2019年12月31日火曜日

「戻りたい」は横ばい10・5%  双葉町民、帰還意欲上向かず

 復興庁27に発表した、唯一全町避難が続く福島県双葉町の住民意向調査結果によると、「戻りたい」との回答は10・55%(前回1810月比で0・3ポイント減)、「戻らないと決めた」は63・8%(同2・3ポイント増)、「判断がつかない」は1.2の24・4(同1・2ポイント減)でした
 判断がつかないと答えた人 帰還を判断するために必要なこと(複数回答)は、多い順に「医療・介護福祉施設の再開や新設」「住宅の修繕や建て替え、住宅確保への支援」「商業施設の再開や新設」「除染対策」でした。
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「戻りたい」横ばい10.5%  双葉町民、帰還意欲上向かず
河北新報 2019年12月28日
 復興庁は27日、東京電力福島第1原発事故に伴う全町避難が唯一続く福島県双葉町の住民意向調査結果をまとめた。「戻りたい」との回答は10.5%で、前回調査(2018年10月)比で0.3ポイント減。来年3月4日にJR常磐線双葉駅周辺など一部地域の避難指示が初めて解除されるが、帰還意思を持つ住民の減少に歯止めはかかっていない。

 帰還の意向を尋ねた設問で、「戻らないと決めた」は2.3ポイント増の63.8%「判断がつかない」は1.2ポイント減の24.4%。年代別で30代の「戻りたい」は6.2%にとどまった。復興庁の担当者は「戻りたい方が全体で1割は厳しい状況だ」と述べた。
 判断がつかないと答えた人に帰還を判断するために必要なこと(複数回答)を問うと、「医療・介護福祉施設の再開や新設」(40.5%)が最多。「住宅の修繕や建て替え、住宅確保への支援」(35.5%)「商業施設の再開や新設」(27.9%)「除染対策」(16.7%)と続いた
 双葉駅の利用再開など立ち入り規制の緩和後に町内を訪問する意向を尋ねると、「頻度を増やしたい」は32.6%、「頻度を増やす考えはない」が27.7%、「分からない」が34.9%だった。
 調査は復興庁と県、町が共同で9~10月に実施した。対象は全3057世帯で回答率は45.8%。

31- 福島で2月に国際シンポ、甲状腺検査など焦点

 福島医大主催で来年2月に福島市で「甲状腺検査」と「こころの健康度・生活習慣調査」に焦点を当て国際シンポジウムが開かれます。
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「健康調査情報」共有の場に 国際シンポ、甲状腺検査など焦点
福島民友 2019年12月26日
 福島医大放射線医学県民健康管理センター主催で来年2月2、3の両日に福島市で開かれる国際シンポジウムについて、神谷研二センター長らが25日取材に応じた。神谷センター長は「県民健康調査の成果を広く知ってもらうとともに、国内外の専門家が集い県民健康調査の情報を共有することがシンポジウムの目的だ。科学的根拠に基づいた正しい情報を発信することで、健康に関する根拠のない風評被害の低減に役立つと考える」と意義を語った。

 今回のシンポジウムでは、原発事故を受けて県と医大が取り組む県民健康調査の中の「甲状腺検査」と「こころの健康度・生活習慣調査」に焦点を当てる。海外から3人の専門家を招く。甲状腺検査、甲状腺診療をテーマとした第1部では、シカゴ大医学部のピーター・アンジェロス教授が米国など海外での甲状腺がん治療の現状について語る。
 被災者のメンタルヘルスをテーマとした第2部では、災害時のトラウマケアの第一人者であるニューサウスウェールズ大心理学部のリチャード・ブライアント教授(オーストラリア)が「災害時における心のケアの進歩」と題して講演。また、臨床心理学者でハリケーンやテロ事件の被害者へのケアに当たっているダグラス・ウォーカー氏(米国)が過去の支援の事例も踏まえて災害時のメンタルヘルスについて語る。

 神谷センター長のほかセンターの甲状腺検査部門の志村浩己部門長、健康調査県民支援部門の前田正治部門長が25日、福島医大で取材に応じた。神谷センター長は「復興の基本となるのは県民の健康。県民健康調査を通じてより良い復興を目指したい」と話した。

◆1月26日まで参加募る
 シンポジウムは福島市のザ・セレクトン福島が会場で、時間は2日午後2~6時5分、3日午前8時45分~午後5時10分。県民や医療従事者、学生、行政関係者など誰でも参加できる。参加無料。申し込み締め切りは1月26日。
 申し込みはWeb(http://kenko-kanri.jp/news/2nd_intl_symposium.html/)の専用フォームから申し込むか、申込用紙に必要事項を記入しファクスで申し込む。ファクス番号は024・581・5457。
 問い合わせはセンター国際連携室(電話024・581・5454)へ。

