2014年6月30日月曜日

「サヨナラ原発1000万人アクション」 28日 明治公園  詳報

 28日、都内・明治公園で行われた反原発集会「サヨナラ原発1000万人アクション」については、28日付の東京新聞の第一報を載せましたが、その後29日に、日仏共同テレビ局と東京新聞が集会の詳細を報道しました。
 以下に詳報ということで紹介します。
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内橋克人さん、鎌田慧さんらが「サヨナラ原発1000万人アクション」にて訴え
日仏共同テレビ局 2014年6月29日 
原発ゼロを目指し再稼働に反対する市民が2014年6月28日、雨が降りしきる中、「サヨナラ原発1000万人アクション」を都内・明治公園にて催した。集会後、参加者は雨の中、デモ行進(manifestation)を行い、川内原発再稼働・反対を訴えた。
 
川内原発再稼働を今秋実行を企む九州電力
呼びかけ人の一人でルポライターの鎌田慧さんは
「日本が大きく変わろうとする歴史的転換期に集会を開いている。なんとしても食い止めていく……という気持ちでいます。たとえば集団的自衛権。7月1日(火)に解釈改憲による容認を閣議決定で決めようとしている。九州の川内原発の再稼働を秋には実行したいと九州電力はいっている。しかし、もっとも電力が消費される7月、8月といった夏は原発ゼロでやっていく」「原発ゼロを維持し、集団的自衛権を認めないように闘っていこう」
旨、訴えた。
 
一人一人が当事者性を持つことが重要
首都圏反原発連合のミサオ=レッドウルフさんは
「大飯原発を差し止める判決は希望の星になった。反原発運動は民主党政権のときには、原発ゼロの方向にもっていくことが出来た。自民党に政権が戻ってから、運動が行き詰まってしまった。そういう中で出た大飯原発をめぐる判決は、全国で運動を続けてきた人たちの(努力の)結晶です。運動が裁判の勝利を押し上げた。原告団・弁護団のご尽力は勿論ありますが、これは多くの人の運動で勝ち取ったものです」
「フクシマの事故によって原発をとめようとする流れが出来た。ただ、常日頃思うのは、福島、福島……と括っていいのかということです。県の境や国の境というものは、放射能には関係がありません。福島にも色々な地域がある。福島にも関東にも汚染されている地域もあるし、汚染されていない地域もある。こういうことを取っ払って、私たち一人一人が当事者性を強く以て、これからも運動に取り組んでいくことが重要」
と訴えた。
 
核燃料サイクル固執は核武装のため
呼びかけ人の経済評論家である内橋克人さんは
「いまこの場に立ちまして思い出すのは、サヨナラ原発集会の第一回集会です。震災が起きた2011年の9月19日のことでした。会場を埋めるたくさんの人々を前に、ワタシは二つのことを申し上げました。一つは『いつか必ず原発再稼働が検討される。この国の支配者たちは原発を捨てることはない、あきらめることはない』と申し上げました。なぜ原発にそれほどこだわるのか。地上がダメなら洞窟を掘って、地下に原発を作って、核燃料サイクルを維持するという超党派の『地下式原子力発電所政策推進議員連盟』が出来た。なぜそこまでやるのかというと、日本が核武装し、核兵器を保有したいからです」
と述べ、核燃料サイクルに為政者が拘る理由は、核兵器保有のためだと喝破した。
 
 
川内再稼働食い止めろ 「経済より命が大事」
東京新聞 2014年6月29日
 今秋以降に第一号となる可能性がある九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働に反対しようと、大規模な抗議活動が二十八日、東京都新宿区の明治公園などであった。毎週金曜日に首相官邸前で脱原発を訴えている首都圏反原発連合など三団体が主催。時折強い雨が降る中、約五千五百人(主催者発表)が「再稼働を食い止めたい」と声を上げた。 (安藤恭子)
 
