10日に日本記者クラブで開かれたシンポジウムに、福島原発事故の3つの調査委員会(政府、国会、民間)の3人の元委員長らとともに出席した、アメリカ原子力規制委員会の前委員長グレゴリー・ヤツコ氏は、11日、NHKのインタビューに応じました。
そのなかでヤツコ氏は、福島第一原発は「汚染水などによって放射性物質の放出が続き、問題は解消されていない」とし、「人々の健康や環境に配慮できる人を現場の作業のトップに据え、避難している人たちに丁寧に説明することが重要だ」と述べました。
しかし現状では、現場の作業環境は劣悪で敷地境界の放射線レベルも問題である上に、福島第一原発の実情がどうなっているのか、汚染水問題一つにしても明解な説明はないままで推移しています。
さらに「事故を完全に防ぐことはできない。原発の運転再開は世論の支持を得られなければ正当化できない」と述べ、運転再開は国民の判断によるべきだという見解を示しました。
これは極めて重要な指摘であり、いま首相が主張している「安全だから稼動する」というのは欺瞞であって、とても議論に耐えるものではありません。また事故を起す可能性があるのに敢えて再稼動するのであれば、「危険であるが、こういう事情があるから再稼動させるしかない」という、国民の合意が必要になります。しかし現在はそういう方向になど行っていません。
安倍首相にはそういう国民合意を図る覚悟もなければ、そもそもそれに向かうための論理を構成する術も皆無です。
そうした基本をないがしろにしたままで、しゃにむに再稼動を進めることなどは、国の「リーダー」にあるまじきことで、絶対に許されません。
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「原発事故 完全には防げず」
NHK NEWS WEB 2014年3月12日
アメリカ原子力規制委員会のトップとして、東京電力福島第一原子力発電所の事故対応に当たったグレゴリー・ヤツコ氏が、事故から3年の11日、NHKのインタビューに応じ、「原発事故を完全に防ぐことはできない」としたうえで、「運転再開は世論の支持を得られなければ正当化できない」と述べました。
3年前の福島第一原発の事故で、アメリカ国内の対応に当たったアメリカ原子力規制委員会の前委員長、グレゴリー・ヤツコ氏は11日、東京都内で開かれたシンポジウムに参加したあとNHKのインタビューに応じました。
ヤツコ氏は福島第一原発の現状について、「汚染水などによって放射性物質の放出が続き、問題は消えていない」と指摘したうえで、「人々の健康や環境に配慮できる人を現場の作業のトップに据え、避難している人たちに丁寧に説明することが重要だ」と述べ、地元住民への説明の大切さを訴えました。
また全国の原発の安全性について、「新たな安全対策で再び事故が起こる可能性は低くなっている」とした一方で、「それでも事故を完全に防ぐことはできないので、起きた際の影響をできるだけ抑える対策が必要だ」と述べ、事故に備えた体制作りが欠かせないという認識を示しました。
そのうえでヤツコ氏は「原発の運転再開は世論の支持を得られなければ正当化できない」と述べ、運転再開は国民の判断によるべきだという見解を示しました。