としている。
事実、すべての原子炉の運転が止まっても、日本の国内総生産(GDP)は2012年に1.9%、13年の現時点においては年率4%で成長している。
原発の運転停止の影響はゆっくりと表れているものの、目に見えるほどの経済的な大惨事には至っていない。日本が原発なしで混乱を切り抜けつつあるという事実は、日本は原発ないし電力のさらなる大量供給を必要としないという印象を世界に与えている。
しかし、日本が一段の経済成長を目指すには、一層多くの電力が必要となるだろう。そして、今後5年内に原発以外の発電手段で必要なだけの電力を補うことは容易ではない。
そもそも、日本は過去数年間、どうやって原発なしに経済成長を成し遂げることができたのだろうか。
石油や液化天然ガス(LNG)、石炭の輸入量を増やし、従来の火力発電所をフル稼働することで対応してきたと報道されてきているが、実はこれは事実とは異なる。現実には、鉱物性燃料の輸入量を増やしているのではなく、電力の使用量を減らすことで対応しているのである。
鉱物性燃料の購入量を増やしているように見えるのは、燃料価格の上昇によるところが大きい。燃料価格の上昇の一因は昨秋以降の円高である。13年1~9月の鉱物性燃料の実質輸入量は、10年の水準をわずか6%ほど上回るだけだ。
しかも、実際の上昇率はそれより低い。まず、13年1~6月の数値、およびそこから導かれる7~9月の推計値によると、日本の実質GDPは10年から3.4%上昇している。次に、13年の燃料の輸入水準は1995年以降ほぼ20年間にわたる平均値と大きく変わらないことがわかる。
対して、石油、石炭、LNGの価格は10年から46%上昇。これは、08年に次ぐ記録的な上昇率だ。鉱物性燃料の輸入量は90年とほぼ変わらないにもかかわらず、費用負担で見ると、13年にはGDPの5.6%を占めるようになっている。過去を見ると、日本の輸入額が上昇したのは、第2次石油ショック直後の80年から82年にGDPの6.2%を占めたときだけである。
こういった多くの要因が私たちを混乱させている。日本はどうやって消費電力の3割以上を供給する原発を稼働させず(そのうえ、鉱物性燃料の輸入量も大幅に増やさず)、成長し続けることができたのだろうか。
理由の一つは、原発は消費電力の3割強を占めていたが、全エネルギーのわずか1割しか占めていなかったことである。たとえば、自動車は電力ではなく、石油をエネルギー源としている。また、消費電力量も不況前をはるかに下回る水準となっており、07年ほど多くのエネルギーを必要としていない。
景気が回復しても電力消費は低水準
もう一つの理由として、日本の電力使用の約3割を占める製造業の生産量が低水準にあることが挙げられる。9月時点で、工業生産は不況前の水準を16%下回っている。が、今後製造業の回復が鮮明になれば、電力需要が伸びると見込まれる。
90年代および00年代においては、ほとんどの間、電力消費量は実質GDPより伸び、世界的な景気後退が始まるちょうど前に当たる07年に、電力消費は過去最大となった。
景気後退当初は、GDPや工業生産の大幅な落ち込みにより電力消費も落ち込んだが、11年から13年にかけて、以前とは異なる大きな変化が見られた。電力消費は、景気が回復してからも落ち込んだままだったのだ。13年上半期の時点では、GDPが景気後退前の水準に回復したにもかかわらず、発電量は07年の水準をほぼ11%下回った。
GDP1円当たりの電力生産性の指標で見てみよう。00年を100とすると、80年から93年にかけての日本の電力原単位の平均はおよそ90。次に94年から10年にかけては、97まで上昇する。
ところが、11年の原発事故を経て13年の上半期に85まで落ち込み、ここ三十年来の低水準となっている。この結果の一部は、LED(発光ダイオード)など省エネ電気機器の利用といった電力消費の効率化によるものだが、主な要因は、実際の消費電力が減っていることだ。
たとえば夏場のエアコンの設定温度を上げるなどの節電努力が行われているが、玉のような汗をかき、暑さにやられ眠たくなってしまっている労働者が平常時のように生産的であることを想像するのは難しい。ほかにも、家庭内でほとんどの電気を消し、一つか二つの部屋に家族が集まるというものもある。
危機管理の施策や、「我慢」として知られる日本人の特性を利用して、不況や電力不足をしのぐことは悪いことではない。しかし、経済を本格的に成長させようというのであれば、電力のさらなる供給なくしてそれを成し遂げるのは難しいだろう。次回のコラムでは、この点について詳しく説明したい。 (「週刊 東洋経済」2013年11月16日号)