2024年3月2日土曜日

災害時「屋内退避」を除外せずに「運用」でカバーは規制委の「責任放棄」

  能登半島地震の被害実態を受けて女川原発(宮城県)周辺の自治体首長が「屋内退避は誰が、何を基準にするのか」と問題提起しましたが、規制委の山中委員長「屋内退避」は否定せずに「屋内退避の運用見直す」としました。これでは首長や住民が納得して実効性のある避難計画を策定できるのか大いに疑問です。

 仮に来年の3月に表面上体裁の整った指針が出されとしても、それによって能登半島で実証された「避難の困難さ」が軽減される訳ではありません。
 規制委は「規制基準」を策定した時点から一貫して「避難」に責任を持つことを避けてきました。「避難」は原発の「深層防護・第5層」で 被爆防止の仕上げの部分をなすものです。それなのに「規制基準」ではそっくり抜け落ちているのは、規制委がそれに関与したくなかったからとしか考えられません。
 『週刊金曜日』は、「規制委『最大の防護は原発を止めることしかない』ことが明らかになることを恐れているのだろうか」と述べていますが、まことに的を射ています。
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災害時「屋内退避の運用」だけにとどめる原子力規制委員会に「責任放棄」の声
                            週刊金曜日 2024/3/1
 能登半島地震の被害実態を受けて東北電力女川原発(宮城県)周辺の自治体首長が「屋内退避は誰が、何を基準にするのか」と問題提起。これに対し原子力規制委員会の山中伸介委員長が「この点について今後、原子力災害対策指針を改善していかなければならない」と約束していた。

 いくつかのメディアは「原子力災害対策指針の見直しへ」と題する記事を書いたが、山中委員長はその後「指針の見直しはせず」「屋内退避の運用見直し」に変わった。これで原発周辺の住民らの安心は得られるのか。
 2月14日の原子力規制委員会では、山中委員長の方針通りに、原子力災害対策指針(原災指針)そのものの見直しについての議論はされなかった。「屋内退避の運用」だけが議題になったのである。国際環境NGOの「FoE Japan」などは原子力規制委員会側に要請書を提出し「震災で生じたこと/指針・避難計画の内容との乖離」(上の表を参照)の問題を具体的に示したが、触れられることはなかった。

 

00 現在の原子力災害対策指針

 00およびそれに基づく避難計画

00 震災で生じたこと

 00指針・避難計画の内容との乖離

 

 

5km圏内(PAZ)では、原子力施設の状態に基き、「全面緊急事態」となったら避難開始。                    事前に配布されている安定ヨウ素剤を服用。 

・家屋倒壊・津波で一刻も早い避難が求められた。              ・ヨウ素剤を探し出し、服用するような余裕はない。            ・通信が断絶された地域も多く、避難指示が伝わらない。

 

 

30km 圏内(UPZ)では一定の線量になるまで屋内退避。                   (屋内退避によって被ばくを防げるという前提になっている)

・家屋倒壊・津波で一刻も早い避難が求められた。              ・屋内退避で指示を待つような状況ではない。                ・場所によっては、農業ハウスや、車中泊、倉庫などでの避難も余儀なくされ、被ばく防護など出来ない環境下に置かれる。

 

 原子力規制庁が同日の委員会に示した「原子力災害時の屋内退避に関する論点」では「原災指針では、放射性物質の放出後に空間放射線量率を踏まえた避難や一時移転の実施が定められているものの、屋内退避の解除や避難への切り替えの判断の考え方は示されていない」という問題を指摘。そのうえで「屋内退避という(放射線被ばくの)防護措置を最も効果的に運用するため」に①屋内退避の対象範囲と実施期間、②想定すべき事態の進展の形、③屋内退避の解除または避難・一時移転への切り替えを判断するにあたって考慮する事項 ―の3点を挙げた。山中委員長らはこの論点整理に同意し、具体化するために東京電力福島第一原発事故を経験した人物らによる検討チームの発足を決めた。

「FoE Japan」の満田夏花事務局長は、こうした原子力規制委員会の対応について次のように話す。
「複合災害では避難も屋内退避もできないことが大いにありうる。その場合、住民は高線量の被ばくにさらされることになるが、規制委はそれを許容するのか。今回の能登半島地震では多くの家屋が倒壊した。避難所に行けず、農業用ハウスや倉庫、車中泊でしのいだ人もいる。道路は寸断され、地盤は隆起し、港も使えず、避難も困難。通信も遮断されていたので、自治体から住民への避難指示も伝わらなかっただろう。自治体職員も地震対応で手いっぱいの状態。破綻は明らかなのにもかかわらず、原災指針の見直しをしないというのは規制委の責任放棄だ『最大の防護は原発を止めることしかない』ことが明らかになることを恐れているのだろうか