2023年4月29日土曜日

原発政策大転換 拙速な審議で5本の「束ね法案」が衆院で可決

 「GX脱炭素電源法案」が27日、衆院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決されました。法案は5本の法律をまとめて改正するもの原子力政策の大転換となるものですが、審議は不十分なまま衆院を通過しました。
 新制度では再稼審査や行政指導などによる停止期間相当分を60年を超えて運転ができることになります。また延長運転の可否や期間は経産省が審査し認可するようになりますが、審査基準等については「今後の検討」とされました。
 束ね法案になったことについて、礒野弥生・東京経済大名誉教授は「国民にとって法改正の中身を分かりにくくすることが、政府の意図の本質だ」と批判しました。
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原発政策の大転換なのに…拙速な審議、再生エネなど5本の「束ね法案」が衆院で可決
                          東京新聞 2023年4月28日
 原発の60年超運転を可能にする束ね法案「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が27日、衆院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決された。法案は原子力規制や再生可能エネルギーに関係する5本の法律をまとめて改正するもの。原子力政策の大転換となるのにもかかわらず、審議は不十分なまま1カ月足らずで衆院を通過した。参院で議論が深まるかも見通せない。(小野沢健太)

◆原発「60年超運転」にも答弁あいまい
 焦点となった原発の60年超運転。束ね法案のうち経済産業省が所管する電気事業法で、新たに運転期間の規定を定めた「原則40年、最長60年」とする枠組みは維持した上で、再稼審査や行政指導などによる停止期間を運転年数から除外、その期間分について60年を超えて運転ができることになる。どういうケースが除外に該当するのか。衆院経済産業委員会で質問が相次いだが、政府側はあいまいな答弁に終始した。
 審査が長期化している原発のほとんどは、電力会社側の説明不足や資料不備が指摘されている。電力会社の能力不足で停止期間が長くなっても、将来的な運転期間が延びるのか。この疑問に、政府側は「具体的な運用は、法改正後に決める」「電力会社からの申請内容を踏まえ、個別に判断する」などと述べるにとどめた。

◆委員会の議論は25時間 課題の掘り下げは…
 新制度では、延長運転の可否や期間は経産省が審査し認可するようになる。どのような基準で審査し、その過程は公開されるのかについても「今後の検討」とされた。
 束ね法案になったことで再エネや廃炉、放射性廃棄物の最終処分など広い分野で多岐にわたる質問が出たが、経産委での議論は計7日間の25時間余り。一つ一つの課題を掘り下げることはなかった。

◆「法改正の中身を分かりにくくすることが本質」
 原発の60年超運転のほか、原発活用による電力安定供給を「国の責務」と原子力基本法に明記するなど、東京電力福島第一原発事故後に抑制的だった原子力政策は、一気に推進へとかじを切る。昨年7月に岸田文雄首相が原子力政策で「政治決断」が必要な項目の検討を指示してからわずか9カ月で、参院での議論を残すだけになった。
 17日には、環境や法律の専門家ら20人が記者会見した。礒野弥生・東京経済大名誉教授は5本の法案を束ねた手法に対し「国民にとって法改正の中身を分かりにくくすることが、政府の意図の本質だ」と批判。「福島事故後、国民は原発推進に重きを置くことを納得していない。それなのに対話や議論することもなく、国民を無視して政策転換をする政府の姿勢は許されない」と憤った。

60年超運転の原発 10年ごとに詳細点検方針 規制委検討チーム

 原発の60年超運転に向け規制委が新たに作った規制制度の検討チームの会合が26日開かれ、40年超運転延長認可に電力事業者義務づけている劣化の詳細な点検と同様の枠組みの点検を60年目以降は原則10年ごとに行う案が示されました。

 60年超に向けて新たな種類の点検が行われるのかは不明です。
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60年超運転の原発、10年ごとに詳細点検方針 規制委検討チーム
                            毎日新聞 2023/4/26
 原発の60年超運転に向けた政府の法改正案に関連し、原子力規制委員会が新たに作る規制制度の検討チームの会合が26日開かれ、現在は運転開始40年目に60年までの運転延長認可のために電力事業者へ実施を義務づけている劣化の詳細な点検と同様の枠組みで、60年目以降は原則10年ごとに点検を求める案が示された。加えて、最新の知見も踏まえ、個別の原発ごとの特徴に応じた点検を実施させるという。点検案は規制委での議論を経て決定する。
      【写真特集】福島第1原発はいったいどうなっているのか
 運転期間を原則40年、最長60年とする現行制度では、事業者は40年を超えて運転を希望する場合、原子炉などの劣化を詳しく調べる「特別点検」を実施し、結果を申請して規制委の審査に適合すれば60年までの運転が認められる

