2019年10月31日木曜日

複合災害の危険性真剣に考えるべき 東海第二原発 再処理施設も

波の自然災害とともに、東海第二隣接の原子力関連施設同時に事故を起こす複合災害の危険性について説明しました。
 東海第二から27キロ南に高レベル放射性廃液をガラス固化する東海再処理施設るので、もしも地震や津波で両施設が事故を起こせば三重の複合事故になります。
 また東海再処理施設は原発よりも施設の強度が弱いということなので、対テロ対策がどうなっているのか、万一講じられていないということであれば大問題です。
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複合災害の危険性「真剣に考えるべき」 
東海第二差し止め訴訟 原告団代表、都内で講演
東京新聞 2019年10月30日
 東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発の運転差し止め訴訟原告団の大石光伸共同代表(62)つくば市が、都内で講演し、地震や津波の自然災害とともに、東海第二のほか、隣接の原子力関連施設も同時に事故を起こす複合災害の危険性について説明した。
 村には原子力関連施設が多数あり、東海第二から27キロ南にある日本原子力研究開発機構の東海再処理施設では、高レベル放射性廃液をガラス固化する作業をしている。
 
 大石さんは、東海再処理施設の建屋が原発と比べて弱いことや、津波で高レベル放射性廃液が外部に漏れ出した場合、東海第二の収束作業にも影響が生じる可能性があると訴えた。「このことについて、もっと真剣に考えなくてはならない。今後の裁判では、その点を問う」と強調した。講演は24日に、東京都千代田区の「スペースたんぽぽ」であった。
 
 東海第二の運転差し止め訴訟は、本県など10都県の266人が2012年7月、原電に運転差し止めを、国に設置許可の無効確認などを求めて、水戸地裁に提訴。口頭弁論が続いており、次回は11月7日にある。 (松村真一郎)

テロ対策工事遅れで高浜3号機、来年8月停止 4号は10月停止

 高浜3、4号機は、テロ対策で原発に義務付けられている「特定重大事故等対処施設」を期限内に設置できないため、高浜3号機は来年8月に停止、4号機は10月に停止となる見込みです。
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関電、原発稼働に誤算続く 高浜3号機、来年8月停止
共同通信 2019/10/30
 関西電力の原発稼働を巡り役員らの金品受領問題など誤算が続いている。テロ対策工事の遅れから高浜原発3、4号機(福井県高浜町)は来年8月と10月に停止する見通し。原則40年の運転期間を延長し再稼働を目指す高浜1、2号機では工事中に事故も発生。住民らの不信感が高まる中、地元同意が得られず再稼働が大きく遅れる可能性も出てきた。
 
 原子力規制委員会は今年4月、テロ対策で原発に義務付ける「特定重大事故等対処施設」を期限内に設置できない場合、原発の運転停止を命じると決定した。関電で稼働している高浜3、4号機や大飯原発3、4号機(福井県おおい町)も対象。

31- <依存の構造>(4)再稼働の是非

 20153マスコミ非公開で行われた高浜原発3、4号機の再稼働につい高浜町議会の全員協議会が取り上げられました
 全町議14人中、関電社員が1人、原発関連の企業と関係している4人おり、再稼働賛成が13人、反対は共産党議員の1人でした。関電社員の議員は今年定年を迎えましたが再雇用されました。
 一方30キロ圏にある京都府宮津市の市議会は1512月、高浜3、4号機の再稼働に反対する意見書を賛成多数で可決しました。
 龍谷大の大島堅一教授は「再稼働の受益者による『地元同意』では、再稼働に向けた『掛け声』ぐらいのものにすぎない。福島の事故を直視するなら、周辺自治体も加えた同意の仕組みをつくるべきだ」と、地元同意のあり方を見直すよう促しています
 
