福島原発で働いていた下請け作業員が加入する派遣ユニオンは28日、発注元の東京電力や元請け会社などに、解雇問題等に関連して申し入れた「団体交渉に応じない不当労働行為があった」として、東京都労働委員会に救済を申し立てました。
団体交渉で、福島原発現場作業員の解雇や偽装請負の是正、中間搾取分の支払い、安全確保、偽装請負・中間搾取の再発防止をはかりたいとしています。
この問題でも福島原発の現場作業員の劣悪な労働の実態が浮き彫りにされました。
Aさんは5次下請けのRH工業に、高線量下の作業はないという条件で雇われましたが、現場では3つ上位の乙社の指揮下で高線量下の作業をさせられたため乙社に抗議しました。そうしたところ雇い主のRH工業は一つ上位の丁社から「Aを現場に出させるなと上から言われた」と言われ、その翌日Aさんを解雇しました。
Aさんは派遣ユニオンに加入して実情を訴えました。ユニオンは解雇や偽装請負の是正、中間搾取分の支払い、安全確保、偽装請負・中間搾取の再発防止を求めて、東京電力を含めた関連系列の6社に団体交渉を申し入れましたが、RH工業以外はAさんとは雇用関係がないからと団体交渉に応じませんでした。ユニオンは、下請労働者の劣悪な労働条件を解消するためには、東京電力が労働環境を整備する責任をもった具体的措置を講ずることが必要不可欠であるとしています。
なお、直接雇用者であるRH工業とは解雇問題について最終的に和解しました。
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福島原発:下請け作業員の「派遣ユニオン」が団交申し立て
毎日新聞 2013年11月28日
福島第1原発で働いていた下請け作業員が加入する派遣ユニオン(藤野雅己委員長)は28日、発注元の東京電力や元請け会社などに「団体交渉に応じない不当労働行為があった」として、東京都労働委員会に救済を申し立てた。団体交渉で危険な作業の強要や危険手当の中抜きなどの問題を解決したいとしている。発注元に団交を求めて救済を申し立てるのは極めて異例。
申立書やユニオンによると、長野県在住の林哲哉さん(41)は2012年6月、福島第1原発の作業を請け負った福島県いわき市の5次下請け業者と雇用契約を結んだ。作業道具の管理など危険のない仕事だと説明されたが、次々と被ばく線量が高い仕事に変更になり、6月19日には原子炉建屋近辺のガラス撤去などの作業に計2時間従事させられた。
現場で抗議すると、翌日に解雇されたためユニオンに加入。解雇撤回や偽装請負の是正、危険手当の中間搾取分の支払いなどを求めて東電を含む5社に団対交渉を申し込んだが、5次下請け以外は応じなかった。
代理人の水口洋介弁護士は「発注元の東電にも作業員の安全を確保する責任がある」と指摘。林さんは「事故対応で働く人にも国、東電が責任を持つべきだ」と話している。
東京電力は「申し入れについて承知していないため、コメントは控える」としている。【東海林智】