2018年12月29日土曜日

29- 長らくブログを休刊しました

 11月18日のブログに「お知らせ 体調不良のため回復するまで記事の更新を休みます」と極めて簡単な「お知らせ」をしました。
 当時は「風邪をこじらせた程度なので、3日もすれば記事の更新が可能になるだろうから」という認識でいたためですが、実際は、風邪の菌が腸腰筋に取り付いてそこを化膿させる「腸腰筋膿瘍」という変わった病気だったため、病状は急速に悪化し、21日以降は、体を起こそうとすると腰や体幹部に激痛が走り、パソコンに向かうことも出来なくなりました。
 
 救急車で地元の病院に担ぎ込まれたのが23日で、その後すぐに地域の基幹病院に転院し、以後12月27日に退院するまで35日間の入院・治療となりました。
 
 現在は腸腰筋の炎症が完全に治まりました(炎症指標CRP=0.1㎎・dl)ので退院できたのですが、長期間ベッドでの生活をしたために、炎症を起こした側の左脚がやや不自由になりました。今後リハビリに努めたいと思います。
 
 そのような次第で 結果的に40日間もの長期の休刊になってしまいました。
 もしも11月18日の時点で長期休刊が予想出来ておりましたら、当然それなりのお知らせができたのですが、申し訳ありませんでした。
 いずれにしましても詳しい事情の説明もないままに、結果的にこの事態に至った不手際につきまして、深くお詫びいたします。
 
 本来であればすぐにでもブログを再開すべきなのですが、湯沢はあいにく大雪の中の年末となり、年賀状書きを含め40日間の突然のブランクの修復に個人的にやらなければならないことも色々とありますので、年明けの5日頃をメドに再開したいと考えております。
 
 話が前後しましたが
 いつもこのブログをご訪問いただきまして本当にありがとうございます。
 どうぞ今後ともご訪問いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

2018年11月18日日曜日

18- 伊方原発再稼働容認は安全神話の復活

 伊方原発3号機を運転しないよう求めた仮処分申請の抗告審で、高松高裁がそれを退けた理由は、「原子力規制委が行った審査には合理性がある」という型通りのものでした。
「阿蘇山で運用期間中に破局的噴火が起きる根拠は不十分」なので、再稼働を取り止める理由にならないとしました。逆に運用期間中に噴火が起きないという証明もできないにもかかわらずにです。(大分地裁では「社会通念」上危険はないと判断されるとしました)
 また地震学の権威である島崎・東大教授が低すぎると指摘した基準地震動についても、「規制委の判断に合理性がある」と判断しました。直近の北海道胆振地震をはじめ最近の大地震は活断層が知られていないところで起きています。そんな中で一たび過酷事故が起きれば周囲一帯に大被害を及ぼす原発の基準地震動を650ガルというような低い値に決めて良い筈がありません。
 裁判所は、原発の再稼働を進めるという最高裁事務総局の方針に従って、審理において対立した部分についてはすべて「規制委の判断に合理性がある」で片づけています。しかし規制委自身が「新規制基準は原発の安全を保障するものではない」としているのですから、それには何の説得力もありません。
 住民の避難計画が実効性を有していないことを認めながら、再稼働の障害にはならないとしていることも論外です。
 
 ところでトランプ大統領が批判を続けるCNNの記者証を没収したのは、「適正な手続きを欠いた」ものであるとしてワシントンの連邦地裁は16日、記者証をCNN記者に返還するよう命じました。せめてこの程度の裁判所の独立性がなぜ日本では保てないのでしょうか。
 
 裁判所はかつて原発の「安全神話」を前提に原発を普及させるという国策に加担し、住民からのすべての原発訴訟を斥けてきました。福島原発の大事故でホンの一瞬だけ反省の弁を口にしましたが、いまは再び「安全神話」に立ち戻り、原発の再稼働を次々と認めています。
 これでは福島の悲劇はいずれまた繰り返されます。
 東京新聞の社説を紹介します。
お知らせ
体調不良のため回復するまで記事の更新を休みます。
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(社説) 伊方原発容認 安全神話の復活なのか
東京新聞 2018年11月17日
 噴火も地震も取るに足らない、避難計画は不完全でもいいと言うのだろうか。四国電力伊方原発の運転差し止めを求める住民の訴えを司法はまたもや退けた。「安全神話」の亡霊を見る思いである。
 「原子力規制委員会の審査には合理性があり、四国電力が策定した最大の地震の揺れや噴火の影響についての評価も妥当」-。
 
