環境省は23日中間貯蔵施設からの搬出に向けた議論を本格化させるべく、市民らが参加する初の対話集会を開催しました。国は本年度中に全国各ブロックで集会を開く予定です。
中間貯蔵施設内の除染廃棄物は、搬入開始30年後の45年までに県外で最終処分することが法律で定められていますが、まだ十分に周知されていません。政府は国民の理解を得て早期に実現への道筋を付けたいと考えていますが、市民からは「なぜ県外で最終処分するのか」「風評被害への対応は」などの質問が出ました。
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除染廃棄物処分巡り対話集会 福島県外搬出へ議論本格化
河北新報 2021年05月24日
東京電力福島第1原発事故に伴う除染廃棄物の最終処分に向け、環境省は23日、市民らが参加する初の対話集会を開催した。国は本年度中に全国各ブロックで集会を開き、中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)からの搬出に向けた議論を本格化させる。
集会は新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受け、オンラインで開かれた。東京都内の会場では東大大学院の開沼博准教授(社会学)、小泉進次郎環境相ら5人のみが登壇。登壇予定だった1人と各地の市民674人はウェブで参加した。
小泉氏は「最終処分を福島だけの問題と位置付けるわけにはいかない。集会は自分の事として考えてもらうための第一歩だ」と呼び掛けた。大熊町の吉田淳町長は「苦渋の判断で中間貯蔵を受け入れた。多くの人々の協力で環境再生が進んだことを知ってほしい」と訴える動画を寄せた。
中間貯蔵の経過説明や、基準値以下の除染土を農業などに再生利用して最終処分量を減らす取り組みの紹介もあった。市民からは「なぜ県外で最終処分するのか」「風評被害への対応は」などの質問が出た。
除染廃棄物は搬入開始30年後の2045年までに県外で最終処分することが中間貯蔵・環境安全事業株式会社法で定められている。国が想定する総量1400万立方メートルには帰還困難区域での発生分は含まれず、実際は大幅に膨らむとみられる。
県外最終処分「日本全体の問題」 除染土巡り初の対話フォーラム
福島民友ニュース 2021年05月24日
県内の除染で出た汚染土壌などを最大30年保管する中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)を巡り、環境省は23日、県外での最終処分に向けた初の「対話フォーラム」を開いた。除染で出た土壌などは2045年3月までに県外で最終処分を完了させると法律で義務付けられているが、東京電力福島第1原発事故から10年がたっても国民に十分知られていないのが現状。政府が国民の理解を得て、早期に実現への道筋を付けられるかどうかが焦点となる。
小泉進次郎環境相と本県ゆかりの有識者らによる討論が行われた。新型コロナウイルスの感染拡大で東京都内の会場に一般参加者を入れず、オンラインで配信した。小泉氏は「県外最終処分は法律で定めた県民と国との約束だ」と語り、除染で出た土壌の再生利用など最終処分量を減らす取り組みに理解を呼び掛けた。
オンラインでの参加者からは「なぜ県外で最終処分するのか。除染で出た土壌を拡散させてしまうのではないか」との意見が寄せられた。小泉氏は原発事故で住民が避難を強いられ、中間貯蔵施設を受け入れた大熊、双葉両町の苦難に触れ「福島だけの問題と位置付けるわけにはいかない。日本全体の問題だ。『なぜ外に出すのだ』との意見に向き合いながらも、まずは県外での再生利用が進むよう理解醸成の取り組みを強めたい」と述べた。
環境省が昨年行った調査によると、県外最終処分を定めた法律に関し「聞いたことはあるが、内容を全く知らない」「聞いたことがない」と答えた人が県外で80.9%に上り、県内でも49.7%と周知が足りない実態が浮き彫りになった。
このため同省は本年度、今回を振り出しに関西や九州などブロックごとに対話集会を開き、国民に理解を深めてもらうための活動を本格化させる。併せて再生利用の技術や最終処分場の構造、面積などの検討を続け、24年度末をめどに具体案をまとめる方針だ。