福島原発事故で避難している住民が、地元に戻る際の国の支援を検討している原子力規制委員会の専門家チームは、住民の被ばく量の評価を、これまでの空間線量から推定される値ではなく、住民が個々に身につける線量計で実際に測る値で行うよう変更するとした提言の案をまとめたということです。
「実態に即した被ばく線量の評価」を口実にしていますが、実際に線量計を身につけて測った値が、空間線量から推定される値の3分の1~7分の1に低くなる傾向があるので、その方が地元に戻りやすくなるからというのが本当の理由です。
「安全かどうか不明な場所に実際に居住し続けながら被曝量を実測する」という人体実験方式を、その意思を持たない人たちに、しかも子どもや幼児まで含めて一律にやらせるのは無理です。たまたま自分の居住空間や作業空間での被曝量が低いからということだけで、そこに住めるというものではありません。働き先や生活様式がずっと変わらないという保証もありません。したがって十分な余裕を見る必要がありますが、その安全率をどうするのかも不明です。
これは被曝のリスクがあっても帰還したいと望む人たちに対して、特例的に施行される基準にはなり得ても、一般の人たちに適用できる基準ではありません。まして出来るだけ簡易な除染で出来るだけ沢山の人たちを帰宅させようという、除染経費の節減が目的であればなお更です。
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被ばく線量 住民の線量計で
NHK NEWS WEB 2013年11月11日
東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難している住民が、地元に戻る際の国の支援を検討している原子力規制委員会の専門家チームは、住民の被ばく線量の評価を、これまでの環境中の放射線量から推定される値ではなく、住民が身につける線量計で実際に測る値で行うよう変更するとした提言の案をまとめました。
実態に即した被ばく線量の評価や効率的な除染につなげる狙いです。
原子力規制委員会の専門家チームは、福島第一原発の事故で避難している住民が、地元に戻る際の不安を解消する国の支援を検討していて、11日の会合で、提言の案を示しました。
それによりますと、地元に戻る際の地域の放射線量は、政府が避難の解除を判断する目安の年間20ミリシーベルトを下回ることを条件としました。
そのうえで、住民の被ばく線量は、年間で1ミリシーベルト以下に下げることが長期的な目標となっていて、これまで、環境中の放射線量から推定される値で評価されてきましたが、今後は、個人個人が身につける線量計で実際に測る値で評価するよう方法を変更するとしています。
また、放射線量が高い地域を示す地図を作ったり、住民の線量計の値をもとにした効率的に除染を行ったりして住民の被ばく線量を減らすとしています。
さらに、地域ごとに自治体関係者や保健師などを「相談員」として配置し、アドバイスをしたり住民が身近に相談したりできる体制を整備する方針も示され、提言の案は大筋で了承されました。
提言は、規制委員会が、今後、正式にまとめたうえで、国の原子力災害対策本部に提出することにしています。
不安の解消になるか
国が住民の被ばく線量の評価方法を変更するのは、線量計で実際に測った値が環境中の放射線量から推定される値に比べて低くなる傾向があるためですが、個人の線量を対策に生かすには、きめ細かい対応も求められることになり、住民の不安解消につなげられるのかが問われることになります。
国は、原発事故が原因の住民の被ばく線量について、長期的に、年間で1ミリシーベルト以下にすることを目指しています。
住民の被ばく線量は、これまで、航空機を使って上空から測定した市町村ごとの環境中の放射線量を基に、1日のうち8時間は屋外に、16時間は線量が比較的下がりにくい木造住宅の中にいると一律に仮定し推定していました。
しかし、実際に個人個人が線量計を身につけて測った値は、推定される値に比べて3分の1から7分の1ほどに低くなる傾向があることが分かっています。
一方で、被ばく線量には個人差も大きく、生活している場所や食べ物などによっては、平均的な値に比べ大幅に高くなる人もいます。
このため、福島県内の自治体や専門家から、住民の健康を守り不安を解消するためには、推定に基づく一律の対策ではなく住民全員に線量計を身につけてもらったうえで、生活環境やスタイルに合わせた対策をとることが合理的だという指摘が出ていました。
しかし、個人の被ばく線量を把握したうえで除染や健康管理に生かしていくためには、データを分析してアドバイスをする相談員を養成するなど、きめ細かい対応も求められることになり、実際に住民の不安解消につなげられるのかが問われることになります。
浪江町住民■理解と不安
原子力規制委員会の専門家チームがまとめた提言の案について、福島県浪江町から福島市に避難している住民からは、理解を示す意見がある一方で不安の声が多く聞かれました。
80歳の男性は「国が計測したデータを示されるよりも個人の線量計で管理するほうが自己責任で納得ができて良いと思う」と一定の理解を示していました。
一方で、75歳の女性は「個人の線量計で計測すると自分の家では放射線量が低くてもすぐ近くでは高いところがあったりするのではないかと思うと不安だ。やはり国でしっかりと除染をして管理し、安全なのかどうか示してほしい」と話していました。
また、63歳の男性は「線量計の数字も日によって違うこともあるし、どの程度であれば本当に安全なのかわれわれには知識がない。個人の線量計で判断しろというのは国の責任放棄ではないか」と話していました。