福井県内や関西の市民団体が実施したアンケート調査で、コロナ感染症対策(1人当たりのスペース4平方メートル、通路2メートル)を実施した場合、40年超の美浜原発では避難先となる自治体の3分の1が、高浜原発では半数以上がその基準に「足りない」ことが分かりました。
これでは住民は安全な避難が出来ないので再稼働は出来ません。
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福井2原発 事故時の避難所、コロナで「不足」 計画実効性に疑問
毎日新聞 2021年5月21日
東京電力福島第1原発事故を受け、国や関係自治体は原発ごとに原子力災害対策指針などに基づいて広域避難計画の策定を進めている。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、避難者用スペースが十分確保できていない状況が、福井県内や関西の市民団体が実施したアンケート調査で浮き彫りとなった。運転開始から40年超となる美浜原発(福井県美浜町)では避難先となる自治体の3分の1が、高浜原発(同県高浜町)では半数以上が「足りない」と回答。計画の実効性を疑う声が上がっている。
高浜は半数以上で
市民団体は両原発から30キロ圏内の住民が事故時に避難する場合の受け入れ先となっている自治体に避難所の準備状況などを尋ねるアンケートを行った。このうち、政府などが基準とする感染症対策(1人当たりのスペース4平方メートル、通路2メートル)を実施した場合に避難所が足りるかどうかの質問に対して、美浜原発での事故を想定したケースで「足りない」と回答した自治体は33・8%、「足りている」は41・2%、「その他」は25%だった(複数回答の自治体は除外)。
美浜では福井県民35%
福井県民の避難先となる自治体に限ると、「足りている」は25%、「足りない」は35%と逆転した。美浜町民の避難先となっているおおい町は「その他」と答え、「県が避難先の多重確保などを検討している」とした。また、敦賀市民約6万5000人の避難先となる福井市は「足りている」と答えたが、その根拠については「県が県施設の活用や、近隣市町、他県と協議調整し避難所を確保することになっている」としており、県頼みとなっているのが実情だ。
一方、高浜原発のケースでは「足りない」は56・6%、「足りている」は24・5%、「その他」は17%だった。「足りない」と回答した自治体の多くは兵庫県や京都府の市町だった。
福井県危機対策・防災課は「(コロナ禍での避難については)県や市町、国などがどのように調整していくのかを今、検討している。実際に起きた状況に合わせて柔軟に対応していくことになるだろう」と説明。調査に参加した若狭町の石地優さん(68)は「コロナの中、避難は現実には難しい。大混乱になる事故の後に調整というのは無責任な話」と批判した。
「マッチング」未実施の自治体も
コロナ禍でなくても、計画の「不備」が調査からは垣間見える。スムーズな避難を行うためにはどこの住民がどの避難所に入るのかを具体化させる「マッチング」が必要だが、これができているかどうかについての質問に対し「できていない」と回答したのは、美浜原発のケースは13市町(18・8%)、高浜原発のケースは5市町(9%)に上った。さらに回答をよく見ると、実際の避難所に行く前に集まる場所(拠点避難所)しか定めていなかったり、「事故後に調整」としていたりと、実質的なマッチングができていないと思われる受け入れ先の自治体もあった。
福島事故では、避難所がなかなか確保できず各地を転々とした住民がいた。石地さんは「具体的な避難先が決まらないと、路頭に迷い、不安が増す。今年3月に水戸地裁は実効性のある避難計画なしでは東海第2原発を動かしてはいけないとの判決を出した。調査結果からは福井でも実効性があるとは言えない」と指摘。「県は避難計画を改めてきっちり説明してほしい。少なくともそれができるまで(美浜、高浜原発の)再稼働同意は認められない」と訴えている。【大島秀利】
市民団体が132市町村対象に調査
今回のアンケート調査は福井県内の「ふるさとを守る高浜・おおいの会」「安全なふる里を大切する会」(若狭町)と「避難計画を案ずる関西連絡会」が今年2〜3月に実施。福島原発事故後、政府は避難計画策定を求める範囲をそれまでの10キロ圏内から30キロ圏内に拡大している。このため、調査では美浜原発から30キロ圏内の住民約27万9000人(主な内訳は福井県内81・7%、滋賀県内18・3%)の避難先とされる74市町村を、高浜原発から30キロ圏内の約16万8000人(主な内訳は福井30・8%、京都69・2%)の避難先とされる58市町を対象にした。美浜原発に関する74市町には岐阜県内の住民約50人の避難先も含まれている。それぞれの回答率は美浜原発が93%、高浜原発が95%だった。