 高松高裁は、四国電力が示したデータに基づいて、規制委がくだした新規制基準への「適合」判断を丸ごと受け入れたかのように、住民側の訴えを退けた。
 破局的噴火は予知できない、地震の揺れの評価方法に問題がある-という専門家の指摘も顧みず、九月の広島高裁、大分地裁、そして今回と、繰り返される判断だ。
 一方で高松高裁は、原発周辺の自治体が策定を義務づけられた避難計画に関しては、陸路も海路も輸送手段に懸念があって、屋内退避施設も不足しており、「不十分だ」と認めている
 
 再三指摘してきたように、日本一細長い佐田岬半島の付け根に位置する伊方原発は、周辺住民にとって、“日本一避難しにくい原発”との声もある。
 実際に事故が起きたとき、原発の西側で暮らす約四千七百人の住民は、船で九州・大分側へ逃れる以外にないのである。
 海が荒れれば船は出せない。地震で港湾施設が被害を受けたらどうなるか。避難者を港へ運ぶバスなども、確保できる保証はない。その上、屋内退避場所さえ、足りていないというのである。
 
 現状では、多くの住民が避難も屋内退避もできず、放射線の危険にさらされる恐れが強い。そのような認識がありながら、司法はまたも住民の訴えを退けた。避難計画の軽視が過ぎる
 規制委が基準に「適合」すると認めた以上、福島のような過酷事故は起こり得ない、との大前提に立つからだろう。
 これでは、安全神話の復活と言うしかないではないか。
 規制委は、原発のシステムが規制基準に「適合」すると認めただけで、安全の保証はしていない。規制委自身も認めていることだ。避難計画の評価もしない。それなのに規制委の審査結果を司法は追認するだけだ。こんなことでいいのだろうか。
 
 責任は棚上げにしたままで、原発の稼働が次々許される。
 「安全神話」が前提にある限り、福島の悲劇はいつかまた、繰り返される。

2018年11月17日土曜日

東電強制起訴 立証終了『求刑焦点』 

 福島原発事故を巡り、強制起訴された旧経営陣3人の第34回公判14日、開かれ被害者遺族が意見陳述し、検察側と弁護側の立証が全て終了しました。論告求刑1226日、最終弁論は来年3月に行われ、結審します
 東電の元幹部が「3人の了承を得て津波対策を正式決定したが、その後、方針が撤回された」との証言と、被告3人の主張のどちらに地裁が合理性を見いだすかが判決を分けるポイントとなります。
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東電強制起訴、立証終了『求刑焦点』 合理性...判決ポイントに
福島民友 2018年11月15日
 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人の第34回公判は14日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれた。事故の被害者遺族が意見陳述し、検察官役の指定弁護士と弁護側の立証が全て終了した。論告求刑公判は12月26日、最終弁論は来年3月に行われ、結審する。検察審査会の議決を経て始まった異例の裁判は大きな節目を迎える。検察官役の指定弁護士の求刑が焦点となる。
 
 被告人は勝俣恒久元会長(78)と武黒一郎(72)、武藤栄(68)の両元副社長。争点の柱は〈1〉3人は大津波の到来を具体的に予測できたか〈2〉対策を取れば事故は防げたか―の2点。昨年6月の初公判以降、有罪の立証の基礎となる〈1〉を巡ってやりとりが続いた。中心になったのは、政府が本県沖での大津波の可能性を指摘した見解(長期評価・2002年公表)の信頼性。東電の長期評価の取り扱いについて、指定弁護士が「重要証拠」と位置付ける元幹部が「3人の了承を得て津波対策を正式決定したが、その後、方針が撤回された」との趣旨を供述した検察官面前調書や社内資料と、被告3人の主張のどちらに地裁が合理性を見いだすかが、判決を分けるポイントになるとみられる。