2019年12月30日月曜日

原発追加安全対策費5・4兆円 「コスト安い」はますます破綻 

 しんぶん赤旗が原発事業者全国11社にアンケートした結果原発の安全対策での追加総額は約5兆4000億円になることが分かりました。更に、既存の原発に対し新たな規制要求に対応を求める「バックフィット制度」によって、今後も追加対策が求められる可能性があります。規制委は今後、未知の震源による地震の揺れに対する新たな考え方導入することを明言しているので新たな安全対策費用が必要になる見通しです。北海道電力など まだ審査が続いている原発のテロ対策の費用や設置する予定の防潮壁の費用は抜けています。また稼働が遅れて総稼働時間が短縮すれば、その分コストは上がります。
 いずれにしても原発の「発電コスト」は今後さらに上がる要素しかありません。

 忘れてならないことはそうした対策を講じたとしても、それらは原発の安全性を保証するものではありません(前規制委委員長が明言)。
 何よりも最も肝心な原子炉(と格納容器)の強度についての報道がないのは何故なのでしょうか。まさか設計が完璧で強度の劣化がないと判断しているのではないと思いますが、劣化に関する報道がないのは不思議なことです。
 国民に理解できないからでは済まされません。国民の中には規制委員などよりもはるかに深い知識を持った人たちが多数いるのですから。
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原発追加安全対策費54兆円 「コスト安い」 ますます破綻 
全国11社 本紙調査
しんぶん赤旗 2019年12月29日
 原発の追加安全対策費が、膨らみ続けています。本紙が行った全国11社の原発事業者へのアンケートで、追加総額は約5兆4000億円になることが分かりました。既存の原発に対し新たな規制要求に対応を求める「バックフィット制度」によって、今後も追加対策が求められる可能性があります。政府が宣伝する「原発は安い」の根拠はますます失われています。(松沼環)

 アンケートは今月に行いました(表)。2011年3月以降の各原発の追加安全対策費の合計は約5兆4000億円です。
 最高額は、東京電力の柏崎刈羽原発の1兆1690億円。新規制基準対応のための液状化対策や中越沖地震後の耐震対策などが含まれています。
 新規制基準への適合性審査を終えた美浜、大飯、高浜の3原発計7基を有する関西電力は、計1兆255億円。テロ対策費の増大に加え、最近も有毒ガス対策の費用を約1億円積み増すなど追加対策費が増え続けています。九州電力は、川内、玄海の2原発計4基で計9千数百億円と説明しています。
 審査が続いている北海道電力泊原発の追加対策費は2000億円台半ばで、テロ対策の費用や設置する予定の防潮壁の費用は含んでいません。
 再稼働に向けて審査中にある原発や、設置が義務づけられているテロ対策の設備「特定重大事故等対処施設」などの費用が含まれていない原発もあり、さらに総額は増大すると見込まれます

原発は経済性なし “絶えず最新技術適用必要” 安全対策費 天井知らず
 2015年に経済産業省の作業部会が算定した原発のコストは、1キロワット時当たり「10・1円以上」で、この算定で、1基当たりの追加安全対策費は601億円と想定していました。
 一方、アンケートで得られた総額を、現在までに新規制基準への適合性審査を申請した原発数27基で割ると、追加対策費は15年算定の3倍以上、1基当たり約2000億円に上ります。

■二律背反
 大島堅一・龍谷大学教授(環境経済学)は、「原発の安全性と経済性はトレードオフ(二律背反)の関係です。これまでは安全対策を軽視して経済性を重視してきた。福島原発事故後、それは成り立たないので安全性を重視すれば、経済性が大きく損なわれてしまう。原発にすでに経済性はなくなっているのです」と話します。

 バックフィット制度は、東京電力福島第1原発事故後に導入されました。新規制基準施行後も、基準が改定され、新たに対策が求められた例が、有毒ガス対策、電気盤の火災対策など8件あります。このほか、大山(鳥取県)の火山灰の厚さの再評価に伴う対策などへの対応もあります。
 さらに今後、未知の震源による地震の揺れに対する新たな考え方も導入予定で、新たな安全対策費用が必要になる見通しです。
 大島氏は、「追加対策には、お金とともに時間もかかる。発電期間が少なくなれば、それだけ発電単価も高くなります既存原発を使い続けるという電力会社は二重の意味で経営判断を間違えたのでないか」と指摘します。