 デモに先立ち開かれた集会では、「川内原発増設反対鹿児島県共闘会議」の野呂正和事務局長が「全国で初めて再稼働されようとしている川内で闘っている。お年寄りら要援護者の避難計画もずさんだ。皆さんも一緒に闘ってほしい」と呼び掛けた。最後に「命よっか大事なものがあって、よかとですかー」と方言で叫ぶと、公園を埋めた参加者から拍手が上がった。
 川内原発がある薩摩川内市に隣接するいちき串木野市で再稼働に反対する署名を行い、市人口の半数超を集めた。集会後、野呂さんは「本音では賛成の人なんていない。川内のために東京で多くの人が集まってくれた。これからの力にしたい」と語った。
 
 福島県郡山市の人見やよいさん(53)は「国も東京電力も本当のことを言わず、私たちを見殺しにしようとした。『さようなら原発』という当たり前の結論に、日本がいまだにたどり着いていないことが不思議だ」と憤った。「原発被害は、風評や福島差別の問題に置き換えられている。避難支援や子どもの保養に重点を置いてほしい」と訴えた。
 
 経済評論家の内橋克人さんは「原発再稼働の行き着くところは、戦争の抑止力としての核武装」と、集団的自衛権の行使容認問題とも絡めて反対を訴えた。川内原発は現在、原子力規制委員会の優先審査が進んでおり、審査終了は九月以降の可能性が高い。再稼働を阻止しようと、鹿児島地裁で住民らによる運転差し止め訴訟が審理中だ。
 集会後、参加者は代々木公園(渋谷区)まで約二・五キロを行進。小学二年の長女を連れた埼玉県宮代町の農業斉藤康光さん(46)は「これほど多くの人が反対しているのに再稼働の流れはなぜ止まらないのか。川内は首都圏から遠く、やりやすい所を意図的に選んでいるのでは」といぶかった。
 神奈川県秦野市の後藤正子さん(77)は「私は旧満州で銃殺される人を見た。大事なのは人の命。政治や経済を優先させて良いはずがない。集団的自衛権も原発も根っこは同じに見える」と話した。
 

「原発の発電コストは火力上回る」とNHKも報道

 27日に朝日新聞が報じた「原発コストは火力より割高』と同じ記事を、今度はNHKが29日に報じました。
 こうしたニュースはいろいろなメディアが取り上げることで世間に定着して行きます。
 そういう意味で同じ内容ですが、NHKの記事を紹介します。
 
  (関係記事)
    2014年6月28日 原発コストは火力より割高 と朝日新聞 
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「原発の発電コストは火力上回る」試算
NHK NEWS WEB 2014年6月29日
原子力発電のコストについて、来年、原発が再稼働し、運転開始から40年過ぎたら廃止すると想定した場合、東京電力福島第一原子力発電所の事故対策の費用を踏まえると、1キロワットアワー当たりのコストは、3年前に政府の委員会が試算した液化天然ガスや石炭による火力発電のコストを上回るとする新たな試算を専門家がまとめました。
 
試算は、東京電力の経営や賠償に詳しい立命館大学の大島堅一教授と大阪市立大学の除本理史教授がまとめました。
 
それによりますと、福島第一原発の事故対策の費用は、東京電力や国が公表した資料を分析すると、住民などへの賠償のほか、除染や中間貯蔵施設の整備、それに、廃炉などで、少なくとも合わせて11兆円余りに上るとしています。そのうえで、▽福島第一原発と、すでに廃炉が決まっている原発を除く、43基すべてが来年、再稼働して、▽国が定めた原則に合わせて運転開始から40年を過ぎたら廃止すると想定した場合、事故対策の費用を踏まえた原子力発電のコストは1キロワットアワー当たり11.4円と試算しています。3年前に発電コストを検証する政府の委員会が行った試算では、液化天然ガスや石炭による火力発電のコストを1キロワットアワー当たり10円前後としていて、今回、専門家がまとめた原子力発電のコストの試算は、これを上回っています。
 
試算を行った立命館大学の大島教授は「国としても、改めて原発の経済性について試算をまとめたうえで、将来的にそれぞれのエネルギーをどの程度使うのが最適か議論すべきだ」と話しています。
 

