2022年5月14日土曜日

宮城県の津波浸水想定 女川原発の避難ルートが含まれる

 東北電力は、11年前の福島原発での事故後に改められた国の規制基準に合わせ、安全対策工事の根拠となる津波の高さを231mと設定しました。原発自体は現在工事が進められている高さ29mの防潮堤で浸水を防げますが、牡鹿半島から逃げる唯一の避難路が5m浸水し、半島を出てからの国道も浸水することが分かりました。

 関連して9市町の庁舎が浸水することが分かりました。
 総合的に見直す必要があります。
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宮城県の津波浸水想定 女川原発の避難ルートが含まれる 住民から不安の声
                         khb東日本放送 2022/5/12
 宮城県が10日に公表した最大クラスの津波の浸水想定では、女川原発で事故が起きた場合の避難ルートが浸水の範囲に含まれました。原発の敷地内は浸水しない想定ですが、万が一の時に逃げられるのか。周辺の住民からは不安の声が上がっています。
 東北電力が2024年2月の再稼働を目指す女川原発の沿岸では、津波の高さは127メートルと予想され、東日本大震災で観測された13メートルとおおむね一致する高さになりました。
 敷地内への浸水はなく、県は現在工事が進められている高さ29メートルの防潮堤で浸水を防げると説明しています。
 東北電力は、11年前の福島第一原発での事故後に改められた国の規制基準に合わせ、安全対策工事の根拠となる津波の高さを231メートルと設定。東日本大震災前の基準から10メートル近く引き上げています
 それでも立地自治体からは、次のような声が聞かれます。
 斎藤正美石巻市長「原子力発電所は、本当にこれだけの地震が来た時に大丈夫か県のデータで県がしっかり検証しなさいと、すべきだ」
 加えて課題として上がるのが、避難ルートへの影響です。石巻市の旧牡鹿町で行政区長のまとめ役を務める大澤俊雄さん(71)です。
 大澤俊雄さん「(原発で)津波は何ともないかもしれないけれども、そのほかに何かあった時、避難するのに大変だなって。みんな浸水区域だもの
 避難計画に示された牡鹿半島から逃げる唯一の陸路、県道2号沿いでは複数の集落が浸水し5メートル以上の高さになる場所があるほか、半島を出た後の国道も浸水する予測となりました。
 東日本大震災でも道路は壊れ、半島の集落は孤立状態になりました。大澤さんは、想定を出すからには住民のためになるようにしてほしいと話します。
 大澤俊雄さん「こういう感じで出して通行できなくなるんだから、道路が冠水して。そしたら通行できるように道路の整備を早めにやってほしい。避難できないんなら避難できない前提で、計画を立ててほしいよね」
 県の原子力安全対策課は、避難ルートを決めた石巻市や女川町の対応に応じて意見交換をし、必要であれば避難計画の見直しを検討していくとしています。


庁舎が浸水域 宮城の9市町、対応策練り直し
                            河北新報 2022/5/11
 宮城県が発表した津波浸水想定で、9市町の行政庁舎が浸水域に入った。高い浸水深が予想される自治体では、災害対応の司令塔となる庁舎に新たなリスクが浮上し、戸惑う声が上がった。
 女川町役場は東日本大震災の津波で全壊。旧庁舎から約150メートル内陸の約20メートルの高台に2018年に移転したものの、3~5メートルの浸水が想定される。
 町企画課の担当者は「1000年に1度といわれる震災の教訓を基に高台に役場を建てたので浸水想定区域に入るとは思っていなかった」と困惑気味に話す。須田善明町長は「発生確率や頻度を踏まえると役場の移転やさらなるハード面の対策は現実的ではない。代替機能の検討などソフト面での対応を考える」とコメントした。
 東松島市は1~3メートルの浸水が想定される。渥美巌市長は「国の財政支援がなければ代替庁舎を造ることはできない」と指摘。「多額の費用をかけて防潮堤や盛り土などを整備しており、それらが全て考慮されているのだろうか」と浸水想定に疑問を呈した。
 震災では本庁舎に津波が到達しなかった塩釜市。佐藤光樹市長は「本庁舎が浸水区域に入るとは思っていなかった。災害対策本部などの代替地を検証し直す必要がある」と述べた。
 1~3メートルの浸水が想定される石巻市。災害時に対策本部を設置する市防災センターは1階が柱だけのピロティ構造で、3階に連絡通路がある。市危機対策課の担当者は「対応の必要な点がないか継続して確認したい」と話した。
 気仙沼市役所ワン・テン庁舎は震災時に津波で約1・5メートル浸水。災害対策本部は内陸部の気仙沼・本吉広域防災センターに設置した。今回は5~10メートルの浸水が予想された。
 本庁舎は約5年後、現在地から約2キロ内陸の高台に移転予定。移転前の対応について、高橋義宏危機管理監は「震災時と同様、上の階にいったん避難して安全を確保した後、防災センターに災対本部を設けることになる」と話す。
 亘理町は洪水・土砂災害防災マップ、松島町は津波シミュレーションで想定済みという。岩沼市は「津波が水路からあふれる程度」、多賀城市は「庁舎内まで広範に浸水するという可能性は低い」との認識を示した。