初の灰処理施設整備 減容化施設双葉で起工式 福島

 福島県双葉町の除染廃棄物などを減容化処理する環境省の仮設焼却施設と仮設灰処理施設の起工式15日、町内細谷の現地で行われまし
 仮設焼却施設と仮設灰処理施設は一組の減容化施設として整備し計2カ所建設し、総工費は約2500億円、3年間で計約231千トンを処理する予定です。
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県内初の灰処理施設整備 減容化施設双葉で起工式
福島民報 2018年11月16日
 東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く双葉町の除染廃棄物などを減容化処理する環境省の仮設焼却施設と仮設灰処理施設の起工式は十五日、町内細谷の現地で行われた。灰処理施設の整備は県内初めてで、両施設とも中間貯蔵施設内に建設する。処理した灰は中間貯蔵施設内で再利用する。二〇二〇年三月から二〇二三年三月までの運転を予定している。
 仮設焼却施設と仮設灰処理施設は一組の減容化施設として整備し計二カ所建設する。用地面積は約十一万四千平方メートル。総工費は約二千五百億円。
 仮設焼却施設は町内で発生した可燃性の除染廃棄物や家屋解体廃棄物などに加え、中間貯蔵施設内に搬入された除染廃棄物を焼却処理する。三年の運転期間で計約二十七万七千トンを処理する見込み。
 仮設灰処理施設は焼却処理で出た燃え残りをさらに溶融し、減容化する。その際に出た灰などを中間貯蔵施設内の路盤材など建設資材に再利用する方針。三年間で計約二十三万一千トンを処理する予定
 起工式には関係者約七十人が出席した。秋元司環境副大臣や伊沢史朗町長、佐々木清一町議会議長らがくわ入れし、工事の無事を祈った。

福島原発 燃料取扱機の自動停止トラブルは人為的ミス

 福島原発3号機の使用済み核燃料プールで燃料取扱機が動作確認中に自動停止し、模擬燃料が水中で22時間つるされたままになったトラブルは、遠隔操作に必要な伝送装置の一部が図面に反映されておらず、別の作業中に気付かずに電源を切ったため人為的ミスでした。
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福島原発のトラブルは人為的ミス 燃料取扱機の自動停止問題
中日新聞  2018年11月14日
 東京電力福島第1原発3号機の使用済み核燃料プールで燃料取扱機が動作確認中に自動停止し、模擬燃料が水中で約22時間つるされたままになったトラブルについて、東電は14日、原因は遠隔操作に必要な伝送装置の一部が図面に反映されておらず、別の点検作業中に気付かずに電源を切ったためだったと発表した。機器の不具合ではなく、人為的ミスだった。
 
 東電によると、11日午後、模擬燃料をプールから輸送容器まで水中で移動させて入れる一連の手順を確認中に警報が鳴り、燃料取扱機が自動停止した。この日は燃料取扱機の動作確認とは別に、ディーゼル発電機の電源設備の点検をしていた。 (共同)

17- 指定廃最終処分場候補地の撤回を要請

指定廃最終処分場候補地 村井知事、国に撤回要請
河北新報 2018年11月16日
 東京電力福島第1原発事故の放射性物質で汚染された国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)を超える指定廃棄物の処分を巡り、村井嘉浩知事は15日、栗原、加美、大和3市町の最終処分場候補地の撤回を国に求めたことを明らかにした。
 
 同日あった県議会予算特別委員会で議員の質疑に答えた。村井知事は基準を下回る汚染廃棄物の処理を優先させる考えを重ねて示し、「堆肥化やすき込み、焼却で(汚染廃を)ゼロにした上で、次のステップとして指定廃を議論する」と述べた。
 環境省は県内に指定廃の最終処分場を整備する方針を崩していないが、各候補地の強い反発で議論は進んでいない

2018年11月16日金曜日

東海第2原発の避難計画は虚構と塩川議員 衆院内閣委で

 共産党の塩川鉄也衆院議員は14日の内閣委員会で、東海第2原発事故時の広域避難計画の問題点を追及しました。
 塩川氏は、茨城県がバス3270が必要としていることに対し、「同県バス協会は『運転手の安全確保のためにバスは出せないと県に伝えている』が、本当に運転手を確保できるのか」と追及しました。政府は「バス協会と調整する」と繰り返すのみでした
 塩川氏はまた、寝たきりや車いすの人などの福祉車両の確保の問題や、放射線量をチェックするスクリーニングで生じる渋滞などを挙げ、「96万人の避難計画そのものが虚構でしかない」と批判し、東海第2原発の廃炉を求めました。
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原発避難計画は虚構 塩川議員 東海第2の問題点追及 衆院委
しんぶん赤旗 2018年11月15日
 日本共産党の塩川鉄也衆院議員は14日の内閣委員会で、28日に運転開始から40年を迎える日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)についての広域避難計画の問題点を追及しました
 首都圏に立地する同原発は、原発から30キロ圏内だけでも96万人が居住しています。圏内44市町村のうち34自治体の議会で再稼働等に反対する意見書が採択され、海野徹那珂市長も反対を表明しています。
 