2014年6月29日日曜日

川内再稼動反対 東京集会に5500人 官邸前行動には2400人

 28日午後1時から明治公園で「6・28川内原発を再稼働させるな!さようなら原発☆首都大行進」の集会が開かれ、約5500人が参加しました。
 集会では、内橋克人(経済評論家)澤地久枝(作家)海渡雄一(弁護士)人見やよい(原発いらない福島の女たち)さんたちが挨拶し、集会後デモ行進が行われました。
◇    ◇
 首都圏反原発連合(反原連)が主催する毎週金曜日の首相官邸前抗議行動27日も行われ、時折雨が降るなか2400人参加し、官邸前は怒りの渦に包まれました。
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都内の反原発集会に5千人 「再稼働認めない」
東京新聞 2014年6月28日
 原子力規制委員会が優先的に審査する九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働反対を訴える集会が28日、東京都内で開かれた。参加者は「川内原発も他の原発も再稼働を認めない」「原発ゼロを推進させよう」と声を上げた。
 
 会場の明治公園(新宿、渋谷区)には、主催者発表で約5500人が集まった。ルポライターの鎌田慧さんは「福島のみなさんが苦しんでいる今、再稼働させないのは私たち市民に与えられた責務だ」と強調した。
 
 鹿児島県で反対運動に取り組む男性が「(事故時の)避難計画はずさん。川内原発を動かさないために一緒に闘ってほしい」と呼び掛けると、拍手が湧き起こった。(共同)
 
 
再稼働はありえぬ 官邸前行動
しんぶん赤旗 2014年6月28日 
 首都圏反原発連合(反原連)は27日、首相官邸前抗議行動を行いました。川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働をねらう安倍内閣に対し、2400人(主催者発表)の参加者は「川内原発再稼働反対」「原発やめろ」と声をあげました。時折、雨が降るなか、続々と参加者が官邸前に駆けつけました。
 
 東京都港区の会社員の男性(37)は「“原発いらない”という圧倒的な国民の声を無視して再稼働なんてありえない。安倍政権に怒り心頭です」と話します。
 
 千葉県船橋市の男性(60)は、仕事帰りに参加。「大飯原発(福井県)の運転差し止め判決に勇気をもらいました。官邸前をはじめ全国の運動が判決に影響していると思います。私も粘り強く参加していきたい」と語ります。
 
 山形市から初めて参加した男子学生(20)は「原発は早急にやめてほしい。再稼働も輸出も安全を犠牲にしている。原発ではなく、自然エネルギーにかえるべきだ」。
 
笠井・吉良両氏訴え
 日本共産党の笠井亮衆院議員と吉良よし子参院議員は27日、首相官邸前抗議行動でスピーチしました。
 吉良氏は、電力会社の株主総会で原発ゼロを求める株主提案が否決されたことを批判、「原発は廃炉に」と訴えました。
 笠井氏は、「政府がやるべきことは、再稼働を断念して、ただちに原発ゼロを決断することだ」と力を込めました。
 

2014年6月28日土曜日

原発コストは火力より割高 と朝日新聞

 27日付の朝日新聞が、「原発コストは火力より割高」の記事を載せました。
 これは既に知られていることですが、いわゆる5大紙が記事にしたのはあまり見かけません。
 ようやく原発は割高ということが公認されたわけで、今後「原発が低コスト」という偽りのスローガンは急速に崩れて行くことになります
 
 電力会社の経営分析で著名な大島堅一立命館大教授と、賠償や除染の調査で知られる除本理史大阪市大教授が最新資料を分析した結果、全国の原子力発電所が2015年に再稼働し稼働40年で廃炉にする場合、原発の発電コストは11・4円/キロワット時となり、10円台の火力発電より割高となることがわかりました
 
 因みに火力発電の発電コストは、石炭火力が10・3円、LNG(液化天然ガス)火力が10・9円です。(重油の火力燃料に占める比率は14%に過ぎません。)
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原発コストは火力より割高に 専門家が試算、発表へ
朝日新聞 2014年6月27日
 運転を止めている全国の原子力発電所が2015年に再稼働し、稼働40年で廃炉にする場合、原発の発電コストは11・4円(1キロワット時あたり)となり、10円台の火力発電より割高となることが、専門家の分析でわかった。東京電力福島第一原発の事故対策費が膨らんでいるためだ。政府は原発を再稼働する方針だが、「コストが安い」という理屈は崩れつつある。
 
