小出裕章ジャーナルの3月29日版に、「揺れる高速増殖炉もんじゅの行方」についての記事が掲載されました。
政府や原子力村が「もんじゅ」の運転継続にこだわる真の理由が良く分かります
やや長文なので、以下に大雑把に要約します。
核分裂するウランは天然ウランの0.7パーセントしかない。残り99.3%の「燃えないウラン」を効率よくプルトニウムに変換しようという技術が高速増殖実験炉「もんじゅ」。
しかし実際は全くの欠陥原子炉で、これまで1兆円以上のお金を注ぎ込んだけれども 豆電球1つ点けることができていない。
95年に試運転を開始すると直ぐにナトリウムの漏えい事故を起し、2010年には炉内に中継装置を落下させるという大きな事故を起した。その後 機器類の点検を怠る情報隠しが発覚し、ついに2013年5月には原子力規制委から「運転準備中止命令」が出された。
当初なんとしても高速増殖炉を作ろうと、米国、フランス、ロシアなどが挑戦したが、結局成功しなかった。フランスは小さな実験炉、その後原型炉、さらには巨大な原子力発電所まで作ったけれども、その全てが動かなかった。みんな壊れて、フランスも高速増殖炉計画から撤退している。
核分裂するウランは少ないので、高速増殖炉を動かすことができない限りは直ぐにウラン燃料は枯渇し、安定的エネルギー源にはなりえない。
ところが「増殖」は出来ないので、いまでは「高速増殖炉」(という名称)から「増殖」を外して、高速炉(=プルトニウムを高速で反応させる)という名前の原子炉になっている。そしてそれを動かそうとしている。
ところが「増殖」は出来ないので、いまでは「高速増殖炉」(という名称)から「増殖」を外して、高速炉(=プルトニウムを高速で反応させる)という名前の原子炉になっている。そしてそれを動かそうとしている。
それはなぜか。日本が使っている軽水炉の原子炉では、せいぜい核分裂性のプルトニウム7割レベルのものしか出来ないが、高速炉を動かすことができれば同プルトニウム98パーセントという超優秀な核兵器材料が手に入る。これが高速炉にこだわる理由である。
それで核のゴミを少しでも減らすというような理屈を探してきて、なんとか「もんじゅ」の運転を続けようとしているのが実態。
高速処理により減容できる可能性は科学的に言えばゼロではないが、まず核燃料を再処理をしなければいけないわけで、それをすれば周辺環境を猛烈に汚染してしまい、事故の可能性もある、という大きな危険性を抱え込むことになる。
注.下記の記事中の太字部分は原文のままで、一部青字化は事務局で行っています。
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小出裕章ジャーナル 2014年3月29日
(ラジオ放送日 2013年3月28日〜4月4日)
石丸次郎:
今日のテーマは、揺れる高速増殖炉「もんじゅ」の行方についてです。 ラジオフォーラムでは、これまでも「もんじゅ」についてはたびたび触れてまいりました。 「もんじゅ」の問題について、たびたび小出さんにも解説をしていただきましたけれども、 3月5日にNHKがこんなニュースを流してます。
「フランスが取り組んでいる、いわゆる核のゴミを減らす次世代型原子炉の 研究開発に協力するため、もんじゅの活用も見据えた政府間の取り決めを検討している」
なにか「もんじゅ」の新しい延命策をフランスとやり取りを重ねているようですが。 まず、リスナーのために「もんじゅ」のおさらいを小出さん、ちょっと簡単にお願いできますでしょうか?
