川内原発について、住民が巨大噴火が起きた際の安全性が確保されていないとして、原子力規制委が出した許可の取り消しを求めた裁判で、福岡地裁は「巨大噴火は必ず起きるが、低頻度で、科学的に予知することは不可能だ。原子炉施設の安全確保上、想定されていなくても不合理とはいえない」として、住民の訴えを退けました。
同地裁は、「発生の可能性が相応の根拠を持って示されないかぎり、対策を講じないことが社会的に認められている」とも述べました。
この論理でいけば、火山学会は巨大噴火が起こるか怒らないかは予測できないと明言しているので、「火山条項」が適用される可能性はなく有名無実な条項ということになります。
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川内原発 巨大噴火への安全性問う訴え 退ける判決 福岡地裁
NHK NEWS WEB 2019年6月17日
鹿児島県の川内原子力発電所について、地元の住民などが、巨大噴火が起きた際の安全性が確保されていないとして、原子力規制委員会が出した許可の取り消しを求めた裁判で、福岡地方裁判所は「巨大噴火は低頻度の自然災害で、想定されていなくても不合理とはいえない」として、訴えを退けました。
鹿児島県の九州電力・川内原発1号機と2号機は、福島第一原発の事故のあとに作られた新しい基準のもと、原子力規制委員会から設備などの安全に関する許可を受けて稼働しています。
鹿児島県や福岡県などの住民33人は、周辺の火山で巨大噴火が起きた際の安全性が確保されていないとして、許可の取り消しを求める訴えを起こしていました。
17日の判決で、福岡地方裁判所の倉澤守春裁判長は「合理的に予測される範囲を超える自然災害の危険性については、発生の可能性が相応の根拠を持って示されないかぎり、対策を講じないことが社会的に認められている」と指摘しました。
そして「巨大噴火は必ず起きるが、低頻度で、科学的に予知することは不可能だ。原子炉施設の安全確保上、想定されていなくても不合理とはいえない」として、住民の訴えを退けました。
原発事故を受けて規制基準が見直されたあと、国が出した許可をめぐって起こされた集団訴訟で司法判断が示されたのは初めてです。
川内原発とは
川内原子力発電所は鹿児島県薩摩川内市の海に面した丘陵地にあり、1号機と2号機の2基の原子炉があります。
1号機は昭和59年7月に、2号機は昭和60年11月に営業運転を始めましたが、平成23年の東日本大震災による福島第一原発の事故以降、運転が停止されました。
その後に設けられた新しい規制基準に合わせて安全対策が強化され、平成26年9月、1号機と2号機は全国の原発で初めて原子力規制委員会から「設置変更許可」を受け、翌年、いずれも再稼働しました。
一方、川内原発の運転に反対する地元の住民などは、平成26年に運転の停止を求める仮処分を申し立てるなど、これまでにも司法の判断を求めてきました。
この仮処分の審理でも、川内原発から半径160キロの範囲内にあり、過去に巨大噴火を引き起こした火山に対する安全性が争われました。
この仮処分で、福岡高裁宮崎支部は3年前、「原子力規制委員会の火山評価の方法は、巨大噴火の時期や規模を発生前に予測できることを前提としている点で不合理な点がある」と指摘しました。
一方で「巨大噴火は極めて低い頻度でしか起きず、安全性の確保の観点で原子力規制委員会の判断が不合理とは言えない」などとして、住民側の申し立てを退けました。
原発をめぐっては、福島の事故をきっかけに全国で仮処分や裁判が起こされ、裁判所が運転しないよう命じたケースもありますが、その後、いずれも取り消されています。
原子力規制庁「主張認められた」
今回の判決について、原子力規制委員会の事務局の原子力規制庁は「国の主張が認められたと聞いています。引き続き、新規制基準に基づき適切な規制を行ってまいりたい」とコメントしました。