2016年6月30日木曜日

伊方原発の再稼働が迫るものの「不安」は積み残されたまま

 伊方原発3号機で核燃料装塡作業が進んでいます。中央構造線断層帯上で熊本地震が起きた後も再稼働の方針は変わりません。
 地震への備えや安全性、避難計画は万全か・・・高知新聞が伊方原発の「再稼働」を検証しました。
 27日~29日でシリーズ(1)~(3)が連載されましたのでそのうちの
 (2) 「揺れ」への評価に「想定外」ないか
 (3) 避難計画「本当に逃げられるか?」
を転載します。((1)戸別訪問で「本音」聞けたか については、URLでアクセスしてご覧ください)
 
 基準地震動も不充分で装置の耐震性に信頼がおけない上に、細長い半島の根元に伊方原発が位置しているので、万一事故が起きた場合にはその先に居住している人たちの避難は容易ではなく、半島先端の三崎港からフェリーで九州に逃げるという方針も、地震時、台風時、津波時には無理で現実的でないなどの問題が未解決のままであることが分かります。
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【迫る伊方再稼働】(1)戸別訪問で「本音」聞けたか
 
【迫る伊方再稼働】(2)「揺れ」への評価に「想定外」ないか
高知新聞 2016年6月28日
 国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」は過去、何度も巨大地震を引き起こしている。
 高知大学理学部の松岡裕美准教授(地質学)によると、大地震は過去7千年で少なくとも5回あった。
 直近は1596年の慶長豊後地震で、震源は別府湾。マグニチュードなどは不明だが、別府湾沿岸は大津波で壊滅的な被害を受けたことが分かっている。数日間のうちに京都などでも大地震が発生したという。
 西日本を東西に横断するこの活断層は、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)北側の海域を走る。距離は6~8キロ。地質学上では「活断層の真上」とも言える立地が、再稼働を巡る不安の根底にある。
 中央構造線で地震が起きた場合、伊方原発は安全なのか。
 原子力規制委員会の審査に対し、四国電力は「中央構造線による地震が最も大きな影響を与える」とした。その上で、安全設計の基礎をなす基準地震動について「最大650ガル」と設定した。
 ガルは地震の揺れの強さを示す数値で、数字が大きいほど揺れは強く、より強固な耐震性が必要になる。
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 揺れの「想定外」はこれまで、日本の原発で何度か起きている。
 2011年の東日本大震災では、東北電力女川原発(宮城県)で基準地震動580ガルを上回る636ガルの揺れを観測した。
 2007年の新潟県中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発の揺れが最大1699ガル。想定の4倍近くにもなった。
 
 松岡准教授は言う。
 「女川原発は伊方原発と同じく固い地盤の上にあります。東日本大震災後、女川の基準地震動は千ガルに引き上げた。女川と震源までの距離は約50キロ。それなのに(中央構造線間近の)伊方は650ガル。それでいいのか、と」
 中央構造線を早くから問題視してきた高知大学防災推進センターの岡村真特任教授もこう言う。
 「3号機稼働の1994年当時、基準地震動(473ガル)は『中央構造線は活断層ではない』との前提でした。それを基に造った原発を補強しても、ぼろ屋につっかえ棒をするようなものです」
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 「滑り量」と呼ばれる断層の「ずれ」に関する想定にも疑問が残る。
 中央構造線は東西に長い。四国電力は、長さ480キロが連動して動いた場合を想定。伊方原発前の海域下では、断層の平均滑り量を2・6~5・8メートルと算出した。
 これに対しても松岡准教授は「過小評価ではないか」と言う。
 「長さ480キロで平均滑り量2・6メートル」などとする四国電力の算定は、国内研究者の論文が基になっている。一方、同じ論文で長さ54キロの地震の場合、平均滑り量を2・5メートルとした。
 断層の動く長さが約9倍になっても「ずれ」の差がほとんどない。
 「断層が長くなると滑り量も大きくなるはず。だから『480キロで2・6メートル』は明らかにおかしい。その論文に基づけば、伊方原発付近の平均滑り量は最低でも3メートルほどになります
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 こうした指摘に、四国電力は真っ向から反論する。
 広報部の笹谷誠志副部長は「断層の長さが50キロを超えると、滑り量は飽和傾向になります」と指摘する。
 2016年4月に熊本地震が起きると、震度7クラスの地震が連続した場合の安全対策にも懸念が広がった。原子力部の杉原雅紀・耐震設計グループリーダーは「連続した大地震は設計上想定していない」とした上で言う。
 「(原子炉格納容器など)重要な設備は千ガル程度まで耐震性があります。揺れで原子炉破壊には至らないでしょう」
 
