2015年8月31日月曜日

太陽光発電 6・5% 川内原発の12基分に

 中日新聞の調査によると太陽光発電の総量は1100万KWに達し、川内原発の約12基分に相当していることが分かりました(四国電力分は回答なしのため除外)。
 これは総発電量の6.5%に当り、2年前の1%から急進しています。
 
 丁度1年前に、各電力が太陽公発電の電力を大量に受け入れると電力の供給が不安定になるからという不可解な理由で、一斉に接続保留(拒否)が起きましたが、あの騒ぎは一体何であったのかということです。
 猛暑が続いた今夏も電力の供給に余裕があったのには、これらの太陽光発電が大いに寄与していました。危険で不経済な原発を再稼動する必要などありません。
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太陽光、川内の12基分 「原発ゼロ」で欠かせぬ電源に
中日新聞 2015年8月30日
 今夏に電力需要がピークを迎えた時間帯にどう電力が確保されたか電力各社に取材したところ、太陽光発電が原発十二基分に当たる計一千万キロワット超の電力を生み出し、供給を支えていた。二年前は供給力の1%にすぎなかった太陽光は、6%台に急伸。九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が今月再稼働するまで約一年十一カ月にわたり国内の「原発ゼロ」が続いた間に、太陽光が欠かせない電源に成長したことが明確になった。
 本紙は、原発のない沖縄電力を除く全国の九電力会社に、今年七~八月の電力需要ピークの時間帯に、電源構成がどうなっていたのかデータ提供を求めた。四国電力は提供を拒否したが、八社が回答した。
 地域によってピークの日や時間帯は若干異なるが、八社が需要を見越して準備した供給力の合計は約一億六千六百万キロワット。首位は火力発電で、約一億二千六百万キロワット(75・4%)と圧倒的に多い。二位は、くみ上げておいた水を需要に応じて放水する揚水発電で約千八百万キロワット(10・9%)、三位は水力発電の約千二百万キロワット(6・9%)だった。
 
 太陽光発電は僅差で続き、千百万キロワット弱(6・5%)。川内原発の出力は一基八十九万キロワット。約十二倍の電力を生み出していたことになる。政府の事前予測は五百万キロワット前後だったが、大きく外れた。再生エネルギーの固定価格買い取り制度がスタートしてからの三年で、中心的な存在になった。
 電力需要が高まる日中、軌を一にするように発電するのが太陽光の特徴で、割高な石油火力の稼働を最小限にできる効果もあった。
 
 地域別では、太陽光の発電量は東京電力管内が四百万キロワットと最も多く、発電割合では九州電力管内が9・5%と最も高かった。九州では今夏、ピークが通常とは異なり、日射量が減り始める午後四時だった。もしピークが一般的な昼前後であれば、発電量は二~三倍だった可能性が高い。
 九電は八月十一日に川内原発1号機を再稼働させたが、その前から電力の需給バランスは余裕のある状態が続いていた。中部電力などから電力融通を受けていたこともあるが、九州では太陽光の導入量が非常に多く、そのサポートで安定が保たれていたともいえる。 (山川剛史、荒井六貴、小倉貞俊)
 
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再稼働は「非合理」 科学者会議が原発シンポ 東京

しんぶん赤旗 2015年8月30日
 東京電力福島第1原発事故から5年目の夏、原発再稼働と加害者責任をテーマに、科学技術と社会科学の両面から議論するシンポジウムが東京都内で開かれています。29日は約70人が参加し活発に討論しました。主催は日本科学者会議原子力問題研究委員会。
 
 九州電力が再稼働を強行した川内原発の地元から参加した木下紀正鹿児島大学名誉教授が、火山噴火の危険性、地域防災の問題点を報告しました。各地の参加者が、東海第2、浜岡、志賀、高浜など各原発の再稼働をめぐる現状、科学者会議による活断層調査、住民運動や原発訴訟の成果などを紹介しました。
 
