2025年7月10日木曜日

~ 柏崎刈羽原発の避難計画は「規制委が審査していない」~ 古賀茂明

 元経産省官僚の古賀茂明氏が掲題の記事を載せました。
 IAEAは原発の安全対策として5段階の深層防護基準を制定していて、その最終段階は「5層:異常に対応できなくても、人を守る」というもので、「重大事故時に住民が安全に避難できるようにしておく」と定めています。
 ところが日本の「原子力規制基準」ではその第5層:「過酷事故が起きた時の避難計画」が完全に脱落しています。これは規制員会が意識的に除外したもので、そうしないと規制基準審査で合格が出せない事態になるからです。現在も原子力規制委が避難計画の審査を行うことはなく、素人である内閣府が代行しています。

 24年の元日に起きた能登半島地震では志賀原発に近い家屋が大々的に倒壊したため、原発事故発生時に5~30キロ圏内の住民が屋内退避することが果たして可能なのかという問題提起がされました。しかし規制委は検討する振りだけはしましたが全く的外れな対応に終始し、現在も未解決のままで放置されています。
 対照的に米国では、ニューヨーク州のロングアイランドに建設されたショアハム原発は10年以上かけて1984年に完成しましたが、避難計画が不十分だという理由で稼働できず廃炉が決まりました。
 その際に問題となったのは陸路の渋滞で、それを回避するための船での避難が計画されましたが、ハリケーンが来ていたらどうするかという反論に対応できず、避難計画が不十分だとされたのでした。

 要するに避難計画に実効性がないということで廃炉になったのですが、日本で避難計画の実効性が問題になった例は「東海村第2原発」のケースのみで、その他は避難計画の実効性などろくに問題にもされずにいるというのが実態です。
 避難計画が「絵に描いた餅」であってはならないことは余りにも当然なことです。
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参院選前に知られると「不都合な真実」 柏崎刈羽原発の避難計画は「原子力規制委員会が審査していない」ことを知っていますか? 古賀茂明
                        古賀茂明 AERA 2025/07/08
 国際原子力機関(IAEA)が各国に求める「深層防護(Defense-in-depth)」をご存じだろうか。これは、原発の安全性を確保するために、必須とされる5段階の安全対策のことだ。
  1層:異常の発生を防止する
  2層:異常が発生してもその拡大を防止する
  3層:異常が拡大してもその影響を緩和し、過酷事故に至らせない
  4層:異常が緩和できず過酷事故に至っても、対応できるようにする
  5層:異常に対応できなくても、人を守る
というものだ。
 東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きるまで、日本ではこの5層の防護という考え方が無視されてきた。しかし、事故後はさすがに無視できなくなり、これに基づいた規制基準を作ることになった……はずだった。
 しかし、結論から言うと、ほとんどの人が気付かぬまま、大変な欠陥基準ができてしまった。「異常に対応できなくても、人を守る」という第5層の防御が完全に抜け落ちた規制基準になったのだ。
 そこにはいろいろな言い訳があるのだが、真相を言えば、第5層まで基準に入れて原子力規制委員会が審査すると、日本の原発は全て動かせなくなるというのがその理由だ。
 5層の防御の肝となるのが、過酷事故が起きた時の避難計画である
 その重要性を示す良い例がある。それは、米国ニューヨーク州のロングアイランドに建設されたショアハム原発の事例だ。1984年まで10年以上かけて建設された原発が、避難計画が不十分だという理由で稼働できず廃炉が決まった
 その際問題となったのは、陸路の渋滞とそれを回避するための船での避難計画だった。電力会社は、多少の悪天候でも運航できる専用の大型船の傭船契約を結んで確実に避難できるとしたが、その時にハリケーンが来ていたらどうするかという反論に対応できず、避難計画が不十分だという結論になった。
 6月27日、東京電力柏崎刈羽原発の事故発生時などの広域避難計画「緊急時対応」が了承された。
 これを聞いた人は、避難計画について、専門家が厳格な審査をしてその安全性にお墨付きを与えたと思うだろう。
 しかし、これは全くの間違いだ。そもそも、原発の安全性について規制基準に基づいて専門家により厳格な審査を行うはずの原子力規制委員会が、避難計画の審査を行うことはない
 他の独立した専門家による審査も行われない。
 原子力防災会議という、単に大臣などが集まった素人集団が「了承」するだけ。そのトップは首相だ。東京電力など原子力ムラとベッタリの自民党の首相が避難計画に問題なしと言ったということでしかないのだ。
 
