J-CASTニュースが「~ 核燃料サイクルの見通し、立たないまま」とする記事を出しました。使用済み核燃料の再処理について総括的に理解できる記事になっています。
一読して分かる通り、もはや再処理工場には何の必要性も認められないだけでなく、これがスムーズに稼働する見通しは少なく、今後もトラブルが多発すると予想されます。
そのうえ工場が稼働すればその周辺や近海を放射能で著しく汚染することは明らかで、そのレベルは原発の比ではありません。
さらに仮に順調に稼働したとしても、最大の目的であるプルトニウムを削減する目的は達成できず、逆に現有の保有量45.7トンを増やすことにしかなりません。
要するに再処理工場設立の意義を説明できる理論はどこにも存在しないということです。
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再処理工場「合格」したが... 核燃料サイクルの見通し、立たないまま
J-CASTニュース 2020年6月2日
原発で使用済みの核燃料からプルトニウムなどを取り出す日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)について、原子力規制委員会が、安全審査で「合格」の判断を示した。「核燃料サイクル政策」の中核施設にゴーサインが出たとはいえ、稼働までには安全対策工事を完了させたうえで、地元自治体の同意も必要で、目標通りに進む保証はなく、核燃サイクルの見通しは立たないのが実情だ。
規制委は2020年5月13日、再処理工場の安全対策の基本方針が、新規制基準に適合すると認める審査書案を了承した。1カ月の意見公募などを経て秋に正式に審査書を決定する。
再処理工場は、全国の原発で出る使用済み核燃料(棒状)を切断して硝酸で溶かし、再利用できるプルトニウムとウランを回収する施設。残った高レベルの放射性廃液はガラスで固め「核のゴミ」となる。
完成予定は24回も延期
同工場は1993年に工事が始まったが、相次ぐトラブルにより、当初の1997年完成予定は24回も延期され、現在は2021年度を予定している。
経済産業省の旧原子力安全・保安院の使用前検査を控え試験的に運転していた2007〜08年、トラブルを何度も起こし、原因調査などを進めていたところに11年3月、東日本大震災により東京電力福島第1原発事故が発生。これを受け、規制委が発足し、新規制基準が施行されたため、14年1月に新たな基準に即して審査を申請していた。
日本原燃は当初、地震の想定される最大の揺れ(基準地震動)を600ガル(ガルは加速度の単位)、青森・秋田県境にある十和田火山の噴火で火山灰が30センチ降り積もると想定したが、審査の結果、敷地内の活断層の長さを1キロ長いと変更して基準地震動は700ガルに、火山灰は青森県・八甲田山の噴火も考慮に入れ55センチに、それぞれ見直して対策を打つことにした。
だが、再処理工場が稼働に至る道のりはなお遠い。まず、再処理工場は本邦初だけに、工事がスンナリ進むかは疑問だ。通常の原発なら審査に通ることで稼働への手続きはヤマを越すと判断できるが、再処理工場は工事や安全審査は難航しそうだ。
「MOX燃料」を原発で再利用
そもそも、再処理工場を作る大前提である核燃サイクルの見通しが立っていない。この政策の目的は、原発から出る使用済み燃料を再処理し、ウランとプルトニウムを取り出して再利用することで資源を有効利用するもの。再利用は「高速増殖炉」と「プルサーマル発電」の二本立てだった。
このうち高速増殖炉は発電しながら消費した以上の燃料を生成できる夢の原子炉だが、福井県に建設した原型炉「もんじゅ」がトラブル続きで2016年に廃炉が決まり、とん挫している。
残るプルサーマルは、ウランとプルトニウムを混ぜた「MOX燃料」を原発で再利用する。ウランだけを使うのでは、資源小国の日本として燃料確保が不安だとして、核燃サイクルを打ち出した経緯があり、これまで英仏など海外に頼んで再処理してもらってきたが、やっと自前でMOX燃料を作れるようになるというわけだ。
ここで問題になるのがプルトニウムだ。核兵器の材料となるため、国際的に厳しく管理されていて、日本は「平和利用」を前提に日米原子力協定で保有を認められていて、2018年時点で45.7トンを国内外で保有する。この量は原爆6000発分に相当するとされ、核不拡散の観点から国際的に問題視され、日米原子力協定の延長(2018年)の際、日本はプルトニウム保有量の削減方針を示さざるをえなかった。
そこで、原発でMOXを使い、順調にプルトニウムを削減していけるかがポイントになるが、まず、再処理工場が稼働すれば、最大で年800トンの使用済み燃料を処理し、回収できるプルトニウムは約7トン。現在、各原発や再処理工場に保管されている使用済み燃料は1.9万トンに達し、24年かけて処理を終える計算。もちろん、今後の再稼働を含む原発からの新たな使用済み燃料がこれに加わる。
プルトニウムの消費を増やすのは容易ではない
一方、現在、プルサーマル発電を実施している原発は四国電力伊方3号機(愛媛県)、関西電力高浜3、4号機(福井県)と九州電力玄海3号機(佐賀県)の4基だけで、プルトニウムの消費量は合計で年2トン程度にすぎない。プルトニウムを増やさないために年7トンの再処理分を年々消化するために、全国16〜18基でプルサーマル発電をする必要になる計算だが、安全審査や地元同意を得られず再稼働の見通しがたたない原発が多い。3.11後、稼働していた54基のうちすでに20基以上の原発の廃炉が決まっており、プルトニウムの消費を増やすのは容易ではない。
プルサーマルを含む原発の動向は原燃の経営、ひいては存在意義にも関わる。すでに再処理工場の建設費は2.9兆円と、当初予定の7600億円の約4倍に膨らんでいる。完成後40年間の運営費や廃炉費などを含めた事業費全体では約13兆円を上回ると見込まれ、計画通りに進まなければ、さらに増えていく。また、プルサーマルが滞れば、プルトニウムを増やせない以上、再処理工場の稼働を落とすしかなく、原燃の経営効率は低下する。こうした費用は電力会社が、持ち込む使用済み核燃料の量に応じて負担するが、原資は、電力利用者が負担する電気料金だ。
核燃サイクルという「国策」を、電力会社の出資する日本原燃に担わせる「民営」という原子力政策の矛盾は、よく指摘されるところだが、そのツケは電力料金の形で国民に回る。「いくつも建設されてきた原発と違って、世界でも数が少ない再処理工場は、過去の事故による教訓なども少なく、今後も順調に稼働できる保証はない」(大手紙科学部デスク)というから、国民負担がさらに増える可能性もはらんで、四半世紀前に立てられた再処理計画が進む。