 日本原子力研究開発機構で長年、原発の安全解析をしてきた田辺文也・社会技術システム安全研究所長は、福島事故について▽2号機格納容器は地震に耐えられなかったのではないか▽2、3号機で事故時の操作の手順書が参照されずに炉心溶融に至ったのではないか―という疑問点を提起。未解明の重要課題を残した再稼働について「科学的合理性の立場に反する」と批判しました。
 
 原発メーカー設計技術者だった後藤政志さんは、国の審査の対象外とされた、溶融燃料による水蒸気爆発の危険性を指摘。「現在の原発は基本的な問題解決ができておらず、対症療法的にやっている」と述べました。
 
 舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)は原発が抱える根本的な危険性を解説し、「新規制基準は、現存の原子炉を救済するためのつぎはぎの弥縫(びほう)策だ」と指摘しました。
 30日のテーマは、原子力損害賠償制度や金融機関の破たん処理からみた原発事故の責任論など。午前9時半~午後1時、日本大学歯学部2号館(東京都千代田区)で。

2015年8月30日日曜日

福島第一原発周辺のモミに異常

 環境省が、福島第一原発近くの放射線量が比較的高い地域に生えているモミの木を調べたところ、幹の先端が欠けるなどの異常が通常より高い割合で現れていることが分かりました。
 異常が見つかった割合は、放射線量が毎時およそ34マイクロシーベルトの場所で98%、毎時およそ20マイクロシーベルトの場所で44%、毎時およそ7マイクロシーベルトの場所では27%でした。

 分析を行った放医研では原発事故で放出された放射性物質が影響している可能性があるとしていて、分析結果はイギリスの科学雑誌、サイエンティフィックリポーツのウェブサイトに掲載されました。

 なお、記事中で「野生動植物調査では、約80種を調べた結果、モミ以外で異常は見られない」とされていますが、福島県で捕獲されたヤマトシジミ(蝶の一種)の奇形英科学誌ネイチャーに発表)やツバメの尾羽根などの奇形その他が既に報告されています。
 また高度汚染地域での小動物の個体群サイズ著し縮小、個体数の著しい減少が確認されています

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福島第1原発事故 モミの木に異変 幹の先端、芽が出ず
 線量高い場所ほど多発
毎日新聞 2015年08月29日
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県の帰還困難区域内で、2012年以降にモミの木の生育異常が増加しているとの調査結果を、放射線医学総合研究所の渡辺嘉人主任研究員らが28日、英科学誌サイエンティフィックリポーツに発表した。放射線量が高い場所ほど異常な木の割合が高く、放射線の影響の可能性がある。チームは「放射線との因果関係やメカニズムを解明するにはさらに研究が必要だ」としている。
 
 チームは大熊町と浪江町の計3カ所と、比較対象として北茨城市でそれぞれ111〜202本のモミの木を調べた。
 
 その結果、放射線量が最も高い大熊町の調査地(毎時33・9マイクロシーベルト)では97・6%で、幹の先端の「主幹」と呼ばれる芽がなかった。主幹がないと生育が止まる。放射線量が同19・6マイクロシーベルトと同6・85マイクロシーベルトの浪江町の2カ所の調査地では、それぞれ43・5%と27%に異常が見られた。一方、北茨城市(同0・13マイクロシーベルト)では5・8%にとどまった。
 
 環境省が11年度から実施している野生動植物調査では、約80種を調べた結果、モミ以外で異常は見られないという。針葉樹は放射線の影響を受けやすいことが知られており、旧ソ連・チェルノブイリ原発事故後には、ヨーロッパアカマツなどで異常が出たという報告がある。メカニズムは分かっていない。
 
 チェルノブイリ事故の環境影響に詳しい笠井篤・元日本原子力研究所研究室長は「チェルノブイリで木に影響が出た地域の線量は今回の調査地点よりけた違いに高い。気象条件など自然環境要因も考慮し、慎重に原因を調べる必要がある」と指摘する。 【渡辺諒】