 塩川氏は、茨城県がバス3270台で15万人の避難を想定していることに対し、「同県バス協会は『放射能が放出された時点で、運転手の安全確保のためにバスは出せないと県に伝えている』と述べている。これは当然のことだ」と指摘し、「運転手を確保できるのか」と追及。内閣府の荒木真一大臣官房審議官は「バス協会と調整する」と繰り返すのみ
 塩川氏はまた、寝たきりや車いすの人などの福祉車両の確保の問題や、放射線量をチェックするスクリーニングで生じる渋滞などを挙げ、「どう考えても避難計画は成り立たない」と強調しました。
 
 塩川氏は、避難計画の妥当性について、計画作成にかかわる国や自治体が評価する仕組みでは実効性が担保できないとして、「96万人の避難計画そのものが虚構でしかない」と批判。日本原子力発電と東京電力の役員に経産省出身者がいることも示し「危険な原発の再稼働の大本には国と電力会社による官民癒着がある」として東海第2原発の廃炉を求めました。

<核のごみ 漂流する処分策> 河北新報

 河北新報が、<核のごみ 漂流する処分策>シリーズの4つの記事(電子版ベース)を載せましたので紹介します。
 原記事には「科学的特性マップ」の図等も掲載されていますので、興味のあるかたは、記載のURLからアクセスしてください。
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<核のごみ 漂流する処分策>NUMOの科学的特性マップ説明会 
              東北で懸念や反発相次ぐ
河北新報 2018年11月15日
 NUMOは、核のごみの最終処分地の選定や建設、運営を担う。手始めに科学的特性マップの説明会を各地で展開する。東北では懸念や反発を招いた。
 「なぜ釜石でこの時期に開くのか」。釜石市岩手県で10月21日にあった説明会は、序盤から紛糾した。
 市内では1988年から10年間、旧動力炉・核燃料開発事業団が地層処理の基礎研究を実施。市議会は最終処分地の拒否宣言を決議した歴史がある。
 
 マップでは、岩手県沿岸は全て輸送面でも好ましい地域。しかも当日は一大行事「釜石まつり」と重なり、不信と疑問が噴出した。NUMOの担当者は「県庁所在地は一巡し、交通の利便性などから釜石を選んだ」「旧動燃の経緯は知っているが、別組織だ」などと釈明に追われた。
 会場からは「なぜ原発を再稼働し、最終処分が大変な核のごみを増やすのか」との意見もあった。市内の会社員の男性(48)は「地域の感情は分かるが、原発の恩恵を受けたわれわれの世代が解決に進まないといけないのでは」と話した。
 
 日本原燃が核のごみを一時貯蔵する青森県。事あるごとに、知事が経済産業相に最終処分地にしない約束の順守を求める光景が定着した。青森が最終処分場化される不安が消えないからだ。核のごみは2045年に最初の保管期限を迎えるが、最終処分場は建設まで約30年かかるとされ、単純計算では間に合わない。青森市で7月に開かれた説明会でも「本当に間に合うのか」「どこの自治体も手を挙げなかった場合はどうなるのか」などの指摘が出た。
 マップが公表された17年7月、世耕弘成経済産業相は青森県と原発事故に遭った福島県を候補地から外す考えを示した。
 
 
<核のごみ 漂流する処分策> 幌延深地層研究センター 近づく実験期限
河北新報 2018年11月15日
 東京電力福島第1原発事故後、原発が再稼働する一方で高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に向けた動きは停滞したままだ。日本原子力研究開発機構(JAEA)の幌延深地層研究センター(北海道幌延町)は、核のごみを地中深く埋める「地層処分」(最終処分)の実験場。研究期限が近づく中、地元では予定通り終了を求める声と経済効果を期待して延長を求める声が交錯する。最終処分実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は、候補地となり得る地域を示した「科学的特性マップ」の住民説明会を各地で開催しPRに躍起だが、関心は総じて低い。「トイレのないマンション」から、いつ抜け出せるのか。(東京支社・瀬川元章)
 