 この日、チームの事務局の原子力規制庁から示された案では、40年目の特別点検は変わらず実施し、60年目以降は10年ごとに特別点検と同様の枠組みで点検を求める。ただ、点検しても40年目と同じ結果が得られることを事業者が証明できれば、点検項目を減らせるとした。【土谷純一】

柏崎原発 市民団体が避難の実効性の検討で新たな委員会設置求める

 市民団体28日、福島第原発事故に関する新潟県の3つの検証で、「避難計画の実効性の検討が不十分」だとして、新たな委員会の設置を求める署名県に提出ました。

 市民団体は、県の3つの検証では避難計画の実効性に関する議論が不十分だったと指摘しました避難検証委員会は報告書の中で456項目の検討課題を挙げていますが、県は対応を検討しているのでしょうか。
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原発事故「避難の実性議論を」 新たな委員会の設置求め市民団体が署名提出【新潟】
                       NST新潟総合テレビ 2023/4/28
福島第一原発事故に関する新潟県の3つの検証で、「避難計画の実効性の検討が不十分」だとして、新たな委員会の設置を求める署名が県に提出されました
4月28日、市民団体が県の原子力安全対策課に提出したのは、「原発避難の課題」検討委員会の設置を求める署名、約1500筆です。
市民団体は、福島第一原発事故に関する県の3つの検証では、避難計画の実行性に関する議論が不十分だったと指摘。
署名では、避難時における被爆のシミュレーションを行うことや、県民も加えた、新たな検討委員会を設置し、避難計画を議論するよう求めています。
県民署名実行委員会 小木曽茂子 代表「県民全体で議論できるような場所をつくって、それから(再稼働を)判断していただきたい」

県は今後、要望内容について花角知事に報告する方針です。

29- 原子力規制委の6課題 柏崎刈羽原発所長「対策を実施・検討中」【新潟】

 稲垣武之柏崎刈羽原発所長は27日の会見で規制委これまでに侵入者を検知する設備が想定通りに機能していないことなど6項目で課題を挙げていることに対して「すべての課題に対して対策を実施、あるいは検討している」と説明しました。
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原子力規制委の6課題 柏崎刈羽原発所長「対策を実施・検討中」【新潟】
                       NST新潟総合テレビ 2023/4/27
事実上の運転禁止命令が出され、原子力規制委員会の追加検査を受けている柏崎刈羽原発。
規制委はこれまでに、侵入者を検知する設備が想定通りに機能していないことなど、27の検査項目のうち6つの項目で課題を挙げています。
稲垣武之所長は27日の会見で「すべての課題に対して対策を実施、あるいは検討している」と説明しました。
柏崎刈羽原発 稲垣武之所長

「対策は一定程度いま入っていると思います。ただ、一方でその対策を打ったから終わりではなくて有効性というのをきちんと図って参りたい」 

2023年4月27日木曜日

27- 新潟県の原発検証総括委 知事が委員を全員を再任せず自然消滅

 新潟県が原発の安全性を検証する「三つの検証」を取りまとめる検証総括委員会は、県が委員再任せず、自然消滅になりました。これについて池内了前委員長(名古屋大学名誉教授)ら4人の全委員が19日、花角英世知事に対し、不再任の経緯などの説明を求める要望書と公開質問状を提出しました。