 電力会社の経営分析で著名な立命館大学の大島堅一教授と、賠償や除染の調査で知られる大阪市立大学の除本理史(よけもとまさふみ)教授が分析した。近く専門誌に発表する。
 両教授が、政府や東電などの最新資料を分析したところ、福島第一原発の事故対策費は約11兆1千億円に達した。政府が昨年12月に示した「11兆円超」という見積もりを裏付けた。
 
 発電コストは、発電所の建設費や燃料などの総額を総発電量で割って計算する。民主党政権がつくったコスト等検証委員会は11年12月、原発の発電コストを実態に近づけるため、実際にかかる事故対策費や政策経費も総額に加えることを決め、試算した。
 このとき事故対策費は約5兆8千億円とされ、原発の発電コストは8・9円と試算された。04年の試算は5・9円だった。大島教授が今回、この計算式に約11兆1千億円の対策費を当てはめたところ9.4円になった。
 原発の再稼動手続きが進む実際の状況に近づけようと、停止中の原発のうち40年の「寿命」を迎える5基を除く43基が15年に再稼動し、40年で廃炉になる条件を加えたところ、11・4兆円になった。これだと同委員会が出した石炭火力の10・3円、LNG(液化天然ガス)火力の10・9円と比べ、原発は割高となる。
 (後 略
 
 

川内原発:火山対策、予知頼みは無謀と専門家

 昨年7月にまとめられた新規制基準では、原発から半径160キロ圏内の火山を調査し、火砕流が襲う可能性が明確に否定できない場合は、「立地不適」とすることが決められました。
 九州電力川内原発はそれに該当しますが、広い範囲に火砕流が及ぶような大規模な噴火の兆候は、地震や地殻変動の観測を充実することで捉えられて、必要な対応ができるという九州電力の説明を鵜呑みにする形で、それをスルーして審査が進められようとしています。 
 
 この問題についてはこれまでも何度か取り上げましたが、26日、今度は毎日新聞が中田節也東大教授へのインタビュー記事を載せました。
 教授が、噴火の予知で対応するのは全く無理ということを原子力規制庁によく説明したにもかかわらず、「監視すれば大丈夫との姿勢を崩さなかったということです
 
 以下に紹介します。
 
  (関係記事)
   2014年6月4日 「川内原発 巨大噴火の予測は困難と噴火予知連 
   2014年6月1日 「火山噴火リスク軽視の流れ、専門家から批判
   2014年5月1日 「火山活動の予測は無理 火砕流が川内原発を襲う 
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川内原発:火山対策、予知頼みの無謀 専門家警告
毎日新聞 2014年06月26日
◇火砕流で原子炉爆発の恐れ
 原子力規制委員会による九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機の適合性審査が、大詰めを迎えている。安倍政権は「再稼働1号」と期待するが、周辺は巨大噴火が繰り返されてきた地域だ。このまま通して大丈夫なのか。他にも同様のリスクを抱える原発がある。東大地震研究所火山噴火予知研究センターの中田節也教授(火山岩石学)に聞いた。【瀬尾忠義】
 
 規制委が川内原発の審査を優先したのは、九電による地震や津波の想定を「妥当」と評価したからだ。火山については「稼働期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分低い」という九電の説明を、大筋で了承した。
 
 だが、川内原発のある南九州は、図のように巨大噴火による陥没地形「カルデラ」の集中帯だ。「カルデラ噴火は日本では1万年から数万年に1回起きており、同じ場所で繰り返すのが特徴です。姶良(あいら)カルデラは前の噴火から約3万年、阿多カルデラも約10万年が経過しており、両カルデラのある錦江湾の地下にマグマがたまっているというのは火山学者の常識。そろそろ何かの兆候があっても不思議はありません」。中田教授はそう警告する。
 
