(註 17日の毎日新聞に、当記事の元記事である10日付の「「規制委員長 住民聴取拒む」の記事に「事実誤認」があったとする記事が掲載されました。詳細は18日付の当ブログ記事「『規制委員長が独断で住民聴取を拒む』は事実誤認」を参照ください。17日追記)
福島原発事故で避難中の住民の帰還に向けて、各省庁の被ばく防護などの政策を評価する有識者会合で、住民への聞き取り調査をすると決まったことに対して、田中委員長が、聞き取り先を同氏と親しい地元首長と帰還に積極的な村長の2氏に変えていたことが分かり、有識者委員から反発の声が上がっています。
先月16日の3回目の会合では、外部の有識者たちから、「当事者たちがどこをサポートして欲しいのかを知らないといけない」、「避難者たちの生活に対する不安は大きい。放射線だけ議論しても機能しない」などと、現場の実態を把握することが優先されるべきとの意見が相次ぎました。
それを規制委員長が、聞き取り先を意向のほぼ分かっている2人のメンバーに絞ったことは、明らかに有識者会議の意向に反するものです。
各省庁の政策をそのまま認めようとする意図がありありです。
以下に毎日新聞の記事を紹介します。
(第3回会合 記事)
10月17日 「避難者の帰還問題で有識者から異論が相次ぐ」
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福島原発:規制委員長が住民聴取拒む 被ばく防護策評価
毎日新聞 2013年11月10日
東京電力福島第1原発の事故で避難している住民の帰還に向けて、各省庁の被ばく防護などの政策を評価する原子力規制委員会の有識者会合で実施が決まった住民への聞き取り調査が、事前に撤回されていたことが分かった。避難住民に代え、親しい地元首長らに聞き取りをするよう田中俊一委員長が会合後に事務局に指示していた。透明性、中立性を掲げてきた規制委の運営に反するとして、有識者委員から反発の声が上がっている。
会合は8月、除染や個人線量計の配布など、住民の被ばく線量を低減させる政府の放射線防護策を評価する目的で規制委が設置。規制委の中村佳代子委員を担当とし、被ばく医療の専門家ら5人の外部有識者を招いて9月から議論を始めた。
会合は公開でこれまでに3回開催した。有識者委員らは、復興庁の調査で「帰還しない」「戻るか判断できない」と答えた避難住民が自治体によって最大9割に上ることなどを重大視。住民が帰還を考慮するにあたり、現在の各省庁の施策では不十分とみて、住民の声を聞く機会を設けることを提案した。中村委員が10月16日の第3回会合で了承し、準備のため調整を始めた。
ところが、政府関係者によると、住民への聞き取りについて知った田中委員長が10月下旬、「帰還などに責任を持って判断できる首長に話を聞くべきだ」として拒否。自らが以前、市政アドバイザーを務めた福島県伊達市の仁志田昇司市長と帰還に積極的な飯舘村の菅野典雄村長の2氏の名を挙げ、事務局に聞き取りを指示した。同村長には今月1日、聞き取りが実施された。
政府関係者によると、田中委員長が住民への聴取を拒否したのは、移住希望の声が多く出て、帰還を前提とした評価会合の議事運営が滞ることを懸念したためだという。会合は11月中に評価結果を提言にまとめる予定だが、避難住民の意見は反映されない見通しになった。田中委員長はこの件について、毎日新聞の取材に応じなかった。
原発事故の被害実態について調査している大阪市立大の除本理史(よけもとまさふみ)教授(環境政策論)は「規制委はこれまで公開の場で議論して透明性を保ってきた。委員長が会合の場でない“水面下”で口をはさみ、審議の過程で必要とされた調査をしないのは、委員長主導による帰還しか認めない結論ありきの会合で問題だ」と批判している。【奥山智己】