 同日、池内、佐々木寛両前委員と米田隆一元知事(オンライン)は県庁で記者会見し池内氏は、柏崎刈羽原発の安全性や東京電力の適格性の検証が十分にされているか、検証総括委で検証することは当然必要だと述べました。また「三つの検証」を発足させた米山元知事は、有識者が求めるなら東京電力の適格性の検証もやるべきだと認識していたと話しました。
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新潟県の原発検証総括委 不再任知事は説 池内了氏ら要望書提出
                       しんぶん赤旗 2023年4月20日
 新潟県が独自に原発の安全性を検証する「三つの検証」を取りまとめる検証総括委員会の委員が再任されず、検証が中断している問題で、池内了前委員長(名古屋大学名誉教授)ら4人の全委員が19日、花角英世知事に対し、不再任の経緯などの説明を求める要望書と公開質問状を提出しました
 事故原因、健康被害と避難生活への影響、遊離方法のI「三つの検鉦」の報告書は今年3月までにすぺて花角知事に提出れましたが、検証全をまとめる検証総括委は、県側が議題や運営方法で池内委員長と意見の相違があるとして2年以上開催しないまま3月末の任期で全7委員を再任せず、中断しています。
 19日、提出を前に県庁で記者会見した池内、佐々木寛両前委員と米田隆一元知事(オンライン)は、検証総括委の自然消滅は「三つの検証」を完成させず県民に無責任だと指摘し、不再任の経緯と今後の検証体制について委員に直接説明する機会を設けるよう求める要望内容を説明しまし
 池内氏は、知事には検証総括委で運営方法も議したいと提案したが受け入れられなかったと説明。県技術委員会の報告書で柏崎刈羽原発の安全性や東京電力の適格性の検証が十分にされているか、検証総括委で検証することは当然必要だと述べました。
 「三つの検証」を発足させた米山元知事は、県民が柏崎刈羽原発の再稼働の判断に資するために設けたもので、有識者が求めるなら東京電力の適格性の検証もやるべきだと認識していたと話しました。

2023年4月26日水曜日

汚染水放出待った 福島「復興遅らせる」と行動

 トリチウム含有汚染水を国と東電が「春から夏にかけて」海洋放出しようとするなか、福島市で22日、見直しを求める県民集会とパレードが行われ220人が参加ました。
 集会では国と東電の海洋放出ありきの姿勢について、「汚染水発生の根本原因に目を閉じ、さらにな漁業従事者を苦しめ、漁業の抜本的復興をいっそう遅らせる」と見直しを強く求める宣言拍手で採択されました。
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汚染水放出 待った 福島「復興遅らせる」と行動
                       しんぶん赤旗 2023年4月23日
 東京電力福島第1原発事故による放射性汚染水(ALPS処理水)を国と東京電力が「春から夏にかけて」海洋放出しようとするなか、福島市で22日、見直しを求める県民集会とパレードが行われました
 集会実行委員会の主催で、ふくしま復興共同センター、ふくしま県市民連合、福島医療生協、県フォーラム、青年組織DAPPE(平和と平等を守る民主主義アクション)が賛同。著名人も名を連ねました
 集会には約220人が参加。と東電の海洋放出ありきの姿勢について、「汚染水発生の根本原因に目を閉じ、さらにな漁業従事者を苦しめ、漁業の抜本的復興をいっそう遅らせる」と見直しを強く求める宣言を読み上げて、拍手で採択しました。
 強風のなか、「海は生命の源! 人間が勝手に汚していいのか! 原発汚染水を海洋放出するな」と書かれた横断幕などを掲げて、市内をパレードしました。
 グループで参加していた鈴木笑(えみ)さん(41)は「処理水の海洋放出で海の環境が将来どうなるか、考えないといけない。今は問題がないとしても、私たちが食べる魚、、さらに生態系に影響を及ぼす可能性もある。中止してほしい」と話しました。


