2017年3月31日金曜日

もんじゅ模擬燃料170体不足 ずさんな管理 燃料取り出し時必要

 昨年末に廃炉が正式決定した高速増殖炉「もんじゅ」の燃料取り出し作業時に必要な模擬燃料が、少なくとも170体以上不足していることが分かりました。もんじゅの燃料を抜く際は、構造的に、燃料と同じ形の金属製の模擬燃料を代わりに入れる必要があるため、充填燃料370体と同数の模擬燃料が必要ですが、約200体しか準備されていないということです
 
 現在準備されているものも使えるか全品を検査する必要があって、一説には全品を作り直す必要があるともいわれています。この点でも緊急時に燃料を取り出す必要が生じたとき、それに対応できる体制になかったことが明らかにされました。
 
 大事故でプルトニウムが放出された場合、関西地方一帯が深刻な環境汚染に見舞われる恐怖が言われていたにもかかわらず、そうした状態で放置されていたわけです。
 既に初臨界から20年が経過し、その間満足に動いたのはせいぜい200日余り、装置が停止中も日額5500万円、年額200億円(うち電気代は10億円程度)という想像を絶する維持費を消費しながら、一体何を考えていたのでしょうか。あきれる話ですし、そういうことを見逃してきた原子力規制委も責任を負うべきです。
 原発推進派の産経新聞の記事です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
もんじゅ模擬燃料170体不足 廃炉の障害…原子力機構、ずさん管理露呈
産経新聞 2017年3月27日
 昨年末に廃炉が正式決定した高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の燃料取り出し作業に不可欠な模擬燃料が、少なくとも170体以上不足していることが26日、分かった。もんじゅの燃料は互いに支え合うような形で原子炉容器に入っており、燃料を抜く際は、燃料と同じ形の金属製の模擬燃料を代わりに入れる必要がある。異常事態にも燃料が取り出せない状況を放置していたことになり、日本原子力研究開発機構のずさんな体質に改めて批判が集まりそうだ。
 
 不足分は新たに製造する必要があるといい、燃料の取り出し作業だけで5年半と長期化している主な要因となっている。模擬燃料の新規調達については、4月に公表するもんじゅの廃炉に関する「基本的計画」にも盛り込まれる見通し。
 原子炉容器には現在、198体のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料と、172体の劣化ウラン燃料の計370体の燃料が入っているが、原子力機構によると模擬燃料は約200体しかないという。
 この模擬燃料についても、平成2~3年にもんじゅに搬入されたもので、全てがそのまま使えるかは不明。1体ずつ検査して調べる必要があるが、関係者によると「全て作り直す必要がある」という話も出ているという。原子力規制委員会は、もんじゅの燃料が今も炉内にあることが廃炉作業における「最大のリスク」と指摘。原子力機構に対し可能な限り早期の取り出しを求め、燃料取り出しに時間を要する理由や具体的工程を示すよう求めている。
 原子力機構によると、取り出し期間を短縮するため、全てを模擬燃料に置き換えずに燃料を取り出すなど、新規調達をしなくて済む方法についても検討しているというが、安全面などで規制委の了承が得られるかは不明だ
 もんじゅをめぐっては、政府が昨年12月に廃炉を正式決定。5年半で使用済み燃料を取り出し、平成59年に解体を終える大まかな工程を示した上で、今年4月に基本的な計画を策定する方針だ。
 MOX燃料を使い、発電しながら消費分以上のプルトニウムを生み出すもんじゅは7年にナトリウム漏れ事故を起こすなどトラブルが続き、運転日数はわずか250日にとどまる。政府は使用済み燃料を再利用する核燃料サイクル政策の中核施設と位置付けていた。
 もんじゅの燃料取り出し もんじゅの冷却材に使われているナトリウムは、水や空気に触れると激しく反応するため、取り扱いが難しい。具体的には(1)アルゴンガスで満たした空間で取り出し(2)ナトリウムで満たした炉外燃料貯蔵槽で一時保管(3)高温の蒸気で燃料についたナトリウムを洗浄(4)燃料1体ごとに缶詰缶に封入(5)缶詰缶に入れたまま水の張った燃料池(水プール)で保管-という工程が必要となる。日本原子力研究開発機構はこれまでに、2体の燃料を取り出した実績しかない

福島県児童の甲状腺がん患者数は185人よりも多い +

 原発事故当時18歳以下の福島県子どもを対象甲状腺検査で、昨年末までにがんやがんの疑いがあると診断された人が185人いると発表していますが、その中に事故当時4歳の子どもががんと診断されたのに含まれていないことがわかりました。
 
 福島県は現在の仕組みでは、県の検査のあとにがんと診断された患者は報告の対象になっていない(集計に含まれない)としていて患者の実数とは異なっているということです。
 検査は一次検査と二次検査の2段階で行われ、県や県立医科大学は「報告の対象は二次検査までにがんやがんの疑いと診断された患者で、二次検査で継続して推移を見守る「経過観察」とされたあとにがんと診断されたり、別の医療機関に移って、がんが見つかったりした患者たちを網羅的に把握することは困難なため報告していない(除外されている)」という説明です
 