正常に生育しているモミ=放射線医学総合研究所提供


生育異常を起こしたモミ。先端の「主幹」と呼ばれる芽がない=放射線医学総合研究所提供
生育異常を起こしたモミ。先端の「主幹」と呼ばれる芽がない=放射線医学総合

2015年8月29日土曜日

帰還困難区域初の本格除染 大熊で開始、民家・学校など

福島民友ニュース 2015年8月29日
 環境省は28日、東京電力福島第1原発事故に伴い帰還困難区域となっている大熊町下野上地区の本格除染に着手した。帰還困難区域内での本格除染開始は初めて。今後、町内に除染で出た土壌などを一時保管する仮置き場を整備するほか、民家や農地などの除染も行い、本年度中の除染完了を目指す。
  除染が始まったのは、同町の帰還困難区域の中でも比較的線量が低い下野上地区などの約95ヘクタール。除染範囲には民家など233軒のほか、大野小や双葉翔陽高などの学校も含む。隣接する居住制限区域の大川原地区と共に、町が復興拠点として位置づけている。
  環境省は、初日の作業を報道陣に公開した。大野小では校庭の表土の剥ぎ取り作業が行われ、約30人の作業員が重機などを使い校庭の表土約7センチを剥ぎ取った。同省によると、校庭の空間放射線量は平均で3~8マイクロシーベルト。長期的な目標として「年間1ミリシーベルトを下回る線量」を目指す。

原発は海温め装置 小出裕章ジャーナル

 第138回小出裕章ジャーナル(ラジオ)では、
 ・100万KWhの原発1基当り 海水温+7℃の温排水が70トン/秒出て海を暖める
 ・漁協への補償金はカネで漁民の口を塞ぐもの
 ・田中規制委員長は原子力ムラの中心人物だった
 などが語られました。
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原発は海温め装置?
「海の水をまず引き込んで、その水の温度を7度上げて海へ戻します。
 その流量が1秒間に70トン」
第138回小出裕章ジャーナル 2015年08月28日
 