(写真)「汚染水を海に流さないで」とプラスターを掲げてパレードする参加者=22日、福島市

福島第一原発 原子炉土台の損傷 「もっと早く対応するべきだった」と規制委

 福島第一原発1号機の原子炉圧力容器を支える鉄筋コンクリートの土台が損傷していた問題を巡り、原子力規制委員会の山中伸介委員長は25日の記者会見で、圧力容器の倒壊など緊急時の対処に「昨年にコンクリートの損傷が分かった時点で、東電は対応するべきだった」と、東電の検討が遅いことに不満を述べました。
 フクシマ事故への東電の対応の遅さは驚くべきレベル(民間会社であればとっくに倒産)で、今回の耐震強度の検討についても数か月が掛かるとしています。
 そもそも鉄筋コンクリートの強度は、鉄筋がコンクリートと完全に「付着」していることが条件なので、鉄筋が完全に露出されていれば単なるモルタルに過ぎません。そんなものの強度の算出に時間を掛けるのではなく、強度がほぼゼロであるとして、倒壊をどうして防ぐべきかを早急に検討すべきです。
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福島第一原発の土台損傷 原子力規制委員長「もっと早く対応するべきだった」東電に不満
                         東京新聞 2023年4月25日
 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)1号機の原子炉圧力容器を支える鉄筋コンクリートの土台が損傷していた問題を巡り、原子力規制委員会の山中伸介委員長は25日の記者会見で、圧力容器の倒壊など緊急時の対処に「昨年にコンクリートの損傷が分かった時点で、東電は対応するべきだった」と、東電の検討が遅いことに不満を述べた。
 核燃料があった圧力容器真下の円筒形の土台(厚さ1.2メートル)は、昨年2月のロボットによる調査で、土台の開口部の壁が損傷し、鉄筋がむき出しになっていることが判明。今年3月には土台内部にロボットが入り、内側の壁が全周にわたって鉄筋が露出していることも分かった。
 東電は今後、数カ月をかけて耐震性を評価する方針。だが、山中委員長は会見前の定例会合で、規制委事務局に「どういう対処ができるのか、早急に議論してほしい」と指示。会見でも「耐震評価には時間がかかり、待っていられない」と述べた。 (小野沢健太)


原子炉の土台損傷で対策要求 福島1号機で規制委員長
                             共同通信 2023/4/25
 原子力規制委員会の山中伸介委員長は25日の定例会合で、東京電力福島第1原発1号機で原子炉圧力容器を支える土台に大規模な損傷が見つかったことに関し「問題があるとは思わないが、本当に安全なのかどうかをスピード感を持って確かめてほしい」と述べた。東電と原子力規制庁に、さらなる安全対策の検討を促した。
 東電は土台の耐震性を再評価する方針だが、山中氏は時間がかかる評価結果を待たずに議論を始めるべきだと指摘。起こり得るリスクと対応策を先に考えておく必要があるとの認識を示した。
 定例会合では杉山智之委員も「(東電と規制庁は)のんびりしている。世間の受け止め方を無視しているのではないか」と述べた。


(参考記事)
原子炉容器土台の全周で内壁が損傷、鉄筋むき出し 東電がパノラマ画像を公開 福島第一原発1号機
                          東京新聞 2023年4月14日
 東京電力は14日、福島第一原発(大熊町、双葉町)1号機の原子炉圧力容器を支える土台内部のパノラマ画像を公開した。鉄筋コンクリートの円筒形の土台(厚さ1.2メートル)は、全周にわたって損傷し、内部の鉄筋が露出していた。東電は耐震性を評価する。
 事故収束作業について議論する原子力規制委員会の会合で東電が報告。3月28〜31日に実施した調査で、水中ロボットが撮影した映像をつなぎ合わせた。
 土台内部の半周弱は、ロボットのケーブルが引っかかるなどして接近できなかったが、遠距離から撮影した映像を解析。調査済みの場所と同様に、床から高さ約1メートルほどまでコンクリートがなくなり、鉄筋がむき出しになっていた。事故時に溶け落ちた核燃料(デブリ)の熱で、コンクリートが溶けた可能性が高い。
 どれほどの厚さまで損傷しているかは現時点では不明だが、一部では壁の中心にある部材が見えていた。
 土台内部は直径約5メートル。画像には、棒状の構造物やがれきのようなものが散乱している様子が写っていた。これらの堆積物は、高さ40〜50センチほど積もっているという。

 東電は、土台の円周の6分の1が内部の鉄筋も含めてすべてなくなり、残りは壁が半分までなくなったとの想定で、耐震性を評価する。(小野沢健太)

福島原発の汚染排気筒撤去工事でまた失敗 切断装置大型化で配管に近付けず

 東電は19日、福島第一原発1、2号機共用排気筒直径約30cm)の撤去作業を10カ月ぶりに再開しましたが、改良して大型化した切断装置が排気筒に近付けず、作業を断念しました。
 東電は昨夏以降工法を見直し、新たな切断器具などを搭載した装置で、現場とは別の所に作られた模擬排気筒で切断の練習をしたということですが、模擬の排気筒周りが忠実に現場を再現していなかったためこの不具合に気が付きませんでした。
 東電の廃炉作業に伴うトラブルの多くはこうした初歩的なミスに拠っています。作業の対象にアクセスできるか否かは最も基本的な事項です。この10か月間、莫大な費用と時間を掛けて一体何をしていたのでしょうか。
 これでは東電への信頼など生れようがなく増々失墜するばかりです。
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10カ月ぶり再開もまた失敗 福島第一原発の汚染配管撤去 切断装置大型化したら配管に近付けず…ずさんさ露呈
                          東京新聞 2023年4月19日