 今回で、<依存の構造>のシリーズは終了します。
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<依存の構造>(4)再稼働の是非
中日新聞 2019年10月30日
 「高浜町にとって再稼働してもらわないと町の活性にもなりません」「町民の皆さんに日ごろの活動の中で、お話を聞いても極端な反対者はございません」 
 二〇一五年三月二十日、マスコミ非公開で行われた高浜町議会の全員協議会。的場輝夫議長(当時)が、関西電力高浜原発3、4号機の再稼働について議会の同意を野瀬豊町長に伝えたいと提案すると、町議から賛同意見が相次いだ。
 
 全町議十四人のうち、反対意見を述べたのは一人。議員の中には、関電社員一人のほか、経営や雇用関係を通して原発関連の企業と関係している四人がいた。うち一人の会社では、東京電力福島第一原発事故後の三年間に、関電や関連会社などが発注する工事を少なくとも八十件、三億二千万円分を受注していたことが取材で分かった。 
 全員協議会で唯一反対の声を上げた渡辺孝議員(共産)は「原発で商売していて公平中立な判断はできるはずがない。できると言っても説得力がない」と語る。対して、小幡憲仁議員(無所属)は「会社を気にして判断したわけではない。原発は地元の経済や雇用を支える基幹産業。町議として原発が必要だと思ってのものだ」と説明する。小幡議員は今春、関電の定年を迎え再雇用されている
 
 関電役員らの金品受領問題を受け、今月三日に開かれた町議会臨時会で児玉千明議員(無所属)が提出した監査請求動議は、賛成四、反対九で否決。変わらぬ議会の構図を印象付けた。
 
 そもそも原発再稼働の地元同意に法的な規定はなく、「地元」の範囲は曖昧だ。新規制基準下で再稼働した鹿児島、福井、愛媛、佐賀の四県で、地元同意の範囲は県と立地自治体のみに限られた。一方、福島第一原発事故で被害が広範囲に及んだ教訓から、国は避難計画の策定の義務を負う自治体を半径十キロ圏から同三十キロ圏に拡大。高浜原発周辺地域の避難計画では、福井、京都、滋賀の三府県十二市町が含まれ、人口は三府県で計約十七万人。京都府側の人口は福井県側の二倍以上の約十二万人に上る。
 
 三十キロ圏にある京都府宮津市の市議会は一五年十二月、高浜3、4号機の再稼働に反対する意見書を賛成多数で可決した。賛成した無所属の市議は「事故が起きた時、宮津は被害を受ける『被害地元』だ。当然、同意が必要だと考えている」と現在の仕組みに疑問を投げ掛ける。 
 関電は来年以降、高浜1、2号機など運転開始から四十年超の原発の再稼働を目指している。龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は地元同意のあり方を見直すよう促す。「再稼働の受益者による『地元同意』では、再稼働に向けた『掛け声』ぐらいのものにすぎない。福島の事故を直視するなら、周辺自治体も加えた同意の仕組みをつくるべきだ」 
 終わり
 (この企画は、高野正憲、栗田啓右、今井智文、鈴木啓太が担当しました)

2019年10月30日水曜日

<依存の構造>(3)増える交付金(中日新聞)

 今回は、原発に関連する交付金の実態を高浜町の実例について報じました。高浜町では予算の53%、55億8千万円が原発に関連する固定資産税や交付金その他で賄われています。
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<依存の構造>(3) 増える交付金
中日新聞  2019年10月29日
 
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 十月の土曜日。高浜町の中央体育館で、小学生のミニバスケットボール大会が開かれていた。ヒノキ材をふんだんに使った内装。広いアリーナの二面コートを駆け回る子どもたちに、二階席の父母らが応援に声をからしていた。
 老朽化した旧体育館を建て替え、二〇一七年三月に完成した体育館の建設費は十七億六千四百万円。町が財源の一つにしたのは、電源三法交付金のうちの核燃料サイクル交付金だった。高浜原発でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を燃やすプルサーマル計画を受け入れたことで、国から支給された。
 