西谷文和: 今日は先日、小出先生の書かれた本なんかを読んでると、「原発というのは海温め装置だよ」という一文が出てきたのですが、これはどういうことでしょうか?
小出さん: はい。原子力発電所も火力発電所もいわゆる蒸気機関と私達が呼んでいるものでして、例えば原子炉の場合、水をまず沸騰させるために、ウランの核分裂のエネルギーで水を沸騰させるわけですが、その使ったエネルギーのうち、電気に変換される部分はわずか3分の1しかない
西 谷 : 3分の1?
小出さん: はい。残りの3分の2の熱は、もうどうにも使いようがなくて捨てるしかないというそういう機械なのです。そしてどうやって捨てるかと言うと、海水を敷地の中に引き込んで、その海水を温めて、また海に戻すというやり方をしているのです。発生した熱のうちの3分の2、つまり本体を海を温めるために使っているというそういう機械ですので、発電所というよりは、むしろ海温め装置と呼ぶべきだと、私が数少ない恩師と呼ぶ水戸巌さんという人が、私が学生の頃に教えてくれました。
西 谷 :  先日、私、新潟県の刈羽原発の所に行ったんですけど、地元の方が「原発の周りにイルカが出る」って言うんですよ。これ、なんか地球温暖化かなと一瞬思うんですけども、もしかしたら、原発があったかいのでイルカが来た、そういうことも可能性としてはありますかね?
小出さん: もちろんあります。今日では、100万キロワットという原子力発電所が標準になっているのですが、その原子力発電所では海の水をまず引き込んで、その水の温度を7度上げて海へ戻します。その流量が1秒間に70トン
西 谷 : 7度上がった水が70トンも流れてくる?
小出さん: 1秒毎にですね。
小出さん: はい。日本には、1秒間に70トンを超えるような大きな川は、30もないというくらいの巨大な温かい川がそこにできてしまう。全く違う生態系になってしまって、それまで、そこに生きてきた生き物は生きられなくなりますし、あったかい海が好きという今度、生き物がそこに集まってくるということになるのです。
西 谷 :  福島第一原発の漁協を取材した時に、漁師さん達がこそっと、「福一が動いてた時は、なんか巨大なスズキが捕れた」とかおっしゃってましたが。
小出さん:  私は魚類学者じゃありませんのでよくわかりませんが、そんな可能性も含めて、やはりきちっと調べるというのが科学的な態度だと思います。
西 谷 : そうですね。そこで、この7月28日付の毎日新聞に、東電が汚染水放出を漁協に頼んで、漁協はそれを容認しちゃったわけですが、やっぱりこの原子力ムラがこの漁協に対して、あちこちあるパターンなんですけども、かなりそういう補償金なんかを積んでいるということも考えられるんでしょうねえ。
小出さん: もちろんです。要するに、東電としてはカネで漁民の口を塞ぐというようなことをずっとやってきたわけですし、今の福島第一原子力発電所の状況を考えれば、放射能汚染水のコントロール、基本的にはもうできない状況になっているわけですから、あとは漁民の口をカネで封じるという以外ににはやりようがないと思います。
西 谷 :  凍土壁とかいろいろ言ってますけど止まらないですよねえ、この汚染水。
小出さん:  止まらないです。たぶん今後もトラブル何度も何度もあるだろうと思います。
西 谷 :  海への汚染も止まらないし、大気中の汚染もまだまだ下がっていないと思うのですが、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、「自主避難されてる方は、自分は嫌だからということで避難してる人」ということをおっしゃった上でですね、「国が自主避難者を支援する必要はない」という考え方を示したんですが、このことを聞かれてどう感じられてますか?
小出さん:  怒りに震えました。本当に今、苦難に落とされている人達は、何も悪いことをしたわけではないのです。
    東京電力が「放射能なんて撒き散らさない」と言ってきたにも関わらず、大量の放射性物質をバラまいた。日本の国も「東京電力の原子力発電所が大事故を起こすことなんてない」と言ってお墨付きを与えてきたわけですけれども、それが全て嘘だったわけです。そのために今、苦難に落とされてしまって、さまざまに言葉では言いようのない多様な困難というのを負わされているわけです。
   その人達を何とか支援する、支えるということが東京電力と国のまずはやらなければいけない責任だと、私は思います。そして田中俊一さんも、今は原子力規制委員会の委員長になっていますけれども、もともと原子力ムラ、原子力マフィアの中心人物だったわけで、福島第一原子力発電所の事故に対して重たい責任のある人です。
    その人が自分がやったこと、自分が苦難を負わせた人達に対して、「何の賠償もしないでいい」というようなことを言うというのは、本当に異常な世界なんだなと私は思います。
西 谷 : この規制委員会の委員長になっておられるということ自体が問題だということでしょうか?
小出さん: そうです。原子力マフィアの人達を規制委員会などに本当はしてはいけなかったわけですけれども、今の原子力規制委員会は、ほとんどが原子力マフィアの人達が占めてしまっているという状況で、原子力マフィアとしては誰も責任をとらないまま、原子力発電所の再稼働に行きたいということで、原子力規制委員会という組織自身を作ってきているわけですから、本当におかしな世界だなと思います。
西 谷 : これね小出さん、例えば、安倍内閣の下で有識者委員会とか第三者委員会という名前だけがなんか聞いてるんですけども、そこにいるのはみんな安倍内閣のお友達であったり、原子力ムラの方であったりしますから、こういうこと自体が欺瞞だということと考えてもいいんでしょうか?
小出さん: はい。私はそう思います。
西 谷 : わかりました。ほんとにね、自主避難者、まだまだ苦難されております。もっともっと支援が必要だということでしょうね。
小出さん: はい。もちろんです。何の罪もない人達を苦難に陥れたわけですから、国として彼らを支えるというのは、当然やらなければいけないことだと私は思います。
西 谷 : はい、よく分かりました。
    小出ジャーナル、自主避難者も支援していこうということで、よく理解できました。
    以上、小出裕章ジャーナルでした。小出さん、どうもありがとうございました。
小出さん: ありがとうございました。

「原発メーカーにも責任」 GEなど3社に賠償訴訟

東京新聞 2015年8月28日 
 東京電力福島第一原発の事故で、被災者を含む国内外の約三千八百人が、同原発の原子炉を製造した米ゼネラル・エレクトリック(GE)と東芝、日立製作所の三社に損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が二十八日、東京地裁であり、原告側は「東電だけでなくメーカーも事故の責任を負うべきだ」と主張。メーカー側は争う姿勢を示した。
 