クレーンで吊された切断装置。1号機(左)と2号機(右)の間にある汚染配管の切断に失敗した(東京電力のライブカメラより)




 東京電力は19日、福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の1、2号機間にある高濃度に汚染された配管(⇒排気筒)の撤去作業を10カ月ぶりに再開した。ところが、改良して大型化した切断装置が配管に近付けず、作業を断念。事前の現場把握が不十分だったとみられる。失敗続きでほとんど進まない撤去作業は、再開後もずさんな運用が改善されない。


 福島第一原発1、2号機間の汚染配管
 2011年3月の事故直後、原子炉格納容器の破裂を防ぐため、炉内の汚染蒸気を放出するベント(排気)に使われて高濃度に汚染した。直径約30センチ、長さは1号機側が約65メートル、2号機側が約70メートル。1号機使用済み核燃料プールからの燃料取り出しに向け、水素爆発で上部が吹き飛んだ建屋にかぶせる大型カバーの工事の障害になり、撤去の必要がある。

◆作業前には発電所構外で配管などの配置を模して訓練したが
 東電によると、作業は19日午前1時ごろに開始。昨年6月の作業で、両端を切る必要がある配管の片側を9割ほど切った状態で中断した部分を含め、約8メートル分を切断する予定だった。
 てんびん状の切断装置(長さ約18メートル、重さ約40トン)を大型クレーンでつり上げ、遠隔操作で切断地点に下ろそうとしたが、近くにある別の配管の部材が邪魔で近付けなかった。作業を断念し、午前6時ごろに切断装置を回収した。
 東電は昨夏以降、工法を見直し、装置に新たな切断器具などを搭載。従来の長さ約12メートル、重さ約12トンから大型化した。作業前には、発電所構外で配管などの配置を模して訓練したが、広報担当者は取材に「現場の再現が十分にできていなかった可能性がある」と説明した。装置に追加した部品を外すなどして、作業再開を目指すという。
 撤去作業は昨年3月に開始。計約135メートルを26分割にして撤去する計画だったが、これまでに撤去できたのは1本目の約12メートル分にとどまっている。
 東電は工程も変更し、別の工事の障害になる約100メートル分に絞って8分割にして撤去し、残りは後回しにする。当面の撤去を5月中をめどに終える計画だったが、作業初日に切断装置の改良が裏目に出る想定の甘さを露呈し、再び振り出しに戻った。(小野沢健太)

26- 高浜原発3、4号機の40年超運転を関西電力が申請 稼働中の審査は福井県内初

 関西電力は25日、運転開始から37、38年が経過する高浜原発3、4号機(加圧水型軽水炉、出力87万kw)について、40年超運転に向けた運転期間の延長認可と蒸気発生器の取り換えに伴う原子炉設置変更許可を原子力規制委員会に申請しました。

 関電が運転期間の延長認可を申請するのは、高浜1、2号機、美浜3号機に続き4、5基目です
 高浜原発3,4号機については、昨年9~11月に原子炉容器などの劣化を詳細に調べる「特別点検」を実施し、いずれも問題や異常がないことを確認したということですが、具体的に何をどうして確認したのでしょうか。
 また最新の設備であるテロ対策施設トラブルが相次いでいるということですが、こんなことで大丈夫なのでしょうか。
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高浜原発3、4号機の40年超運転を関西電力が申請 原子力規制委員会に、稼働中の審査は福井県内初
                            福井新聞 2023/4/26
 高浜3号機は1985年1月、4号機は同6月に運転を開始し、2025年に40年を迎える。現行ルールでは原発の運転期間は原則40年と定められ、規制委が認めれば最長20年延長できる