 それでは福島県で何人の甲状腺がんの患者が発生したのかが分かりませんし、これまでそうした説明はなかったので結果的に隠蔽されていたことになります。
 今後の一斉検査は5年後にを行うということであれば、その間にがんが発症し手術などの処置を受ける人たちは全部県の集計から除外されることになるわけで、これほど不合理な集計方式はありません。
 専門家は「正確な情報を明らかにして分析するのが使命で、事実はきちんと報告し、公開すべきだ」と指摘しています。当然のことです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原発事故後の甲状腺検査 がん診断の4歳男児報告されず
NHK NEWS WEB 2017年3月30日
原発事故のあと、福島県は18歳以下の子どもを対象に甲状腺検査を行っていて、健康への影響を検証する専門家の委員会に報告しています。しかし、事故当時4歳の子どもががんと診断されたのに、委員会に報告されていないことがNHKの取材でわかりました。福島県は現在の仕組みでは、県の検査のあとにがんと診断された患者は報告の対象になっていないとしていて、専門家は「正確な情報を明らかにして分析するのが使命で、事実はきちんと報告し、公開すべきだ」と指摘しています。
 
原発事故のあと、福島県は福島県立医科大学に委託して、放射性ヨウ素の影響を受けやすいとされる事故当時18歳以下の子ども、およそ38万人を対象に、超音波でしこりの有無などを調べる甲状腺の検査を実施しています。
県は検査の結果を健康への影響を検証する専門家の委員会に報告し、昨年末までにがんやがんの疑いがあると診断された人が、当時5歳から18歳までの185人いると発表しています。
しかし、これまでで最年少の事故当時4歳の子どもが、この検査のあとにがんと診断され、甲状腺を摘出したことを県立医科大学が把握していたのに、委員会に報告されていないことがNHKの取材でわかりました。
 
検査は一次検査と二次検査の2段階で行われ、県や県立医科大学は「報告の対象は二次検査までにがんやがんの疑いと診断された患者で、二次検査で継続して推移を見守る「経過観察」とされたあとにがんと診断されたり、別の医療機関に移って、がんが見つかったりした患者たちを網羅的に把握することは困難なため報告していない」と説明しています。
2年前に委員会のメンバーが、こうした仕組みの問題点を指摘した際、県立医科大学は検査後にがんと診断された患者については「別途、報告になる」と説明していましたが、報告されていなかったことになります。
委員会の委員で、福島大学の元副学長の清水修二特任教授は「正確な情報を明らかにして分析するのが使命で、隠しているという疑念を生じさせないためにも、どういう経緯であっても患者が確認されれば、きちんと事実として公開すべきだ」と指摘しています。
 
甲状腺がんとは
甲状腺は、のどぼとけの下にあるちょうが羽を広げたような形をした、重さ10から20グラム程度の小さな臓器で、成長の促進に関わるホルモンを分泌する働きがあります。
原発事故後、懸念されたのが、この甲状腺が事故で放出された放射性物質の一つ、「放射性ヨウ素」を取り込んで引き起こす「甲状腺がん」です。
特に成長過程の子どもは体内で細胞が活発に分裂を繰り返しているため、傷ついた細胞の遺伝子の修復が進みにくく、影響を受けやすいとされています。
旧ソビエトのチェルノブイリ原発事故では、周辺地域の住民が主に牛乳や乳製品などを通じて「放射性ヨウ素」を取り込んだとされていて、国連の専門委員会は、およそ6000人が甲状腺がんになり、2006年までに15人が死亡したという報告書をまとめています。
 
当時18歳以下のすべての子どもが検査対象
原発事故のあと、福島県は福島県立医科大学に委託をして、事故当時、県内に住み、18歳以下だった38万人のすべての子どもたちを対象に甲状腺検査を行っています。
検査は国がおよそ780億円を拠出した基金を活用して行われ、20歳になるまでは2年に1回、その後は5年に1回実施されます。
検査は2段階にわけて行われ、学校などで行われる一次検査では、首に超音波をあてて甲状腺にしこりなどがないかを調べ、4段階の判定を行います。
一定の大きさ以上のしこりなどがあると判定されると二次検査を受け、詳しい検査を受けることになります。
二次検査では超音波検査や血液検査のほか、必要に応じて穿刺(せんし)吸引細胞診と呼ばれるしこりに直接針を刺す検査を受け、良性か悪性かを診断します。
平成23年10月から1巡目の検査が行われ、平成26年から2巡目、現在は3巡目の検査が行われています。
先月公表された最新データでは、去年12月31日までに「がん」または「がんの疑い」と診断された人は、1巡目で116人、2巡目で69人で合わせて185人います。
事故当時の年齢は5歳から18歳までで、最年少は去年6月に公表された5歳の男児とされています。
 
検討委員会委員「調査の信用落ちるおそれある」
検討委員会に報告されないがん患者がいることが明らかになったことについて、専門家は甲状腺検査に対する信頼性が揺らぐおそれがあると指摘しています。
甲状腺検査の検査結果は、がんの専門医や大学教授など専門家15人で構成される検討委員会に定期的に報告され、原発事故との関連性などについて科学的な立場で検討が行われています。
検討委員会はおととしと去年、原発事故後に福島県内で確認された甲状腺がんについて、「総合的に判断して、放射線の影響とは考えにくい」とする取りまとめを公表しました。
報告書の中でその理由として、被ばく線量がチェルノブイリの原発事故と比べてはるかに低いこと、チェルノブイリで相次いだ5歳以下の子どもに甲状腺がんが発見されていないこと、それにチェルノブイリでは事故の5年後以降にがんの発見が相次いだのに対して、福島では1年から4年と短いことなどを挙げていました。
その後、去年6月の検討委員会で、5歳の男の子に初めて甲状腺がんが確認されたと公表しましたが、「放射線の影響とは考えにくい」という見解は変えていません。
検討委員会の委員で、福島大学の元副学長の清水修二特任教授は、これまでで最年少となる当時4歳の子どもにがんが見つかったことについて、「年数がたてばがんになる確率も上がるので、特に意外でも奇異なことでもない」と述べ、冷静に受け止めるべきだと強調しました。そのうえで、報告されていないがん患者がいたことについて、「正確な情報を明らかにして分析するのが使命で、どういう経緯であっても患者が確認されれば、個人情報に十分に配慮したうえで、きちんと事実として公開すべきだ。そうしなければ隠しているという疑念を生じさせ、調査全体の信用が落ちるおそれがある」と指摘しています。
 