 
【迫る伊方再稼働】(3)避難計画「本当に逃げられるか?」
高知新聞 2016年6月29日
 「緊張感? なかったですよ。いつも同じ内容ですから」
 愛媛県伊方町の末光勝幸さん(63)は、2015年11月に政府と高知県が実施した「原子力総合防災訓練」をそう振り返る。
 2011年の東京電力福島第1原発事故後、政府は原発から30キロ圏内の自治体に対し、避難計画の策定を義務付けた。訓練は、それを検証する狙いがある。
 末光さんの自宅は伊方町役場に近い。四国電力伊方原発から約4キロ。訓練の時は、地区自主防災組織の会長だった。
 「愛媛県で震度6強の地震が発生し、3号機は外部電源を喪失して放射性物質が外へ出た」―。そんな想定の下、末光さんらは近くの中学校に集合し、約50キロ離れた公園へバスで避難した。
 内閣府の報告書によると、このバス移動には1時間49分かかった。「事故が起これば、あんなにスムーズにできないよ」と末光さんは言う。
 愛媛県八幡浜市の国道378号で2016年1月、雪や凍結で100台超の車が立ち往生したことがある。渋滞は3キロ以上。車内で夜を明かす人も出た。
 末光さんが訓練で通った道である。
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 「避難計画は現実的じゃない」という感想は、山下三郎さん(70)も抱いた。
 伊方原発は細長い佐田岬半島の付け根付近に位置する。万が一、過酷事故が起きたら、住民たちはどう逃げるのか。
 陸路が使えない場合、原発より西側の住民約5千人は、フェリーやヘリで大分県などに避難する計画だ。陸路とは国道197号。主要道路は片側1車線のこの道しかない。
 山下さんに半島を案内してもらった。自主防災組織の会長を長年務め、防災士の資格も持つ。
 「半島先端の三崎港からフェリーで避難するなんて、実際はあり得ん台風やしけの時は船が岸壁に着けん。津波が来たらなおさら無理
 山下さんの住む集落から三崎港への道は狭く、所々に亀裂もある。
 「この避難路、地震が来て使える? 土砂崩れもある。ここは孤立するよ。急傾斜が多い。ヘリが降りる所もない。フェリー乗り場まで行けん。大半が避難を諦めとる
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 伊方原発が事故を起こすと、風の強さや向きによっては高知県にも放射性物質が運ばれてくる、との予測がある。
 高知県で30キロ圏内に入る地域はなく、避難計画の策定を義務付けられた自治体はない。
 それでも一部が50キロ圏に入る高岡郡梼原町と四万十市は6月、自主的に避難計画を作った。
 梼原町で50キロ圏に入るのは「井高」「文丸」の2集落で、計37世帯、64人が暮らす。
 文丸集落の高齢化率は81・5%に上る。「私は若い方」と話す吉村秀子さん(67)の自宅は、愛媛県境まで約2キロ。梼原町の避難計画では、5キロ余り先まで行き、閉校した小学校に屋内退避することになっている。
 「一本道。あれがつえたら、どこにも逃げれん」
 避難計画を作った側にも不安がある。梼原町総務課の高橋里香係長が言う。
 「高齢者が多く、避難の時間が読めない。移動手段のない人は梼原町がピックアップすることになっているけど、現実的じゃない。そもそも国や高知県からすぐに情報が入ってくるかどうか。情報がなければ、計画を作った意味がありません
 原発に異常があると、四国電力は高知県にメールや電話で通報し、情報はその後、「県→市町村→住民」の順で流れる。
 より重大な過酷事故の場合は、原子力災害対策特別措置法に基づいて首相が「原子力緊急事態宣言」を出し、政府が司令塔になる。
 しかし、福島の事故では、政府や東京電力が大混乱に陥り、情報伝達が遅れ、住民の避難も遅れた。その記憶は新しい。

30- 島崎・東大名誉教授「大飯原発の基準地震動過小の疑い」(詳報)

 大飯原発の運転差し止め仮処分控訴審で、島崎東大名誉教授が関電が基準地震動の策定に用いた方法に「過小評価の可能性がある」とする陳述書を提出したことを機に、これまで島崎氏の指摘に関するいくつかの記事を紹介して来ました。
 20日付の東洋経済オンラインが、島崎氏の指摘を比較的詳しく説明していますので紹介します。
 その中で、「関電が用いている入倉・三宅式は、垂直型断層や垂直に近い断層に用いた場合には、震源の大きさがほかの式を用いた場合と比べて3.5分の1~4分の1の小さな値になる。実際の震源の大きさが上記の式で得られた値の3倍以上だとすると短周期レベルの地震動は5割増しになると述べています。
 
