福島原発の多核種除去装置「ALPS(アルプス)」は、18日から全停止したままになっていますが、同装置の停止は事故収束に向けた工程への影響が大きいのに、いまだに詳細な原因が特定できていません。事態を重く見た福島県は20日、東電に早期の原因究明などを申し入れたということです。
毎日新聞の報道によれば、ALPSの処理水は3系統分を1本のラインにまとめて送水する構造になっているため、そのうちの1系列が故障しても全系列が止まるということです。
どうして前後の弁を閉止して、その系列だけを単独で修理することができないのか理解しがたい話です。もしもそれができない構造であるのなら、今後もずっとこういう事態は生じるわけなので、至急に個別の処理水送水ラインを作るべきです。そうしたことまで考慮しない設計であったとしたら、基本的な設計ミスです。
まだ明らかにされない部分でも、そうした基本的なミスが集積されている可能性は、大いにあります。
これから先もまだまだ随分長いのですから、この際、総ざらいの見直しを進めて徹底的に不適合な箇所の改善を図るべきです。
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原発事故:汚染水処理のALPS停止 原因も特定できず
毎日新聞 2014年03月22日
東京電力福島第1原発で、汚染水処理の切り札として期待される多核種除去装置「ALPS(アルプス)」が、処理不調により18日から停止している。ALPSの停止は事故収束に向けた工程への影響が大きく、詳細な原因も特定できていない。事態を重く見た(福島)県は20日、東電に早期の原因究明などを申し入れた。【高橋隆輔】
■3系統とも停止
アルプスは、トリチウム以外の62種類の放射性物質を取り除くことができる装置で、昨年3月から試運転を続けてきた。ABCの3系統あり、1系統で1日最大250トンを処理でき、通常はほとんどの核種が検出限界値未満になる。
ところが、17日にB系統で処理された水から、ベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり1400万ベクレル検出された。18日正午ごろにB系統を停止するまで汚染水数百トンが貯蔵タンクに送り込まれ、すでに入っていた処理済みの水約1万4000トンが再汚染された。異常の原因はまだ分かっていない。
また、処理後の水を一時貯留するタンクは3基あるが、3系統で処理された水はひとまとめにして送り込まれる。このため、汚染された一時貯留用タンクを除染するために異常のないA、C系統まで停止せざるを得ず、現在処理は完全に停止している。
■高まるリスク
アルプスのトラブルは直接環境に影響しないが、汚染水の処理がストップすることは、結果的にさまざまなリスクを生む。
まず心配されるのがタンクの置き換え計画への影響だ。東電は現在、ボルトで締めるフランジ型タンクから、漏えいリスクの低い溶接型タンクへ置き換え、さらにタンクの数を増やす作業を続けている。その際、新しいタンクには、処理後の水だけを詰めている。
しかし、今回のトラブルで、使い始めたばかりのタンク21基を汚してしまった。東電は「工程への影響はない」としているが、当該タンク群は、汚染水用に変更するか、すべて除染するか、いずれかの対応が必要になる。どちらの対応を取るかも現時点では決まっておらず、本当に影響が出ないかはまだ分からない。
2月末時点で、タンクの容量は約1000基で49万トンあるのに対して、蓄積された汚染水は約45万トン。昨年11月には、傾いたタンクの容量ぎりぎりまで移送した結果の汚染水漏れも起きており、タンク容量の逼迫(ひっぱく)は漏えいリスクとの背中合わせを意味する。