■未完技術
 バックフィットによる安全対策について疑問を呈するのが、舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)。「バックフィットで取られた対策が有効かは相当に疑問。初めから設計して安全装置を付けるのと、後から付け加えるのでは、一般論として同じ安全機能が発揮されるかは難しいのではないか」
 舘野氏は、「普通の技術は失敗に基づいて技術が進んでいきますが、原発の場合、失敗に基づいて技術を修正するというのがされてこなかった。今後も困難でしょう」とも話します。
 日本学術会議の17年の原発のあり方についての「提言」でも、原発の稼働にはバックフィット方式により「絶えず最新の安全対策を適用することが必要」であり、それらの額が「事前に予測可能なものとはならない」と断定。原発が「工学的に未完の技術であることを示している」と指摘しています。
 表:原発ごとの追加安全対策費 アンケート結果

原発この1年 推進路線の破綻一層あらわに(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗が、この1年で原発推進の破綻が一層鮮明になったとする「主張」(社説に相当)を掲げました。原発を「低コスト」だとしたいのは、いまや原発再稼働を願う原子力ムラのメンバーのみで、別掲の記事でも明らかなように原発は高コストで ビジネスとして成り立たなくなっています
 安倍政権が決定した「パリ協定長期戦略」には、原発再稼働が明記されているということですがそれはナンセンスです。熱効率が極端に低い原発が海水の暖め装置であることは知る人ぞ知るです。近年強烈な台風や豪雨が頻発しているのは偏に海水の温暖化が直接的な原因になっているのですから、原発の再稼働は論外というべきです。
 いわゆる原発の安全対策も、原子炉という心臓部にとっては何の役割も果たしていません。
 正しく「原発この1年推進路線の破綻一層あらわになった」の一言に尽きます。
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主張 原発この1年 推進路線の破綻一層あらわに
しんぶん赤旗 2019年12月29日
 2019年は、安倍晋三政権の原発推進の破綻が一層鮮明になった年でした。年初には、日立製作所がイギリスでの原発建設事業の凍結を決定し、日本の原発輸出計画は総崩れとなりました。新たな原発の再稼働はなく、関西電力の原発マネー還流事件で原発利権の闇が大問題となっています。核燃料サイクルも行き詰まっています。中核施設の高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉措置に入り、フランスも高速炉建設を断念しました。

経済界からも疑問の声
 安倍政権は19年度から、日立製作所、東芝、三菱重工などの新型原発開発への補助を始めました。20年度は、関連機器メーカーへの支援も始めようとしています。業界への露骨な支援です。
 しかし、原発は高コストであり、ビジネスとして成り立たなくなっています。原発輸出が建設費高騰でとん挫しただけでなく、国内でも原発「安全対策費」の見積もりが年々増え、電力11社の合計で約5兆4千億円にのぼります。
 日本経済団体連合会の夏季フォーラムでも、原発再稼働は「本当にベストなのか」「グローバルな方向と逆に向かっているのでは」との疑問が出されました(「朝日」7月23日付)。原子力業界のアンケートでは、30年度の発電量の原発比率20~22%という政府の「エネルギー基本計画」が掲げた目標について、半数が「達成出来ない」と答えています(「原子力発電に係る産業動向調査2018」)。

 関電の高浜原発(福井県)をめぐるマネー還流事件は、前原子力規制委員会委員長の田中俊一氏が「このままでは原発はなくなる」(福井新聞10日付)と述べるなど、衝撃が広がっています。高浜町議会は真相究明を求める請願などを採択しました。政府・政治家との関係を含めた全容解明と黒い関係の清算が求められます。
 地球温暖化対策で安倍政権が決定した「パリ協定長期戦略」には、原発再稼働が明記されています。30年度の電力の26%を石炭火力に依存することも前提とされています。世界の温暖化対策では、原発はすでに議論の対象外であり、主流は再生可能エネルギーと脱石炭火力です。安倍政権の原発・石炭火力への固執こそ、温暖化対策の障害物に他なりません。

 東京電力福島第1原発事故は、甚大な被害と環境汚染を引き起こしました。事故から9年近くたっても帰還できない地域があり、4万人以上(福島県集計)が避難生活を余儀なくされています。この実態を踏まえれば、原発を「環境対策」として利用するという選択肢はありえません。
 福島県では、県内全基廃炉という「オール福島」の声が、東電に福島第2原発の廃炉を決めさせました。原発立地県で初めて「原発ゼロ県」への道が開かれました。

原発ゼロへの扉を開く
 7月の参院選では市民と野党の共通政策に、「福島第一原発事故の検証や、実効性のある避難計画の策定、地元合意などのないままの原発再稼働を認めず、再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立と地域社会再生により、原発ゼロ実現を目指すこと」が掲げられました。再稼働反対、原発ゼロ基本法実現のたたかいを強め、市民と野党の共闘で、安倍政権を打倒し、「原発ゼロの日本」への扉を開きましょう。