 要するに関電が採用して規制委が追認した予測式は、一番小さな基準地震動を与えるものであり、島崎氏が熊本地震について検証した結果そのことが明らかにされました。
 
  (参考記事)
     6月18日 大飯原発 地震動再計算を 規制委員長に島崎名誉教授
     6月13日 高浜原発その他の基準地震動 過小評価の恐れ 元規制委・島崎氏 
     6月9日 大飯差し止め控訴審 揺れ想定「過小の可能性」と 島崎東大名誉教授
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元原子力規制委員が大飯原発の危険性を警告
島崎・東大名誉教授「関電に過小評価の疑い」
岡田 広行 東洋経済オンライン 2016年06月20日
東洋経済 記者)                   
原子力発電所の安全審査で中枢にいた専門家の発言が、原子力業界に衝撃を与えている。
 
2014年9月まで原子力規制委員会でナンバー2(委員長代理)を務めた島崎邦彦・東大名誉教授地震学が、6月16日の田中俊一委員長らとの意見交換の場で、関西電力・大飯原発3、4号機再稼働のための安全審査の根幹をなす基準地震動が「過小に見積もられている可能性がある」と指摘。「基準地震動の算出に問題がないかどうか、もう一度精査してほしい」と強く求めた。
これを受けて6月20日午後2時からの規制委会合では基準地震動の検証をやり直すかどうかについて議論することになった。
 
関電が用いた計算式に欠陥あり
島崎氏は、関電が大飯原発の基準地震動を計算するうえで用いている活断層評価のモデル式に、過小評価を生み出す欠陥があると指摘。
 
モデルは「入倉・三宅式」と呼ばれるもので、これを西日本で多く見られる横ずれ断層垂直型断層)や垂直に近い断層に用いた場合には、震源の大きさがほかの式を用いた場合と比べて3.5分の1~4分の1程度の小さな値になると田中委員長らに説明した。
そのうえで島崎氏は、本当の震源の大きさが同式での計算結果の3倍以上だとすると「短周期レベルの地震動は5割増しになる。これはかなり深刻な問題だ」との見方を示した。
 
大飯原発3、4号機の再稼働をめぐっては、2014年5月に原告住民の勝訴となる運転差し止めを福井地裁が命じている。その判決では次のように指摘されている。
1260ガルを超える地震によって冷却システムが崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能になり、メルトダウン炉心溶融)に結びつく。このことは被告関電)も自認しているところである」
 
当時、関電が規制委の審査会合で示していた基準地震動は700ガル。その後、規制委との議論を経て856ガルに引き上げて概ね了承を取り付けたものの、今回、島崎氏から「そもそも、関電が基準地震動設定の基礎に用いた式そのものに欠陥がある」との問題が提起された。
しかも驚くべきことに、島崎氏は関電が申し立てた名古屋高裁金沢支部での同裁判の控訴審で、住民側弁護士の依頼で陳述書を提出しており、そこで関電の地震動評価について「過小評価の可能性」を指摘している。こうした流れを踏まえて朝日新聞などが島崎氏の問題提起について報じたことにより、事の重大性が世の中に知られるようになった。
 
今回、規制委が"すでにやめた人"である島崎氏との面談を設定したのも、こうした経緯によるところが大きい。田中委員長も16日の面談の冒頭で、「本日も大勢のマスコミが集まっている。国民も関心を持っている」などとして、問題が無視できなくなっているとの認識を示した。
 
このままでは福島の事故が繰り返される
「どうされるかは委員会のマター。くちばしをはさむつもりはない」「すでに辞めた人間が申し上げるのも口はばったいのですが」と言いつつも、島崎氏は田中委員長ら規制委に審査のやり直しを強く求めた。
その理由について、意見交換終了後のぶらさがり会見で島崎氏は、「東日本大震災と同じこと(=想定外の大惨事)が、日本海側で再現されつつある。今であれば対策の)やり直しがきく」とし、そのうえで「専門家であれば計算し直すのに大して時間はかからないはず」と述べている。
 
島崎氏の問題提起は、6月24日発売の岩波書店『科学』(7月号)に掲載される論文に詳しい。
そこで島崎氏は国土交通省が2014年9月に策定した『日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書』が日本海「最大クラス」の津波を過小評価しており、「津波の対策がこのまま進めば、再び『想定外』の被害を生ずるのではないだろうか。2002年の津波地震の予測を中央防災会議や東京電力が無視し、『想定外』の災害を起こしたことを忘れてはならない」と警鐘を鳴らしている。
 
