2022年5月28日土曜日

レアメタルの白金族を高効率で回収 名古屋大教授ら発見

 原子炉でウランが核分裂を繰り返す中でレアメタルが生成されるのですが、高レベル放射性廃棄物を溶融炉でガラス固化体にするときにそのレアメタルが炉の壁にこびりつくため炉を頻繁に洗浄する必要があり、結果としてガラス固化体の増加にもつながります

 青色顔料「プルシアンブルー」(PB、紺青)にはパラジウムなどのレアメタルを効率的に回収する特性があることを名古屋大大学院の尾上順教授らが発見しました。ガラス固化体にする工程PBによレアメタル回収が出来て、もしも回収したレアメタルの放射能が下がれば、炉の壁へのこびり付きが防げ貴重な資源にもなります。まだ実現化にはいろいろ問題があるということですが。
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レアメタルの白金族を高効率で回収 名古屋大大学院教授ら発見
                             毎日新聞 2022/5/27
 葛飾北斎やピカソらが好んだ青色顔料「プルシアンブルー」(PB、紺青)が、パラジウムなどのレアメタル(希少金属)を効率的に回収するという現象を、名古屋大大学院の尾上(おのえ)順教授(60)=ナノ物質科学=と東京工業大の竹下健二特任教授(65)=原子力化学工学=らの研究グループが発見した。高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にする際、レアメタルが溶融炉の稼働率を低下させることなどが問題になっており、解決につながる可能性がある。
 PBは鉄イオン同士がシアノ基を介してくっついたジャングルジムのような構造で、各升には0・2ナノメートル四方(1ナノメートルは10億分の1メートル)の「ナノ空間」がある。
 研究グループは、レアメタルのルテニウム、ロジウム、パラジウムなど白金族元素が存在する溶液に、PBのナノ粒子(直径15ナノメートル前後)を入れると、レアメタルがナノ空間に取り込まれた後、鉄イオンと置き換わる現象を発見した。24時間の置換率はルテニウム39・0%、ロジウム47・8%、パラジウム87・0%と高効率だった。

 原子炉で質量数235のウランが核分裂を繰り返す中で、レアメタルが生成される。高レベル放射性廃棄物を溶融炉でガラス固化体にすると、レアメタルが炉の壁にこびりつき、ガラス固化体の品質を低下させる。このため炉を頻繁に洗浄する必要があり、その結果、ガラス固化体の増加にもつながっている
 高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にする工程にPBによるレアメタル回収をどのように組み込むかは課題だが、尾上教授は「回収したレアメタルの放射能が下がれば、貴重な資源になる。廃棄された電子部品などに使われているレアメタルのリサイクルにも役立つ可能性がある」と話している。

 研究成果は、国際科学雑誌「Scientific Reports」の電子版(3月24日付)に掲載された。【荒川基従】