◎地下350m閉じ込め性能試験「さらに深い所理想」
 国内最北端の稚内空港から南へ40キロ。2300人が暮らし、酪農が盛んな幌延町にJAEAの幌延深地層研究センターがある。
 西立て坑からエレベーターで降りて約4分。地下350メートル、水平に掘った8の字形の調査坑道(全長757メートル)に着いた。
 トンネルの掘削現場に似ている。海に近く、軟らかい堆積岩の地質。壁には1メートル間隔でアーチを支える鋼材が食い込む。塩気のある水があちこちで染み出し、道端の排水溝にたまる
 湧水量は1日60トン。ぷくぷく浮かぶ気泡はメタンガスを含む。2013年には湧水が急増。メタンガス濃度が基準値を超え、作業員が避難する事態が起きた
 
 坑道の一角で、核のごみの「模擬」埋設試験が15年から行われている。
 垂直に掘った穴に、ガラス固化体を収納する金属容器(高さ173センチ、直径82センチ、重さ6トン)を置き、ブロック状の緩衝材で覆う。穴を埋め、坑道をふさぎ、厚さ3メートルのコンクリートでふたをした
 地下深部は酸素がほぼなく、水の動きは極めて遅いという。容器の内蔵ヒーターを100度まで加熱し、ガラス固化体から出る熱を再現。周囲を水で満たすため、圧力をかけて注水する装置がガタガタ音を立てる。
 試験は少なくとも19年度まで続け、放射性物質を閉じ込める性能を確かめる。センターの佐藤稔紀深地層研究部長は「施工は想定通りクリアした。千年万年後の現象を予測するシミュレーションに使う熱や水、応力、化学のデータを取っている最中」と説明する。
 
 センターは01年に調査を開始。本年度末までの総事業費は566億円に上る。現在は約100人が働く。
 研究期間は20年程度で終期が迫る。佐藤氏は「もう少し深い所で亀裂や断層がない領域が出てきそうだ。研究の場として、より理想的な条件に近づく」と指摘。「350メートルでの研究を継続するか、(当初計画の)500メートルまで掘るか、埋め戻すか。19年度末までに方針を示したい」と話した。
 
[高レベル放射性廃棄物(核のごみ)]
 使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムなどを取り出した後に残る廃液で、高温のガラスと混ぜて固めたものを「ガラス固化体」と呼ぶ。極めて強い放射線を出す。日本の使用済み核燃料は約1万8000トンあり、既に再処理した分も含めるとガラス固化体で2万5000本相当になる。2000年成立の特定放射性廃棄物最終処分法で、ガラス固化体を地下300メートルより深く埋める「地層処分」が決定。埋設後の取り出しは想定せず、事実上の最終処分地となる。岐阜県には、硬い結晶質岩で地層処分を研究する日本原子力研究開発機構(JAEA)の瑞浪(みずなみ)超深地層研究所がある。
 
[科学的特性マップ]
 火山や活断層が周囲になく、安定的な地層や地質と期待される地域を「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」(黄緑色)と判断。このうち船による搬入を想定し、海岸から約20キロの範囲を「輸送面でも好ましい」(緑色)と強調する。
 活断層の周辺、火山の中心から半径15キロの範囲などを「好ましくない特性があると推定される」(オレンジ色)と指摘。油田やガス田、炭田がある地域も将来掘り起こされる可能性から「好ましくない」(灰色)と分類した。
 
 
<核のごみ 漂流する処分策> 幌延町長、センターの必要性強調 
              住民組織は研究と処分の一体化懸念
河北新報 2018年11月15日
 幌延深地層研究センターは、完成まで紆余(うよ)曲折をたどった。原子力施設の誘致に動いていた幌延町に1984年、核のごみの貯蔵管理、最終処分を研究する「貯蔵工学センター」構想が浮上。道内の反対運動で、核のごみを持ち込まない研究機関に機能を限定し、2001年に開所した。
 核燃料サイクル開発機構(当時)と道、町は(1)放射性廃棄物の持ち込み、使用はしない(2)最終処分を行う実施主体への譲渡、貸与はしない(3)研究終了後は地下施設を埋め戻し、閉鎖する-との3者協定を締結。町は放射性廃棄物の搬入を認めない条例も制定した。
 