「想定外」が繰り返されるのか
島崎氏は、規制委委員長代理を退任した後、日本海側での津波予測について研究を重ねてきた。さらに熊本地震での現地調査を経て、「入倉・三宅式」を横ずれ断層に用いることによる弊害について、確信を持つようになったという。
島崎氏が「過小評価の可能性が高い」として問題にしている日本海最大の活断層は、大飯原発の基準地震動設定の際にも検証の対象となったことから、学会での報告内容を知った原告の弁護士から求められて陳述書を書いたと島崎氏は舞台裏を明らかにしている。
 
規制委との意見交換では「入倉・三宅式は適用範囲を頭の隅に置きながら審査を進めてほしい)ということか」との質問が原子力規制庁の幹部から出たが、島崎氏は「(同式に欠陥があることは)頭の隅ではなく、真ん中に置いてほしい」と釘を刺した。田中委員長からの「安全上余裕度を持たせている)原発よりも建築基準や高層ビルなどのほうがどうなっているか気になる)」の問いにも、「(入倉・三宅式が)原子力(発電所の基準地震動設定)でも引き続き使われる可能性がある(ことが問題だ)」と警告した。
「想定外を繰り返してはならぬ」との地震学の専門家による問題提起を、田中委員長ら規制委は20日の会合でどう判断するか。国民を原発事故から守る最後の砦としての責任が問われている。

2016年6月29日水曜日

福島県大熊町に2つ目のメガソーラーの建設が決まる

 福島原発事故により町民の避難生活が続いている福島県の大熊町で、復興計画の一環としてメガソーラーの誘致を進めこのほど新たに出力約11.7MWの発電所の建設が決まりました
 売電収益の一部は復興事業費として活用されます
(註メガソーラー=1MW以上の発電能力を持つ太陽光発電設備 1MW=1000キロワット)
 
 この地域に復興支援用のメガソーラーが建設されるのはこれが2で、1カ所目は「大熊町ふるさと再興メガソーラー発電所」で、既に2015年12月から1.89MW規模で稼働を開始しています。
 
 転載に当たり図や写真を省略しましたので、ご覧になりたい方は下記のURLにアクセスしてください。
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原発が立地する町にメガソーラー、売電収益を復興計画に生かす
スマートジャパン 2016年6月28日
 東日本大震災による原発事故により、町民の避難生活が続いている福島県の大熊町。同町では復興計画の一環としてメガソーラーの誘致を進めている。このほど新たに出力約11.7MWの発電所の建設が決まった。売電収益の一部は復興事業費として活用される。再生可能エネルギーの導入拡大とともに、復興計画を推し進めるプロジェクトが着々と進んでいる。[陰山遼将]
 
 「福島第一原子力発電所」が位置する福島県の大熊町。2011年3月に起きた原発事故で全町避難を余儀なくされ、現在も多くの町民の避難生活が続いている。同町は2015年3月に今後10年間の取り組み目標を定めた「第二次復興計画」を策定し、復興に向けた取り組みを進めているところだ。
 
 現在も大熊町の多くのエリアが帰宅困難区域に指定されている。こうした状況の中、大熊町では放射線量が比較的低い中央南部の「居住制限区域」内にある大河原地区を、復興の中心拠点と位置付け開発を進めている(図1 省略)。
 
 具体的には大河原地区に産業集積エリアや防災拠点、復興公営住宅の整備を計画している他、太陽光発電所や植物工場などの誘致を進めている。こうした取り組みを進める中で、2016年6月23日に約16万平方メートルの土地を活用した「大熊エネルギー・メガソーラー発電所」の建設が決まった。
 
 同発電所は大熊町、NTTファシリティーズ、北芝電機、大熊町、福島発電が設立した合弁会社の大熊エネルギーが事業運営を行う。事業地は個人地権者が保有する土地を賃借した。合計出力は約11.7MW(メガワット)で、年間の発電量は一般家庭3500世帯分に相当する1万2700MWh(メガワット時)を見込んでいる。発電の開始時期は2017年7月1日を予定している。
 
売電収益を復興に生かす、同地区で2カ所目の発電所に
 大熊エネルギー・メガソーラー発電所は福島県の「福島県再エネ復興支援事業」による補助金を活用して建設した。これは発電事業の収益の一部を復興支援事業に活用することを目的に、避難解除区域などに再生可能エネルギーによる発電設備の導入する際の費用を支援するものである。発電所の完成後は、収益の一部が福島県再生可能エネルギー復興推進協議会を通じて、避難解除区域などの12市町村における復興支援事業費として活用される。
 