福島県「委員会の議論を踏まえて公表を検討」
公表していないがん患者がいることについて、福島県立医科大学は、経過観察を行っている中で、がんが診断された場合や甲状腺検査以外のきっかけで、ほかの医療機関で検査や診療を受けてがんと診断された場合などは、検査の担当部署では情報を持っていないとしています。
そのうえで、医療機関にがん患者のデータの届け出を義務づけた「地域がん登録」の制度が、より精度の高い情報を収集、公表していると説明しています。
県立医科大学で甲状腺検査の責任者を務めた医師は、NHKの取材に対して「二次検査のあとの経過観察でがんと診断された患者の多くが、その後も県立医科大学で治療を受けているが、全員を網羅しているわけではない公表によってかなり恣意的(しいてき)なことが起こるので慎重にするべきだ。患者のためということでは一点の曇りもなくやっている」と話しました。そのうえで、検査のあとの経過観察などで、がんと診断された患者を公表しない仕組みになっていることについて、「どう対応するかは課題で、私が責任者の時から問題点がずっと残っていた」と述べました。
 
甲状腺検査を県立医科大学に委託している福島県県民健康調査課は「検査のあとの経過観察などで、がんが判明した場合、公表データに入らないことは承知している。そういう患者がいる可能性はあるが、個別のケースは把握していない。委員会の議論を踏まえて、今後、公表を検討することになる」と話しています。
 

甲状腺がんの未報告問題 報告対象の見直しを要請
NHK NEWS WEB 2017年3月31日
原発事故を受け福島県が行っている甲状腺検査のあとで、事故当時4歳の子どもが甲状腺がんと診断されたのに専門家の委員会に報告されていなかった問題で、がんの子どもたちを支援している民間の基金が、報告されていないケースがほかにもある可能性があるとして報告対象の見直しを求めました。
この問題は、原発事故のあと福島県が事故当時18歳以下の子ども38万人を対象に行っている甲状腺検査のあとで、これまでの最年少となる当時4歳の子どもが福島県立医科大学でがんと診断されていたのに、健康への影響を検証する専門家の委員会に報告されていなかったものです。
 
31日は甲状腺がんの子どもの支援を行っている民間の基金、「3・11甲状腺がん子ども基金」が東京都内で記者会見を行い、新たに福島県の4人と東京都の2人に療養費としてそれぞれ10万円を支援すると発表しました。
また、この中には県立医科大学で甲状腺の摘出手術を受けながら、専門家の委員会に報告されていない当時4歳の子どもが含まれていることを明らかにしました。基金の崎山比早子代表理事は、「検査のあと経過観察に入ってがんと診断されても報告されない現在の仕組みは問題だ。報告されていないケースがもっとある可能性がある」と述べ、報告対象の見直しを求めました。
 
環境相 見直しを検討の考え示す
原発事故を受けて福島県が行っている甲状腺検査のあと、がんと診断されたケースなどが専門家の委員会への報告対象になっていないことについて、検査に交付金を出している山本環境大臣は31日の閣議後の記者会見で、「個人情報に十分に配慮しながらの判断にはなる」としたうえで、「さまざまな見方があると思うし、公表するか、しないかを含めてこれからぜひ検討させていただきたい」と述べ、報告対象の見直しを検討する考えを示しました。

31- 伊方原発運転停止の申し立て退ける 広島地裁

 伊方原発3号機愛媛県の運転を停止するよう、広島県などの住民4人が求めた仮処分の申し立てについて、広島地裁は「住民たちが重大な被害を受ける具体的な危険は存在しない」として退ける決定を出しました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
伊方原発運転停止の申し立て退ける 広島地裁
NHK NEWS WEB 2017年3月30日
愛媛県にある伊方原子力発電所3号機の運転を停止するよう、広島県などの住民が求めた仮処分の申し立てについて、広島地方裁判所は「住民たちが重大な被害を受ける具体的な危険は存在しない」として退ける決定を出しました。
愛媛県にある伊方原発3号機について、広島県などの住民4人は去年3月、「重大な事故が起きる危険がある」として、運転の停止を求める仮処分を広島地方裁判所に申し立てました。
伊方原発の周辺には複数の活断層があり、四国電力は九州、四国、近畿にかけて延びる断層が長さ480キロにわたって連動した場合などを想定して、原発での最大の揺れを算定した結果、「原発の安全性は確保されている」と主張していました。
 
30日の決定で、広島地方裁判所の吉岡茂之裁判長は「原子力規制委員会の新規制基準は、福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえた成果というべきもので、不合理な点はない」と指摘しました。
そのうえで、「四国電力は詳細な地盤構造などの調査を行って不確かさを考慮しながら、想定される地震の最大の揺れを決めており、伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点はない。住民たちが放射線被ばくにより、重大な被害を受ける具体的な危険は存在しない」として申し立てを退けました。
一方、決定では、火山の影響について、「原子力規制委員会の立地評価に関する審査の内規『火山ガイド』は、噴火の時期や規模が事前に的確に予測できることを前提にしている点で不合理な点がある」と指摘しました。
伊方原発3号機は原子力規制委員会の新しい規制基準の下で去年8月に再稼働しています。
伊方原発3号機をめぐっては、このほかに松山地裁と大分地裁、それに山口地裁岩国支部でも、原発に反対する住民が運転停止を求める仮処分を申し立てています。
 
