2013年11月9日土曜日

東電が福島原発核燃料取り出しの準備状況を公開

 東京電力は6日、報道関係者に対し、核燃料の取り出しを控えた福島原発4号機の使用済み燃料プールや取り出しに使うクレーンなどを公開しました。取り出しは実際の燃料輸送容器を使った実証実験などを経て今月中旬にも開始します。
 
 4号機は震災時にたまたま定期点検中であったため、原子炉内は空で、核燃料プールに使用済み燃料1331体と未使用燃料202体が現在保管されています。
 万一地震等で燃料プールが破損すると、これらの大量の核燃料が空気中に露出して大変危険なことになるので、地上付近の安全な燃料プールに移設する必要性が早くから指摘されていました。それが原発事故から2年半あまりを経てようやく可能になりました。
 1~3号機も同様に移設の必要性があるのですが、放射線レベルが高くて近づけないので、まだ手つかずの状態です。
 
 燃料プールから核燃料を取り出して搬出用の容器(キャスク)に収納し搬出車に乗せる作業自体は、これまでも行われて来ましたが、今回はまだ細かい瓦礫がプール内に残っているためそれが取り出し作業に支障を及ぼすおそれがあることや、作業中に万一大きな余震が来ても絶対に事故を起さないようにするなどの、新たな課題があるので、慎重の上にも慎重な準備・対処が必要とされてきました。
 
 追記) 東電は、燃料棒の取り出し作業要領を説明する動画を公開しています。(下記参照)
 
 ☆ 東京電力 福島第一原発 4号機 燃料棒取出し作業 説明動画 (4分23秒)
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東電、福島原発で核燃料取り出しの準備
ウォールストリートジャーナル 2013年11月8日
 【東京】2011年3月の東日本大地震に伴い深刻な原発事故を起こした福島第1原子力発電所で近く、4号機の建屋上部にある核燃料貯蔵プールから核燃料棒を取り出す作業を開始する。事故で残された最大級のリスクを除去するという新たな段階に入るが、同時に、それ自体がリスクの高い作業だと専門家は指摘している。
 
 今月、原子炉事業者である東京電力は、4号機建屋の上部にある危なっかしい貯蔵プールから核燃料ペレットの入った燃料集合体1533本を原発敷地内のもっと安全な場所に移動する作業を開始する。全体のうち、202本は未使用、残りの1331体は使用済み燃料の集合体という。
 核燃料を福島第1原発の全原子炉6基のための共通プールに移動することは、30年かかる原発施設浄化を進める重要な一歩とみられている。
 しかし、1本当たり250キログラムの核燃料集合体を移動するには完了までに13カ月以上かかる。おのおのの集合体は金属で覆われた棒60ないし74本が収めてあり、中に原子炉推進用の核燃料ペレットが入っている。
 
 大地震と津波以降、原子力専門家は、使用済み核燃料プールのぜい弱な状態への懸念を指摘してきた。4号機の燃料プールは高さ約40メートルの原子炉建屋上部にある。
 この建物は2年半前、9.0マグニチュードの地震に揺さぶられた。このため、同様の規模の大地震が発生すれば、亀裂が入り、水が流出して中の燃料棒がむき出しになり危険な状態になる恐れがある、と一部専門家は言う。
 11年3月の原発事故直後、米国の原子力規制委員会(NRC)は、プールの水がほとんど失われ、こうした重大事故が発生していたかもしれないと指摘していた。
 NRCはその後、この主張を撤回したが、懸念は続いている。
 
 東京大学名誉教授(原子力工学)の井野博満氏は、核燃料集合体の移動は正しい動きだ。燃料を建屋上部にとどめておくのは極めて危険だと述べた。
 同時に、井野氏やその他の専門家は、この作業自体がリスクをはらんでいると指摘している。例えば、燃料集合体の移動に使われるコンテナが地上に落下し、中に収めた集合体がばらばらになって、核燃料を大気にさらす可能性などだ。
 
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は最近の記者会見で、「使用済み核燃料の取り扱いには相当大きなリスクがある」と述べ、一つ一つ、極めて慎重に処理しなければならないと語った。同委員会は、福島第1原発事故後に原子力業界への監視を強化するため発足した。
 
 京都大学の原子力科学者で原発反対派として有名な小出裕章氏は先月、作業が膨大であるだけに事故発生の可能性を極めて憂慮していると述べた。
 小出氏は東電が1331本の使用済み核燃料棒を問題なく扱えるか、またどれほど長い期間がかかるか心配していると語った。
 
 原子炉4号機を擁している建屋は大地震直後の爆発で大破してしまっているため、作業に向け東電は、建屋の大規模な補強を行い鉄枠を構築した。
 この鉄枠によって支えられたクレーンは、おのおのの燃料集合体を持ち上げてプール内に据え付けたコンテナに収める。コンテナの重さは満杯の場合約91トンになり、その後密封され、プール外に持ち上げられ、トラックに乗せられる。トラックは、既に集合体6375本を収めている建屋外の共用プールにコンテナを運搬するという段取りだ。
 東電は、燃料保護で特別の予防措置を講じたと述べている。核燃料集合体が移動中に地震が発生し、停電になっても、施錠装置がコンテナの地上への落下を防ぐだろうという。
 福島第1原発の小野明所長は7日、現場を視察した記者団や規制当局者に対し、使用済み核燃料の移動は何回も行ったことのある作業で、極めて危険なことをしているとは思わないと語った。
 
 
福島第一原発所長:使用済み燃料取り出しに自信-危惧の声も 
ブルームバーグ 2013年11月8日
東京電力福島第一原発の小野明所長は、今月中旬から始まる4号機で使用済み燃料プールからの燃料の取り出しについて安全にできると自信を示した。この作業は廃炉に向けた工程の試金石になる。 
 
小野所長は7日、福島第一原発で行われた記者会見で、構造的な欠陥や燃料の取り扱い失敗で制御不能になる可能性は極めて低いと述べた。 
東電 は福島第一原発4号機の使用済み燃料プール貯蔵されている核燃料を取り出す準備を現在進めている。専門家の中からは取り扱いを誤れば再び危機に陥る可能性もあるとの声が上がっている。 
しかし、メルトダウン(炉心溶融)を起こした隣接する原子炉からの放射線量が高いことやプールの中のがれきが障害になる可能性もあることを認めた。 
 
取り出しの対象となっているのは1533体の燃料集合体。4号機の建屋も東日本大震災の地震や津波襲来後に起きた水素爆発で破壊された。 
元原子力技術者のマイケル・フリードランダー氏は東電が燃料の取り出しを甘くみている可能性があると危惧する。同氏は「4号機の燃料の取り出し準備を進めていることで、私は夜も眠れないでいる。うまく行かないと非常に深刻な事故を招く可能性がある」と述べた。 
 
大きな輸送容器 
キャスクと呼ばれる大きな輸送容器が4号機建屋の屋上に持ち上げられ、数本の鉄柱で支えられている。燃料集合体22体が入るキャスクをプールに沈め1体ずつ収める。容器はクレーンで地上に下ろし、地震の被害が比較的軽微だった共用プールに移す。 
小野氏は、大きながれきは除去したが、小さいがれきが除去作業に影響を与える可能性を指摘した。作業員はマスクや防護服を着用するため、作業をいっそう難しくするという。小野氏は作業自体は通常の原発運転時にも行われている作業であることから、危険だとは考えていないとし、2014年末までに大きな問題もなく終了するとの見通しを示した。