2022年5月9日月曜日

09- キノコの解除要件の壁高く「改善できないのか」と

 福島民報が、福島県におけるキノコ類の検査システムと現状について取り上げました。
 検査の仕方は「1年目は山に5地点以上の定点を設け、採取検体全てで放射性物質濃度が基準値以下だった場合、2年目に進む。2年目もクリアすると、3年目は60地点から60体を採取し、全て基準値以下なら解除となる」というもので、現在、パスする見込みがあるのは会津地方など一部にとどまり、大半の市町村では解除要件を達成できる見込みが低いめ、検査自体をしていないということです福島県は原発事故前にはキノコの名産地であったので、住民たちの悩みは小さくありません。
 しかし被爆後35年以上経過してもチェルノブイリ地方で住民の被爆による被害が認められているのは、住民がキノコ類を多食しているせいと言われているので、安易に解除条件を甘くするわけにはいきません。
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【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】
 山の恵み(39) 解除要件の壁高く「改善できないのか」
                             福島民報 2022/5/7
 東京電力福島第一原発事故発生に伴う野生キノコの出荷制限が県内の大半の市町村で続いている要因の一つに、解除要件の壁の高さがある。野生キノコは管理が難しいため、野菜や果物など栽培品と比べて要件が厳しく、放射性物質検査で3年続けて食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)以下となる必要がある。

 野生キノコは市町村単位で品目ごとに出荷制限が解除される。手順は図 ⇒https://news.yahoo.co.jp/articles/e2e3bfe1b20b80a6349edf64709de56f3c0d6e3d/images/000 
の通り。山に5地点以上の定点を設け、採取した検体全てで放射性物質濃度が食品衛生法の基準値以下だった場合、2年目に進む。2年目もクリアすると、3年目は詳細検査に移る。60地点から60検体を採取し、全て基準値以下なら解除となる。濃度が安定して低水準で、低下傾向にある点も考慮される。

 しかし、出荷制限解除に向けた検査が本格化しているのは会津地方など一部にとどまる。県によると、大半の市町村では検体によって検出される濃度の濃淡に違いがあり、3年にわたる厳格な解除要件を達成できる見込みが低いため、詳細検査まで至らないのだという。
 濃度が高い検体が出るのは、野生キノコが森林の土壌から放射性セシウムを吸収する性質があるためだ。林野庁が2019、2020(令和2)年に川内村と大玉村で行った調査によると、森林内のセシウムの95%以上が土壌に集中していた。特に、生きた樹木を栄養源とする「菌根菌」と呼ばれるキノコは、樹木の朽ちた部分から栄養を補う「腐性菌」のキノコと比べて高い濃度が検出される傾向がある。

 検査に必要な検体の確保にも難しさがある。希少種などは60検体を集めるのが難しい。政府は昨年、マツタケについて非破壊検査機器を使ったモニタリング検査で基準値を下回った検体に限り、出荷を認める運用に切り替えた。しかし、マツタケ以外は要件を満たさなければ出荷できない。県会津農林事務所の担当者は「出荷制限の早期解除を望む声があるが、思うようには進まない」と説明する。
 原発事故発生前、野生キノコや山菜は自由に出荷できていた。地元住民が採取した野生キノコを買い取り、市場や道の駅に販売していた三島町の菅家三吉さん(45)は「安全の確保は重要だが、さまざまな影響が続いている。何とか改善できないものか」と訴える。
 食品衛生法の基準値は欧米諸国と比べて厳しい。自民党の検討チームは妥当性や合理性を検証するよう政府に提言した。