2014年3月27日木曜日

福島 汚染タンク 過酷な内面清掃、不具合見逃しのツケ

 起こしてしまった不注意によるミス(ケアレスミス)をあまり責め立ててもしようのないことなのですが、東電福島の現場ではあまりにもその種のミスが多くて、怠慢と呼ぶべきなのではないかと思われます。
 
 東電21本の清浄なタンクに、1000万ベクレル余りのストロンチウムなどを含む汚染水1万5000トンを送水したミスも、通常の注意力と真面目さがあれば、実際に全停止させた26時間前には停止させることができたということです。
 
 17日の昼ごろ、ALPSで処理した水に含まれる放射性物質を分析しようと、採取した水を分析施設に持ち込もうとしたところ、入り口のスクリーニング検査で系統のうち一つが強い放射線を発していることが判明しましが、東電は「水に誤って放射性物質が混入した」と、採水時のミスと判断して放置しました
 21時間経過した18日午前時ごろ水質分析で処理水がほとんど浄化できていないことが確認されましたが、実際に装置を停止させたのはそれからさらに5時間経過した午後でした。
 
 このようにして漫然と1万5000トンの、高度に汚染された水が21本のタンクに貯水されましたが、その後始末=内面清掃は、放射線防護服をまとった重装備の5人の作業員がチームを作り20分ごとに交代するという人海戦術で行うということです。
 
 このように東電が不注意と怠慢で引き起こした不都合のツケは、すべて作業員たちの大いなる努力であがなわれるわけで、高レベル放射線下で汗まみれになりながら、タンク1本当たり数日かけて完全な手作業で洗浄する作業員たちの忍苦がしのばれます。
 
 東京新聞のレポートを紹介します。
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過酷なタンク内清掃 新除染装置、不具合見逃しでツケ
東京新聞 2014年3月26日 
 東京電力福島第一原発の新型除染装置「ALPS(アルプス)」で不具合が起きているのに東電が運転を続けた結果、多数のタンクを高濃度の放射性物質で汚した。東電は「タンクの除染を始めた」というが、後始末をさせられるのは作業員。除染に当たった作業員らが語る現場は、過酷だった。 (片山夏子)
 
 除染されたのは、ALPSで処理した水を一時的にためるため、装置脇にあるタンク一基。作業員らはタンク下部の側面に直径八十センチほどの点検孔を開け、高さ、直径ともに約十メートルあるタンクの中に入った。天板に二カ所ある点検孔を開け、そこから差し込むわずかな光と持ち込んだ発光ダイオード(LED)ライトの光だけが頼りだ。
 すでに上部から高圧の水を吹きつけて洗浄してあるとはいえ、つい数日前まで一リットル当たり一〇〇〇万ベクレルと、放出基準の数十万倍もある放射性ストロンチウムなどを含む水が入っていた。ベータ線を発する物質で、被ばくの心配は少ないが、直接触れたり体内に取り込むと内部被ばくにつながる。
 防護服の上にかっぱを二枚重ねし、かっぱのフードを全面マスクの上からテープで密封。手はゴム手袋など四枚重ね。足元は長靴と完全防備だ。
 放射線管理の担当者からは「高圧の水で洗浄するとき跳ね上がった水しぶきをかぶらないように、注意に注意を重ねてほしい」と注意が飛んだ。
 薄暗い中、高圧洗浄したりデッキブラシでこすったり、洗浄水を吸引したり、吸引しきれない水は布で拭き取る。五、六人の作業員がチームとなって約二十分ごとに交代する人海戦術で数日かけ作業を進めた。
 完全防備のため、あっという間に全身汗だくに。顔から汗が滴り、マスクに水滴がつく。
 作業員の一人は「晴れた日は光が入って作業がしやすいが、暗くて暑くてまいった。使った機材も除染をしなくてはならない。一基でこれだけ大変。汚染された残りのタンクはどうするのか…」と話した。


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新除染装置でも事態軽視 不具合見逃し1日運転 東電 福島第一原発
 東京新聞 2014年3月25日
(「原発・放射能ニュース2014.3.2125」より 再掲
 東京電力福島第一原発に大量貯蔵されている処理水の危険性を大幅低減する新型除染装置「ALPS(アルプス)」の性能が急低下した問題で、東電は装置を止めるほぼ一日前に異常を把握していたのに、装置の不具合を疑わず運転し続けていたことが分かった。その結果、浄化された水をためるはずのタンクを二十一基も汚染させた。事態を過小評価する東電の体質があらためて浮かんだ。(小倉貞俊)
 
 既存の除染装置では、日々大量に発生する高濃度汚染水から放射性セシウムしか除去できない。ALPSはストロンチウムなど六十二種類の放射性物質を取り除けるため、作業員の被ばくを減らし、タンクから水漏れしても汚染は最小限に抑える切り札とされる。
 東電によると、十七日昼ごろ、ALPSで処理した水に含まれる放射性物質を分析しようと、採取した水を福島第一内の施設に持ち込もうとしたところ、入り口のスクリーニング検査で三系統のうち一つが強い放射線を発していることが判明した。
 ALPSが正常に動いていれば、処理水一リットル当たり二億四〇〇〇万ベクレルのストロンチウムなどは数百ベクレル以下に低減されて線量もほとんどないため、この時点で装置の異常を疑うべきだった。しかし、東電は「水に誤って放射性物質が混入したのでは」と採水ミスと判断。装置を止めて確認することもせず、水を別の施設に持ち込み分析結果を待つだけだった。
 
 翌十八日午前九時ごろ、一〇〇〇万ベクレル余りとほとんど浄化できていないことが確認され、午後二時に東電はようやく装置を停止させた。この間、処理はしたのに汚れたままの水が一万五千トンも発生。本来は装置に併設されたタンクに一時貯蔵し、きちんと浄化できていることを確認してから処理水タンクに移すはずなのに、東電はチェックせずに移送。その結果、ほぼトリチウムだけの水をためるはずのタンク二十一基が汚染され、配管やタンクの除染など余計な作業を増やすことになった。
 
 東電は二月にも、タンクの満水警報が出たのに、水位計の故障と安易に判断、百トンを超える高濃度処理水漏れ事故を起こした。
 東電は二十四日、問題のない残り二系統の運転を再開させたが、処理した水を一時貯蔵するタンクの側面にある点検孔から一秒に一滴程度の水漏れが見つかった。タンクは除染が終わったばかりだった。漏れた水は約五百ミリリットル程度でビニール袋で受けているというが、タンクのボルトを閉めても漏れが止まらないため東電は再び運転を停止した。


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