ツッコミどころ満載の避難計画
 これは法律的には何の意味もない。だから、新聞は、避難計画の了承を再稼働の「事実上」の条件と呼んでいる。法律的要件ではないのだ。
 石破茂首相は「国は万が一の事態が発生した場合にも、国民の生命や財産を守る重大な責務を負う」と述べた。実は、首相のこの言葉がポイントだ。
 避難計画がザルだということは誰の目にも明らかだが、カネのために動かさざるを得ない自治体の長が住民を納得させるために、「首相が責任を取ると言った」と言えることが必要なのだ。
 事故の責任を首相が取ると言ったところで、何の意味もない。命が奪われ、ふるさとが失われた時に石破首相に何ができるのか。それでもなお、首相に大見得を切らせ、住民に黙ってもらうという歌舞伎の芝居が必要とされる。お手軽な「免罪符」と言っても良い。
 ちなみに、柏崎刈羽の避難計画はツッコミどころ満載だ。例えば、避難の手段は基本的に自家用車を使うことになっている。学校で被災した子どもたち、高齢者施設や障害者施設で移動が困難な人たちはバスで逃げることになっている。だが、そんなことはほぼ無理だ。自治体職員もわかっている
 日本で実際に原発事故が起きるのは、大地震の時だろう。東日本大震災でも大渋滞で身動きできないという状況が生じた。
 日本人は協調的で行政に協力する。役所が必要最小限の荷物だけ積んで車1台で避難せよと言えばそれに従う。そういう馬鹿げた想定をしているのだろう。
 避難が必要だとなった時、その時点では、どれくらいの期間避難が必要なのか見当もつかない。福島のように年単位で戻れないかもしれない。そう考える人々は、家にある自動車全てを使ってできる限りの家財道具を運ぼうとする。自分たちの命と生活に関わる問題である。住民には、自分たちで自分たちの身を守る権利がある。これを批判することなど誰にもできない。
 柏崎刈羽地域なら、2台、3台自家用車を保有している家も多い。その全てが一斉に道路に出ればどうなるのか。誰でも想像できる。しかも、多くの車がガソリンスタンドに集中してその周辺は全く交通が麻痺することは確実だが、そういう事態にどう対処するか、何らかの規制をするのかなどについては避難計画には書かれていない。
 さらに、問題なのは、地震で多数の死傷者が出た場合や道路が寸断された場合について何も書かれていないことだ。大地震による原発事故の際にほぼ確実に生じる事態だが、150ページを超える資料の中で想定さえされていないのだ。
 
原発の再稼働につれて報道も減っている
 こんなひどい計画が了承されるのは、再稼働ありきで、地元住民を「騙す」ために作られた避難計画だからである。柏崎刈羽原発で作られた電力は東京電力により首都圏に送られる。住民のための発電所ではないのに住民の安全を無視してなぜ動かすのか。
 こんな避難計画のまま再稼働を承認する自治体の長がいるとすれば、まさにカネのために住民を売る大罪人だと言って良い。
 私がさらに問題だと考えるのは、マスコミが、この欠陥についてほとんど報じないことだ。福島の事故後数年の間は、各地の原発の避難計画について、かなり詳細な報道がなされた。しかし、原発の再稼働が進むにつれ、避難計画についての報道は激減した。
 今回も、避難計画が了承されたことで再稼働の手続きが一歩進んだという経済産業省の発表をそのまま垂れ流している記事がほとんどだ。大スポンサーの原子力ムラの手前、強い批判はできないからなのだが、もはや報道機関としての役割を放棄したと言っても良い。
 本来なら、新聞の1面で大きな見出しをつけて、避難計画の欠陥を大々的に報じるべきだったがそれをしない。原子力規制委員会が避難計画を審査していないという事実さえ伝えないから、ほとんどの国民は知らないままだ。