裁判所の主な判断
30日の決定では、地震や津波、それに火山などのリスクを考慮したうえで、原子力規制委員会の新規制基準や伊方原発の審査に「不合理な点はない」と判断しました。
このうち、地震のリスクについては、「最新の科学的・技術的な知識を踏まえ、不確実さも考えたうえで複数の手法を用いて多角的に検討しており、四国電力の地震想定に不合理な点はない」と判断しました。
一方で、「四国電力の地震想定の合理性の有無について、確信を得るにはなお慎重な検討を要すべき問題がある」としたうえで、「地震学者などの関係者を呼ぶ作業が不可欠だが、そのような証拠調べは正式裁判で行われるべきで、仮処分の手続きにはなじまない」と指摘しました。
また、津波のリスクについては、四国電力が到達する最大の津波の高さを8.1メートルと予想し、原発の重要な施設が10メートルの高さに位置していることから、津波の影響はないとしていることについて「不合理な点はない」と指摘しました。
また、火山の影響については、「伊方原発の稼働中に大規模な噴火が発生する可能性の根拠が、今回の手続きで示されたとは言えず、再稼働を認めた原子力規制委員会の判断は、結論においては不合理な点はない」としました。
一方で、原子力規制委員会が審査で用いている指針の「火山ガイド」について、「噴火の時期や規模が事前に的確に予想できることを前提にしている点で不合理だ」と指摘しました。
 
申立人の綱崎健太さん「諦める理由ない」
仮処分の申立人で、広島市に住む綱崎健太さん(36)は「残念な決定ですが、諦める理由はないので、今後も原発を止めるため意思表示を続けていく」と話しました。
また、被爆者で正式な裁判を起こしている原告団の団長を務める広島市佐伯区の堀江壯さん(76)は「裁判官には被爆の実態や福島の現状を実際に自分の目で見てから決めてほしかった。世界でこれだけ事故が繰り返されている原発をなぜ、司法は止められないのか残念に思います。命の続くかぎり、次の世代に負の遺産を残さないよう訴えを続けたい」と話していました。
同じく被爆者で、原告団の副団長の伊藤正雄さん(76)は「放射能による被害のおそれが目前にあるのに、これが本当に良心に基づく決定なのか疑問で、本当に残念な思いです」と話しています。
 
住民側弁護士「極めて不当な決定」
住民側は記者会見を開き、この中で河合弘之弁護士は「極めて不当な決定で、決して許すことができない。決定の中で同様の仮処分が複数、申し立てられていることを理由に、判断の枠組みを、これまでの同種の仮処分で唯一、高裁で決定が出ている福岡高裁宮崎支部の判断に従うとしているが、裁判官の独立の放棄に等しい」と述べました。
そのうえで、「安全ではないと住民側が立証することを求めている部分があり、会社側がすべての情報を握っている中では、初めから結論は決まっているのと同じだ」と述べ、決定を不服として広島高等裁判所に抗告する考えを明らかにしました。
 
四国電力「安定運転に向け努力する」
     (中 略)
愛媛 中村知事「慎重かつ細心の注意で安全運転を」
     (中 略)
伊方町 高門町長「判断尊重したい」
     (中 略)
全国で相次ぐ仮処分申し立てや裁判
     (後 略)

2017年3月30日木曜日

福島原発1号機建屋カバー撤去後に放射性降下物質が急増

 週刊誌「女性自身」が、福島県などの降下物中の放射性物質量が16年9月から17年1月にかけて1平方メートルあたり84ベクレルだったのが、17年1月には5470ベクレルと短期間で約65倍となったのは、丁度その期間に1号機建屋カバーの解体作業をしていたことが関係している可能性があると報じました。
 それに対して原子力規制委は、福島原発敷地内34カ所のモニタリングではその間異常を検知していないのでカバー撤去によるものではないと言っていますが、放射性の降下物量のただならぬ急増とカバー撤去の時期が一致していることから、「関係がある」と考える方が自然です。
 
 1号機建屋内では大型吸引器によるゴミ掃除作業を行っているということですが、家庭の吸引掃除機がそうであるようにホコリは100%取れるものではなく微細な粒子はいくらでもすり抜けて、末端が多分上方に向けられている排気ダクト出口から建屋外(上方)に排出されます。
 その気流は線香の煙がそうであるように細い流れになって風向きに沿って流れるので、地上のモニタリング点はジャンプしたり、あるいは細い流れとなって設置ポイントの中間を通り抜けたりして検知されない可能性があります。
 規制委は単に口先で否定するのではなく、吸引機付のバッグフィルターなどのダスト捕集機の性能をチェックする必要があるのではないでしょうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原子力規制庁、「女性自身」記事うけ見解 
原発建屋カバー撤去と数値上昇は「関係ない」
J-CASTニュース 2017年3月29日
(「女性自身 3月21日発売)
 原子力規制庁は2017年3月24日、21日発売(首都圏など)の週刊誌「女性自身」(4月4日号)に掲載された「福島第一原発1号機 建屋カバー撤去で65倍の放射能が降っている!」などと題した記事についての見解を原子力規制委員会の公式サイト上で発表した。
 
 この記事は、福島第一原発1号機の原子炉が収納された建屋を覆うカバーが16年11月に全撤去されたことで、大気からの降下物(ほこりや雨)に含まれる放射性物質量が増加した可能性があると指摘するもの。これに対し、原子力規制庁は今回の発表で、カバー撤去と降下物の数値の変動に「関係はないと考えております」と指摘。一方、「女性自身」編集部は「(記事内容を)訂正するつもりはありません」としている。
 