30- 原発処理水の放出「福島県のみ」は認めない

論説 原発処理水の放出「本県のみ」は認めない
福島民報 2019/12/27
 東京電力福島第一原発事故に伴い発生する放射性物質トリチウムを含んだ処理水を巡り、政府の小委員会は海洋放出、大気への水蒸気放出の二つの方法を軸に、今後、処分方法を議論する方向だ。どの場所から処理水を放出するか-との協議は始まっていない。本県沖や本県上空が最初、あるいは本県のみが実施場所とされるのは、さらなる風評につながり、絶対に許されず、認められない

 八年九カ月前の事故以来、本県の農林水産、観光などのあらゆる産業が風評を受けた。県や市町村をはじめ、民間業者、生産者ら多くの団体と個人は、手を携えて風評を拭う努力を重ねてきた。
 その成果は徐々に表れている。最大五十四の国と地域が県産食品の輸入を規制してきたが、三十三カ所が解除した。県の発表によると、今年度の県産農産物の輸出量は十一月末現在で約二百三十二トンに上る。昨年度一年間の輸出量の約二百十八トンを既に超え、事故発生後の二〇一二(平成二十四)年度実績の百倍ほどに達した。その回復ぶりには心強さを感じる。県内への観光客の入り込み数は昨年、五千六百万人余りで、二〇一一年より二千百万人ほど増えた
 だが、風評が消えたわけではない。万が一、国内で初めて本県から放出されたら、被害を再び受ける。これまで払ってきた県民の努力が全て、打ち消されてしまう。
 県漁連は漁業に大きな打撃を与えるとして、海洋放出に反対の立場を取っている。海域と魚種を絞った試験操業がいまだに続き、本格的な再開にたどり着けない。風評の再燃は本県の漁業を壊滅させかねない。

 二十三日に開かれた政府小委員会の会合で、経済産業省は(1)海洋放出(2)水蒸気放出(3)海洋、水蒸気放出の併用-の三つを処分方法として取りまとめ案に盛り込んだ。
 取りまとめ案は「海洋放出は安定的に希釈拡散でき、放射線量の監視も確実に実施できる」と評価した。「水蒸気放出は炉心溶融事故を起こした米スリーマイルアイランド原発で実績がある」と利点を認めた。処分開始の時期や期間については、風評への影響などを踏まえて「政府が責任を持って決定すべき」と求めた。出席した委員から放出する場所に対する見解は示されなかった。
 政府が、それぞれの方法の安全性を強調するのならば、全国のどの場所から放出しても問題ないはずだ。ただし「福島で」の結論ありきで議論が進まないように政府に強く求める。(川原田秀樹)

2019年12月29日日曜日

燃料搬出開始は最大5年先送り 福島原発廃炉工程

 福島原発の1、2号機の使用済み核燃料の搬出開始時期最大5年先送りすることが決まりました(当初は17年に開始の予定)
「ダストの飛散対策をより徹底するため」建物全体を覆うシェルターを作るのにそれだけの期間をようするというのが理由です。
 安全を高めるための措置は必要でやるべきですが、あらゆることが仕事に取り掛かってから問題点に気付いてそれから対策を立てるということの繰り返しになっています。技術会社としてあまりにもお粗末です。
 カバーが出来れば雨水が最終的に地下室に入り込むことが防げるので、トリチウム汚染水の発生日量を100トンに抑えられるというのも、それはたまたまそうなったということであって、発生日量をゼロにしないことには汚染水の問題は解決しません(⇒汚染水が発生しなくなれば123年間の貯蔵で放射能を1000分の1に減じられる)。
 何もかも成り行き任せでは、いつまでたっても問題はなくなりません。
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燃料搬出最大5年先送り 福島第1原発廃炉の工程表改定
河北新報 2019年12月28日
 政府は27日、東京電力福島第1原発の廃炉に向けた中長期ロードマップ(工程表)を改定した。1、2号機の使用済み核燃料の搬出開始時期について、現行工程表より最大5年先送りすることを明記。汚染水の発生量を2025年中に1日100トン以下に抑制する目標も初めて盛り込んだ

 事故を起こした1、2号機の建屋内に残された燃料は当初、17年度に搬出を始める予定だった。その後の改定で先送りを3回繰り返し、17年9月の前回改定では「23年度をめど」としていた。
 新たな工程表では、搬出開始時期について2号機を24~26年度、1号機を27~28年度と先送りする。その他の号機でも取り出しを進め、既に終えた4号機を含め31年内に1~6号機での搬出完了を目指す。