 関電は21年から、2基の安全上重要な約8400機器を対象に、運転期間延長を想定した劣化状況評価などに着手し、昨年9~11月には原子炉容器などの劣化を詳細に調べる「特別点検」を実施。いずれも問題や異常がないことを確認した。同11月に40年超運転の方針を決め、福井県に報告していた。
 規制委は今後、特別点検や劣化状況評価などの結果を審査し、運転延長が妥当かどうかを判断する。高浜1、2号機は15年4月、美浜3号機は同11月に申請し、それぞれ16年6月と同11月に合格しており、審査に1年程度掛かっている
 2基のSGの交換は運転期間が40年を超えた後、3号機が26年6~10月、4号機が同10月~27年2月の定期検査時に予定し、最新設計のものに取り換える。昨年11月、県に事前了解願を提出し、今月24日に県から計画の了承を受けていた。

 原発の運転期間を巡っては、政府が「原則40年、最長60年」の骨格を残しつつ、審査などで停止した期間を除外して60年超運転を可能とする改正案を今国会に提出しているが、関電は現行制度のもとで運転延長の手続きを進めるとしている。


高浜原発3号機でトラブル頻発、規制委が関西電力に改善計画求め「追加検査」実施へ
                             読売新聞 2023/4/25
 原子力規制委員会は25日の定例会合で、関西電力高浜原子力発電所3号機(福井県、運転中)の重大事故に対処する設備でトラブルが相次いでいるとして、関電に対し、再発防止に向けた改善計画の提出を求める方針を確認した。規制委は今後、改善計画の実施状況を確認する約40時間の「追加検査」を実施する。
 高浜3号機では昨年7月~今年4月、テロ対策施設に必要な部品が取り付けられていなかったり、重大事故時に外部と連絡を取る衛星電話が使えなかったりするトラブルが4件発覚した。2020年に始まった新検査制度でトラブルの重要度を評価した場合、4段階中3番目の「安全への影響があり、規制関与の下で改善を図るべき水準」にあたるという。

2023年4月24日月曜日

「岸田GX」で流れる“脱炭素化マネー” 経産省はどこを見ているのか

 世界はいま気温上昇限度1.5度」を目標にしていますが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)3月20日に公表した第6次統合報告書では、地球の平均気温は産業革命前からすでに1.1度上昇しており、上昇幅を1.5度に抑えるには温室効果ガスの排出量を35年までに19年比で60%減らす必要があると強調しました

 日本政府は今年2月脱炭素社会への移行を進めるGX実現に向けた基本方針を閣議決定し、この方針を実現するための「GX推進法案」が衆院本会議で可決され 現在参院で審議中です。
 法案の柱は脱炭素化に向けた産業界への巨額支援と、国が二酸化炭素(CO2)の排出に課金して削減を促すカーボンプライシング(炭素課金)の導入で、今後10年間で官民合わせて150兆円以上の脱炭素投資を見込んでいます。

 政府は今年度から新たな国債「GX経済移行債」20兆円を発行し企業や研究機関を支援するとしていますが、温室効果ガスをどれだけ削減するのかといった基準は設けられていません。

 排出量取引は、今年度から自主参加の企業でスタートしますが、自主参加のうえ目標が達成できなくてもペナルティーはないので効果は疑わしく、その一方で「賦課金(炭素課金)」が開始されるのは28年度からとなっているのでとても間拍子に合いません。
 トランプ時代には脱炭素に後ろ向きだったので日本は安心していたのですが、バイデン政権になってから激変し、30年までに50~52%(05年比)削減することを決定し、同様に消極的だったオーストラリアも昨年、労働党のアルバニージー政権に代わるとがぜん力を入れ始めるなど、世界は急速に変わっています。
 現にEUは今年10月から環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける「炭素国境調整措置(国境炭素税)」を導入するということで、このままでは日本はいずれ競争の土俵にも上がれなくなる恐れがあります。脱炭素化の遅れは日本経済に『失われた半世紀』をもたらしかねません。
 「原発への回帰」など省益の追及には熱心な経産省は一体どこを見ているのでしょうか。いずれにしても岸田政権の責任は重大です。AERA dot.が報じました。
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「岸田GX」で流れる“脱炭素化マネー” 経産省や電力会社にメリット?
                           AERA dot. 2023/4/24
                              〈週刊朝日〉
 岸田文雄政権が進める「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」。気候変動対策は重要だが、その方向性が世界の潮流からまるで外れているとなると問題だ。日本は国際競争から取り残される瀬戸際に立たされている──。
      【写真】JERAが建設中の火力発電所はこちら
                 *  *  *
 地球温暖化を巡って世界が目指している「1.5度目標」が瀬戸際に追い込まれている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、3月20日に公表した第6次統合報告書で強い危機感を打ち出した。
 すでに地球の平均気温は産業革命前から1.1度上昇しており、各国が提出している温暖化対策が実現できたとしても目標達成は困難と指摘。上昇幅を1.5度に抑えるには温室効果ガスの排出量を2035年までに19年比で60%減らす必要があると迫った。