 昨年7月に施行された新規制基準では、原発の半径160キロ以内にある火山の火砕流や火山灰が到達する可能性を調べ、対応できないと判断されれば「立地は不適」として廃炉になる。こうした火山リスクは、福島第1原発事故の前にはほとんど議論されなかった。その理由を中田教授は「近年の日本の火山は異常に静かだから」と言う。「日本ではカルデラ噴火どころか、1707年の富士山、1914年の桜島、1929年の北海道駒ケ岳の後は大きな噴火は起きていません。原発が日本に導入されたのは1950年代なので、真剣に考慮されることはなかったのです」
 
 もし今、カルデラ噴火が起きたらどうなるのか。
 「軽石や火山灰が火山ガスと一緒に火山の斜面から流れ下る火砕流に巻き込まれれば、原子炉建屋は破壊されます。炉自体の破壊は免れても、火砕流内の温度は推定400度以上と高熱ですから炉内の冷却水は蒸発してしまい、暴走して結局は爆発する。いずれにしろ大量の放射性物質が大気中に放出されるのは避けられないでしょう。実際、川内原発と玄海原発の近くでは火砕流堆積(たいせき)物が見つかっています」と中田教授。姶良カルデラ噴火を上回る規模だったとされる阿蘇カルデラ噴火(約9万年前)の火砕流は、四国西端の伊方原発がある場所近くまで到達したと考えられているのだ。洞爺カルデラに近い北海道・泊原発などにも同じリスクがある。
 
 九電は当初、過去の巨大噴火で川内原発に火砕流は到達していないとしていたが、3月の審査会合で約3万年前の姶良カルデラ噴火による火砕流が川内原発に到達していた可能性を初めて認めた。
 火砕流が到達しなかったとしても、火山灰のリスクがある。九電は桜島の大噴火で火山灰が敷地内に最大15センチ積もると想定。電源や食料を確保するほか、換気設備や発電機のフィルターは交換、除灰で対応するとしている。「施設から火山灰を取り除く対策は工学的には正しい。しかし火山灰が数センチ積もれば車が動かなくなります。灰が降り積もる中で、除灰する人の確保や物資の運搬をどうするのか」
 
 昨年2月、週刊誌に中田教授を含む火山学者らが巨大噴火を警告する記事が掲載された。その直後、中田教授は規制委の事務局である原子力規制庁に呼ばれた。「私は『GPS(全地球測位システム)で地殻変動などを観測していれば噴火の前兆はつかめる。ただ、噴火がいつ来るのか、どの程度の規模になるかは分からない』と説明しました。しかし、規制庁は『前兆はつかめる』という点に救いを見いだしたのでしょう。いくら時期も規模も分からないと繰り返しても『モニタリング(監視)さえすれば大丈夫』との姿勢を崩さなかった」
 九電は巨大噴火の前兆を把握した場合、社外の専門家を含めて本当に噴火するのかを検討し、原子炉を止めて核燃料を別の場所に運び出すとの方針を打ち出した。規制委は「搬出先や搬出方法は電力会社が決める」との立場を取っている。米原発メーカーで原発技術者を18年間務めた佐藤暁さんは「稼働中の原子炉から取り出した使用済み核燃料を搬出する前に、まず原子炉建屋内の冷却プールで5年以上貯蔵しなければならない。さらに搬出作業にも輸送用容器の手配などが必要で、とても数カ月では完了しない。搬出中に噴火が起これば貯蔵中よりも危険。噴火が迫ってからやるべきことではない」。
 
 中田教授が「安全に核燃料を運搬するために数年前に噴火の予兆を把握することなど無理だし、保管場所も決まっていない。詰めるべき点はたくさんある」と批判するように、机上の空論なのだ。
 