撤去後、「65倍に」
 今回の「女性自身」記事では、福島県などの降下物中の放射性物質量が16年9月から17年1月にかけて上昇していることを、原子力規制庁が公開したデータを用いて紹介。1号機の建屋カバーの撤去作業が始まったのは16年9月中旬だ。
 
 記事の中では、16年9月の1か月間の降下物中の放射性物質量が、1平方メートルあたり84ベクレル(放射性セシウム134と放射性セシウム137の合計値)だったのが、17年1月には5470ベクレルと短期間で約65倍となった福島県双葉郡のケースなど6つの都道府県データを取り上げている。
 15年9月から16年1月の数値も棒グラフ形式で紹介しており、それによると、今から1年前の16年1月の福島県双葉郡の数値は1130ベクレルだった。記事では、こうしたデータを挙げた上で、元東電社員の男性(記事では実名)の話として次のようなコメントを掲載している。
「福島県の降下物が15年に比べて16年が増えているのは、昨(16)年9月から1号機建屋の解体作業をしていたことが関係している可能性もあります」(カッコ内はJ-CAST編集部注)
「(カバーの撤去後、大型吸引器によるゴミ掃除の作業が始まり)それで汚染ぼこりが飛散しているんでしょう。1号機は屋根もカバーもないわけですから、飛散しやすいんです」(同)
 
 さらに記事の終盤部分では、降下物中の放射性物質量を定期的にモニタリングしている原子力規制委員会に問い合わせたところ、
「いま数値が上がっていることと、建屋カバー撤去との関係は否定できません」
との回答があった” とも書いている。
 
規制庁「特段問題がある数値とは認識していない」
 こうした「女性自身」の記事の内容を受け、原子力規制庁は17年3月24日に公式サイト上に見解を掲載。この「平成29年3月21日女性自身の記事について」と題したコメントでは、
“「降下物の数値の変動と建屋カバー撤去工事及びその後の作業との関係はないと考えております」
と説明。その理由については、記事で紹介された16年9月から17年1月の期間中、カバーの撤去作業が行われた1号機の敷地内や敷地境界など計34か所に設置した飛散物のモニター装置では、「異常な数値」が確認されなかったためだと説明している。
 
 J-CASTニュースが3月27日、原子力規制庁福島第一原発事故対策室の担当者に取材したところ、原子炉建屋のがれきなどの撤去作業時には「のり状」の飛散防止剤を吹き付けるなど「徹底して飛散物が出ないよう管理を行っている」として、
「カバーの撤去と降下物の数値の変動に関係があるとは思えません」
と話した。
 
 また、同庁監視情報課の担当者は取材に対し、今回の記事で指摘された降下物の放射性物質量の増加については、
“「風や天候の影響で数値が左右されやすい調査になりますので、今回のように数値が大きく上下することは通常でも十分に考えられます。(記事で取り上げられた)数値の変動についても、環境的な影響によるものではないかと考えています」
と説明。17年1月に福島県双葉郡で観測された5470ベクレルという数値については、「特段問題がある数値とは認識していない」としていた。
 
 担当者が話した通り、同庁が実施している降下物の過去の調査データを見ると、短期間で放射性物質量の数値が乱高下しているケースはある。特に、福島県双葉郡の15年のデータは上下が激しく、2月に8700ベクレルあったものが、4月には75分の1以下の115ベクレルまで激減。その翌月の5月には再び610ベクレルまで上昇している。
 
女性自身編集部「訂正を出すつもりはありません」
 とはいえ、今回の女性自身記事には「建屋カバー撤去との関係は否定できません」という発言が、原子力規制委のコメントとして掲載されている。担当者は、
「『女性自身』側から電話を受け、担当者が応答したことは事実です。本人に確認を取りましたが、口頭でのやり取りということもあり、どのような内容だったかは正確には分かりませんでした。記事に掲載されたような内容を本当に話したかどうかは不明ですが、本来回答すべき内容は発表した通りです」
と話した。なお、サイト上に見解を掲載したことはすでに「女性自身」編集部にも伝えているという。
 
 一方で、「女性自身」編集部の担当者は27日のJ-CASTニュースの取材に、同誌の取材に応じた原子力規制委のコメントについて、
「記事に掲載した通りの回答があったことは事実です」
と説明。原子力規制委が発表した見解については「何とも言えません」として、
「(記事の内容を)訂正するつもりはありません」
と話した。

30- 伊方原発3号機 運転停止の仮処分 30日に決定

 伊方原発3号機について、広島県などの住民4人2016年3月、「重大な事故が起きる危険がある」として広島地裁に運転停止仮処分申請をしたのに対する決定が今日(30日)下されます。
 中央構造線に近く巨大地震に見舞われる可能性、南海トラフのよる大津波の発生、九重山が噴火した場合に降る火山灰の厚さと影響などが論争点になっていますが、同原発が日本一細長い佐多岬半島の付け根にあるため半島の住民の避難が困難という問題も見逃せません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
伊方原発3号機 運転停止の仮処分 きょう判断へ
NHK NEWS WEB 2017年3月30日
愛媛県にある伊方原子力発電所3号機の運転を停止するよう、広島県などの住民が求めた仮処分の申し立てについて、広島地方裁判所は30日、判断を示します。仮処分の決定はすぐに効力が生じることがあり、裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
 
