電力各社の平成26年度の供給計画によると、原発再稼働が見通せない中、将来にわたって電力を安定供給するため火力建設にシフトしたことが分かりました。
電力各社は25年度では1年以内の原発再稼働を想定していましたが、原子力規制委員会で安全審査中の原発は今も再稼働の見通しが立たず、他の老朽化原発※の再稼働はさらに厳しい状況のため、26年度の計画で一斉に火力の増強に乗り出すことになったものです。
※ 日本にある48基の原発のうち3分の1の16基は、老朽原発の目安となる運転30年を既に超えています。昨夏の原発の新規制基準施行時に、原発の運転を40年まで延ばすことが決まりましたが、中性子アタックを受ける原子炉の使用期限を不用意に延長するのは危険な話で、そういう点からも原発は再稼動すべきではありません。
平成26年度の火力発電所の建設計画は下記のとおりです。
東北電力 : 120万キロワット/アワー (石炭火力)
中部電力 : 100万キロワット/アワー (石炭火力)
関西電力 : 150万キロワット/アワー (石炭火力・LNG火力)
九州電力 : 100万キロワット/アワー (石炭火力)
東京電力 : 600万キロワット/アワー (石炭火力?)
火力発電用の燃料は、日本では1960年以降石油が主力の時代が続いたものの、2度のオイルショックを経て、1980年以降は石炭と天然ガスが火力発電の主力となりました。
正しく計算すれば原子力発電は低コストではなく、石炭火力が最も低コストで、次いでLNG(天然ガス)発電なので、期せずして平成26年度は本来目指すべき方向に軌道修正されました。
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火力発電 新設相次ぐ 電力各社、原発再稼働見通せず
産経新聞 2014年3月28日
電力各社の平成26年度の供給計画が27日までにほぼ出そろった。4社が原発1基分(100万キロワット)を上回る大型の火力発電所新設に乗り出すほか、未発表の東京電力も600万キロワット規模の火力を建設する。原発再稼働が見通せない中、将来にわたって電力を安定供給するため、各社の火力建設ラッシュが始まる。
東日本大震災後、電力各社が火力発電所を新設・更新する際は経営効率化のために入札が必要となった。
東北電力は計120万キロワットの入札を実施。自ら応札して落札できれば、能代発電所3号機(石炭、秋田県)の稼働を従来計画の「40年度以降」から「32年度」に前倒しする。
中部電力は、100万キロワット程度の火力を新設。入札では調達価格が比較的安い石炭火力の建設が有力視される。自らの応札も検討する。
関西電力も150万キロワットの火力の入札を実施し、早ければ33年度に稼働させる。燃料は石炭や液化天然ガス(LNG)が軸となる見通し。原発停止に伴って供給力の柱となっている火力は老朽化が進んでおり、最新鋭発電所の導入を進める。ただ、資金力に余裕がないため自社応札はしない。
九州電力の入札は100万キロワット余り。自社落札できれば、凍結中の松浦発電所2号機(石炭、長崎県)の建設を再開し、33年の稼働を目指す。
一方、東電は原発6基分に相当する600万キロワット程度の火力入札を検討。昨年、260万キロワット分の入札を実施したが、入札価格の上限が低すぎて最終的に約60万キロワットしか確保できなかったため、今回は未達分の200万キロワット分を再入札。さらに、新再建計画で打ち出している計1千万キロワット分の老朽火力建て替えのうち、400万キロワット分の入札も予定する。
各社とも25年度の供給計画策定時には1年以内の原発再稼働を想定していた。しかし原子力規制委員会で安全審査中の原発は今も再稼働の見通しが立たず、他の老朽化原発の再稼働はさらに厳しい状況だ。このため各社は26年度の計画で一斉に火力増強に乗り出す。
(参考記事)
首相、川内原発再稼働へ意欲
日経新聞 2014年3月28日
安倍晋三首相は28日の参院本会議で、九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)の再稼働について「できないという後ろ向きの発想ではなく、どうすれば地元の理解を得られるかが重要だ」と述べ、意欲を示した。「万が一の事故の場合は自衛隊の車両や船舶などで住民の避難対応に総力を挙げる」と安全対策に万全を期す考えも強調した。共産党の仁比聡平氏への答弁。
同原発を巡っては、原子力規制委員会が安全審査を優先的に進めており、最も早く再稼働にこぎ着ける可能性が高まっている。首相は「原子力規制委が認めない限り再稼働しない」との方針を示している。