 国際原子力機関(IAEA)で原発立地と火山に関する安全指針の作成に関わった経験を持つ中田教授は、規制委が「火山影響評価ガイド」をまとめる際にも意見を求められた。ガイドは、火山活動の影響で原発の安全性が損なわれない設計であることを確認するものだ。だが策定まで約3カ月しかなく、既に方向は決まっていた。「火砕流などが原発に到達しないことを学問的に厳密に詰めなくても、モニタリングに頼って審査を通そうというガイドになってしまった。原発を動かしたい人の習性が反映された内容」と手厳しい。そして、こう懸念するのだ。「噴火で原発に被害が出れば責任は火山学者に押し付けられるだろう。東日本大震災で地震学者の責任が追及されたのと同じ構図になるかもしれない」
 
 九電は24日、川内原発の原子炉設置変更許可申請の再補正書を規制委に提出した。記載漏れなどの不備があったためで、審査が通り地元の同意が得られれば再稼働は9月以降となる見通しだ。
 
 「川内原発はあの場所に造るべきではなかった。今も不安材料があるのだから、再稼働には慎重になるべきだ。どうしても動かしたいなら、政府は核燃料の搬出先の確保など安全対策に積極的に関与しなければ。モニタリングを重視するなら火山研究者を増やしたり、財政的な支援をしたりしなければならない。そこまで政府は腹をくくっていますか?」(中田教授)
 
 火山のモニタリングをすれば安全という新たな「安全神話」が誕生している。
 
なかだ・せつや 
 1952年、富山県出身。金沢大大学院理学研究科修了。九州大に助手として雲仙普賢岳の噴火研究を最前線で続けた。これまでに三宅島、新燃岳など国内外の火山を研究。国際火山学・地球内部化学協会会長も務めた。 

九州電力がモニタリングの対象とする火山
九州電力がモニタリングの対象とする火山

2014年6月27日金曜日

東電がまたADR和解案(一律5万円増)を拒否

 福島原発事故のため避難生活を送っている浪江町の町民約千人が、慰謝料の増額を求めたのに対して、原子力損害賠償紛争解決センターが提示した「一律月五万円」を増額する和解案を、東電は拒否しました。
 
 東電は批判を受けると和解案の尊重を口にしますが、負担の大きい和解案は拒否するという姿勢は変わりません。
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東電、一律5万円増拒否 浪江町民慰謝料の和解案
東京新聞 2014年6月26日
 東京電力福島第一原発事故による避難が続く福島県浪江町の町民約一万五千人が、慰謝料の増額を求めた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、東電は、原子力損害賠償紛争解決センターが提示した「一律月五万円」を増額する和解案を拒否する回答を、センターと町に伝えた。
 
 センターは、一律五万円に加え、七十五歳以上の高齢者にはさらに三万円増額するとの和解案を示していたが、東電は「高齢者で持病のある人」に限定し、月二万円増額すると回答した。
 
 慰謝料は、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が示した指針で、月十万円と定められている。東電は二十六日の株主総会で質問を受け、回答の中身には触れずに「多くの方に一律に指針を上回る賠償をすることは、指針の考え方から乖離(かいり)し公平性を欠く」と答えた。
 
 浪江町側は二十五万円増やし一律三十五万円を支払うよう求め、センターが和解案を提示した。町は既に和解案の受け入れを表明している。
 
 <ADR> 原発事故の損害賠償交渉を裁判以外で行う手続き。法律家の仲介委員が、東電との交渉で合意できないケースで和解案を示す。今月25日現在、申立数は1万1992件。審理終了分9047件のうち和解成立は7351件。
 

「凍土壁」早くも黄信号 地下トンネル内の汚染水の処置が難航

 福島原発の汚染水対策の柱として6月に着工したばかりの凍土壁工事は、既に黄信号が3つも灯り先行きが不透明です。
 
 一つは、2号タービン建屋地下室から地下トンネル内に漏水している箇所を凍結させて止水することが、4月末からもう2カ月経つのにまだ出来ていません。すこしでも流動がある箇所は凍結しないようです。
 水の流速が10センチ/日以下でないと凍らないというのですが、漏水箇所の流速を読み違えたのでしょうか。また施工箇所の全域において地下水の流速が10センチ/日以下であることをどのようにして確認したのでしょうか。
 
