21日来県した資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は花角新潟県知事に対して、「東日本全体の電力需給構造の強靭化に向けて、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が非常に重要」として再稼働を要請する経産相の書簡を渡しました。かねて国が東電になり代わって再稼働に向けて前面に立つとしていたことの具体化です。
花角知事は、「能登半島地震をきっかけとして県民に非常に不安感が広がっています。避難と安全に関わる課題への取り組みを材料にして、再稼働に関わる議論を深めていきたい」と応じました。規制委は今後1年掛けて大元になる避難の指針を見直すとしているので、避難計画が具体化されるのはそれ以後になります。
今回花角知事自身が避難が安全に出来るかどうかがポイントだと認めたことは大きな前進です。
問題は具体的な計画が出来ればそれでいいということではなく、原発の「テロ対策施設」がそうであったように、避難に関わる道路の強靭化や大雪対策、津波対策施設、緊急避難用の放射線防護施設などが「具体的に完成していること」などが再稼働の「必要条件」になります(たとえば避難の手段として1千台のバスを当てにしているのであれば、バス会社からそれの保証を得ておくことなど)。
「テロ対策施設」は原発の擁護上必須であるものの、住民の安全な避難はそうではないという理屈は通りません。
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背景に福島第一“事故処理費用”柏崎刈羽原発“再稼働”に同意を要請
テレビ朝日系(ANN) 2024/3/21
東日本大震災以降、運転を停止している新潟県の東京電力・柏崎刈羽原発。政府は、地元の自治体に対し、再稼働への“同意”を要請しました。
資源エネルギー庁・村瀬佳史長官:「東日本全体の電力需給構造の強靭化に向けて、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が非常に重要です」
新潟県・花角英世知事:「能登半島地震を一つのきっかけとして、県民に非常に不安感が広がっています。避難と安全に関わる課題への取り組み、こうしたものを材料にして、再稼働に関わる議論を、今後、深めていきたい」
3年前、IDカードの不正使用など、テロ対策上の問題が相次いで発覚。原子力規制委員会から、事実上の運転禁止命令が出されていました。
去年12月、4000時間を超える追加の検査を経て、命令は解除。再稼働に向け、地元の3つの自治体の同意が焦点となっています。原発が立地する柏崎市長は「条件付き容認」、刈羽村の村長は「容認」。そして、県は、知事が「県民の信を問う」として、是非を明らかにしていません。
21日も、こう述べました。
新潟県・花角英世知事:「県民がどういうふうに、この問題を受け止めていくか。それを丁寧に見極めたい」
岸田政権は、脱炭素やエネルギーの安定供給の一環として、“原発回帰”に大きくかじを切りました。再稼働により、電力の供給量が増えることが重要との認識です。
さらにのしかかるのは、東電の経営状態です。膨らみ続ける福島第一原発の事故処理費用。東電は、その一部を負担しますが、再稼働で得られる収益改善効果に期待を寄せているのです。その額は、1基あたり年1100億円に上ります。
ただ、県議会の自民党“重鎮”からは、このような声が上がります。
自民党・柄沢正三新潟県議:「国のほうは、再稼働に前のめりになり過ぎているのではないか。能登半島の地震によって、大きな災害を受けた。すぐ再稼働ありきというのは非常に理解できない」
柏崎刈羽原発再稼働の理解求め、エネ庁長官が知事に経産相書簡手渡す
Bloomberg(ブルームバーグ) 2024/3/21
村瀬佳史エネルギー庁長官らは21日、東京電力ホールディングス(HD)の柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の再稼働への理解を得るため、同県の花角英世知事と会見し、経済産業相の書簡を手渡した。
書簡は、国のエネルギー基本計画における安全性確保を前提として、原子力規制委員会による規制基準に適合すると認められた場合には、原発再稼働への理解を得たいとしている。再稼働には原発が立地する新潟県、柏崎市、刈羽村の同意が必要になる。
東京電力HDによると、柏崎刈羽原発が再稼働されれば、大幅な燃料コストの削減につながるといい、収支改善につながるとしている。
柏崎刈羽は2021年にテロ対策などで重大な不備が見つかり、原子力規制委員会は事実上の運転禁止命令を出したが、改善が確認できたとして昨年12月に解除した。
合計8.2ギガワットの原子炉7基を持つ柏崎刈羽原発は、東京の北約250キロに位置する。規制当局は17年、6号機と7号機は福島原発事故後の安全基準を満たしていると発表していた。