 原子力損害賠償法は原発事故で電力会社などの「原子力事業者」以外は賠償責任を負わないと定めている。原告側は、この法律は「製造者の責任を問う権利を妨げており、違憲で無効」と主張。「三社には原発の構造上の欠陥を知りながら放置した過失がある」と指摘。メーカー側は「三社が責任を負わなくても被害は賠償される。違憲ではない」と主張した。
 
 原告の一人で福島県郡山市の森園和重さん(53)は意見陳述で「低線量被ばくを強要され続け、放射能に汚染された土地に戻れずに自殺する人も後を絶たない」と被災地の窮状を強調。「原子炉の欠陥が指摘されながらメーカーは責任を追及されていない。利益のみを追求し責任を逃れる理不尽極まりない現状を、許さないでください」と訴えた。
 
 原告は福島県の三十四人を含む国内の約千四百人と韓国や台湾などの約二千四百人。メーカーの賠償責任を認めさせることが訴訟の最大の目的のため、請求額は一人当たり百円とした。
 
◆原告に元設計者も
 「メーカーの責任は決定的に大きい」。閉廷後、原告らは東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。原告の一人で元東芝の原子炉格納容器設計者だった後藤政志氏(66)は、賠償責任を否定するメーカー三社の責任の大きさを厳しい口調で訴えた。
 後藤氏自身は、福島第一原発には関わっていないが、「(放射性物質の拡散につながった)水素爆発がなぜ起きたか。一番分かっているのはメーカー。責任がないとは口が裂けても言えないはずだ」と声を絞り出した。
 日本の脱原子力運動を支えた核化学者の故・高木仁三郎氏の妻で「高木仁三郎市民科学基金」事務局長の久仁子さん(70)も「海外では事故のたびに安全性を見直してきた。日本では見直しの検討さえせず、今回の事故の遠因になった。メーカーの責任を問わない仕組みのままでは、将来の安全はない」と訴えた。

2015年8月28日金曜日

北茨城市検査で小児甲状腺がん3人 受診3600人中

 北茨城市が独自に実施していた甲状腺検査で3人が甲状腺がんと診断されたと、25日発表しました。受診者数3593人中なのでかなりの高率です。
 医師と専門家で構成する同市の「甲状腺超音波検査事業検討協議会」は、チェルノブイリ原発事故に比べて被曝線量が低く、また事故後4年に至っていないとして、「放射線の影響とは考えにくい」と報告したということですが、なにやら福島県の評価に倣ったという感じがします。
 
 チェルノブイリ(ソ連解体後地域はベラルーシとウクライナの2国に分離)では確かに事故の4年~5年後に甲状腺がんが爆発的に増加しましたが、下のグラフでも明らかなように1~3年後でも有意に増加しているので、4年未満で「がん」になるのは「原発事故の影響ではない」と言うことはできません。
 北茨城市以外で独自に検査を実施しているところは、茨城県高萩市、牛久市千葉県松戸市柏市栃木県日光市那須塩原市などがあります。それらの結果が気になりますが、結果の公表の仕方が統一されておらず、二次検査以降の結果についてデータを集めていない自治体も少なくないということです。
  検査したにもかかわらず集計も公表もしないというのは不可解なことですが、それも国の隠蔽方針に倣ったのでしょうか。
 
 OurPlanet-TVの記事を紹介します。
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北茨城市検査で、小児甲状腺がん3人 
OurPlanet-TV 2015年8月27日
 北茨城市は25日、東京電力福島第一原発事故により放出された放射性物質の健康影響について調べるために、独自に実施していた甲状腺検査で、3人が甲状腺がんと診断されたと発表した。医師と専門家で構成する同市の「甲状腺超音波検査事業検討協議会」は「放射線の影響とは考えにくい」と報告した。
 
 原発事故に伴い、福島県では国の予算によって、事故当時18才未満の子ども全てを対象に、甲状腺の超音波検査を実施している。しかし、福島県外では実施されていないため、北茨城市は医師や専門家など17人で構成する「甲状腺超音波検査事業検討協議会」を設置。福島県いわき市に隣接し、保護者の不安が高まっているとして、2013年度から子どもを対象とした甲状腺超音波検査を実施することを決めた。
  