 原発については、柏崎刈羽に限らず、避難計画以外にも大きな問題が山積している。
 使用済み核燃料の最終処分はほぼ不可能だ。最終処分場を受け入れる地域がない。各原発敷地内で永久保管するしかないが、住民の手前そんなことは口にもできず、そのうちできますと言い続けている。それを非難する記事もほとんど見かけなくなった。なぜ、最終処分場ができるという前提に立ったままの記事を書き続けるのだろう。経産省の担当官僚でさえ、そんなことはできないことは百も承知で、自分の在任期間中は演技を続けているだけなのに。
 また、事故が起きた時の避難計画を作っているのに、事故が起きた時の損害賠償については、昔の制度のまま放置していることも知られていない。政府が一種の保険を運営しているが、それで支払われるのは、原発1基あたり最大1200億円だ。
 福島第一原発の事故対応費用は、廃炉、賠償、除染・中間貯蔵などを含めて238兆円という試算(2024年、資源エネルギー庁の発電コスト検証WG)がある。1200億円は1%にも満たない。しかも、事故対応費用は今後も時間とともに膨らんでいくのは必至だ。
 この事実もほとんど報道されてないので、多くの人は知らないままだ。
 さらに、そもそも日本の原発の耐震性が、民間の耐震住宅よりもはるかに低いこともほとんど報じられていない。三井ホームの耐震住宅が5115ガル(ガルは加速度。揺れの強さを示す)、住友林業では3406ガルに耐えられるのに、日本の原発の基準地震動(耐震性と考えて良い)は、高くても1000ガル程度でしかない。これについて、電力会社は、原発の敷地内に限ってはそれほど大きな揺れは生じないと言い続けている。南海トラフ地震の震源域に入っている四国電力伊方原発については、何と、原発直下で南海トラフ地震が起きた時でさえ、大して揺れないと言うのだから驚きだ。

争点にならない原発再稼働
 原発復活による問題は、国民の安全が脅かされるということにとどまらない。
 詳しくはまた別の機会に紹介するが、原発が再稼働し、さらには新増設もあるとなれば、再生可能エネルギーへの投資を減少させる効果が生じる。
 その結果、日本では、再エネ電源の増加が抑制され、そのために、日本の太陽光パネル産業は、世界トップの座を滑り落ち、今やほとんど壊滅状態だ。日本の太陽光パネルを買う国はない。
 また、風力発電も大手メーカーが全て撤退した。海外メーカーに頼るしかない。
「経済安全保障」という掛け声をよく聞くが、やっていることは全く正反対である。
 さらに、原発を日本海に並べて稼働させているのは、国防上も大問題だ。原発は、戦時においては絶好の標的になり、破壊されれば深刻な放射能被害を受ける。攻撃すると脅されただけでも、全ての原発停止で大停電必至だ。今後は、膨大なコストをかけて、原発防衛のための体制を整えなければならない。原発推進は、安全保障の観点では、最悪の政策だ。
 これほどまでに原発をやめるべき理由がはっきりしているのに、これまで述べたとおり、マスコミの原発に関する報道は大きく減っている。あるテレビ局のディレクターは、能登半島地震の時でさえ、視聴率が取れないという表向きの理由で北陸電力志賀原発の状況を報道することが後回しにされたと嘆いていた。
 マスコミにおける原発事故問題への関心の低下あるいは報道自粛が、国民の間の「原発無関心」を生み、知らず知らずのうちに「原発安全・クリーン神話」復活に手を貸している。
 国民の関心が下がれば、政党もこれを取り上げなくなる。
 自民党は原子力ムラの利権を守りたい。国民民主党は電力や重工メーカーの労組の支持を得るために露骨に原発推進策を掲げる。立憲民主党もやはり労組忖度で、原発新増設を認めないとは言うが、逆に再稼働は黙認だ。

