原子力規制委が釈然としない理由で柏崎刈羽原発の再稼働審査入りを決めたことに対して、東京新聞が「東電柏崎の審査 福島が最優先のはずだ」とする社説で、「到底理解することができない。規制委が圧力に屈したとみられても仕方ない」と述べました。
東電に対しても「いたずらに延命を図るために再稼働を急ぐことなど許されない。そもそも福島の後始末もできないのに、別の原発を運転する資格はない」と述べ、国は東電を早く破綻処理し、東電の経営責任や株主責任、貸し手責任を問うのが筋であるとしました。
また、規制委員長の田中氏に対しては「当初はストッパーとして常識的に思える発言をするが、重圧が掛かってくると変容してしまう。それは政府や経済界の圧力に屈したか、もともと原子力ムラの人だったから、のどちらかである」とも酷評しています。
多くのマスメディアが口をつぐむなか、東電をはじめとする原子力ムラの対してこのような厳しい物言いができるメディアは貴重です。
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東電柏崎の審査 福島が最優先のはずだ
東京新聞 2013年11月15日
原子力規制委員会が東京電力柏崎刈羽原発の再稼働審査入りを決めたのは到底理解することができない。フクシマの収束を最優先させるのではなかったのか。圧力に屈したとみられても仕方ない。
東電が申請していた柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働審査について、規制委会合で田中俊一委員長が「問題点の指摘まで(審査を)進めたらどうか」と提案、委員から異論もなく、あっさり審査開始が決まった。不可解極まりない方針転換である。
東電が同原発の再稼働を申請したのは九月下旬だ。その後、福島原発で汚染水漏れや単純なミスが続発したことで、規制委は「福島と柏崎刈羽を別々に考えることはできない」と再稼働審査は棚上げする姿勢を通してきたはずだ。
方針転換は、今なお避難生活を強いられる十万人超の人々や、再稼働に不安を抱いている国民にはとても理解できる話ではない。
田中氏は当初から「原子力ムラの住民」とみられながらも、これまでは「常識の範囲内」で職務を遂行してきた。しかし今回の変容ぶりは、再稼働に前のめりの政府や経済界の圧力に屈したか、そうでなければ「やはり原子力ムラだったのか」と思わざるを得ない。
東電は、経営再建の切り札に柏崎刈羽の再稼働を挙げている。だが、現時点で東電に課せられた使命は、一刻も早く汚染水問題の収束に努めるなど福島原発の廃炉作業に道筋をつけることである。
いたずらに延命を図るために再稼働を急ぐことなど許されない。そもそも福島の後始末もできないのに、別の原発を運転する資格はないのである。
やはり東電は早く破綻処理し、事故収束や廃炉に専念する原発会社と、事業収益で負債を返済していく発送電部門に分社化するべきである。国が前面に出て、国民負担で除染などを始める以上、東電の経営責任や株主責任、貸し手責任を問うのが筋である。
驚いたことに、東電に融資していた銀行団がすでに貸し手責任を問われることに備え、融資を優先弁済される社債に振り替える動きに出ている。会計検査院が先月公表した東電の経営状況の検査結果で明らかになった。四兆円近かった融資が圧縮し、三月末時点で七千二百億円強がリスクのない私募債になっていたのである。
銀行と東電の冷徹非情な行為だ。東電は早急に解体し、事故収束の体制を強化すべきである。