 建て替えを巡っては、町でひと騒動があった。町側が当初想定した建設費は十五億円程度。予算オーバーとなるため冷暖房設備は設置しない方針だったが、近隣市町では冷暖房を整備しているとして町議会が「待った」をかけ、町側も方針を転換した。足りない分は町債などでまかなった。
 町関係者は「町民の負担は増えることになったが、快適な環境で利用者に喜んでもらえる設備になった」と喜ぶが、町の負債増加になるとして方針転換に反対した元町議の釣本音次さん(69)は「原発のない普通の町ならできない増額。原発の潤沢な交付金があるからぜいたくに使ってしまう」と指摘する。
 原発を引き受けた自治体のために、電力会社が一千キロワット時を販売するごとに国が三百七十五円を徴収して、その財源からさまざま交付金を配る電源三法交付金の仕組み。高浜町も同交付金の歳入が町の財政を支えている。
 
 本年度の高浜町の予算百五億円のうち、原発に関連する歳入は53%にあたる五十五億八千万円。うち四割が原発施設の固定資産税などで、残る六割の三十一億九千万円が電源三法交付金の電源立地地域対策交付金や、県が関電から徴収する核燃料税使途は道路建設、施設の維持管理費、職員の人件費など幅広い
 東日本大震災後に再稼働に至らず廃炉原発もあった美浜町などの立地自治体では、交付金が減った。一方、高浜町は高浜3、4号機が一六年に再稼働し廃炉原発もないため、原発延命を目指す国や税収増を狙う県の政策でむしろ増額傾向となっている。
 
 国は運転開始から四十年超の原発一基あたりの交付金を一億円追加する制度を採用し、高浜1、2号機がある高浜町も一四年度以降に対象となった。県が原子炉内の燃料に課税していた核燃料税の配分は一一年度の原発停止で一億二千万円まで落ち込んだが、県が停止中の原子炉にも課税する制度を導入したことで「V字回復」している。
 
 〇四年に比べ、一八年の電源立地地域対策交付金は一・五倍、核燃料税は三・四倍に膨れ上がった。交付金増額を背景にした豊富な町事業の恩恵を受けている地元業者は少なくない。中央体育館の擁壁の改修や駐車場の整備など約三億四千万円の工事は、電源立地地域対策交付金で実施。これらの工事は元助役の森山栄治氏(故人)に資金を出した同町の建設会社「吉田開発」が受注した。
 町の元職員は現状を「甘くなった制度で得られたあぶく銭みたいなものだ」と指摘し、町の財政の将来を危ぶむ。「町は原発に伴う交付金にどっぷり漬かっているが、使用済み燃料の置き場所がなくなれば、原発を動かせなくなる。そうなる前に、真剣に考えなければならない」

関電金品問題の調査は越年へ 第三者委

 関電役員らの金品受領問題に関する第三者委員会による調査結果の最終的な取りまとめは来年1月以降となる見通しです。関電は当初年内の報告書作成を求めていましたが、調査対象者を拡大して調査するため無理ということです
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関電調査 越年へ 金品問題 対象拡大で第三者委
東京新聞 2019年10月29日
 関西電力役員らの金品受領問題で、真相究明を進めている第三者委員会(委員長・但木(ただき)敬一元検事総長)による調査結果の最終的な取りまとめは来年一月以降となる見通しであることが、関電関係者への取材で分かった。
 関電は年内の報告書作成を求めていたが、調査対象者が多く、困難な状況という。
 関電は昨年九月、原子力部門を中心に役員ら二十人が、福井県高浜町の元助役森山栄治氏(故人)から、計約三億二千万円相当の金品を受領したとする社内調査報告をまとめた。
 しかし、他の部門の担当者や、調査対象よりも古い時代に在籍した元幹部らの受領も判明。今月設置された第三者委が対象者を拡大し、調査をやり直している。
 森山氏に約三億円を提供していた高浜町の建設会社「吉田開発」だけでなく、森山氏と深い関係にあった他の複数業者と関電の取引状況についても調べる方針。
 但木氏は九日の記者会見で「(委員らの間で)意見が一致するまでとことん議論する。期限について約束するわけにはいかない」と述べていた。