 大河原地区に復興支援に活用するメガソーラーが建設されるのは、これが2カ所目になる。1カ所目は福島発電が運営する「大熊町ふるさと再興メガソーラー発電所」で、既に2015年12月から稼働を開始している(図3 省略)。
 
 大熊町ふるさと再興メガソーラー発電所は約3.2ヘクタールの農地を転用して開発した。約7700枚の太陽光パネルを設置し、出力は1.89MW、年間約2200MWhの発電量を見込んでいる。一般家庭約600世帯分の使用量に相当する発電量だ。事業期間は20年間を想定しており、その後は農地に戻す計画である。
 
 同発電所の売電収益の一部は大熊町が大川原地区に建設予定の植物工場の運営費として活用される。福島県は2040年までに再生可能エネルギーの使用率100%という目標を掲げている。こうした福島県の目標達成に貢献すると同時に、地域の復興計画も推し進めるプロジェクトが着々と進んでいる。

山木屋地区 避難解除への住民懇談会 日程見通し立たず

 福島第1原発事故で避難区域となっている川俣町山木屋地区の避難指示解除についての、同町主催の住民懇談会の日程が見通せない状況なっています。
 今月上旬に住民自治会から避難指示解除を2017年3月末に見直すように要望が出されましたが、その後 住民や町議会の一部から「解除時期ありきの議論になる」という意見が強まったためです。
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山木屋地区の住民懇談会、日程見通し立たず 避難解除へ影響必至
福島民友 2016年06月28日
 東京電力福島第1原発事故で避難区域となっている川俣町山木屋地区の避難指示解除を巡り、今月から開く予定だった同町主催の住民懇談会の日程が見通せない状況となっていることが27日、町などへの取材で分かった。
 
 住民や町議会から住民懇談会の開催について反発する声が高まっており、同町が日程を決められない状態が続いている。町は「8月末ごろ」の避難指示解除を目標と示しているが、目標時期への影響は必至の状況。町は避難指示解除の時期について再検討も必要となる可能性が高い。
 住民懇談会の開催に反発する声が大きくなったのは今月上旬ごろから。住民でつくる自治会から避難指示解除を2017(平成29)年3月末に見直しするよう要望を受けてからだ。同町は要望に対して「住民の意見を聞きながら、改めて望ましい解除の時期を判断する」と回答した。
 しかし、住民や町議会の一部から「解除時期ありきの議論になる」との意見が強まった。同町は避難指示解除について、住民懇談会で広く意見を拾いたい考えだったが、困難な状況だ。

29- 原子力給付金廃止も 福島第1原発分、基金枯渇で 福島県

時事通信 2016年6月28日
 東京電力福島第1原発周辺自治体の住民らに配られる「原子力立地給付金」の原資を積み立てている福島県の基金が2017年度中に枯渇する見通しであることが28日、分かった。県は今秋にも周辺自治体から意向を聞き取り、今年度中に給付金を廃止するかどうか判断する方針だ。
 枯渇する見通しなのは、原発周辺地域の振興に使われる基金のうち、福島第1原発周辺9市町村の住民や事業所に配る約3万3770件の給付金分。15年度末時点の残高は約2億8000万円で、16年度末の残高は約5000万円となる見通しだ。
 県は今秋にも9市町村と協議。市町村側の意向を踏まえ、廃止するか、新たな財源を確保して給付を続けるかについて検討する。

2016年6月28日火曜日

玄海原発 MOX燃料使用差し止め 福岡高裁も認めず

毎日新聞 2016年6月27日
九州6県の市民団体メンバーら98人の控訴棄却 
 九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)のプルサーマル発電を巡り、九州6県に在住する市民団体メンバーら98人が、九州電力を相手取って使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料の使用差し止めを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(大工強裁判長)は27日、請求を棄却した1審・佐賀地裁判決(2015年3月)を支持し、市民側の控訴を棄却した。 
 
 控訴審で市民側は、1審と同様に
(1)運転中にMOX燃料から出るガスで燃料を覆う管と燃料との間にすき間が広がる「ギャップ再開」が起き、燃料の温度が上昇して炉心溶融(メルトダウン)につながる可能性がある
(2)使用済みMOX燃料を長期保管することで、放射性物質が漏えいして周辺住民の健康を害する危険がある
    などと主張した。九電側はギャップ再開は起きず、使用済み燃料は適切に保管しているので安全と反論していた。 
 
 玄海原発3号機は、09年12月に国内初のプルサーマル発電を開始。10年12月に定期検査で運転を停止し、11年4月から運転再開を予定していたが、福島第1原発事故を受けて停止されたままの状態にある。九電は13年7月、原子力規制委員会に再稼働の申請をし、審査は大詰めを迎えている。【吉住遊】 