 今回の参議院選挙では、柏崎刈羽などの原発が争点になることはなさそうだ。
 そして、選挙が終われば、政府が、柏崎刈羽原発再稼働を強引に推し進めるのは確実だ。
 花角英世新潟県知事は原発立地自治体への「電源三法交付金」という補助金の対象地域の拡大を石破首相に要請し、首相は前向きな姿勢を示しているという。カネをもらえない地域の住民の反対が強いから、カネを出せばいいんだろうといういつもの自民党の姿勢だ。「政治家から住民への逆賄賂」と私は呼んでいる。これが決定打になってしまうのか。
 だが、まだ望みはある。新潟県民の良識だ。柏崎刈羽原発の再稼働については、新潟県民の粘り強い反対運動があり、県知事も安易な同意はできない
 だが、万一住民の力が及ばなかった時は、もう一度原発事故が起きたり、北朝鮮が原発を狙う恐れが出てきたりしない限り、「亡国の原発推進」は止まらないのかもしれない。

柏崎刈羽原発再稼働問題巡る“県民意識調査” 知事「考え方の核心部分を引き出したい」

 柏崎刈羽原発の再稼働問題に関する県民意識調査が来月から行われます。
 県内在住の18歳以上の男女を対象に県内全域の3000人以上に加え、柏崎刈羽原発の半径30キロ圏内に暮らす6000人以上を無作為に選び調査票を配布。郵送かインターネットで回答を得るものです。
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柏崎刈羽原発再稼働問題巡る“県民意識調査” 新潟県知事「考え方の核心部分を引き出したい」 9月末にも結果公表へ
                       NST新潟総合テレビ 2025/7/9
東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働問題を巡り県が実施する県民意識調査について、花角知事は「県民の考え方の核心を引き出したい」と話しました。
県は柏崎刈羽原発の再稼働問題について、県民の多様な意見を把握するため、県民意識調査を来月から実施します。
意識調査は県内在住の18歳以上の男女を対象に県内全域の3000人以上に加え、柏崎刈羽原発の半径30キロ圏内に暮らす6000人以上を無作為に選び調査票を配布。郵送かインターネットで回答を得るものです。
この意識調査の役割について花角知事は。
【花角知事】
「何が不安なのか、どこに期待するものがあるのか、考え方の核心部分を引き出す意識調査になればいい」
県は9月下旬までに調査を終え、速やかに結果を公表する考えです。

柏崎刈羽原発巡る“公聴会”「公述人の選定基準明らかに」「知事は直接視聴を」 市民団体が県に要請

 柏崎刈羽原発の再稼働問題に関する県の公聴会について、市民団体が公述人の選定基準を明らかにするほか、花角知事が会場で公述を直接視聴することなどを求める要請書を県に提出しました。
 公聴会は来月末まで会場を変え、残り4回開催される予定です。
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東京電力・柏崎刈羽原発巡る新潟県“公聴会”「公述人の選定基準明らかに」「知事は直接視聴を」 市民団体が県に要請
                       NST新潟総合テレビ 2025/7/8
東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働問題に関する県の公聴会について、市民団体が公述人の選定基準を明らかにすることなどを県に要請しました
【要望書提出時 市民団体】
「知事の方にお渡しいただけますか」
【県の担当者】
「はい、お預かりいたします」