30- 放射線監視装置が復旧 女川原発

放射線監視装置が復旧 女川原発
河北新報  2019年10月29日
 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の放射線監視装置(モニタリングポスト)の計測値が26日から伝送できなくなっていた問題で、東北電は28日、全6台の伝送機能が復旧したと発表した。
 東北電によると、6台のうち1台で28日、計測値を送るためのケーブルの芯の一部に断線が見つかった。予備の芯につなぎ替えたところ、中央制御室や原子力規制庁などへの伝送が復旧したという。東北電が引き続き原因を調べている。

2019年10月29日火曜日

火山と原発を考える 鹿児島 原住連が全国交流集会

 原発問題住民運動全国連絡センターは27日、鹿児島市で「火山と原発を考える」全国交流集会を開き全国から約70人が参加しました。
 集会で立石雅昭新潟大学名誉教授は講演。原子力規制委は、火山活動の兆候があった場合、原子炉の停止を含めた対処を電力会社に求める」としているにもかかわらず、火山影響評価ガイドの改定案に、火山の噴火予測を前提としていないと明記したのは、「巨大噴火の判断基準を定める困難なことから逃げたとしか言えない」と指摘しました
 まさに理屈に合わないことで、火山条項は一層「有名無実」化に向かいます。
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火山と原発を考える 鹿児島 原住連が全国交流集会
 しんぶん赤旗 2019年10月28日
 原発問題住民運動全国連絡センターは27日、「火山と原発を考える」全国交流集会を鹿児島市内で開きました。鹿児島県内では初の全国交流集会。全国から約70人が参加しました。
 
 記念講演では、小林哲夫鹿児島大学名誉教授が、鹿児島県の姶良(あいら)カルデラなどの巨大カルデラ火山とその研究について話しました。マグマの成分など、カルデラ噴火の前兆についての自身の研究を紹介しました。
 立石雅昭新潟大学名誉教授は、火山と原発と題して講演。原子力規制委員会は、火山活動の兆候があった場合、原子炉の停止を含めた対処を電力会社に求めているにもかかわらず、火山の噴火予測を前提としていないと明記した火山影響評価ガイドの改定案を16日に示しました。これに対して立石氏は「巨大噴火の判断基準を定める困難なことから逃げたとしか言えない」と指摘。現在行っている改定案への意見募集について、意見をよせてほしいと呼びかけました。
 
 伊東達也筆頭代表委員は、野党が提出した原発ゼロ基本法案を国会で審議するよう運動を強めようと提起。原発ゼロ実現を訴えた「鹿児島からのアピール」を参加者で採択しました。
 
 原発をなくす全国連絡会を代表して小田川義和・全労連議長と日本科学者会議を代表して小栗実鹿児島大学名誉教授があいさつしました。

29- 関電「原発マネー」還流 <依存の構造>(1)(2)(中日新聞 )

 中日新聞が、高浜町元助役の森山栄治氏に絡まる「関電原発マネー還流」の問題について、「依存の構造」と題するシリーズ記事で報じました。
 そこではまず森山氏の専横ぶりが記されていますが、何しろ個人として動いているのでその全容はなかなかつかみ切れません。
 関電は、森山氏の意のままに振り回されたかのように見せていますが、それによって他の原発に比べて格段に大きな利益を得ることができたとしています。
 