 搬出開始が遅れる理由について、経済産業省の担当者は「ダストの飛散対策をより徹底する工法に変更するため」と説明する。
 現行では1日150トン以内としていた汚染水発生量の目標は、建屋の屋根を補修したり雨水の浸透対策を強化したりすることで抑制する。1~3号機原子炉建屋内の滞留水も、20年末見込みの6000トンを24年度までに半分程度に減らす目標を掲げた。
 最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しは21年に2号機で着手。当初はアーム型アクセス装置で数グラム規模で少しずつ行い、徐々に規模を拡大する。ただデブリは広がりや厚さといった分布状況がなお未解明で、1、3号機の取り出しも含め工程は不透明だ。
 廃止措置終了までの期間を事故から「30~40年後」とする目標は据え置いた。
 11年12月に策定された工程表の改定は今回で5回目。27日に官邸であった廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議で決めた。

トリチウム汚染水の海洋放出は事故直後からの方針の可能性

 櫻井ジャーナルが、東電などが最近になって主張し出したトリチウム汚染水の海洋放出(または大気放出)は、当初からの方針だったとする記事を出しました。
 国や東電がトリチウム汚染水の処理の検討をずっと中断していて、昨年後半になってから急に言い出したのは、「もはや時間がなくそれしか方法がない」と言い出すタイミングを見計らっていたと考えれば辻褄が合います。

 現在もトリチウム汚染水が日量150トンも発生しているため、22年に現在の保管基地容量の限度に達するというのが東電などの言い分ですが、それは本来は冷却水はクローズとシステムで増えない筈なのに、長い工事期間を費やして築造した凍土遮水壁が不完全で、地下水が原子炉建屋地下室に流入するのを阻止できないからです。
 凍土式遮水壁に代えて新たにコンクリート製遮水壁を作りトリチウム汚染水の発生量をほぼゼロにすることが、汚染水問題の根本的な解決策です。

 櫻井ジャーナルの記事には、汚染水問題以外の様々な情報が含まれています。
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東電福島第1原発の汚染水を海へ放出するのは事故直後からの方針だった可能性
櫻井ジャーナル 2019.12.25
安倍晋三政権は12月23日に東京電力福島第1原子力発電所が生み出す放射性物質トリチウム(三重水素)を含む汚染水に関する報告書案を公表した。名古屋大名誉教授の山本一良を委員長とする「有識者会議」なる集まりが出したのだという。
保管できる敷地が2022年末には限界達することから、薄めて海に放出するか、蒸発させて大気へ放出するか、ふたつを併用するかの3案を示したというが、希釈は「安全」や「科学」と同じように、水俣病の時にも使われた戯言だ。放射性物質の総量に変化はない。
しかし、原発事故の直後から官僚や電力会社は汚染水を海へ放出させる方針だったように見える。彼らは事故前から冷却水が循環しなくなった場合にどうなるかを正確にシミュレーションしていたようで、放出するしかないと最初から考えていた可能性が高い
9月10日に原田義昭環境相兼原子力防災担当相は福島第1原発から出た汚染水を海に放流する必要があるかもしれないと述べている。それは既定の方針で、世間の反発を見るために環境相が口にしたのだろう。汚染水を保管しきれないことも確かだが。

原子炉内の状態は明確でないが、炉心が溶融してデブリ(溶融した炉心を含む塊)が落下していることは間違いないだろう。その一部が地中へ潜り込んでいる可能性もある。福島第1原発の周辺は水の豊かな場所である。その水がデブリを冷却、汚染水となり、補足されていないルートを通って海へ流れ出ていることも考えられる。
本ブログでは繰り返し書いてきたが、イギリスの​タイムズ紙はこの原発を廃炉するまでに必要な時間を200年だと推定していた。その推測も甘い方で、数百年はかかるだろうと考えるのが常識的な見方だ。廃炉作業が終了した後、10万年にわたって放射性廃棄物を保管する必要もある。日本政府は2051年、つまり34年後までに廃炉させるとしているが、そんな話を信じろという方が無理だ。

福島のケースでは炉心が飛散していないと言う人もいるが、事故の翌日、2011年3月12日には1号機で爆発があり、14日には3号機も爆発、15日には2号機で「異音」がり、4号機の建屋で大きな爆発音があった。そして建屋の外で燃料棒の破片が見つかるのだが、この破片についてNRC(原子力規制委員会)新炉局のゲイリー・ホラハン副局長は2011年7月28日に開かれた会合で語った。発見された破片は炉心にあった燃料棒のものだと推測できるとしている。マンチェスター大学や九州大学の科学者を含むチームは原子炉内から放出された粒子の中からウラニウムや他の放射性物質を検出した。
また、医療法人の徳洲会を創設した徳田虎雄の息子で衆議院議員だった徳田毅は事故の翌月、2011年4月17日に自身の「オフィシャルブログ」(現在は削除されている)で次のように書いていた:
「3月12日の1度目の水素爆発の際、2km離れた双葉町まで破片や小石が飛んできたという。そしてその爆発直後、原発の周辺から病院へ逃れてきた人々の放射線量を調べたところ、十数人の人が10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れていたという。それは衣服や乗用車に付着した放射性物質により二次被曝するほどの高い数値だ。」