 だが、日本の姿勢は極めて悠長だ。政府は今年2月、脱炭素社会への移行を進めるGX実現に向けた基本方針を閣議決定。この方針を実現するための「GX推進法案」が衆院本会議で可決され、現在、参院で審議中だ。法案の柱は脱炭素化に向けた産業界への巨額支援と、国が二酸化炭素(CO2)の排出に課金して削減を促すカーボンプライシング(炭素課金)の導入だ
 政府は、今後10年間で官民合わせて150兆円以上の脱炭素投資を見込む。うち20兆円を国が支出する。今年度から新たな国債「GX経済移行債」を発行し、企業や研究機関を支援するというのだ。
 国際環境NGO「FoEジャパン」の満田夏花事務局長がこう語る。
「GX推進法案を提出したのが環境省ではなく、経済産業省であることが重要なポイントです。巨額のGXマネーの資金管理や投資先を経産省が握ることになります。国債も使って企業を支援するのに、温室効果ガスをどれだけ削減するのかといった基準は設けられていません。ですから、脱炭素が見込めない分野・事業であっても、経産省が認めれば投資の対象になり得るのです。実際に原子力、水素・アンモニア混焼の石炭火力発電などにお金が流れていく仕組みになっています」

 原発や石炭火力が投資先になっている問題点は後述するとして、まずは脱炭素化が遅れている原因について検証したい。カーボンプライシングで導入されるのは「賦課金」と「排出量取引制度」で、その徴収額を国債の償還財源に充てる仕組みだ。賦課金は、化石燃料を輸入する石油元売りや商社、電力・ガス会社などから、CO2の排出量に応じて徴収する。開始時期は28年度からだ。
 一方の排出量取引は、今年度から自主参加の企業でスタートし、参加企業はCO2排出削減目標を設定する。目標より多く削減できた企業は余った削減分(排出権)を市場で売り、目標を達成できなかった企業が排出権を購入することで目標を満たすというもの。自主参加のうえ目標が達成できなくてもペナルティーはなく、効果は疑わしい
 政府が電力会社のCO2排出に対して排出枠を販売し、電力会社が「特定事業者負担金」の形で支払う制度が始まるのは、10年先延ばしの33年度からだ。電力部門の有償化はEUと比べて30年近く遅れることになる。
 NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長がこう指摘する。
あまりにも遅すぎて、20年代の排出削減に全く寄与しません。一昨年、岸田(文雄)首相は30年までの期間を『勝負の10年』と位置付けましたが、これでは『勝負しない10年』です。さらに、賦課金も特定事業者負担金も格安になりそうです。IEA(国際エネルギー機関)は、炭素価格は1トン当たり30年時点で135ドル(約1万7550円)が必要になると試算しています。現在、他の先進国は1万円を超える価格に設定していますが、日本は10分の1の1千~2千円程度になると推定されます。これでは排出削減のインセンティブにつながりません」
 賦課金や特定事業者負担金の徴収を行うのは経産省の認可法人として新たに創設される「GX推進機構」で、経産省にとっては“焼け太り”な状況。だが、これまで脱炭素化に消極的だった経産省主導の制度設計では、日本が掲げる30年度に13年度比46%の削減、50年に実質排出ゼロという目標達成は全くおぼつかない。なぜ、日本はこうも後ろ向きなのか。

