2024年3月27日水曜日

27- 論説【デブリ工法報告書】技術、安全の確立を(福島民報)

 福島第1原発3号機に残るデブリの本格的な取り出しに向け、廃炉等支援機構は気中工法と充填固化工法の併用を有力案とする報告書を公表しましが、それはまだごくごくの概要の構想であって具体性はなく、今後の内部調査などで新たな情報が得られた場合は方針変更をためらわず見直すべき述べているということです。
 原子力ムラは、一旦過酷事故を起こしてもそれに伴う事故の処理、「除染事業」そして「廃炉事業」の悉くが独占的で莫大な収入源(費用は結局国民の負担)になっていて、その生活力には感心するしかありませんが、事故後12年が経つというのにこの程度のものしか作れないというのが日本の原子力ムラの実態であるということです。
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論説【デブリ工法報告書】技術、安全の確立を
                            福島民報 2024/3/27
 東京電力福島第1原発3号機に残る溶融核燃料(デブリ)の本格的な取り出しに向け、原子力損害賠償・廃炉等支援機構は気中工法と充填[じゅうてん]固化工法の併用を有力案とする報告書を今月、公表した。東電は1、2年かけて設計などを進めたいとしているが、克服すべき課題は少なくない。廃炉作業に取り返しのつかない失敗は許されず、技術と安全の両面で慎重な検討が求められる。

 機構は、空気に触れた状態のデブリに水をかけながら取り出す気中工法、原子炉内を水で満たす冠水工法、セメントのような充填材でデブリを固めてから掘削する充填固化工法の三つを候補に挙げ、それぞれの長所と短所を洗い出し、比較評価した。
 気中工法は、冠水より早く取り出し作業を開始できるものの、放射線量が極めて高く、遠隔操作技術の開発が課題となる。充填固化は放射線量を低減できる利点がある。気中と充填固化の両工法の長所を生かし、課題を補える組み合わせが最も現実的な方法と結論付けた
 デブリがある1、2、3号機で具体案が示されるのは初めてで、前例のない難工事に向けた第一歩としての意義はある。しかし、原子炉内はいまだ不明な点が多く、想定通りに進むかどうかは不透明だ。まずは2号機で今年10月までに計画されているデブリの試験的な採取を成功させ、性状などの詳細を把握する必要がある。
 報告書は、今後の内部調査などで新たな情報が得られた場合は方針変更をためらわず、見直すべきと提言している。東電は、今回の有力案をあくまで現時点での最良の策と受け止め、柔軟な姿勢で計画の実効性を検証すると同時に、精度を高めていかなくてはならない。最新技術を開発する努力も続けてほしい。

 作業中にデブリが臨界に達する可能性を排除できるような万全の対策も欠かせない。万一、核分裂が起きた際の監視や措置の在り方もしっかりと検討すべきだろう。大地震を想定した機材の安全管理、建物の老朽化対策なども重要な論点になる。

 課題を一つ一つ解決していく過程を公表するなど透明性の確保も大切だ。廃炉作業を見守る住民の安心と信頼につながる。(角田守良)