 また、関電が地元に落とす寄附金や地元協力金は「非公式」の形で渡されるので、それに伴う疑惑も生まれています。
 新聞が地元協力金の存在を報じたとき、高浜町の町長は総額9億円であったと釈明しましたが、実際には25億円を受け取っていた可能性があるということです。
 問題なのはそうした寄附金類も含めて、すべてが「経費」として電気料金に反映されて住民(国民)の負担になっているという点です。
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<依存の構造>(1) 関電と元助役
中日新聞 2019年10月27日
 六畳ほどの小さな洋風応接間。小柄な男が一人、机を挟んだ正面のいすにどかりと座った。「地元にカネを落とせ」。男は原発構内の工事を特定の地元業者に発注するよう迫った。要求を断ると目の前の机を蹴り上げ、「俺の言うことが聞けないのか」とすごみを利かせた。
 高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)。町を退職後、関西電力高浜原発の幹部らを自宅に呼び出していた。「できません、は禁句だった。(一方的に話をされる)二時間ずっと耐えるしかなかった」。高浜原発の所長経験者は、うつむきながら振り返る。「関電と森山さんの関係は既に決着がついていた。あちらの方が上。交渉というよりは、意向を聞くだけだった」
 京都府綾部市職員を経て一九六九(昭和四十四)年に高浜町に入庁した森山氏は、人脈を駆使して建設事業を呼び込むなどの手腕を発揮。役場で出世の階段を駆け上がり、七七~八七年に助役を務めた。退職後、高浜町の建設会社「吉田開発」顧問などになったとされる。隠然と原発構内工事の業者の選定などに影響力を及ぼし続けた。
 
 原子力事業本部(美浜町)で勤務した関電OBは、呼ばれて京都の森山氏を訪ねたことがある。帰り際にもらった紙袋には、まんじゅうと一緒に商品券が入っていた。後ろめたさを感じたが、拒否して怒らせることは避け、ひとまず受け取った。商品券の封は開けていない。「結局、言えないものを受け取ったという負い目を感じさせるためだったのではないか」。役員らの金品受領が明らかになった今、そう理解している。
 
 複数の関電OBによれば、森山氏が金品を渡すようになったのは、少なくとも三十年ほど前。森山氏と接点があった別の関電OBは振り返る。「関電と地元の有力者の森山さんは、高浜3、4号の増設を通じて協力関係にあった。それをきっかけに森山さんが関電につけ込み、金品を押しつけ、ずぶずぶと関係が深まった人がいた。やがておびえるようになった。金品をもらったから断れないと
 地元には別の視点もある。元高浜町議は「関電が、森山氏を利用した」との見方を示す。「高浜3、4号を誘致する時、森山さんに地元を抑えてもらうことで、関電は(他の原発立地自治体に比べれば)『少ない金』で運転を開始することができたはず。ずっとお世話になって助けてもらって、今になって『どう喝された』って言ったって」と憤る。
 
 明通寺(小浜市)の住職で反原発運動を続けてきた中嶌哲演さんは、森山氏の「特異性」ばかりが強調されていることに違和感を覚えている。「関電が高浜原発をつくり、3、4号機増設を強行するその長い長いプロセスを通じて、関電と森山さんとの悪しき関係ができあがった。その間、よっぽど関電の方が、絶大な便益を得ている。関電が、森山さんをしゃぶり尽くしたんだ」
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 関西電力役員らが高浜町元助役・森山栄治氏から金品を受け取っていた問題は、報道による発覚から約一カ月。関電と森山氏との関係はどのようにできあがっていったのか。その背景にあったものは。原発立地自治体における「依存の構造」を探る。
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<依存の構造>(2) 膨大な寄付金
中日新聞 2019年10月28日
なんぼ入ったのか、何に使われたのか、未だにはっきり分からんのです」。高浜町議を十一期務める渡辺孝議員(共産)は四十年以上前の出来事を苦々しく振り返る。
 高浜町が、高浜原発3、4号機増設を目指していた一九七八(昭和五十三)年、町内は関西電力から渡った「地元協力金」をめぐり揺れた。
 同年四月、町内の五漁協組に、関西電力の協力金が町を通じて支払われていたとの報道が出た。その後、浜田倫三町長は町議会で、総額九億円を受け取ったと明らかに。七六年十月に一億円、同十二月に一億五千万円、七七年六月に六億五千万円受け取ったとし、五漁業組に計三億三千万円を支払い、五億一千万円を地域振興対策費として計上したなどとした。浜田町長は「国が増設を認めることがはっきりした段階ですべてを明らかにするつもりだった」と説明した。
 