 「原発事故以来、最終処分の研究は重要性を増している」。野々村仁町長(63)は強調した上で「大量の使用済み核燃料が地表で中間貯蔵の形で生き永らえている。ここまで来たのは大変なツケ。原発の再稼働と一緒に、処分の議論も進めるべきだ」と訴える。
 センターの立地で、町には一般会計3%相当の1億6000万円が交付金として毎年入り、経済効果は推計3億円。町農協、雪印メグミルク幌延工場と並ぶ町内3大企業の位置付けだ。
 計画では研究期間は「20年程度」。終期が近づく。「私の主観では、この研究は必要。国の方針がそうなれば、新しいステージを考えることになる」。野々村町長はセンターの操業延長を提案された場合、容認の姿勢をにじませた。
 
 町に加え、道も「核のごみは受け入れがたい」との宣言条例を作り、最終処分地化を防ぐ二重三重の構えを取ったが、周辺住民の不安は消えない。「原子力に頼るまちは飲み屋と旅館しか残らない」と経済効果を疑問視する声も漏れる。
 「核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会」の久世薫嗣(しげつぐ)代表委員(74)=豊富(とよとみ)町=は「僕らにとってセンターは迷惑施設。基幹産業の農業や漁業、観光にきちんと取り組むことがこの地域を守ることになる」と研究終了を求める。
 東道(おさむ)代表委員(68)=稚内市=は「火山や地震が多く、活断層もどこにあるのか分からない日本で、地層処分がいいと決めた国はそもそも無責任」と指摘。最近の国の動向から、研究と処分の一体化を懸念する。
 
 
<核のごみ 漂流する処分策> 後始末 国内で責任を/伴英幸氏に聞く
河北新報 2018年11月15日
(以下は伴英幸氏の主張です 湯沢ブログ事務局註)
 幌延深地層研究センターは地元との約束を絶対に守り、研究を終わらせないといけない。国もJAEAもNUMOも信頼されていないことが最大の問題。研究者は続けたいだろうが、別の場所を探すべきだ。
 核のごみの地層処分の研究自体は続けるべきだ。地下深部での地下水の流れ、地震など自然現象による変化がよく分かっていない。やめてしまえば、より安全な処分の技術開発につながらない。日本では将来的に地層処分するしかないと思う。国内で後始末することが、原発を57基も造った国際社会に対する責任だ。研究期間を100年単位で長く取り、使用済み核燃料の中間貯蔵も延長する必要がある
 
 核のごみの発生量の上限、つまり脱原発を決めて最終処分場を1カ所だけ造るという政策の方向性がはっきりすれば、将来世代に影響を極力残さないという意味で、意見が異なる人たちも同じテーブルに着けるのではないか。
 (必要性は認めるが、居住地に造られるのは困るという)NIMBY(ニンビー、Not In My Back Yard )は尊重した上で、みんなの問題として、長い間コツコツと話し合っていくしかない。(談)

16- 伊方原発3号機 運転停止申し立て 退ける決定 高松高裁

 愛媛県の住民が伊方原発3号機を運転しないよう求めた仮処分申請対して、高松高裁はそれを退ける決定を出しました。
新規制基準の下で原子力規制委が行った審査には合理性がある」という型通りのものでした。一方、住民の避難計画については「民間のバス会社に協力を要請できないことや海上輸送能力に懸念がある」等の住民の主張を認めていますが、米国の様にそのことをもって「再稼働を止める要因」とは見做しませんでした。
 