7日、県庁を訪れた市民団体のメンバーは、柏崎刈羽原発の再稼働問題に関する県の公聴会についての要請書を提出しました。
先月29日に初めて開かれた公聴会は、柏崎市の会場と県庁をオンラインでつなぎ、16人の公述人が賛否の意見を述べましたが、公述人の名前や具体的な会場は明らかにされませんでした。
要請書では公述人の選定基準や会場を明らかにするほか、花角知事が会場で公述を直接視聴することなどを求めています。
【市民団体 田中忍代表】
「第1回公聴会では知事は県庁の会場には不在だった。県民の間には知事は本当に公述を聞くのだろうかとの疑念が広がっている」
公聴会は来月末まで会場を変え、残り4回開催される予定です。

10- 女川原発2号機の40年運転認可 原子力規制委、震災影響も考慮

 原子力規制委は9日、今月で運転開始30年となる女川原発2号機について、今後10年間の運転に必要な管理計画を認可しました。
 今年6月に始まった新制度では原発の60年を超える運転が可能になった一方で、運転開始30年以降は10年を超えない期間ごとに、施設の劣化状況の確認方法や必要な措置などをまとめた「長期施設管理計画」を策定し、規制委の認可を得ることが必要となった。

 書類審査だけで10年間の運転延長が認められるとは恐ろしいことです
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女川原発2号機の40年運転認可 原子力規制委、震災影響も考慮
                             共同通信 2025/7/9
 原子力規制委員会は9日、今月で運転開始30年となる東北電力女川原発2号機(宮城県)について、今後10年間の運転に必要な管理計画を認可した。今年6月に始まった原発長期運転の新制度に基づいた対応。
 新制度では原発の60年を超える運転が可能になった一方で、運転開始30年以降は10年を超えない期間ごとに、施設の劣化状況の確認方法や必要な措置などをまとめた「長期施設管理計画」を策定し、規制委の認可を得ることが必要となった。
 女川2号機は1995年7月28日に運転開始。東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉で、2024年10月に東日本大震災の被災地にある原発では初めて再稼働した。東北電は、震災時の揺れや津波の影響も考慮して計画を策定した。

2025年7月7日月曜日

超老化原発 運転の恐れ 24基 70年超可能 自公維国が推進

 しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
 岸田内閣は23年、運転期間については原発推進の経産省所管の電気事業法に移管。規制委による審査や対策工事、裁判所の仮処分命令で停止した後に上級審で命令が取り消された場合などの停止を上乗せして、「最長60年」からさらに延長できるようにしました。
 原発は元々30年耐用が設計条件で製造され、実際には安全を見て耐用40年ベースで製造されました。
 原子炉圧力容器は稼働中に絶えず核分裂に伴う中性子線の照射を受けるため、使用年数の増加に伴って強度が劣化します。ではどのようにして劣化の度合いを確認するかですが、予め運転開始時に30(40)年分のテストピースを圧力炉内に取り付けて置いて、定検時に適宜取り出してその「脆性遷移温度」を測定(破壊検査)し、ある限度まで上がれば使用不可の判定をします。
 テストピースは原子炉製造時に本体と同材質(鋳鋼)のもので製造し、本体と一緒に中性子を照射させることで、本体の劣化度を把握します(特に合成樹脂で顕著ですが、スチールでも材質の温度低下がある限界「脆性遷移温度を超えると「脆く」なるので、その遷移温度を把握することで劣化が判断できます)。
 下表に遷移温度の上昇例を示します。

          原子炉圧力容器 脆性遷移温度ワースト7

 

No

原子炉名

転 開 始

脆性遷移温度

試験片回収時期

年数

 

 

1

玄海1号

1975年10月15日

98℃

2009年4月1日

33

 

 

2

美浜1号

1970年11月28日

74℃

2001年5月1日

30

 

 

3

美浜2号

1972年7月25日

78℃

2003年9月1日

31

 

 

4

大飯2号

1979年12月5日

70℃

2000年3月1日

20

 

 

5

高浜1号

1974年11月14日

68℃

2002年111日

27

 

 

6

敦賀1号

1970年3月14日

51℃

2003年6月1日

33

 

 

7

福島1号

1971年3月26日

50℃

1999年8月1日

28

 