 住民側は、受け取ったことすら長らく公表せず、町長名義の預金として処理していたことなどに反発して監査請求を行った。監査委員は町長と関電が交わした協定書から一年が経過したことから「監査請求できない」とした上で、「有効適切な運用」だったと結論付け、却下した。町は各戸に配った広報で「ちまたに誤った風評が流れておりますが、町は正しく運用致しております」と強調した。
 その後、浜田町長に対する損害賠償請求の住民訴訟に発展したが、福井地裁は「訴えは不適法」と却下。反対運動もある中、高浜3、4号機増設へと進み、八五年に相次いで運転を開始する
 
 だが渡辺議員は「本当は九億円ではなく二十五億円だったと(助役だった)森山栄治氏の手帳に書いてあったのを見た」と当時、議会関係者から聞いたと明かす。使途の詳細についても今も疑問視する。
 地元協力金などと呼ばれる電力会社から原発立地自治体への寄付金は、連綿と続いてきた。町の決算書などによると、七〇年代以降、関電から高浜町への寄付金は総額で少なくとも約四十四億円。そのうち、森山氏が助役に在任した七七~八七年は約三十六億円に上る。
 
 元町議は「寄付金についても、森山さんが関電との間を取り持っていたことは間違いない」と指摘する。「九億円」が明るみに出た当時、森山氏の発言が本紙に載っている。「3、4号機の総工費は三千五百億円。仮に1%をもらったとしても、いくらになるか。全国的に原発立地が困難な中で、高浜町は進んで建設を認めているのだ」「関電といってもむやみに金を出すはずはない。機会をみては要求してきたのだ」
 原発立地自治体は、電源三法に基づく交付金を得ることができる。寄付金は、それとは別で法には基づかない。寄付金の不透明さはたびたび指摘され、交付金に加え寄付金を受け取るのは「二重取り」に当たる交付金も寄付金も、最終的には電気料金に転嫁される
 
 渡辺議員とともに、関電から高浜町への金の流れなどを追及してきた「原発設置反対小浜市民の会」の松本浩さん(80)は主張する。「関電と高浜町政は持ちつ持たれつの関係の中で、不透明なことを続けてきた」
 
【土平編集委員のコメント】 今日紹介したのは、福井県全域を対象にした福井版の記事です。関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役・森山栄治氏(故人)から多額の金品を受け取っていたことが発覚してから約1カ月。「まんじゅうと金の小判」など、時代劇かと突っ込みたくなるような道具立てもあり、関心を呼びました。ただこの問題は役員と森山氏の間だけにとどまらない、電力会社と原発立地自治体の根深い関係があります。両者の「依存の構造」を探る連載は27日付で始まり、本日が2回目。記事が指摘する通り、寄付金など自治体に入る金は最終的には電気料金などで国民が負担しています。関西電力の調査任せにせず、やはり国会などでの解明が必要ではないでしょうか。

2019年10月28日月曜日

当初の構想からして破綻している再処理工場が完成遅れ

 国が原発推進の前提としてきた「核燃料サイクル」が行き詰まっています。
 そもそも当初から核燃料を「サイクル」をする理由がありませんでした。当初からコスト的に全く採算が合わないことは分かっていました。
 取り出したプルトニウムを高速増殖炉「もんじゅ」で燃料として使うというのも、(仮に「もんじゅ」が完成し上手くいったと仮定しても)、そこでは逆にプルトニウムが増える(増殖)ため、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する意味はないし、現在のプルトニウムの保有量(47トン)を更に増やすことになるのはそもそも国際的に許されません。
 プルサーマルで使うというのも、原発18基を稼働させないことには消費し切れないということであれば、問題外というしかありません。
 
 そもそも「核燃サイクル」は事の始まりから無意味であり、根本的に間違った構想に基づいていました。最終的に何十兆円もかけて使い道のないプルトニウムの抽出するのでは、核兵器を作るためではないかと疑われても反論できない筈です。
 