汚染土「濃度減衰まで170年」

 環境省非公開会合で試算を議論
東京新聞 2016年6月27日
 東京電力福島第1原発事故に伴う除染廃棄物を巡り、放射性物質濃度が基準以下となった土などを全国の道路や防潮堤などの公共工事で再利用する環境省の方針について、同省の非公開会合で「再利用後、放射性物質として扱う必要がなくなる濃度に減衰するまで170年かかる」との試算が議論されていたことが27日、関係者への取材で分かった。
 
 環境省の担当者は「工事完了後も管理し、年数で区切ることは考えていない。今後実証試験などを通じて適切な方法を確立する」としているが、補修の際の具体な対応策などは決まっていない。(共同)

28- セシウムの89%はガラス粒子 原発事故で東京への降下物分析

中日新聞  2016年6月27日
 東京電力福島第1原発事故の発生から4日後に東京に降下した放射性セシウムの89%は、ガラス状の微粒子に溶け込んだ状態だったとの研究結果を、九州大の宇都宮聡准教授らが27日までにまとめた。
 
 セシウムは雨などで洗い流されると考えられていたが、直接的に除去する方法でなければ環境に存在し続ける可能性があるという。チームは「健康への影響について考え直す必要がある」としている。
 チームは、事故発生後の2011年3月15日、原発から約230キロ離れた東京都内で採取された放射性降下物を分析した。(共同)

2016年6月27日月曜日

原発必須論は破綻 原発を稼働させる必要はどこにもない

 経産省が4月発表した「2014年度エネルギー需給実績」によれば、「最終エネルギー消費=電力消費量)」は前年度比3.2%減で、東日本大震災前の10年度比べると14年度の「減少量」100万kWh級の発電所約36基分に相当します。要するにそれだけ省エネが進んだともいえるし、エネルギー効率が改善したともいえます
 なお、14年度は原発の稼働率はゼロだったので、その分を補ったのは19.3%増の天然ガス(LNG:液化天然ガス)と2.7%増の石炭で、再生可能エネルギー(自然エネ+地熱)も15%増えています。こうして原発停止によって燃料転換が進みました
 
 エネルギー効率の改善の余地はまだあり、経産省の省エネルギー小委員会資料には、『ボイラーの配管などに用いられる断熱材の劣化により、製造業のエネルギー消費の10%以上になる大きな損失が生じている』という指摘があるなど、日本経済研究センターが14年11月に公表した試算で、50年度までに10年度比で40%削減できる、また国立環境研究所も30~40%の大幅削減が可能という試算をしているということです。
 
 これほど雄弁な原発不要論はありません。
 必要のない原発を、多大な危険を孕んでいるにもかかわらず自分たちの利権を維持するために強引に稼働させようとするのは、絶対に許されないことです。
 ビジネスジャーナルの記事を紹介します。
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原発必須論の破綻
震災後4年間で、発電所36基分のエネルギー消費量減少
横山渉 ビジネスジャーナル 2016年6月26日
 経済産業省が4月発表した「2014年度エネルギー需給実績」によれば、「最終エネルギー消費」は前年度比3.2%減の1万3558PJ(ペタジュール:エネルギー量の単位)となった。最終エネルギー消費とは、発電所等でつくり出された時点でのエネルギーではなく、工場やオフィス、運搬や家庭で実際に消費されたエネルギーのことをいう。 
 
 原油や石炭、天然ガス等は、最終的に電気や石油製品等にかたちを変えて消費されている。この際、発電所や石油精製工場などの発電・転換部門ではロスが生じるが、そのロスまでを含めて国全体が必要とするすべてのエネルギーの量を「一次エネルギー供給」という。最終消費者に供給されるエネルギー量は、発電・転換部門で生じるロス分だけ減少することになるが、一次エネルギー供給を100とすれば、最終エネルギー消費は69程度といわれる。
 最終エネルギー消費が減ったということは、一体何を意味するのか。それは、エネルギー需要が減ったということであり、省エネが進んだともいえるし、エネルギー効率が改善したともいえる
 
 東日本大震災前の10年度、最終エネルギー消費は1万4698PJだが、これに比べて14年度は1140PJも減っている。これは、100万kWh級の発電所約36基分に相当する。発電所がつくり出すエネルギー量を「1kWh=3.6MJ(メガジュール)」として計算したものだが、これはあくまで理論値であり、1140PJすべてが電気の削減分ではないため、単純に36基分の発電所が不要になったということではない。しかしながら、震災の影響もあったとはいえ、4年間で省エネ化が格段に進んできたことだけは間違いない。
 