愛媛県にある伊方原発3号機について、広島県などの住民4人は、去年3月、「重大な事故が起きる危険がある」として運転の停止を求める仮処分を広島地方裁判所に申し立てました。
伊方原発の周辺には複数の活断層があり、四国電力は九州、四国、近畿にかけて延びる断層が長さおよそ480キロにわたって連動した場合などを想定して、原発での最大の揺れを算定しました。
これについて住民側は「連動した場合などの地震の揺れが小さい」と主張したのに対し、四国電力は「地震の不確かな要素を考慮しながら揺れの大きさを算定し、安全性は確保されている」などと争っていました。
伊方原発3号機は、去年8月、原子力規制委員会の新しい規制基準の下で再稼働していて、広島地方裁判所は30日、申し立ての判断を示します。
仮処分の決定はすぐに効力が生じることがあり、裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
 
原発をめぐる仮処分では、大津地方裁判所が去年3月、稼働中の原発としては初めて、福井県にある関西電力の高浜原発3号機と4号機の運転停止を命じましたが、28日、大阪高等裁判所が決定を取り消して、再稼働を認めています。
 
主な争点は3つ
伊方原発3号機の運転停止を求める仮処分の申し立ては、主に3つの点が争われました。
 
最大の争点は、想定される最大規模の地震の揺れ「基準地震動」です。
原発の新しい規制基準で、重要な設備や機器は基準地震動に耐えられるよう設計することが求められています。
四国電力は、原発の北側およそ8キロにあり四国から近畿にかけて伸びる「中央構造線断層帯」と、九州の「別府-万年山断層帯」の、合わせて長さ480キロの断層が連動した場合も想定して、最大の揺れを算定しました。その結果、「中央構造線断層帯」のうち、原発の近くに延びる長さ69キロの区間がずれ動いた場合に最も大きな揺れになるとして、基準地震動を650ガルと算定し、原子力規制委員会も了承しました。
これについて住民側は「断層が480キロにわたって連動した場合の揺れが小さく評価されている」と主張したのに対し、四国電力は「地震の不確かな要素も考慮しながら算定し、断層が480キロ連動した場合でも、原発の安全性は損なわれない」と反論しました。
 
2つ目の争点は、想定される津波の大きさです。
四国電力は、マグニチュード9クラスの南海トラフの巨大地震も含めてさまざまな地震を検討した結果、「中央構造線断層帯」と「別府-万年山断層帯」のうち、海域にある長さ130キロの区間が連動して動くなどした場合に、最も大きな津波が原発に到達すると判断しました。最大の津波の高さは8.1メートルと予想され、原発の重要な施設が海面から10メートルの高さに位置していることから、原発の安全性に影響はないとしています。
これについて住民側は「地震の規模が小さく評価され、想定を超える津波が到達するおそれがある」と主張したのに対し、四国電力は「マグニチュード9クラスの南海トラフの巨大地震も含めて検討していて、想定を超える津波が到達するとは考えられない」と反論しました。
 
3つ目は、火山噴火のリスクについてです。
伊方原発から半径160キロ以内には大分県の九重山や熊本県の阿蘇山などがあり、四国電力は、九重山が噴火した場合に降る火山灰などの厚さを最大15センチと予想して、火山活動が影響を及ぼす可能性は低いとしています。これについて住民側は「火山灰などの濃度が低く評価され、原発の冷却機能を維持する非常用の発電機に火山灰が詰まって機能が喪失するおそれがある」と主張したのに対し、四国電力は「火山灰などの量は高く見積もっていて、非常用の発電機の機能が喪失する可能性は低い。原発の運用期間中に巨大噴火が起きる可能性は十分に低い」などと反論していました。

2017年3月29日水曜日

高浜原発3・4号機 再稼働認める決定 大阪高裁

  福井県にある高浜原発3号機と4号機について、大阪高裁は「原子力規制委員会の新しい規制基準は不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、大津地裁が運転停止を命じた去年3月の仮処分の決定を取り消し、再稼働を認めました。
 
 この決定に対して住民の代表の辻義則さんは「大阪高裁は、住民の声に耳を傾けず、原発を容認する行政の姿勢を忖度し、あまりにも情けない決定を出した」と強く非難しました。
 住民側の弁護団長の井戸謙一弁護士は「国民の意思を無視した今の政治状況の中で、司法がストップをかける役割なのに残念な結果になった。司法への信頼を勝ち取るチャンスを逃した」と話しました。
 
 とても残念な決定ですが、これまで高裁で脱原発の判決が出た例はないので、この結果は予想された範囲でした。原告の代表は「行政の姿勢を忖度した決定」と述べましたが、最終的にはそこにつながるもののより直接的には(「裁判所の人事を司る)最高裁事務総局の意向を忖度した決定」というべきでしょう。
 
 要するに高裁以上のレベルにおいて国策に反する判決を望むのは無理というのが日本の裁判の実態です。2014年5月、国連拷問禁止委員会でアフリカの委員から、日本の「司法制度の不透明性は『中世の名残』である」と批判されました。その時は検察の取調べのあり方が批判されたのでしたが、権力の意向に沿うことを旨とする裁判のあり方はまさに「中世の司法」と呼ばれるべきです。
      (関係記事)
2015年12月26日  裁判所と原子力ムラにも癒着が 裁判官が天下り
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
高浜原発3・4号機 再稼働認める判断 大阪高裁
NHK NEWS WEB 2017年3月28日
福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機について、大阪高等裁判所は「原子力規制委員会の新しい規制基準は不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、大津地方裁判所が運転停止を命じた去年3月の仮処分の決定を取り消し、再稼働を認めました。
高浜原発3号機と4号機について、大津地裁は去年3月、滋賀県の住民の申し立てを認め、「福島の原発事故を踏まえた事故対策などに危惧すべき点があるのに、関西電力は安全性の確保について説明を尽くしていない」として、稼働中の原発としては初めて、運転の停止を命じる仮処分の決定を出しました。
関西電力は、異議を申し立てましたが認められず、決定を不服として大阪高等裁判所に抗告していました。
 