 もう一つは、凍結用冷媒管を地下30mまで打ち込むため難透水層を貫通させますが、その貫通箇所を通して上下の水が混じらないような工法を取る必要があるために、その分工事が遅れるという問題です。
 
 三つ目は、凍土壁が地下トンネルを2箇所で横断するため、そこに冷媒管を貫通させるときに、トンネル内の極めて濃厚な汚染水(合計10,000トン)が外部に漏れないようにしなければならないという問題です。
    註. 三つ目の問題を解決するためには、まず一つ目の問題が解決されなくてはならないという関係にあります。
 
 以上の3点はいずれも着工前から分かっていたもので、規制委が提示した30数項目の検討項目にも当然含まれていた筈です。
 経産省と東電はそれには取り合わずに先ず強引に着工し、もう引き返せないという実績を作ってから改めで問題点を明らかにしたものと思われます。無責任を絵に描いたような話です。
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「凍土壁」早くも黄信号 地下トンネル、汚染水抜き難航
 東京新聞 2014年6月26日
 東京電力福島第一原発の汚染水対策の柱として、政府が三百二十億円の税金を投じる凍土遮水壁に、着工から三週間で黄信号がともっている。海側の建設ルート上を地下トンネルが横切っており、中の高濃度汚染水を抜かないと凍土壁は造れない。その水抜き工事が難航しているからだ。 (小倉貞俊)
 
 問題のトンネルは、2号機タービン建屋から海側の取水口付近に延びる。二〇一一年の事故発生当初、大量の汚染水が海に漏れたルートだ。近くのトンネルと合わせると、今なお一万トンを超える汚染水がたまっている。
 二十五日の原子力規制委員会でも、福島第一が抱える当面の最大の懸念は、トンネル内の汚染水との認識で一致した。
 
 凍土壁を造るには、まず建屋からトンネルへの水の流れを遮断し、トンネル内の汚染水を抜いてセメントを充填(じゅうてん)する。水漏れの危険をなくしてから、トンネルごと地中に穴を開け、凍土壁用の凍結管を入れる必要がある。
 東電は、建屋とトンネルの接合部にセメントなどを詰めた袋を並べ、凍結管を入れて“ミニ凍土壁”を造成。接合部が凍っている間に水抜きなどの作業を進める計画を立てた。
 だが、凍結液を流し始めて一カ月半もたつのに、ほとんど凍っていない。
 
 実証試験は成功したが、実際の現場では水の流れがあり、凍る前に水が入れ替わってしまうのが原因だった。東電は凍結管を増やしたり、水流を緩めるなどの対策を試みたりしているものの、状況は改善しない。
 このまま問題が解決しないとどうなるか。凍土壁を造る凍結管をトンネル部分だけ避けて設置すると、トンネルの幅は約四メートルあるため、巨大な隙間ができて壁は完成しない。水抜きをしないままトンネルに穴を開けると、凍土壁はできても地中や海を汚染する。
 
 東電は、建屋の接合部が凍らない場合、トンネル内にセメントを少しずつ充填しながら、水を抜くことも検討している。ただ、この工法は、作業員の被ばくリスクが高まるなど大きな危険を伴う上、確実にトンネルがふさがる保証はない。
 規制委の田中俊一委員長は、今回の水抜き作業が難航していることについて、「福島第一のような(厳しい環境の)所は試行錯誤的に多重性を持って考えておく必要がある、との教訓ではないか」とし、複数の対策を試みる必要があるとの考えを示した。
 
<凍土遮水壁> 1~4号機の周りに1550本の鋼管を地下30メートルまで打ち込み、マイナス30度の液体を循環させて土壌を凍結。壁のようにして地下水の動きを封じ込め、建屋への地下水流入、建屋からの汚染水流出をブロックさせる狙い。今月2日、1号機近くで着工、本年度末の完成を見込んでいる。
 
写真

福島市 こしあぶら17000ベクレル/キロ

 福島市はホームページで、5月1日~31日に測定した放射性セシウムの高い農作物を公表しました。

 それによると高い順から、こしあぶら 17,060ベクレル/キロ、たらのめ 3,609ベクレル/キロ、はちみつ 2,656ベクレル/キロ、ぜんまい 1,555ベクレル/キロ となっています。