飛散した放射性物質により、相当数の人が死んでいる可能性がある。事故当時に双葉町の町長だった井戸川克隆によると、心臓発作で死んだ多くの人を彼は知っているという。セシウムは筋肉に集まるようだが、心臓は筋肉の塊。福島には急死する人が沢山いて、その中には若い人も含まれているとも主張、東電の従業員も死んでいるとしている
事故で環境中に放出された放射性物質の放出総量はチェルノブイリ原発事故の1割程度、後に約17%に相当すると発表されているが、その算出方法に問題があるとも指摘されている。
この計算の前提では、圧力抑制室(トーラス)の水で99%の放射性物質が除去されることになっているが、今回は水が沸騰していたはずで、放射性物質の除去は困難。トーラスへの爆発的な噴出で除去できないとする指摘もある。そもそも格納容器も破壊されていた。
原発の元技術者であるアーニー・ガンダーセンは少なくともチェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2~5倍の放射性物質を福島第一原発は放出したと推測している(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)が、10倍程度だと考えても非常識とは言えない。

福島第2原発廃炉で安全確保協定

福島第2原発廃炉で安全確保協定 東電と県、楢葉・富岡など
福島民友 2019/12/27
 東京電力福島第2原発の廃炉を巡り、立地する楢葉、富岡両町と県、東電は26日、廃炉関連施設の新増設に際して地元側の「事前了解」を必須とした安全確保協定を結んだ
 原発事故で影響を受けた周辺11市町村と県、東電も同日、トラブル時の通報連絡などで立地2町と同等の安全確保策を盛り込んだ新協定を締結した

 2町と11市町村の協定内容はおおむね変わらず、東電からの情報伝達に差が生まれない仕組み。施設の新増設に関して11市町村へは「事前説明」が必要となる。県と2町は発電所への立ち入り調査、廃炉に関する措置を東電に直接要求でき、11市町村は県廃炉安全監視協議会を通じて申し入れる。
 原発事故の影響は広範囲に及び、廃炉作業も長期化することから、第1原発の廃炉と同じく11市町村とも安全協定を結んだ。東電は今後、廃炉開始の前提となる廃止措置計画をまとめ原子力規制庁の審査を受ける。

29- 原発避難訴訟 原告側が控訴

原発避難訴訟 判決を不服、原告側が控訴
河北新報 2019年12月28日
 東京電力福島第1原発事故による山形県への自主避難者ら200世帯が、国と東電に総額約80億円7400万円の損害賠償を求めた訴訟で、原告側は27日、計約44万円の支払いを東電にのみ命じた17日の山形地裁判決を不服とし、仙台高裁に控訴した。
 原告弁護団によると、請求を棄却された198世帯717人が控訴。国と東電に対し、慰謝料計約21億6300万円を求める。安部敏原告弁護団長は「原発は国策として進められてきたにもかかわらず、国に対して極めて甘い判決だった」と批判した。
 地裁判決は、国の賠償責任を認めず、東電に対し母子避難者を含む原告5人に計44万円の支払いを命じた。5人以外の原告については「東電が既に弁済した額を超えない」として、請求を退けた。

2019年12月28日土曜日

28- 原発ゼロ 来年も声あげ続ける 首相官邸前抗議

 首都圏反原発連合(反原連)は27日、身を切るような冷たい風が吹くなか、今年最後となる366回目の首相官邸前抗議を行いました
 新年最初の首相官邸前抗議は、1月10日です。
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原発ゼロ 来年も声あげ続ける 反原連が首相官邸前抗議
しんぶん赤旗 2019年12月28日
 首都圏反原発連合(反原連)は27日、今年最後となる366回目の首相官邸前抗議を行いました。身を切るような冷たい風が吹くなか、「安倍晋三は原発やめろ」「再稼働反対」のコールが首相官邸、国会周辺に響きました。
 国会正門前では参加者がマイクを握り、これからも声をあげ続ける決意、原発マネー問題の解明を求める声などをあげました。
 元商社労働者の女性は抗議が366回になったことにふれ、「原発に関わる企業に勤めてきたものとして声をあげてきた」とふり返り、「来年も引きつづき声をあげ続ける」と表明しました。
 さいたま市の男性は「原発利益共同体はまだ(推進を)あきらめていない。これまで一緒に声をあげてきた人、全国のみなさんとともに声をあげ続けていく」と述べました。
 日本共産党の吉良よし子参院議員が、国会正門前でスピーチしました。
 新年最初の首相官邸前抗議は、1月10日です。