 火山リスクについては、「阿蘇カルデラで運用期間中に破局的噴火が起きる根拠は不十分」なので、再稼働を取り止める理由にならないとしましたが、当初から火山学会が「噴火の予知は不可能」とした中で作られた「火山条項」なのに、「破局的噴火が起きる根拠」が示されなければダメということであれば、「火山条項」は永久に生かされることはありません。
 また地裁で、「約九万年前の阿蘇カルデラ噴火の火砕流が、同原発がある佐田岬半島で確認されたとの知見がない」からと申し立てを却下したのも、火砕流が常に同じコースを通ることを前提にした誤りですが、それも正されませんでした。
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伊方原発3号機 運転停止申し立て 退ける決定 高松高裁
NHK NEWS WEB 2018年11月15日
愛媛県の住民が伊方原子力発電所3号機を運転しないよう求めた仮処分の申し立てについて、高松高等裁判所は退ける決定を出しました。伊方原発3号機は広島高裁が出した運転を認める決定を受けて先月再稼働し、今後も運転が続くことになります。
 
愛媛県内の住民11人はおととし5月、四国電力に対して伊方原発3号機を運転しないよう求める仮処分を申し立てました。
審理では地震に対する安全性やおよそ130キロ離れた阿蘇山で巨大噴火が起きた場合の影響などが争われ、去年7月、松山地方裁判所が申し立てを退けたため住民側が抗告していました。
15日の決定で高松高等裁判所の神山隆一裁判長は「新しい規制基準の下で原子力規制委員会が行った審査には合理性がある」として、松山地裁に続いて住民の申し立てを退けました。
 
一方で、住民の避難計画については「民間のバス会社に協力を要請できないことがあると明記されている点、海から避難する場合の輸送能力に懸念がある点、屋内退避の施設が不足している点で不十分だと思われる」と指摘しました。
伊方原発をめぐる仮処分では去年、広島高等裁判所が運転を認めない決定を出しましたが、四国電力が異議を申し立て、ことし9月、広島高裁の別の裁判長が決定を取り消しました。
これを受けて伊方原発3号機は先月27日、およそ1年ぶりに再稼働し、今後も運転が続くことになります。
 
住民側「いつの日か伊方原発を止めて廃炉に」
決定を受けて裁判所の前では、住民側が「不当決定」とか「司法は福島原発事故を忘れたか」と書かれた紙を掲げました。
仮処分を申し立てた住民の1人で「伊方原発をとめる会」の松浦秀人事務局次長代行は、「10万年以上、核の廃棄物を管理しなければならない原発を止めることができない裁判所に怒りを覚えている。この決定を乗り越えて、いつの日か必ず伊方原発を止めて廃炉にしていきたい」と話していました。
 
四国電力「妥当な決定」
(中 略)
 
 
伊方3号機 停止認めず 「破局的噴火 根拠不十分」
東京新聞 2018年11月15日
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、愛媛県の住民が申し立てた仮処分の即時抗告審で、高松高裁は十五日、申し立てを退けた松山地裁決定を支持し、運転を認める決定をした。四国電は十月二十七日に3号機を再稼働させており、運転を継続する。
 
 神山隆一裁判長は火山リスクについて、伊方3号機から約百三十キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラで運用期間中に「破局的噴火」が起きる根拠は不十分で「立地が不適とは考えられない」とした原子力規制委員会の判断を追認した。また規制委が策定した新規制基準のうち、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)に関する定めに合理性があると判断。3号機は基準に適合し「最新の科学的、専門技術的知見に照らしても相当」とした。
 一方で避難計画について「住民の輸送能力や放射線防護施設の規模が不十分」と指摘し、改善を求めた。
 
 伊方3号機を巡っては広島高裁が昨年十二月の仮処分決定で、阿蘇カルデラで破局的噴火が起きた際の火砕流到達のリスクを指摘し、運転禁止を命令。しかし今年九月の異議審決定で同高裁が覆し再稼働を認めた。昨年七月の松山地裁決定は、国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」の近くに立地する伊方原発の基準地震動について、震源モデルを適切に考慮するなどし不合理な点はないと指摘。火山についても約九万年前の阿蘇カルデラ噴火の火砕流が、同原発がある佐田岬半島で確認されたとの知見はなく、運用期間中に危険性がないことは相当の資料で立証されたとし、申し立てを却下した。
 
<伊方原発> 四国電力が愛媛県伊方町に持つ計3基の加圧水型軽水炉。1977年に運転を始めた1号機、82年開始の2号機(いずれも出力56万6000キロワット)は、巨額の安全対策投資に採算が合わないとして廃炉が決まった。3号機は94年に運転を開始。プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料によるプルサーマル発電を行う。