   東京新聞 11.7.2(原子力資料情報室作成の資料から)  使用前の脆性遷移温度は-10℃以下
 事故時に何かの理由で「高圧下で原子炉が急冷される」と遷移温度付近で破裂する恐れがあることを上表は意味します。No1~4の原子炉は既に「廃炉」が決まっています。
 問題は当初最長40年しか運転時間を想定しなかったので、今では全ての原発においてテストピースがなくなっていることです。苦肉の策として新にテストピースを作り、それを加速的な中性子照射を行うことで実際の原子炉の劣化度に近づけようとしても、一致するという保証は何もありません。中央大学教授(核燃料化学)の舘野淳さんは、「これらのデータは全く信用がおけない」と切って捨てています。
 さらに問題なのは、何らの技術的根拠もないのに書類上の手続きだけで10年先までの安全を保証していることで、唯 無根拠に運転期間を延長するもので言語同断です。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
超老化原発 運転の恐れ 24基 70年超可能 自公維国が推進
                     しんぶん赤旗 2025年7月5日

東日本大震災以降、さらなる運転延長が認められる停止期間 (2025年6月6日時点)

 

原 子 炉

新規制基準対応などによる停止期間の合計

 

原 子 炉

新規制基準対応などによる停止期間の合計

北海道電力・泊1号

  同  ・泊2号

  同  ・泊3号

東北電力・東通

  同 ・女川2号

  同 ・女川3号

東京電力・柏崎刈羽1号

  同 ・柏崎刈羽2号

  同 ・柏崎刈羽3号

  同 ・柏崎刈羽4号

  同 ・柏崎刈羽5号

  同 ・柏崎刈羽6号

  同 ・柏崎刈羽7号

中部電力・浜岡3号

  同 ・浜岡4号

  同 ・浜岡5号

北陸電力・志賀1号

  同 ・志賀2号

 14年1ヵ月

 13年9ヵ月

 13年1ヵ月

 14年2ヵ月

 13年8ヵ月

 14年2ヵ月

 11年1ヵ月

 11年6ヵ月

 11年6ヵ月

 11年6ヵ月

 10年7ヵ月

 10年6ヵ月

 111ヵ月

 14年2ヵ月

 14年Oカ月

 14年Oカ月

 14年2ヵ月

 14年2ヵ月

関西電力・美浜3号

  同 ・大飯3号

  同 ・大飯4号

  同 ・高浜1号

  同 ・高浜2号

  同 ・高浜3号

  同 ・高浜4号

中国電力・島根2号

四国電力・伊方3号

九州電力・玄海3号

  同 ・玄海4号

  同 ・川内1号

  同 ・川内2号

日本原電・東海第2

  同 ・敦賀2号

 

 経済産業省の資料から

 10年11ヵ月

 6年1ヵ月

 5年7ヵ月

 12年4ヵ月

 11年9ヵ月

 5年9ヵ月

 5年9ヵ月

 12年10ヵ月

 8年Oカ月

 7年4ヵ月

 6年10ヵ月

 4年11ヵ月

 4年8ヵ月

 14年2ヵ月

 12年6ヵ月

 

 

 


 自公政権のもとで改定された、原発の60年超運転を容認する法律が6月6日に施行されました。運転期間の延長は財界や原子力産業界が要求していたものです。経済産業省が日本共産党の岩淵友参院議員に提出した資料によると、60年超どころか70年超運転が可能な原発が24基に及ぶことがわかりました。超老朽原発が全国で動く事態になりかねません。参院選挙では、原発回帰の自公政権と日本維新の会、国民民主の補完勢力に、原発ゼロを掲げる日本共産党との対決が鮮明です。   (「原発」取材班)

   老朽原発の危険 
    老朽原発をさらに酷使することは事故の危険性が増します。老朽原発の原子炉圧
   力容器は中性子をあび続けたことで、もろくなります。機器や配管などは時間の経
   過とともに腐食や疲労で劣化します。ケーブル類は停止していても劣化します