 2013年度は、事故当時4歳以下の1184人が受診。精密検査を必要とするB判定の子どもが11人(0.9%)いたものの、甲状腺がんと診断された子どもはいなかった。一方、14年度は18歳以下の計6151人のうち、3593人が受診。精密検査を必要とするB判定が72人(2.0%)、至急精密検査が必要とされるC判定が2人いた。
  
さらに、精密検査を受診した83人のうち、3人が甲状腺がんと診断された。3人の年齢や性別、腫瘍の大きさなどについては公表しない方針だ。「甲状腺超音波検査事業検討協議会」は、チェルノブイリ原発事故に比べて被曝線量が低く、また事故後4年に至っていないとして、「放射線の影響とは考えにくい」と判断した。同市では、来年度以降も、2回目の検査を実施する予定だ。
 
  平成25・26年度 甲状腺超音波検査実績(表)
(掲載を省略
 
 甲状腺検査をめぐっては、福島県のみが、国の費用によって健診を実施しているため、福島県外での実施を求める声が根強い。このため、北茨城市と同様に、茨城県では高萩市、牛久市。千葉県では松戸市や柏市。栃木県では日光市や那須塩原市などが独自の予算で実施している。しかし、実施の対象や費用負担、結果の公表方法に統一された方法はなく、二次検査以降の結果について、自治体がデータを集めていない自治体も少なくない。
 
  資 料
   (掲載を省略

原発事故損害賠償を18年3月で打ち切ると 東電そして国

 東電は26日、福島原発事故で居住制限、避難指示解除準備両区域の住民に1人当たり月額10万円を支払っている精神的損害賠償(慰謝料)を、避難指示解除の1年後の2018(平成30)年3月一律に打ち切る方針を発表しました。
 
 帰還の自由を認める意味での避難指示解除はあってもいいのかも知れませんが、圧倒的多数の人たちはまだ高度に汚染されたところに帰還する意思を持っていません。それを指示解除後1年で損害賠償を打ち切るというのには何の合理性もありません。
 そんなことを決める権利はないのに、東電も国も何か恩恵を施していると勘違いしているのでしょうか。
 
 東電はまた、避難指示解除準備、居住制限、帰還困難各区域の住民が避難と帰宅に掛かった交通費、避難先の家賃など実費について、賠償期間を18年3月まで延長する方針を示したということですが、これらの賠償は当然のことであり、期間を決めて打ち切るというのは筋違いです。
 
 何度も述べていることですが、その点で30年前に起きたチェルノブイリで
  ・空間線量が年間1ミリシーベルトを超える地域の住民には「避難の権利」を認める
  ・空間線量が年間5ミリシーベルトを超える地域の住民は強制的に避難させる
の方針を採ったソ連(当時)の英明さを見習うべきです。
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慰謝料18年3月まで 居住制限、避難指示解除準備区域
福島民友ニュース 2015年8月27日
 東京電力は26日、福島第1原発事故で居住制限、避難指示解除準備両区域の住民に1人当たり月額10万円を支払っている精神的損害賠償(慰謝料)の終期について、一律で2018(平成30)年3月とする方針を発表した。原発事故から7年1カ月分で、1人当たりに支払われる慰謝料の総額は850万円。請求する人は、一括払いか、18年3月まで3カ月ごとの支払いかを選ぶことができる。
  政府は17年3月までに両区域の避難指示を解除する方針で、東電は「相当期間」として解除後1年分を上乗せして支払う。解除時期がそれより前でも受取額に差が出ないようにし、既に避難指示が解除された田村市都路地区と川内村の一部の住民も対象に加える。
  東電はまた、避難指示解除準備、居住制限、帰還困難各区域の住民が避難と帰宅に掛かった交通費、避難先の家賃など実費について、賠償期間を18年3月まで延長する方針を示した。問い合わせは東電福島原子力補償相談室(フリーダイヤル0120・926・404)へ。
 