28日の決定で、大阪高裁の山下郁夫裁判長は「関西電力は、原子力規制委員会の新しい規制基準を踏まえて、想定される最大規模の地震や津波の対策をとり、安全性の根拠を示している」と指摘しました。
そのうえで、「福島第一原発の事故は具体的な原因などに未解明な部分が残されているが、同じような事故を防止する対策を行うために不可欠な教訓は十分に得られている。新規制基準は原発事故の原因究明や教訓を踏まえていて不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、運転停止を命じた仮処分の決定を取り消し、高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めました。
 
また、去年4月に震度7の揺れを2度観測した熊本地震を受け、高浜原発が大地震に立て続けに襲われる可能性があるかどうかについて、「関西電力の調査によると、想定される最大の揺れが連続して発生することはほぼありえず、仮に連続したとしても、原発の安全性は確保されると言える」と指摘しました。
高浜原発では、ことし1月に大型クレーンが倒れた事故を受け、安全対策の総点検などが行われていて、関西電力は、福井県などの理解を得たうえで、核燃料を原子炉に移すなど再稼働に向けた手続きを始める方針で、再稼働まで1か月程度はかかると見られます。
 
関電社長 理解得ながら再稼働に向け準備を
  (省 略
高浜町長「あるべき判断でほっとした」
  (省 略
福井県知事「妥当で明確な判断に戻った」
省 略
 
住民代表「あまりにも情けない決定」
仮処分を申し立てた住民と弁護団は、大阪市内で記者会見を開きました。
住民の代表で滋賀県長浜市の辻義則さんは「1年前の大津地裁の決定は、関西電力が安全に関する主張を尽くしていないという画期的な判断で、全国から喜びの声が届いた。一方で大阪高裁は、住民の声に耳を傾けず、原発を容認する行政の姿勢にそんたくし、あまりにも情けない決定を出した」と強く非難しました。
また、住民側の弁護団長を務める井戸謙一弁護士は「決定は最初から結論ありきだったと思う。決定文の中には『過酷事故になることは考えられない』という記述もあり、新たな安全神話というしかない。福島第一原発事故の原因がわかっていない中、原発を容認してきた行政に、司法がストップをかけるチャンスだったが、その役割や責任がかけらも感じられない。全国でたくさんの人が闘っているので、決定を徹底的に読み込んで各地の訴訟に生かしたい」と話しました。
弁護団によりますと、決定を不服として最高裁判所に抗告するかどうかは今後検討するとしています。
 
住民側弁護士「司法への信頼勝ち取るチャンス逃した」
住民側の弁護団長の井戸謙一弁護士は「東京電力福島第一原子力発電所の事故の前と変わっていない決定だ。国民の意思を無視した今の政治状況の中で、司法がストップをかける役割なのに残念な結果になった。司法への信頼を勝ち取るチャンスを逃した」と話していました。
 
滋賀県知事「再稼働容認できる環境にはない」 
滋賀県の三日月知事は「1つの司法判断が下されたことについては受け止める。しかし、原発には実効性ある多重防護体制の構築が不可欠で、使用済み核燃料の問題や廃炉について、まだ十分に道筋がついていない段階で、再稼働を容認できる環境にはない」と述べました。
そのうえで、福島第一原発の事故を教訓に万全の安全対策をとるよう、電力事業者と国に強く求めていく考えを示しました。
 
京都府知事 万全の上にも万全の安全確保対策求めていく
京都府の山田知事は「大阪高裁の決定は尊重する。京都府としては発電所構内でクレーンが倒壊するなどの初歩的なミスによる事故が続いていることから、引き続き、府民の安心・安全の確保を第一に、国や関西電力に対して、万全の上にも万全の安全確保対策を求めていく」とするコメントを発表しました。
 
官房長官 関電は再稼働について最善の努力を
  (省 略
経産相 関電は理解得る努力しながら再稼働を
  (省 略
原子力規制委「コメントする立場にない」
  (省 略
原発めぐる判断 各地では
  (後 略

29- 避難指示の解除で被災者への支援・賠償打切りは許されない

主張避難指示の解除 国・東電の責任投げ捨て許さず
しんぶん赤旗 2017年3月28日
 東京電力福島第1原発事故で、国が福島県内に設定した避難指示区域が31日と4月1日、4町村で解除されます。今回対象となる住民は3万2千人と過去最大です。避難指示区域の面積は最大時の約3分の1になりますが、帰還する人も、帰還しない人も、多くの被災者の心は揺れています。
 解除と一体に、国と東電が被災者の住宅支援や賠償を次々と打ち切ったり、縮小させたりしていることが、被災者の苦しみに追い打ちをかけています。解除を、国・東電が被災者への賠償・支援から手を引く「区切り」にすることは認められません
 
故郷を奪われた苦しみ
 6年前の原発事故後、国は放射線量の高い周辺11市町村、約8万1千人に避難指示を出しました。その後、解除が順次行われ、これまでに5市町村で解除されたものの、実際戻った住民の割合は平均十数%です。
 