原発ゼロ掲げる共産党対決鮮明
 原発の運転期間は、2011年の東京電力福島第1原発事故後、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法で「原則40年、最長60年」と定められました。しかし、「原発の最大限活用」を掲げた自公政権のもとで2023年、運転期間については原発推進の経済産業省所管の電気事業法に移管。規制委による審査や対策工事、裁判所の仮処分命令で停止した後に上級審で命令が取り消された場合などの停止を上乗せして、「最長60年」からさらに延長できるようにしました
 国内で稼働している原発で、1974年11月に運転を開始した最も古い関西電力高浜原発1号機(福井県)はすでに運転期間が50年を超えています。同原発は福島第1原発事故後、審査などで12年4ヵ月停止していました(表)。申請次第で今後、20年以上の運転が可能となる計算です。

過酷事故 リスク増大 超老朽原発「最大限活用」60年超審査書面のみ
 原発の運転期間を延長する、この新しい制度では、事業者の不適切な行為で停止した期間は、上乗せの対象にしません。テロ対策の不備があった東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)が事実上の運転禁止命令を受けた約2年8ヵ月や、地質データの書き換えなどがあった日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の審査中断期間がそれにあたります。
 60年超の運転延長の審査は経産省職員が書面のみで行い、経産相が認可します
 一方で、運転開始から30年を超えて運転しようとする原発は、電力会社が10年ごとに設備などの劣化を管理するための長期施設管理計画を策定し、規制委の認可を受けることになりました。これまで電力会社が申請したうち、30年以降、40年以降、50年以降の12基の計画がすでに認可されています
        
 政府が2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画は、従来掲げていた「原発の依存度低減」の文言を削除し、「最大限活用」へと転換。原発の新増設まで明記しました。その上で、原発の将来の見通しとして2040年度の目標を電源構成で2割程度としました。これまで再稼働したのは14基。この目標はその2倍以上の30基程度になります。
 政府は、「原則40年、最長60年」のルールのままでは2040年までに原発4基が廃炉となり、50年までにさらに11基が廃炉になると予想。そのため原発の新設や既設炉の最大限活用が必要だとして、60年超運転の制度を「着実に執行していく」としています。

中央大学教授(核燃料化学) 舘野淳さんの話
 原発を長年運転していると、原子炉圧力容器などの金属部分に中性子が当たり、脆(もろ)くなります。特に加圧水型原発(PWR)の圧力容器は炉心から近く、脆くなる温度=脆性(ぜいせい)遷移温度が著しく上昇し、脆い温度領域が広がります
 もし、こうして広がった脆い領域で、事故などによる熱衝撃が加わると、圧力容器が簡単に壊れてしま い、福島事故を上回る過酷事故へと進展します。
 脆性遷移温度の上昇のしかたは、圧力容器を製造した時の材質に含まれる不純物に依存するので、原子炉圧力容器の内部に製造時の素材のサンプル(試験片)の板をぶら下げて、これを時々取り出して遷移温度を測定する方法が取られてきました。
 ところが、当初40年程度の使用しか想定していなかったので、試験片が足りなくなりこれをカバーするために、中性子をよけいに当てたデータ(加速照射監視試験データ)を用いたり、かつて限界として設定した最高温度を使うことをやめたり、焼きなました試験片を使ったりと、非科学的な措置が取られたため、現在ではこれらのデータは全く信用がおけません
 こうした物理的な劣化のほかに、古い原発には「設計の古さ」という問題もあります。こうした古い設計の原発には「何か起こるかわからない」という本質的な欠陥があります。
 上述したような本質的な老朽化問題は、今回の法律に盛り込まれた長期施設管理計画などでカバーできるものでないことは明らかです。 

運転期間のイメージ  URL
https://drive.google.com/file/d/1nKcq_ms1Fy2xyN246QjXxXGSgunS4jnf/view?usp=sharing 
      (URをクリックするとPDF図が表示されます)