 西日本新聞が再処理工場の現状を伝えました。
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核燃サイクル袋小路 もんじゅ廃炉、再処理工場完成遅れ
 「既に破綻」批判根強く
西日本新聞 2019/10/27
国が原発推進の前提としてきた「核燃料サイクル」が行き詰まっている。原発で出る使用済み核燃料からプルトニウムやウランを取り出して再利用する計画だが、中核を担うはずの高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)は廃炉が決定。使用済み核燃料の再処理工場の本格稼働も見通せない。青森県の関連施設を訪ね、核燃料サイクルの必要性や実現性について改めて考えた。
 
■トラブル続き
広大な敷地に四角い建物が立ち並ぶ。同県六ケ所村にある日本原燃の原子燃料サイクル施設。プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を作る工場などの建設が続く。
施設の中心となる使用済み核燃料の再処理工場は当初、完成予定が1997年だった。だが工程でトラブルが続出し、完成見通しは24回も延期されている。
目下の目標は原子力規制委員会の審査をパスすること。原燃の上島慶信報道部長は「審査は最終盤。2021年度上期の稼働を見込む」とするが、規制委幹部は「問題がないとは確認しきれていない」としており、審査に通る保証はない。
国内の原発から運び込まれた使用済み核燃料の貯蔵プールは、ほぼ満杯で、受け入れは停止中。各原発で使用済み核燃料がたまり続けるが、原燃は「工場が稼働すれば、貯蔵分は数年で処理できる」と説明する。
 
■作業員まばら
ゴゴゴ…。大音量とともにモニター画面が明滅した。同県大間町に電源開発(Jパワー)が建設中の大間原発。制御室を模した部屋で、社員たちが大地震を想定した訓練に励んでいた。
 
全燃料をMOX燃料で賄う世界初の「フルMOX炉」。他原発でMOX燃料の利用が増えれば大間の利用を減らし、逆なら増やす計画で「MOX燃料を柔軟に利用する政策的な役割がある」(Jパワー)という。
だが、同原発も規制委の審査に時間を要し、原子炉建屋など主要設備の工事が進んでいない。津軽海峡を隔てた北海道函館市は14年に建設差し止めを求めて訴訟を起こしており、現在も係争中。現場には大型部品が防さび用のビニールに覆われたまま置かれ、作業員もまばらだった。
 
■国策の大転換
トラブル続きだったもんじゅの廃炉が決まったため、MOX燃料は高速増殖炉よりも燃料効率が良くないプルサーマル原発で使うしかないのが現状だ。だが国内のプルサーマル原発は、九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)をはじめ、建設中の大間を含めても5基だけ。生産されるMOX燃料を無駄なく使うのに必要とされる「16~18基」に及ばない。
反対論も根強い。前原子力規制委員長の田中俊一氏は、核兵器に転用可能なプルトニウムが生まれることを念頭に「(核燃サイクルは)やらないほうがよい」と公言。コスト高から「既に破綻している」と批判する研究者もいる。
再処理しなければ、使用済み核燃料の取り扱いを巡る問題が生じ、原子力政策は大転換を迫られる。国や電力業界は核燃サイクルに固執し続けるべきなのか。十分な検証と議論が必要だと痛感した。 (吉田修平)

「原発ゼロ」は国民民主との連携阻む「パンドラの箱」

 立憲民主党と国民民主党は衆参両院で統一会派を結成しましたが、原発に関して、立憲民主党が「原発はいずれゼロに」という方針であるのに対し、国民民主党は原発の再稼働を進めるということなので、それでは共闘は出来ません。
 27投開票された「ひたちなか市議選」においてもその違いは鮮明になりました。
 産経新聞が取り上げました。
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立憲民主・枝野代表が原発ゼロを重ねて主張
国民民主との連携阻む「パンドラの箱」
産経新聞 2019年10月26日
 立憲民主党の枝野幸男代表は26日、茨城県ひたちなか市で街頭演説し、先の参院選で掲げた「原発発祥の地・茨城から原発ゼロを訴える」という主張を重ねて鮮明にした。党が政策の柱に据える原発問題は、衆参両院で統一会派を結成した国民民主党との共闘態勢にきしみを生みかねない「パンドラの箱」でもある。
 