 31日解除予定の浪江町の住民意向調査でも「すぐに・いずれ戻りたい」は2割未満にとどまります。町民は、病院や商店の未整備、除染の不徹底などへの不安を訴えます。戻ると答えた人も「家族一部での帰還」が4割に上ります。事故でバラバラにされた家族が元に戻れない現実を示しています。
 しかも、国は、解除とセットで支援打ち切りをすすめています。避難を解除された区域からの避難者は、仮設住宅からの退去が順次求められます。
 東電が解除にともない、精神的苦痛への賠償(月10万円)を来年3月で終了させようとしていることは重大です。営業・営農への賠償も縮小する方向です。“事故は終わった”といわんばかりです。
 
 また、避難区域外からの「自主避難者」は、生活基盤を支える「命綱」といえる住宅無償提供が3月末でなくなります。4月以降の住宅が決まっていない自主避難世帯もあり、このままでは路頭に迷う避難者が出かねません。全国で100にのぼる地方議会が無償提供継続を求める意見書を可決し、独自の支援策をとる自治体も生まれています。国のやり方の道理のなさは明白です。
 避難の有無にかかわらず、原発事故で住み慣れたふるさとを壊され、6年間苦しみ抜いた被害者であることに何の違いもありません。東電による原発事故の収束の見通しもない中で、国が被災者に無理に「自立」を迫り、「帰還」に追い立てることは筋が通りません
 今年の東日本大震災追悼式で安倍晋三首相が「原発事故」の言葉を使わなかったことは、再稼働と一体で「福島切り捨て」をすすめる異常な姿勢を象徴しています。こんなやり方は許されません。
 
加害者責任は免れない
 前橋地裁は17日、福島原発事故で国と東電には過失があり、賠償責任があることを明確に認める初めての判決を出しました。国・東電の加害責任は明白です。「生まれ育った故郷を返して」と全国30件、約1万2千人の被災者が訴訟を起こしています。この痛切な思いに国・東電は真剣に向き合うべきです。
 被災者を分断する線引きを行うのでなく、すべての被災者の生活と生業(なりわい)が再建されるまで、国と東電は等しく、長期的に支援していくことこそ必要です。

2017年3月28日火曜日

移動手段や周知 原発避難、課題なお多く 京都・丹波地域

 京都新聞が、京都府丹波地域の原発事故時避難計画の問題点を洗い出しました。
 いずれも簡単には解決しない問題ばかりです。机上で定めることは出来ても、実効性のある避難計画を立てることが如何に困難であるかを示しています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
移動手段や周知…原発避難、課題なお多く 京都・丹波地域
京都新聞 2017年03月26日
 東日本大震災から6年が過ぎた。福島第1原発事故を教訓に、各自治体は地域防災計画や住民避難計画の見直しを進めてきたが、運用面の課題は多い。京都府丹波地域も福井県の原発から約30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)があり、迅速な避難への備えが急務だ。避難計画は機能するのか、検証した。
 
 南丹市では美山町全57集落中、高浜原発(高浜町)のUPZに53集落、大飯原発(おおい町)には50集落がそれぞれ含まれ、原発事故時の避難対象者は約4300人。京丹波町は高浜原発の同圏内に和知地域27集落があり、避難対象者は約3200人となっている。
 市の避難計画では、集落ごとに園部、八木町の公民館など13カ所にバスで避難する。市は約1700人分のバスを確保し、府の応援も受けるが、全員の台数を確保できるか不透明だ。
 
 京丹波町の同計画では、各集落の公民館からバスで移動するが、確保したのはバスやワゴン車など22台にとどまっている。定員は計約800人で、全員の避難には最低でも4往復する必要がある。
 今冬は積雪による渋滞が多発し、美山町では府道の土砂崩れで芦生など3集落が孤立。道幅が狭い避難路も多いが改修など安全対策のめどは立たない
 避難先も課題を抱える。耐震性不足で18年度から改修される市園部公民館は避難所に指定されているが、地震による損壊も懸念される。市総務課は「周囲に代替施設は多い」とするが、各施設への避難者の振り分けは決まっていない。被災時の周知や誘導の遅れといった混乱も生じかねない。
 町は廃校舎も避難先に指定している。大簾、広野地区の160人が避難する予定の旧須知小講堂は築80年の木造で、耐震診断はされず、雨漏りもある。避難先として活用できるか疑問だ。
 
 避難計画の周知も十分ではない。京都新聞が2015年11月、美山町の住民50人に行ったアンケート結果で、過半数の36人が「避難計画を知らない」と答えた。市は避難区域の住民代表を対象に説明会を開いているが、現時点で一般住民も対象に開催する予定はないという。
 
 京丹波町は計画策定中の11年から住民説明会を開き、12年11月以降、避難訓練を計3回実施した。13年の策定後は防災パンフレットを全戸配布したが、その後の移住者には情報提供していない。
 日中、学校で学ぶ児童の保護も重要だ。5校の統廃合で昨年4月に誕生した美山小は、原発事故が発生した場合、校内で親に児童を引き渡すことにしているが、校区が広く、片道約50分かけて登校する児童もおり、円滑に進まない恐れもある。土砂崩れや大雪時の対応も課題という。
 
 和知地域の子どもたちが通う和知小では、13年度から毎年、保護者も参加した避難訓練を続ける。緊急情報は電話による地域連絡網を活用するが、伝達が途切れたケースがあり、メールの活用も検討する。
 甲状腺被ばくを抑制する安定ヨウ素剤の配布に関し、市は昨年8月、公立南丹病院に加え、美山診療所にも分散配備した。京丹波町も昨年10月、町病院から避難者に近い和知支所に移した。国の指針は、ヨウ素剤を処方する際に医師などの問診を求めているが、両市町とも人材を確保できていない。府の支援など対応が急がれる。