 では、主にどんなエネルギーの消費が減ったのか、あるいは増えたのか。
 一次エネルギー国内供給は、10年度比9.5%減となった。14年度はすべての原子力発電所が稼働停止したことにより、原子力の比率はゼロ。そのマイナス分を補ったのは19.3%増の天然ガス(LNG:液化天然ガス)と2.7%増の石炭だった。また、再生可能エネルギー(自然エネ+地熱)も15%増えている。原発停止による燃料転換が進んでいることがわかる。
 
「経済成長=エネルギー需要増大」の終焉
 日本は1970年代の2度の石油ショックを契機として、製造業を中心に省エネ化が進んだ。90年代は原油価格が低水準だったこともあり、エネルギー消費は増加したが、2000年代には再び原油価格が上昇して、04年度をピークにエネルギー消費は減少傾向になった。日本の省エネはかつて「絞りきった雑巾」とされ、これ以上の省エネは難しいといわれた時代が長く続いていたが、あれは嘘だったのだろうか。自然エネルギー財団の大野輝之常務理事はこう語る。
「震災後の大幅な電力削減は、絞りきった雑巾論が少なくとも電力についてはまったく誤りだったことを証明した。エネルギー機器利用の最適化、高効率設備の導入など、賢い節電が行われるようになっている」
 
 大野氏はとくに製造業でエネルギー効率の改善がまだまだ可能だと指摘する。
「経産省の省エネルギー小委員会に提出された資料には、『ボイラーの配管などに用いられる断熱材の劣化により、製造業のエネルギー消費の10%以上になる大きな損失が生じている』という指摘がある」
 
 では、今後どのくらいまでエネルギー消費を減らすことができるのか。
「当財団では30年度の年間電力需要は、10年度比で30%削減して7725億kWhにすることが可能と試算している。熱や燃料を含むエネルギー消費全体については、日本経済研究センターが14年11月に公表した試算で、50年度までに10年度比で40%削減できるとしている。国立環境研究所も30~40%の大幅削減が可能という試算をしている」
 
 さらに、国全体の省エネ推進と経済成長についてこう語る。
「経済成長にはエネルギー消費の増加が必須、というのが伝統的考え方だった。しかし、今日では、効率化により経済成長とエネルギー需要の増大を切り離す『デカップリング』という考え方が国際的に主流になっている。すなわち、エネルギー消費を削減しながら経済成長の実現は可能ということだ。EUは30年までにエネルギー効率を少なくとも27%改善することを目指している。省エネ化は新たなビジネスを生み出すので、むしろ新たな経済成長を可能にするものだ」
 
「隠れた燃料」
 昨年12月、フランス・パリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)は、20年以降の地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を採択した。これにより日本は温室効果ガスを「30年度までに13年度比で26%減」が国際公約となった。
 
 温室効果ガスの排出は化石燃料(石炭、天然ガス、石油)の発電時によるものが大部分を占める。政府は再生エネと原発の比率を現状よりも大幅に引き上げて目標達成を目指そうとしている。しかし、原発の「40年廃炉基準」を適用した場合、すべて再稼働できたとしても電力構成に占める原子力比率は15%程度までにしかならない。
 原発再稼動の見通しがたたない以上、再生エネ比率の大幅向上こそ現実的な解決のはずだ。そして、エネルギー効率化はエネルギー需要増大に対してもっとも安価・容易でクリーンな対応策であり、「隠れた燃料(hidden fuel)」と呼ばれていることを思い起こそう。 (文=横山渉/ジャーナリスト)

27- 各党の原発再稼働に関する公約は三様

 東京新聞が参院選に向けての各党の「原発に関する公約」を三つのスタンスに分類しました。
 自民公明の与党は 安全性に関する国の基準を満たした原発は再稼働させていく民進党おおさか維新の会は より厳しい条件を付けて容認する、共産、社民、生活の三党は 一切稼働は認めない
三つです。
 
 電気労連や大手土建会社など原子力ムラの労組を含む連合に支えられている民進党は、原発に関する公約においてもやはり煮え切りません。
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<公約点検>(3)原発 再稼働 スタンスは三つ
東京新聞 2016年6月26日
 各党の参院選公約では、原発の再稼働に対するスタンスは大きく三つに分かれる。自民、公明の与党は、安全性に関する国の基準を満たした原発は再稼働させていく姿勢だ。民進党、おおさか維新の会は、より厳しい条件を付けて容認。共産、社民、生活の三党は一切認めていない
 
