帰還困難区域内のうち国が復興拠点としている区域はそれなりに除染したり今後の方針を明らかにしています。しかし復興拠点以外の区域についてはいまだに除染は愚か今後の方針についても明らかにしていません。そうした中で政府は、除染をしていない地域でも解除できる枠組みを検討していることが分かりました。
この件について、地元の三紙がそれぞれのニュアンスで報じました。
福島民報は、「帰還困難区域の復興に除染欠かせない ~」とのタイトルで、「除染なしでは地域の復興は困難」、「除染しなくては一時帰宅をしても1時間留まるのが限度」などの声を紹介しました。
福島民友は、「除染をしていない地域でも放射線量が年間20ミリシーベルト以下の場合に避難指示を解除できるよう政府が検討している」と単に報じました。
河北新報は、「先行きの見えない状況に拠点外の住民から不安の声が出ていた。村は2月、除染の優先度を譲歩する形で国に拠点内外の一括解除を求めた」と述べ、非公開で実施された説明会で、出席者は「ようやく家屋の解体ができる」と村の方針に理解を示し、異論は出なかったと報じました。
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帰還困難区域の復興に除染欠かせない 避難解除めぐり住民に困惑
福島民報 2020/06/04
東京電力福島第一原発事故による帰還困難区域を巡り、政府がこれまでの要件を維持する一方で、除染をしていない地域でも解除できる枠組みを検討しているのが判明した三日、双葉地方の避難住民に困惑が広がった。「除染なしでは地域の復興は困難だ」と運用について懸念を示し、国に対し早期に明確な指針を示すよう求めた。
富岡町の災害公営住宅に住む漁師の佐藤秋夫さん(53)は「避難指示が解除されても、除染をしなければ周囲の住民は戻らないはず」と不安を口にした。
帰還困難区域内の小良ケ浜地区に自宅がある。二〇二三(令和五)年春の避難指示解除が予定されている町の復興拠点からは外れているため、解除の見通しは立っていない。「自宅周辺は放射線量が高く、一時帰宅をしたとしても一時間が精いっぱい」と嘆く。
原発事故後、田村市に避難していたが、二〇一七(平成二十九)年に妻と町に戻り、漁師の仕事に復帰した。漁に出掛けるのは毎朝午前二時ごろ。近隣の災害公営住宅の住民に迷惑を掛けないよう、町内に一戸建ての自宅を建てたいと考えている。「住み慣れた場所に家を建て直したいという思いはある。政府は帰還困難区域の方向性を早く示してほしい」と思いを語った。
「避難指示解除に向けた時間軸がはっきりしていない中、思いつきのようなやり方で進めてほしくはない」。大熊町から会津若松市に避難する浅野孝さん(67)は戸惑う。
震災前は町内の薬品会社に勤務する傍ら、コメや野菜を育てる兼業農家だった。原発事故で町内熊地区の自宅は帰還困難区域となったが、特定復興再生拠点区域や中間貯蔵施設整備地から外れた。
家はイノシシなどの動物被害で住めない。自宅近くは自然が多く、水田には草木が生い茂る。帰れる見通しさえ立っていない現状に「帰っても仕方ない」との無念さが募る。「国は帰還困難区域の見通しを示した上で解除要件を考えるべきだ」と指摘した。
いわき市の団体職員山根光保子さん(37)は双葉町の復興拠点内に自宅がある。帰還して新たに暮らす地域の未来を考え、幼児二人がいる家族が安心して生活を送れるような徹底した線量の調査と管理を求める。
「避難指示解除の際はできるだけ多くの町民の声を聞き、除染などについて総合的に判断してほしい」と訴えた。
帰還困難区域「除染なく解除」政府検討...地元意見を丁寧に聞く
福島民友 2020/6/4
東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域について、除染をしていない地域でも放射線量が年間20ミリシーベルト以下の場合に避難指示を解除できるよう、政府が検討していることが3日分かった。菅義偉官房長官は記者会見で「地元の意見を丁寧に聞きながら、解除要件の見直しも含め、しっかりと検討したい」と認めた。
原発事故で出された避難指示を解除する要件として政府は〈1〉線量が年間20ミリシーベルト以下に低下する〈2〉インフラ整備や除染の進展〈3〉地元との十分な協議―などを定めている。政府関係者によると、線量や地元協議に関する要件は維持する一方、除染しなくても解除できる枠組みを検討しているという。
福島・飯舘村、未除染でも避難解除「住民に異論なし」
河北新報 2020年06月04日
福島県飯舘村は3日、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域に設定されている特定復興再生拠点区域(復興拠点)外に登録する住民を対象に、説明会を開いた。村は拠点外に村営復興公園を整備し、拠点と同じ2023年春までの避難解除を目指す方針を示した。
復興拠点が設けられた県内6町村で、拠点外の方向性を具体化した構想を明らかにしたのは初めて。実現すれば、十分な除染をせずに避難解除される初のケースになる。
帰還困難区域が設けられている村南部の長泥地区は18年4月に186ヘクタールが復興拠点に認定され、早期の居住再開を目指し除染や家屋解体が進む。一方、国は16戸ある同地区の拠点外の約900ヘクタールについては避難解除時期や除染の見通しを示していない。
先行きの見えない状況に拠点外の住民から不安の声が出ていた。村は2月、除染の優先度を譲歩する形で国に拠点内外の一括解除を求めた。
菅野典雄村長は説明会終了後、報道各社に「現状では(解除まで)何年かかるか分からない。拠点外をどうするか、一歩前に進めたい」と述べた。
公園は記念碑や、あずまやを設けた簡素な整備を想定。従来のような本格除染は見送られ、公園整備や家屋解体に伴う線量低減にとどまることになる。
説明会は非公開で実施され、11世帯14人が出席。村によると、出席者は「ようやく家屋の解体ができる」と村の方針に理解を示し、異論は出なかったという。