福島原発のトリチウム汚染水を海洋放出する政府の方針決定を受け、福島県内で農産物の輸出に取り組む農家は、「この10年でようやく風評が払拭されてきたのに、福島県民をまた傷つけるのか」と心配しています。
汚染水の海洋放出による農産物の汚染はあり得ません。もしも売れ行きに悪影響を及ぼすなら、それこそ風評被害です(それに対して海産物そ販売する上での被害を一括して「風評被害」と呼ぶのは不正確な表現と思われます)
政府には絶対に風評被害が及ばないようにする責任があります。しかし政府にとっては汚染水の放出の方がより重要なので、真面目に取り組むのかどうか怪しいものです。
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福島のモモ農家、風評再燃を懸念 台湾や香港の輸入規制長期化も
河北新報 2021年04月28日
東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する政府の方針決定を受け、福島県内で農産物の輸出に取り組む農家に懸念が広がっている。再び風評が広がり、10年にわたり続く県産品の輸入規制措置の長期化が想定されるためだ。特産のモモを輸出する農家は「国と東電は海外に正確な情報を伝えてほしい」と願う。
「この10年でようやく風評が払拭(ふっしょく)されてきた。この期に及んで福島県民をまた傷つけるのか」
福島市で果樹園を経営する古山浩司さん(45)は、2年後の海洋放出の方針決定を受けて不安を感じた。
原発事故は、古山さんが脱サラをして家業を継いだ翌年に起きた。贈答用のモモを購入する顧客は半数に激減。1キロ当たり1000円だった取引価格は20円ほどに買いたたかれたこともあったという。
付加価値を高めようと、栽培方法の試行錯誤を重ねた結果、糖度は一般的な9~12度を上回る40度に達した。ギネス記録の糖度を武器に2017年、タイの富裕層向けに輸出を開始。19年は初年度の5倍となる約500キロを現地に届けた。
古山さんにとって、海外は開拓余地の大きい魅力的な市場だ。ただ、処理水の海洋放出で風評が再燃すれば、規制が長期化しかねない。
県によると、原発事故前はモモとコメが輸出農産物の大半を占めた。事故後、54の国・地域が福島産農水産物の輸入を規制。主要な輸出先だった台湾、香港、中国を含む15の国・地域が現在も規制を続けている。
海洋放出の決定直後、古山さんは、かつて台湾企業の社長から「当面、輸入の解禁はない」と言われたことを思い起こした。「事故当時のまま認識が止まっている」と感じたという。
政府は基本方針に販路拡大支援などを盛り込んだが、古山さんは「実際に売れる保証はない」と語る。
「放出までの2年間で国内外への正確な情報発信は不可欠。国と東電は風評を生じさせないよう全力を注いでほしい」。古山さんは切望する。