<原発・福島のいま>
牛の全頭検査見直しも 県など慎重議論 国の出荷制限解除を受け
河北新報 2019年06月15日
福島県は14日、東京電力福島第1原発事故後に続ける県産牛の放射性物質濃度の全頭検査に関し、見直しも視野に入れ再検討を始めた。国の出荷制限が3月に解除されたため形式上は全頭検査が不要になったことなどを受け、年度末まで在り方を議論する。
生産者や流通業者、消費者団体の14人による検討会議の初会合が14日、郡山市であった。県畜産課の森口克彦課長が「放射性物質検査の今後の方向性を、予断を持たずに考えたい」とあいさつ。会合は非公開で行った。
全頭検査は、2011年7月に県産牛から当時の暫定規制値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える放射性物質が検出されたことを受けて同8月に開始。今年3月までに県内外に出荷された肉牛は16万1005頭で、基準値(12年10月から同100ベクレル)を超えた例はない。
国が11年7月に指示した県産牛の出荷制限は、同8月に全頭検査実施などを条件に一部解除され、今年3月に完全解除された。
県産牛には現在、国のガイドラインに基づく全戸検査が課せられているが、1キログラム当たり50ベクレルを下回る状況が続けば来年3月にも不要になる見通し。
県畜産課によると、初会合では検討を慎重に進めることで一致した。県は年度内にさらに4、5回の会合を開き、夏に消費者アンケートも実施。同様に全頭検査を続ける岩手、宮城など他県の動向も参考にする。
県配合飼料価格安定基金協会の松田秀樹常務理事は取材に「全頭検査を続けている事実を消費者がどれだけ知っているかも確認したい」と述べた。