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寒風のなか「安倍晋三は原発やめろ」と声をあげる参加者=27日、国会正門前

2019年12月26日木曜日

つれづれ語り「自由と安全」(田中篤子弁護士)

 田中淳哉弁護士ご夫妻が『上越よみうり』に連載中のコラム「田中弁護士のつれづれ語り」に自由と安全(田中篤子弁護士)が載りました。
 淳哉弁護士が「専門的知見が関連する事件であっても、司法府として、独自の見地から判断すべき事柄は必ずあります。そこで当該領域の専門家として責任ある判断を示すことができるかどうかは、司法に対する国民の信頼を確保するうえで決定的に重要だと思います」と前書きされています。まさにこれに尽きているのですが・・・。

 3.11以前の司法は、井戸謙一判事の一審判決を唯一の例外として20数件の原発差し止め訴訟を、政府の言い分が正しいとして悉く却下しました。いわば思考停止という太平の眠りの中にいたのでした。それが福島原発の大惨事でほんの一瞬だけ覚醒したかに見えましたが、樋口英明判事の再稼働不可の判決以降「強烈な外力」が作用して、再び「新規制基準が正しい」とする思考停止に入りました。
 たとえ裁判において原発の安全を否定する如何なる論議が行われようとも、全て「新規制基準に合理性がある」の一言で片付けることがパターン化されました。規制委のトップが「新規制基準は安全を保障するものではない」と明言しているにもかかわらずにです。

 今回の「つれづれ語り」も例によって限られた字数の中で、実に簡潔に(分かりやすく)ポイントが示されています。
 いわば司法の果たすべき役割に関する同弁護士の哲学の開陳であり、それは直ちに裁判を行う人間に対し、外圧的にというよりも内面的・内発的なショックを与えるものです。
 それにしても、司法に対する現行の家父長的支配体制は余りにもそれから逸脱しています。
 何よりも重みのあるクリスマスプレゼントになることを祈ります。

お知らせ
都合により27日と28日は記事の更新ができません。ご了承ください。
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つれづれ語り自由と安全)(田中篤子弁護士)
田中篤子弁護士 2019年12月25日
『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」
2019年12月25日付に掲載された第74回は、「自由と安全」です。
篤子弁護士が、原発差止訴訟における司法判断のあり方について書いています。
専門的知見が関連する事件であっても、司法府として、独自の見地から判断すべき事柄は必ずあります。そこで当該領域の専門家として責任ある判断を示すことができるかどうかは、司法に対する国民の信頼を確保するうえで決定的に重要だと思います。

自由と安全

1 原発から私たちを守れるのは
原発訴訟についての報道を見ていると、この国の人々の司法に対する信頼はいつまで保たれるのか不安に思うことがあります。原発問題は国政選挙によって決せられるべきエネルギー政策の問題だというある種のイメージがついていますが、福島第一原発事故で明らかとなったように、安全性の不十分な原発は、一度の事故で多数の人々の命や健康、生活していた土地やその地を中心とした人間関係、仕事などを含め人生を根こそぎ奪い取るような甚大な人権侵害を引き起こします。多数者による人権侵害から少数者を救済することこそが司法の最も重要な役割である以上、原発推進の国策に関わらず、司法は原発の安全性について積極的に判断する姿勢を示していくべきです。行政判断をただ追認するだけの裁判で再び原発事故を招くようなことがあれば,司法は完全に国民から見放されてしまうでしょう。そのような国家でどうして社会の秩序が維持できるでしょうか。

2 十分に安全な原発を
裁判所が何よりも真摯に考え判断すべきなのは、そもそも原発にはどの程度の安全性が求められるのかという点です。社会が原発に求める安全性のレベルはどの程度のものなのか。福島第一原発事故の際、大量の放射性物質が海に放出されてアメリカにも到達しました。原発事故の被害は容易に国境を超えます。そうである以上、原発の安全性を自国の経済などの利己的な理由で低めに設定することは許されません。ここでいう「社会」とは立地自治体でも日本でもなく「国際社会」と言わなければなりません。この点、ドイツでは、福島第一原発事故よりも相当以前から、原発には高度な安全性が求められることを前提にこれを確保するための基準を裁判所が示してきました。例えば、安全性については通説的学説だけでなく代替可能なすべての見解を考慮する必要があるとされています。自然科学の分野では通説的見解とは異なるが一応の合理性がある見解が存在することは珍しくありません。通説的見解では安全と言えても、別の見解からすれば安全とは言えない場合には、直ちに安全とは評価できないというのがドイツの裁判所が示した判断であり、これには共感を覚える方も多いのではないでしょうか。

