東海第2原発(茨城県東海村)の広域避難計画では、茨城県内分で、避難所の収容人数の算定を建物のトイレや玄関ロビー、倉庫などの面積まで含めた総面積で算出していたため、合計で2万人分過大に算定(その分が不足)していたことを先に毎日新聞が報じました。
⇒(4月3日)東海第2原発の避難所 不足は2万人超
その後の調査で、栃木、千葉、群馬、埼玉の各県でも同様に算出していたことが分かり、収容人数がさらに不足することが分かりました。
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トイレ、玄関も避難場所? 茨城近隣4県も過大算定 東海第2原発
毎日新聞 2021年5月1日
避難所の収容人数の過大算定は、茨城県内にとどまらなかった——。トイレや玄関ロビー、倉庫など避難場所になり得ない「非居住スペース」を除外せず、収容人数が過大算定されていた日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の広域避難計画。毎日新聞の報道で、茨城県内15市町村の避難所に過大算定があり、現時点での収容人数の不足が2万人分を超えることが発覚したが、事故時に避難者を受け入れる予定の埼玉、栃木、群馬、千葉県内にも過大算定の避難所があることが新たに判明した。
【日野行介、三上健太郎/デジタル報道センター】
栃木、千葉、群馬、埼玉も認める
茨城県は東海第2原発で事故が起きた場合、原発から半径30キロ圏内の住民ら約94万人を圏外に避難させる計画を作り、30キロ圏内の14市町村はそれぞれ、茨城県内の30市町村、県外の101市町村と避難者の受け入れに関する協定を結んでいる。具体的には茨城県内の自治体へ39万3000人▽福島県へ25万6000人▽栃木県へ13万1000人▽千葉県へ7万5000人▽群馬県へ4万5000人▽埼玉県へ3万9000人−−がそれぞれ避難する。
毎日新聞が、避難先となる福島、栃木、千葉、群馬、埼玉の5県に取材したところ、福島県を除く4県は、避難所の収容人数を過大算定した自治体があることを認めた。茨城県内と同様、「1人当たりのスペースは2平方メートル」と計算し、トイレや倉庫などの「非居住スペース」を含む総面積を単純に2で割った数を収容人数として集計していたとみられる。
千葉、埼玉「再調査しない」
福島を除く各県の避難所調査は、茨城県の要請で2015年以降に行われたもので、千葉県と埼玉県の担当者は取材に「茨城県が示した方法に基づき調査した」との理由で、県として再調査しない考えを示した。過大算定によって避難所不足が生じても、「それぞれの市町が協定を結ぶ(30キロ圏内の)茨城県の自治体と調整するよう求める」と説明した。
群馬、栃木の両県は毎日新聞の報道を受け、過去の避難所調査を検証した。群馬県が避難先に予定されている8市町に問い合わせたところ、4市町が過大算定を認めたという。栃木県も調査資料を精査したところ、過大算定の可能性がある自治体があったという。実際、栃木県足利市は毎日新聞の取材に過大算定を認めた。
一方、福島県はもともと、東京電力福島第1、第2原発の避難計画を策定するために避難所調査をしており、居住スペースだけで集計しているという。原子力安全対策課の担当者は「原発事故の避難経験を踏まえて調査しているので、過大算定の市町村はないと考えている」と説明した。
新型コロナで迫られるスペース確保
収容人数の過大算定は、自然災害時の地域防災計画にも影響する。原発事故であろうと、自然災害であろうと、使う避難所は同じだからだ。各自治体は新型コロナウイルス対策で避難者1人あたりの居住スペース拡大を迫られており、過大算定が判明した市町村は非居住スペースを除いて、再算定せざるを得ない。
毎日新聞の取材に過大算定を認めた千葉県流山市は、市内にある小中高計11校に水戸市民約6000人を受け入れる予定になっている。算定を見直した場合、避難所が不足する恐れがある。流山市の担当者は「すぐには再算定できないが、新型コロナ対策もあり、すべて見直さなければならない」と話す。