 この高レベルな汚染はこの先もずっと続き、30年経ってようやく半減するわけです。
 
 グラフ等は省略しましたので、詳細は原文でご覧ください。
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ご家庭の食品中に含まれる放射性物質の測定結果をお知らせします
福島市 ふくしまウエブ (2014年)6月16日更新
 
 市では、平成24年3月1日より各地区の支所などに食品等簡易放射能測定器を新たに設置し、平成23年11月より測定を開始した放射線モニタリングセンターを含め市内38施設で、家庭の食品中に含まれる放射性物質の測定受付をおこなっております。そこで申し込みいただいた食品の測定した結果をお知らせします。
 
平成26年5月1日から5月31日の測定結果
1. 測定状況
 平成26年5月における出荷販売を目的としない市民持込による食品の測定件数は、食品を切り刻まない(まるごと測定)と切り刻む測定と合わせて2,983件となり、平成25年5月の2,397件に比較して586件の増で、24.4パーセント増加しました。5月の測定のうち、93.4パーセントを農作物等が占めています。
 全測定品のうち、セシウムの検出率は39.8パーセントです。また、基準値を超過した物は10.3パーセントです。
 なお、測定方法ごとの件数は表1のとおりです。全測定件数2,983件のうち、2,543件(85.2パーセント)が「まるごと測定」での測定となりました。
 【図 1 測定品種の構成】
    (省 略
 【図2 測定品種ごとの基準超過件数等】
    (省 略
 
【表1 測定方法ごとの測定件数】
測定方法
飲料水
農作物等
食品
その他
合計
きざむ測定(破壊式)
52
363
17
8
440
まるごと測定(非破壊式)
2,422
91
30
2,543
合計
52
2,785
108
38
2,983
 
2. 平成25年度測定結果との比較について
【表2 検出状況】
測定時期
測定件数
(a)
検出件数
(b)
基準値
超過件数
(c)
検出率
(パーセント)
(b)/(a)
基準値超過品
出現率
(パーセント)
(c)/(a)
H25年5月
2,397
956
296
39.9
12.3
H26年5月
2,983
1,188
311
39.8
10.4
 
3. 放射性物質の濃度が高かった農作物等について
 品目毎のうち、放射性物質の濃度の高かったものは表3のとおりです。出荷制限の対象となっている「きのこ類」や「山菜類」などで基準超過が見られます。
 
【表3 放射性セシウムの高かった主な農作物等】
測定品目
測定件数
検出件数
基準値超過件数
セシウム合計値最大値
(ベクレル/キログラム)
*こしあぶら
83
79
68
17,060
*たらのめ
77
54
25
3,609
 はちみつ
3
2
2
2,656
 ぜんまい
14
13
9
1,555
*わらび
397
156
30
1,238
*きのこ(シイタケ)原木
11
11
9
1,008
*タケノコ
1,087
669
124
705
注: 頭に*印のついている品目は、出荷・摂取制限が市内の一部の地域、または全域等で適用されています。
 
4. 測定件数の多かった品目について
【表4 測定件数の多かった測定品目】
測定品目
測定件数
(a)
検出件数
基準値
超過件数
(b)
基準超過品出現率
(パーセント)
(b)/(a)
*タケノコ
1,087
669
124
11.4
*わらび
397
156
30
7.6
 ふき
272
24
1
0.4
 うど
95
12
3
3.2
 キャベツ
89
0
0
0.0
*こしあぶら
83
79
68
81.9
注:頭に*印のついている品目は、出荷・摂取制限が市内の
一部の地域、または全域等で適用されています。
 
5. 測定結果の傾向と測定のお勧めについて
 基本的に葉物野菜、根菜類を中心に検出されにくい傾向が続いていますが、「山菜類」、「きのこ類」など出荷制限等の適用されている品目などでは、基準値を超えるものが存在します。
   (後 略
【表5 まるごと測定器配置場所一覧】
   (省 略