小出さん:
はい。原子力というのは、ウランを燃料にして発電をしようとする、そういう技術です。 ただ、ウランと一口で言っても、そのウランの中には2種類ありまして、 いわゆる「燃えるウラン」、つまり「核分裂するウラン」というものと、 「核分裂しない燃えないウラン」というものがあるのです。 そして、大切な「核分裂するウラン」というのは、 実はウラン全体の0.7パーセントしかないのです。
私自身は原子力が将来の夢のエネルギーで、資源が山ほどあると思って、 この道に足を踏み込んだのですけれども、実は燃えるウランはもうほとんど無くてですね、 原子力をやろうとすると、すぐに無くなってしまうということに気が付いたわけです。
そこで、ウラン全体の99.3パーセントを占めている「燃えないウラン」。 それをなんとか活用できないかと考えまして、 そのウランをプルトニウムという物質に もし変換することができるのであれば、 そのプルトニウムがまた原子力発電の燃料になると考えたのです。
プルトニウムというのは長崎の原爆にもなった材料ですから、 原子炉の中で燃料として使うこともできるということを実現しようとしたのです。 その実現するためには、「燃えないウラン」を効率よくプルトニウムに 変換していく技術が必要になるわけで、 そのための原子炉が高速増殖炉と私達が呼んできた原子炉で、 日本では「もんじゅ」という原型炉と言うのですが、 まあ実験炉の毛の生えたようなものをなんとか作って やってみたいと計画が進んできました。
ところが、その「もんじゅ」というのは全くの欠陥原子炉でして、 これまで1兆円以上のお金を注ぎ込みましたけれども、 豆電球1つ点けることができないという、そんな原子炉なのでした。
石丸次郎:
はい。この福井県敦賀市にある「もんじゅ」。 今、おっしゃられたようにですね全然動かなかったどころかですね、 事故をたびたび起こしてます。
95年に試運転を開始しましたけれども、ナトリウムの漏えい事故。 それから、2010年には炉内に中継装置が落下するという大きな事故。 それから、点検を怠る情報隠しが発覚してですね、 2013年、昨年5月には、とうとう原子力規制委員会から 運転準備中止命令が出されると。
ですから、これで「もんじゅ」は終わりに向けた計画が始まるのかなと 思ったところがですね、フランスと組んでやると。 このフランスが計画している核のゴミを減らす次世代型原子炉、 これは、どういう物なんでしょうか?
小出さん:
要するに悪あがきをしている。
石丸次郎:
悪あがき。はあ~。
小出さん:
世界中の原子力推進派の人達は、ウランが少ないということはすぐに気が付きまして、 高速増殖炉を動かすことができない限りは、 原子力がエネルギー源になんかならないんだということが、 もうずーっと前から分かっていたのです。
そのため、なんとしても高速増殖炉を作ろうとして、 米国にしてもフランスにしてもロシアにしても、 みんながやろうとしたのですけれども結局できなかったのです。
フランスもラプソディーという小ちゃな実験炉。 そして、フェニックス。つまり、不死鳥という原型炉。 さらには、スーパーフェニックスという巨大な原子力発電所まで 作ったのですけれども、その全てが動かない。 みんな壊れていってしまうということで、 フランス自身も高速増殖炉計画からはすでにもう撤退しているのです。 つまり、原子力がエネルギー源になるということは、 もうありえないということがハッキリと分かってしまっている。
そこで、フランスにしても日本にしてもエネルギー源にならないにしても、 なんとか高速増殖炉と実は名前が付いてるのですが、 今はその増殖というのを取ってしまって。 つまり、プルトニウムを増殖なんかもうできないと。 高速炉という名前の原子炉を動かそうとしているのです。
石丸次郎:
なんか記事を検索しててもね、増殖という言葉はどんどん消えていってるんで、 おかしいなと思ってたんですけど、そういう理由だったんですね。
小出さん:
そうです。 もうプルトニウムをどんどん増殖して、エネルギー源にするっていうことは できないってことがもう分かってしまっているのです。 それでも、なんとしてもこの原子炉を動かそうという人達がいるわけで。 それは、なぜかというとですね、 この高速炉という原子炉が、もし高速炉を動かすことができるなら、 その高速炉の炉心の周辺にブランケットという、 いわゆる毛布と呼ぶような領域があるのですが、 そこに超優秀な核兵器材料のプルトニウムが貯まってくるという、 そういう性質を持っているのです。
日本は、もともと核兵器を作りたいという動機に基づいて、 平和利用とか言いながら原子力開発を始めたわけですけれども。 今日、日本が使っている原子力発電所の原子炉、私たち軽水炉と呼んでいますが。 その原子炉では、核分裂性のプルトニウムが せいぜい7割ぐらいしか含まれていないプルトニウムしかできないのです。
しかし、もし高速炉を動かすことができれば、そのブランケットの部分には、 98パーセントが核分裂性というプルトニウムが貯まってくるのです。 超優秀な核兵器材料が手に入るということで、 どうしてもこの原子炉は動かさなければいけないのです。
石丸次郎:
なるほど。 小出さん、すみません。 小出さんは、つまりこの非常に核兵器を作るために優秀なと言いますか、 純度の高いと言いますか、そのプルトニウムを獲得を目指してる というふうな見方されているってことですよね?