 
自主避難者、分かれる評価 福島県の引っ越し補助
福島民友ニュース 2015年8月27日
 東京電力福島第1原発事故に伴い、県内外に避難している自主避難世帯を対象に、県が県内に帰還するための引っ越し費用の補助を発表した26日、自主避難者からは「事故前の環境に戻るまで帰ろうとは思わない」など帰還希望者のみを対象とした支援に反発する声が上がる一方で、帰還を視野に入れる避難者からは「支給されるのは助かる」との声も聞かれ、県の取り組みへの評価は分かれた。
  中通りから会津若松市に家族で避難する40代女性は「(中通りの)自宅周辺は放射線量が高く、まだ子どもを守れる状況にない」と話した。一緒に避難した子どもは同市の小学校での生活に慣れていることもあり、帰還は当面考えていないという。
  郡山市から山形県に一時避難した中村美紀さん(39)は避難の長期化で避難者の抱えている問題は多様化しているとして「一律の支援には避難者の意見が分かれるはず」と語った。
  一方で帰還を視野に入れる避難者は今回の補助を歓迎。中通りから子どもと一緒に会津若松市に避難した30代女性は民間借り上げ住宅の無償入居が打ち切られる前の2016(平成28)年度に帰還を予定していることから「少しでも費用が支給されるのは助かる」と話した。

2015年8月27日木曜日

原発自主避難者 7世帯22人が追加提訴

 福島原発事故で住めなくなった人たちの悲劇を、表面上終わったことにしたい国は、まず自主避難者への住宅の提供を打ち切ることなどを決めました。月々の損害賠償の支払いも停止されます。なぜそんな冷淡なことが出来るのでしょうか。
 
 福島原発の事故により、埼玉県内と東京都避難してい7世帯22人が25日、慰謝料の一部など計2億4200万円を求めて追加提訴しました。
 国と東電を相手に、さいたま地裁に起こした損害賠償請求の第3次集団提訴、原告は計20世帯68人、請求金額は計約8億2400万円に上りました
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原発自主避難者ら窮状訴え 7世帯22人、追加提訴/さいたま地裁
埼玉新聞 2015年8月26日
 東京電力福島第1原発の事故により避難生活を余儀なくされ精神的苦痛を受けたとして、福島県からの避難者が国と東電を相手に、さいたま地裁に起こした損害賠償請求訴訟で、福島から避難している県内と東京都で暮らす7世帯22人が25日、慰謝料の一部など計2億4200万円を求めて追加提訴した。
 第3次集団提訴で、原告は計20世帯68人、請求金額は計約8億2400万円に上った。
 
 原告は、原発事故の影響で、福島市、郡山市、いわき市などから県内と東京都に避難してきた0歳から71歳までの男女。双葉町から加須市に避難している1人を除いて、21人は避難区域外から自主的に避難しているため、自主避難者の扱いとなっている。
 訴状によると、原告は精神的損害に対する慰謝料などの一部、1人当たり1100万円の損害賠償を請求。国と東電の法的責任を明らかにすることなどを求めている。
 
 弁護団は、原告の大半を自主避難者が占めた理由に触れ「法的には区域外避難者も保護される対象になっているが、現実的には少額の避難費用が支払われただけ。唯一の住宅支援も打ち切られる方針が出た。自主避難者のお母さんたちが、本当に苦しみ、訴訟に加わるという動きが広まっている」と述べた。
 
 原告の一人で子ども2人とともにいわき市から県内に自主避難している女性(33)は、別居が理由で夫と離婚した経緯を説明。
 苦しい避難生活の実態と、国や東電に対する憤りを明らかにして、「原発事故以降、苦しみながら子どもたちを育て、生き続けてきた。死にたいと追い詰められたこともあった。怒りをぶつけるのは訴訟しかないと思った」と訴訟参加の理由を述べた。