■推進官庁が認可 諸外国では異例
 京都大学大学院教授の諸富徹氏(環境経済学)はこう語る。
米国が一緒に後ろ向きだったので日本は安心していたのですが、バイデン政権になってからずいぶん変わりました。米国は30年までに50~52%(05年比)削減することを決定しています。オーストラリアも消極的でしたが、昨年、労働党のアルバニージー政権に代わると、がぜん力を入れ始めた。世界は急速に変わっているのに、日本だけが依然、低迷したままです」
 GX推進法案に続いて国会で審議が始まったのが、再エネの導入拡大とともに、原子力の活用を盛り込んだ「GX脱炭素電源法案」だ。原発の運転期間について「原則40年、最長60年」という上限規制を取り払い、実質的に60年超の運転を可能にする。原子力基本法、原子炉等規制法(炉規法)、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正法を束ねた法案で、運転期間の規定が原子力規制委員会所管の炉規法から、経産省の電気事業法に移される。松久保氏が厳しく批判する。
運転期間の延長の許認可権が推進官庁にあるのは、日本だけです。20カ国を調べたところ、規制機関が認可しているのが18カ国、政府・官庁が認可しているのはフィンランドとスペインですが、両国とも規制当局が安全性を認めた後に認可します。ちなみにスペインは35年までの脱原発が決定しています。日本は福島第一原発事故の教訓から規制委に移した権限を経産省に戻すのですから、あり得ない話です」
 原子力基本法の改正案では、新たに原発を脱炭素に資する電源として明記するというのだ。前出の満田氏が解説する。
「国の責務として原子力の活用、国民の理解促進、立地地域の振興、事業環境整備を進めていくというのです。事業環境整備なんて電力会社が企業努力でやるべきことだと思うのですが、これでは国が丸抱えで面倒を見ると宣言しているようなものです」
 今回の運転期間の延長は、規制委の審査や訴訟などで停止していた期間を除外し、その分を追加できるようにする。だが、停止期間中も設備の経年劣化が進むのは明らかだ。
 原発問題に取り組んできた福島瑞穂参院議員がこう話す。
「GXのGは原発で、まさに原発トランスフォーメーションになっています。私は老朽原発を動かすことが最も怖いと思います。なぜ停止期間が運転期間に上乗せできるのか。私たちが夜寝ている間も加齢するのと同じく、原発も運転していなくても劣化しますから、さっぱりわかりません。規制委は厳しく安全審査をすると言いますが、それが形骸化しているから事故がなくならないのです」
 04年、美浜原発3号機で冷却水が通る配管が破裂し、140度の熱水が蒸気となって一気にタービン建屋に噴き出した。やけどなどで作業員5人が死亡、6人が重軽傷を負った。事故から間もなく福島氏は視察に訪れた。

■脱炭素軽視では国際競争に敗北
「現場で見たのは、機器が散乱してめちゃくちゃになっている状況でした。原子炉だけではなく、膨大な数の周辺機器も老朽化すれば取り返しのつかない事故につながることを思い知らされました。原発は国債で、防衛力強化法案は増税で莫大なお金を注ぎ込もうとしています。いま、この国の政治は何を大事にしようとしているのか。少なくとも国民の命と暮らしを守ることに、その軸足はないように思います」
 原発回帰に加え、水素・アンモニア混焼で石炭火力の延命も図ろうとしている。この期に及んで神奈川県横須賀市で石炭火力発電所2基(計130万キロワット)が建設中だ。日本は30年まで石炭火力発電でアンモニアを20%混焼することを目標としている。
「確かに水素・アンモニアは燃焼時にCO2は出ませんが、製造時にCO2を排出するので、むしろ増えてしまうと言われています。加えて、コストも高すぎるという欠点があります。IEAが予測する50年の世界の電源構成を見ると、再エネは80%ですが、原発は8%、水素・アンモニアは1%です。日本はニッチ(⇒隙間 本質的でないところ)なところに投資しようとしているわけで、本当に的外れです」(松久保氏)
 日本のGXは気候変動対策だけではなく、産業政策としても失敗する可能性があると指摘するのは、前出の諸富氏だ。EUは今年10月から環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける「炭素国境調整措置(国境炭素税)」を導入する。
「国際社会は本格的に脱炭素経済に移行しているのではないかと、私は見ています。すでにEUの炭素国境調整措置のような動きが出ている。事業に使う電力をすべて再エネにすることを目指す国際企業連合『RE100』の基準を達成しないと取引してくれない時代へと入っていきます。脱炭素化をきちんとやっていない国の製品やサービスは、競争の土俵にも上がれなくなる恐れがある。脱炭素化の遅れは、日本経済に『失われた半世紀』をもたらしかねないのです」
 偽りの「岸田GX」が、日本を滅ぼすのだ。(本誌・亀井洋志)
                ※週刊朝日  2023年4月28日号