素粒子物理学の学位を持ち、米国原子力規制委員会(NRC)の委員長時代に福島原発の事故に遭遇し、原発の安全性に関し強硬な姿勢で臨んだことから産業界からの反発を呼び、委員長を勇退したグレゴリー・ヤツコ氏と、柏崎刈羽原発の再稼動問題で筋を通している泉田新潟県知事とが12日夜、東京で対談を行いました。
対談で泉田氏は、「原発事故避難時、住民輸送に必要なバスの運転手に避難指示区域に入る指示をするのが難しい」ことを指摘し、「誰が入るのかの合意なしに自治体に避難計画を作らせるのは無理。これを解決しないで作成した避難計画は実際には機能しない計画だ」、と述べたのに対して、ヤツコ氏は「避難計画が不十分なら、米国では原子力規制委が原発停止を指示するだろう」と述べました。
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原発の避難計画「有効策作れず」 新潟知事が見直し要望
朝日新聞 2014年3月15日
東京電力柏崎刈羽原発のある新潟県の泉田裕彦知事が、東日本大震災発生時に米政府の原子力規制委員長だったと対談し、原発事故や地震の複合災害が起きた際の住民避難について「国の制度全般を見直さない限り、自治体が有効な避難計画を作るのは不可能だ」と明言した。泉田知事は福島第一原発事故の検証と総括が終わるまでは原発再稼働の議論に入らない考えを改めて強調したが、「有効な避難計画の策定」も再稼働への新たなハードルになる可能性がある。
東京都内で12日夜に対談した。ヤツコ氏は柏崎刈羽原発について「地元の避難計画はできているのか」と質問した。
泉田知事は「機能しない計画は作れるが、実効性が伴わない」と答え、理由として労働者の被曝(ひばく)線量限度が法令で厳しく定められており、住民輸送に必要なバスの運転手に避難指示区域に入る指示をするのが難しいと指摘。「民間人の線量基準を緩めるか、救助してくれる部隊をつくるか、この合意なしに自治体に避難計画を作らせるのは無理だ」と強調した。すでに避難計画を作った自治体もあるが、泉田知事は「形だけで実際には機能しない計画だ」とも述べた。ヤツコ氏は「避難計画が不十分なら、米国では原子力規制委が原発停止を指示するだろう」と指摘した。(奥山俊宏)