 自民党は公約で、省エネや再生可能エネルギーの導入によって「原発依存度を低減させる」と強調した。同時に原子力を「重要なベースロード電源」に位置付けて活用する方針も明記。原子力規制委員会が新規制基準に適合すると判断した原発は、立地自治体の理解と協力を得て「再稼働を進める」とした。
 
 公明党の公約は「原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す」と脱原発に踏み込んだ。ただ、再稼働に関する記述は自民党とほぼ同じ。二〇一四年の衆院選では、原発の運転期間を四十年に制限する制度を厳格に適用すると公約していたが、今回は削除した。
 
 与党方針を踏まえ、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)が稼働中。四国電力は伊方原発3号機(愛媛県)を七月末に再稼働させる構えだ。規制委は運転開始から四十年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)に関し、最長二十年の運転期間の延長を認めた。
 
 一方、民進党は公約で、再稼働は責任ある避難計画の策定が前提だと主張。再稼働の余地を残しつつ与党より高いハードルを設定。さらに「二〇三〇年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入する」と訴え、旧民主党の目標を引き継いだ。
 おおさか維新の公約は、再稼働の条件に地元同意の法定化も追加。最終的に原発は市場競争に敗れ「フェードアウト」するとした。
 共産党は、原発には他の技術にはない「異質の危険」があることを公約で強調。原発ゼロを決断し、すべての原発で廃炉のプロセスに入ると訴えた。社民、生活両党も再稼働への「反対」を公約に明記した。
 民進、共産、社民、生活の野党四党は、市民団体との政策協定に「原発に依存しない社会の実現へ向けた地域分散型エネルギーの推進」を共通政策として盛り込んだ。 (宮尾幹成)

2016年6月26日日曜日

原発避難集団訴訟10月31日に結審へ(群馬)

 福島原発事故で群馬県内に避難している住民ら137人が、国と東電に計約15億円の損害賠償を求めている集団訴訟について、24日、前橋地裁 原道子裁判長は1031日に結審する考えを示しました。この種の訴訟で2例目となる実地検証も已済んでおり、全国で係争中の同種裁判28件のうち最も早審理進捗しています
 
 本当に苦しめられている原告の気持ちが裁判長には伝わったと思う」、裁判長らによる自宅の実地検証を受けた原告は、24日、閉廷後の会見でその様に心境を語りました
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原発避難集団訴訟1031日に結審へ 主な争点の主張にめど群馬
東京新聞 2016年6月25日
 東京電力福島第一原発事故を受け県内に避難している住民ら百三十七人が、国と東電に計約十五億円の損害賠償を求めている集団訴訟の口頭弁論が二十四日、前橋地裁であり、原道子裁判長は十月三十一日に結審する考えを示した。原告側弁護団によると、東京や福島など全国で係争中の同種裁判二十八件(二月時点)のうち、審理の進捗(しんちょく)は最も早い。
 この日、原裁判長はこれまでの証拠内容を確認。主な争点の主張はほぼ尽くされたとの認識を示した。
 提訴されたのは二〇一三年九月で、ようやく結審のめどがついた。これまで双方が準備書面などで主張するほか、昨年五月~今年二月に原告計四十一人の本人尋問を実施。五月には全国二例目となる福島県内での現地検証を行っていた。
 判決について、弁護団は「来年三月までに言い渡されるのでは」との見通しを示した。次回は九月二日に開かれる。
 同種裁判のうち、千葉地裁では来年一月三十一日に結審する予定。
 
◆苦境「裁判長に伝わった」 現地検証受けた原告が会見
 本当に苦しめられている原告の気持ちが裁判長には伝わったと思う-。東京電力福島第一原発事故に伴う県内避難者らが前橋地裁に起こした集団訴訟で、五月に福島県内にある自宅の現地検証を受けた四十代の原告女性は二十四日、閉廷後の会見で心境をこう語った。
 女性を含む家族六人は、福島県南相馬市の小高区に住んでいたが、事故を受けてまもなく前橋市内に移り住んだ。震災による自宅の損傷はそれほどでもなかったが、長い間留守にしている影響でカビの臭いがひどく、室内は動物に荒らされるなどして「今はとても住めない状況」という。
 六人とも訴訟の原告団に名を連ねている。仕事の都合で現地検証に立ち会ったのは夫だったが、女性は「原道子裁判長は熱心に家を見て回り、しっかり確認してもらったと聞いている」と話した。
 
 一方、国や東電側の代理人らも現地検証に立ち会ったが、台所に置いてあった造花を生花と勘違いし、「花がにおいの原因では」と言われたそうで、女性は「本当に機械的で心のない話をする方でどうしようもない」と憤った。
 現地検証は五月九日に行われ、福島県内にある原告四世帯の住居を回った。(川田篤志)