2015年8月26日水曜日

川内原発 復水器細管の損傷は磨耗による と

 川内原発1号機の復水器細管が損傷し海水が混入したトラブルで、海水の混入量470リットルと推定されるということです。海水混入による塩類濃度上昇分から逆算したものと思われます。
 また細管は長年(運転開始から31年以上)の使用により磨耗したために損傷したと考えられ損傷した細管5本と損傷の可能性がある細管64本に栓をした上で、27日から再運転に入るということです。
 磨耗や腐食が損傷の原因であれば、同じ損傷事故は今後も続発すると思われます。
 なお、復水ラインの下流には復水脱塩装置が付いているので、海水の混入量が少量であれば塩分はそこで除去されます。
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原発海水混入470リットル=川内1号機細管、すり減りか-九電
時事通信 2015年8月25日
 再稼働した九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の復水器と呼ばれる設備で細管が損傷し、海水が混入したトラブルで、九電は25日、混入量を470リットルと見積もっていることを明らかにした。細管は過去の使用ですり減った状態だったとみられ、今回の再稼働過程で発生した熱水が衝突した結果、損傷したと考えられるという。
 九電は損傷した細管5本と損傷の可能性がある細管64本に栓をした上で、27日から出力を上昇させると説明。現在の出力は75%で、今回のトラブルにより100%出力や営業運転の開始は6日以上遅れる見込みとなった。
 九電によると、今回損傷した細管の定期検査が最後に行われたのは2006年1月。その際は問題ないと判断したといい、九電は「定期検査の間隔が適切か検討する」と釈明した。川内1号機は運転開始から31年以上が経過しているが、これまで復水器の細管が取り換えられたことはない。
 九電は混入した海水について、配管内に設置された脱塩装置で回収できていると主張し、問題ないとの考えを示した。

自主避難者支援が縮小へ 基本方針改定を閣議決定

 政府は福島原発事故の自主避難者らを援助する「子ども・被災者支援法」の改定を決めました。
 改定基本方針は、「空間放射線量は事故後年以上経過して低下したので新たに避難する状況にはない」として、自主避難者への住宅の無償提供を17月で打ち切るとしています。
 その一方で支援対象地域に暮らす人、避難している人、帰還する人がいずれも「安心して自立した生活ができるよう支援に取り組む」と明記し、個別の施策ごとに設定する準支援対象地域の継続盛り込みました
 
 「新たに避難する状況にはない」のは当然ですが、「安心して自立した生活ができるよう支援に取り組む」と明記する一方で、早々に住宅の無償提供を打ち切ったり、慰謝料を打ち切ったりするのは、放射能被害が基本的にはなくなったということにしたいというだけのことで、納得できません。
 出来るだけ早く片付けたいということではなく、自主避難者らを区別せずに援助するという「子ども・被災者支援法」の理念を貫くべきです。 
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自主避難者 被災者支援が将来縮小へ 基本方針改定を閣議決定
東京新聞 2015年8月25
 政府は二十五日、東京電力福島第一原発事故の自主避難者らを援助する「子ども・被災者支援法」の改定基本方針を閣議決定した。福島県浜通り、中通り地方の三十三市町村を指定している支援対象地域を当面維持する一方、放射線量が低下しているとして対象地域を将来的に縮小、撤廃することが適当とし、帰還や定住支援に重点を置くとした。
 
 竹下亘復興相は記者会見で「避難している人も住み続けている人も、一人一人の事情に合わせて支援を考えたい」と述べた。
 改定基本方針は、被災地の空間放射線量が事故後四年以上経過して低下しているとして「新たに避難する状況にはない」と指摘。福島県が自主避難者への住宅の無償提供を二〇一七年三月で打ち切ると決定したことも放射線量の低減に合っているとした。
 ただ、自主避難者が帰還や移住を判断するには「一定の期間が必要」として対象地域の縮小、撤廃は見送った。
 対象地域に暮らす人、避難している人、帰還する人がいずれも「安心して自立した生活ができるよう支援に取り組む」と明記。個別の施策ごとに設定する準支援対象地域の継続も盛り込んだ。
 
◆基本方針ポイント
▼被災地の空間放射線量は事故後四年以上経過して低下。新たに避難する状況にはない。
▼自主避難者が帰還や移住を判断するには一定の期間が必要で、支援対象地域を当面維持。
▼将来的には支援対象地域を縮小、撤廃することが適当。帰還や定住支援に重点を置く。