小出さん:
そうです。 ですから、今、その石丸さん、そのゴミの処理、始末のためにとかですね フランスが言っていて、日本もまあその研究に協力するっていうようなことを 言ってますけれども、本当はそうではないのです。
本当の彼らの目的は、超優秀な核兵器材料を懐に入れたいのです。 そのためには、もうエネルギー源にならないということは歴然と分かってしまったので、 なにか理由を作らなければいけないということで、 核のゴミを少しでも減らすというような理屈を今探してきたということです。
石丸次郎:
なるほど。 小出さん、この政府のですねエネルギー基本計画原案。 2月26日に発表されてますけれども、この中にこういう一説があります。
「高レベル放射性廃棄物の現用化。有害提言等の観点から使用済み燃料を再処理し、 回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本方針とする。」
と、つまり核のゴミをここに7分の1に減らすと。 そして、有害でない、つまり非常に汚染度の高い物を、汚染を減らしいくという。 そういう研究をするんだっていうことだと思うんですけれども。 こういうことは可能と言いますか、目指す意味っていうのはあるんですか?
小出さん:
はい。 原理的に言えば、高速炉の中にプルトニウム等を入れて燃やすことはできる。 つまり、もう増殖できないこと分かっているわけですから、 プルトニウムをそこに入れれば燃やすということはできる ということは分かっているわけです。
で、プルトニウムは半減期という半分に減るまでの時間が 2万4千年もかかってしまうという、途方もなく寿命の長い放射性物質ですので、 それをなんとか私達の世代で消していきたいと私自身も思います。
そのために、さまざまな研究が続いてきたのですけれども、 それを今度「もんじゅ」を使って研究する というような理屈を考え付いたわけですね。
そして、その可能性がもちろん科学的に言えばゼロではありませんけれども。 今、石丸さんもちょっとおっしゃって下さったように、 それを実現しようとすれば、まず再処理ということをやらなければいけないわけで、 再処理をやってしまうと、これまでの世界中の再処理工場の歴史が示してきたように、 周辺環境を猛烈に汚染してしまいます。
そして、事故の危険も消えません。 そして、おまけにようやく取り出したプルトニウムをまた 「もんじゅ」というような危険な原子炉で燃やそうとするわけですから、 そこでもまた危険を抱えてしまうわけです。
これまで確かに危険な物を作り出してきてしまったけれども、 それをまた別な形の危険なやり方でなんとかしようとする。 そういう試みですので、私はできればそういう方向じゃない方向を 目指すべきだと思いますし、先ほども聞いて頂いたように、 そのような屁理屈をこねながら結局彼らは 超優秀な核兵器材料を欲しんだろうなと私は思っています。
石丸次郎:
この「もんじゅ」をなんとしてでも延命させたいと。 これ実は、断層が「もんじゅ」の原子炉地下にあるということが見つかってて、 活断層かどうかの検証が今続いてますよね。
小出さん:
そうです。
石丸次郎:
そういう意味でも「もんじゅ」は非常に危険だっていうこと。 それから、事故が繰り返されてきたっていうこと。 そして、もうかなり古いということがありますので、「もんじゅ」は てっきりもう去年の段階で、これ終わりに向けて動き出すのかなと思ったら、 ところがどっこいっていう感じですね。
小出さん:
そうなのです。 先ほど、石丸さんおっしゃってくださったけど、 1995年にナトリウム漏れという事故を起こしました。 そして、ずーっと停止していて、14年間止まったままだったのです。 それを2009年にまた動かし始めようとして、 すぐにまた事故を起こしたわけですけれども。
皆さん考えていただきたいんですけれども、14年間も止まったままだった機械、 自動車でもいいですけれども、そんな物をもう一度動かそうという気に なるかどうかということなんだと思います。
日本の政府、核兵器を作りたいという人達から見れば、確かにこれはまずいし、 当初の皆さんに言ってきたような増殖というような目的も達成できないけれども、 それでもやはり核兵器材料を懐に入れるためには、 なんとしても諦めることができないということでやってしまったわけです。
石丸次郎:
諦め悪いですね~。
小出さん:
ほんとに諦めが悪いと思います。
石丸次郎:
小出さん、もうちょっとお聞きしたいんですが、 今日はじゃあこの辺までにしたいと思います。 ありがとうございました。
小出さん:
ありがとうございました。