 枝野氏は、党公認の新人1人を擁立したひたちなか市議選(27日投開票)の応援のために演説に臨んだ。同市は日立労組の牙城と位置づけられ、日立グループ労組出身の現職4人が国民民主党から出馬している。
 枝野氏は、同市に隣接する東海村の日本原子力発電東海第2原発に言及し「大事故を起こしたら市の産業は取り返しがつかない」と主張した。「東日本大震災の原発事故で今も故郷に帰れない被災者がたくさんいる。原発は止めなければならない」とも訴えた。
 
 茨城には原発建設も手がける日立製作所の関連工場が多く立地する。「原発ゼロ」を鮮明に打ち出す立憲民主党とは対照的に、日立グループ労組の支援を受ける国民民主党は、安全基準を満たした原発に限り再稼働を認めるという立場だ。
 両党がたもとを分かつ前の旧民進党では、原発問題は、憲法改正と並ぶ党内対立の火種だった。分裂のわだかまりを乗り越えて歩み寄り始めた両党にとって、政策面の隔たりは、円滑な連携を阻む高いハードルとして眼前に立ちはだかっている。(松本学、永井大輔)

28- 小泉防災相が島根原発の事故対応拠点を視察

小泉氏、島根原発の事故対応視察 「避難対象人口多い」
共同通信 2019/10/27 
 小泉進次郎原子力防災担当相は27日、国が来月上旬に松江市の中国電力島根原発で実施する原子力総合防災訓練に先立ち、島根県庁敷地内にある事故対応拠点「島根県原子力防災センター(オフサイトセンター)」などを視察した。小泉氏は、同原発が全国で唯一県庁所在地にあることに触れ「(事故時の)避難を考えた時に大変人口が多い」と述べ、国の訓練を通じて避難時の課題を明確化する考えを示した。
 
 視察後は県庁を訪れて丸山達也知事と会談。丸山氏は「要支援者の避難を円滑に行うことが大事な課題だ」と話し、小泉氏は「原子力防災の充実に必要な支援をする」と応じた。

2019年10月27日日曜日

梶山弘志・新経産相は動燃開発事業団の出身

 新しく経産相になった梶山弘志氏は、同じく通産相を経験した梶山静六氏の子息ですが、日大の法学部を卒業したのち動核事業団(現・日本原子力研究開発機構)に約6年間勤務していました。
 この経験からある電力業界幹部は、「原発や原子力産業の基礎的な知識、知見がある。原発再稼働など、日本のエネルギー行政にとってプラスだ」と述べ、東海第2原発がある茨城県が選挙区であることから、電力業界関係者は「再稼働合意に向けた地元自治体との連携も進む」とその手腕注目しているということです
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【経産相辞任】電力業界、梶山氏の手腕に期待
産経新聞 2019年10月25日
 梶山弘志経済産業相の就任を電力業界は総じて歓迎している。地方創生担当相としての仕事ぶりに一定の評価があったことに加え、原子力政策にも理解があるためだ。
 梶山氏は大学卒業後、動力炉・核燃料開発事業団(動燃、現・日本原子力研究開発機構)で勤務した。この経験からある電力業界幹部は、「原発や原子力産業の基礎的な知識、知見がある。原発再稼働など、日本のエネルギー行政にとってプラスだ」と指摘する。
 また、父であり通商産業相を経験した、梶山静六氏の秘書を務めていたことなどから、「経済産業関連の行政全般についても、的確にこなせるのでは」と、大手電力会社幹部は期待を寄せる。
 
 ただ、関西電力問題などで、日本のエネルギー政策や原発再稼働に向けた環境は、厳しさを増している。日本原子力発電の東海第2発電所がある茨城県が選挙区であることもあり、電力業界関係者は「再稼働合意に向けた地元自治体との連携も進む」とも述べるなど、その手腕が注目されている。