3 裁判官だけが判断できること
原発訴訟のような専門技術的な知識が要求される裁判では、裁判官は科学者や技術者による検討を経た行政庁の判断を尊重するという姿勢になりがちです。しかし、科学者や技術者は,原発が抱えるリスクの有無や程度という「事実」を判断することはできても,そのリスクを社会が許容することの可否・合理性・条件といった社会的な価値判断を含む問題については判断することはできません。科学的見解が複数ある場合や科学が発展途上で不確実性を伴う場合などに、「疑わしきは安全に」の原則をとるのか「疑わしきは(経済活動の)自由に」の原則をとるのか,いずれを社会の基本方針とするのかを科学者が決めることはできません。それは社会学,倫理学,法学などの人文・社会科学の領域であり裁判官の専門領域であって、まさに司法が判断すべき領域です。冒頭で述べたような人権侵害を防ぐために、電力会社の経済活動の自由をどの程度制約できるのか。その判断を可能にするための基準は,行政が設定した新規制基準などではなく,ドイツの裁判所のように司法自体が確立しなければならない基準です。経済の発展に責任を負う立場にある行政が作成した基準と,人権侵害を救済することが主要な目的である司法とでは,基準が異なるのは当然です。行政の作った基準に合理性があるからといって,それが司法の目的に沿うものとは限りません。守るものが違えば,そこには対立があるのがむしろ自然なのです。司法が国民から信頼されるためには,人権救済の観点に立ち,その専門性を生かして,より具体的で精緻な判断基準を定立していく努力が欠かせないと思います

トリチウム汚染水処分 「前例」を理由に放出するのは許されない

 政府はトリチウム汚染水は「従来も海洋放出されてきた前例がある」を理由にして海洋放出などを主張していますが、それは国民が知らないままに行われたもので放出量も少量でした。したがって福島原発に保有されているトリチウム汚染水を海洋乃至大気に放出して良いという理由にはなりません。
 北海道新聞が「福島汚染水処分 『前例』強行は許されぬ」とする社説を掲げました。
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社説 福島汚染水処分 「前例」強行は許されぬ
北海道新聞 2019/12/25
 経済産業省は、東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ汚染水の処分方法を事実上、海洋放出と大気放出の2案に絞り、専門家らでつくる小委員会に提示した。
 東電は、敷地内のタンクでの保管が2022年夏に限界に達するとの試算をすでにまとめている。今後は廃炉作業も本格化し、作業用スペースの確保も必要となる。
 時間の猶予がない中、政府としては過去に実行されてきた処分方法で決着を急ぎたいのだろう。
 問題は、どちらの方法も地元漁業や農業への風評被害が憂慮されるのに、社会的影響や対策に関する議論が抜け落ちていることだ。
 地元が納得する風評対策を示さぬまま、「前例」を理由に処分を強行することは認められない
 福島第1原発では原子炉に注がれる冷却水に地下水が混ざり、高濃度の汚染水が増え続けている。
 東電は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理しているが、トリチウムは技術的に取り除くことができないため、これを含んだ水をタンクで保管してきた。
 水産物や農産物の風評被害に長年苦しんできた福島の人たちは、陸上での長期保管を要望している。経産省は今回、タンク増設用の敷地確保や汚染水の移送が困難だとしてこれを退けた。
 そう主張するなら、最優先で議論すべきは、他の方法を選んだ場合の地元への影響と対策だろう。
 なのに経産省は、国内外の原発で実績のある処分方法だという技術的利点を挙げただけで、風評被害については「定性的、定量的に大小を比較することが難しい」と分析を逃げた。極めて無責任だ
 トリチウムは人体への影響が軽微で、希釈して放出すれば環境への問題はないと政府は言うが、福島では昨年夏、保管中の水の約8割に他の放射性物質が高濃度で残留していることが発覚した。
 東電は再浄化を約束したものの、当初はこの事実を積極的に知らせようともしなかった。
 世界貿易機関(WTO)が今春、福島の水産物を輸入禁止にした韓国の措置を容認するなど、食の安全性に対する懸念は今も国内外に根強く残っている。
 「期限ありき」で汚染水処分を急げば、地元漁民らの生活基盤を奪うことになりかねまい。
 福島の過酷事故の責任は、国策民営で原発を推進してきた政府と東電にある。地元が納得する対応策を打ち出すことが最低限の義務であることを忘れてはならない。