2016年1月31日日曜日

31- 浪江町民8割が「交渉継続」 原発事故賠償、裁判外手続き

福島民友 2016年01月30日
 東京電力福島第1原発事故による全町避難が続く浪江町の約1万5000人が慰謝料増額などを求め原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介を申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、町が昨年12月から今月にかけて開いた経過説明会の会場で実施したアンケートの結果、今後について804%が「和解案の全てを東電が受諾するよう交渉を継続」という意思を示した。町と町支援弁護団が集計し、29日に発表した。
  
 集計によると、東電に和解案を受諾させるための活動に687%が「参加したい」と回答、参加したい活動(複数回答)は町民決起集会の526%、要請活動の444%の順に多かった。
 
 東電が2月上旬には和解案受諾勧告書に回答することから、町と同弁護団は2月2日、ADRへの対応をめぐる要望・要求活動を展開する。

2016年1月30日土曜日

米国原子力艦について(小出裕章ジャーナル)

 今回の小出裕章ジャーナルは「米国原子力艦についてがテーマです。
 原子力空母原子力潜水艦には60万キロワットの原子炉が2基搭載されているので、寄港中に一旦過酷事故を起こせば、人口の密集地で突如大型原発1基が過酷事故を起こしたのと同じことになり、避難できない多くの住民は猛烈に被曝することになります。・・・
 
追記 文中の太字箇所は原文で行わているものです。また原文では小出氏には「さん」がついていましたが、この紹介文では外しました。
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米国原子力艦について
〜第160回小出裕章ジャーナル 2016年1月30日
 
「人口密集地帯に巨大な原子炉が存在してしまっているということになっているわけです。万が一事故でも起きればもう逃げることはできないと思った方がいいだろうと思います」
 
石丸次郎: 今日のテーマは、米軍の原子力艦の問題についてです。原子力艦、つまり原子力空母、あるいは原子力潜水艦が日本の港にたくさん寄港してますけれども、この避難の問題について、政府が改めて基準を変えようという取り組みを始めました。今日はこの問題について、小出さんにお話を伺っていきたいと思いますが、まずそもそもこの原子力艦は、当然その原子炉を積んで、動力として船を動かしてるわけですけれども。これは原子力発電所とはちょっと違う仕組みなんでしょうか?
小 出: 基本的には同じです。ウランを核分裂させて、その時に熱が出てくる、それを沸騰させて蒸気に変えて、それで一部発電に使うし一部をスクリューを回すための動力に使うという、そういう機械です。基本的には同じものです。
石 丸: なるほど。この原子力艦、これまで調べてみますと、ものすごくたくさん世界各地で事故を起こしております
小 出: そうです。
石 丸: この事故が起こった時の避難の基準を政府はまず原発と同じ、毎時5マイクロシーベルト超に引き下げることを11月に決めたと。それまでは100マイクロシーベルトだったんですけれども、この5マイクロシーベルトに引き下げるということはえらく遅かったと思うんですけど、なぜこういう二重基準が今まで存在してたんでしょうか?
小 出: それは避難基準ももちろんそうですけれども、それどころではないのです。例えば日本には、すでに58基もの原子力発電所が認可されて建設されてきたのですけれども、少なくともその日本の原子力発電所に関しては、法令の枠内で安全審査というのをやって、安全性を確認しない限りは動かしてはいけないという、そういうことになっていたのです。
    それでも安全審査というのがデタラメで、福島第一原子力発電所のような事故も起きてしまったわけですけれども。米軍の原子力艦船に関しては、全くないのです。二重基準どころか審査すらが初めからないという、そういう状態でここまできてしまったのです。
石 丸: なるほど。日本政府には、全くその審査をする権限も権利もなかったということですよねえ。
小 出: そうです。私はよく日本というこの国は米国の属国だと発言をしてきましたけれども、こと原子力に関する限りは非常に明確で、米軍のやることに一切文句を言えないという、そういう立場に日本の国があるのです。
石 丸: なるほど。この以前の毎時100マイクロシーベルトという数値というのは、やはりかなり異常な数値だと考えるべきなんでしょうか?
小 出: もちろん、そうですね。私はついこの間まで、京都大学原子炉実験所という所で働いていました。時々、管理区域という中にも入りました。普通の方は到底入れない場所なのですけれども、その場所で実験・研究をしている。ただし管理区域の中でも結構、放射線量が高い場所というのがあって、そこは立ち入りを制限するのですが、そこは1時間あたり20マイクロシーベルトを超えると、もう立ち入り制限ということでしたので。
石 丸: 専門家ですらということですよね?
小 出: そうです。私のようなごくごく特殊な人間が、仕事のために放射線管理区域に入る。でもその場所でも、もう入れないという場所をつくっているわけです。それをすでに、もう5倍を超えてしまってるという基準ですから、猛烈な被ばくの現場ということになってしまいます。
石 丸: なるほど。もうひとつ政府が検討しているのがですね、じゃあもし、もし何か事故が起こった場合の避難範囲、これを30キロに拡大しようかどうかという議論が進んでおります。これ横須賀の場合ですと東京の大田区であるとか千葉県の木更津市等も入ってきます。それから沖縄県うるま市の場合は、那覇の一部までが30キロ以内に入ってくると。こういう避難というのは、現実的にやっぱり可能なんでしょうかねえ。
小 出: 石丸さん、どう思われます? 
石 丸: いや、なかなか難しいんではないかと。特に大都市の場合ですと、すさまじいパニックが起こるんじゃないかという気がしますが。
小 出: 当然そうですよねえ。もうたくさんの方が住んでるわけですし、道路はもう渋滞してたぶん動けなくなるでしょうし、自主的な避難というのは、もうできないと思うしかないだろうと思います。
    横須賀は今、ロナルド・レーガンという航空母艦が母港にしてしまったのですが、そのロナルド・レーガンの中には原子炉が2つ搭載されていまして、熱出力という電気じゃないんですけども、熱出力で60万キロワットという原子炉が2基入っているのです。ですから熱出力で120万キロワットになるのです。これは事故を起こした福島第一原子力発電所の1号機にほぼ匹敵する大きさの原子炉。
石 丸: ものすごくデカイもんが入ってるっていうことですよね? 
小 出: そうですね。要するに本当の原子力発電所が横須賀にあるという、そういう状態になってしまっているわけです。何の安全の審査も受けていないという、そしてロナルド・レーガンの母港から横須賀の駅まで1.3キロしかないという、そんな人口密集地帯に巨大な原子炉が存在してしまっているということになっているわけです。万が一もし事故でも起きれば、もう逃げることはできないと思った方がいいだろうと思います。
石 丸: なるほど。小出さん、これまでの原子力船における事故をいろいろ調べてみたんですが、1960年代から旧ソ連、アメリカ、イギリス、フランスの原子力潜水艦等がものすごい数の事故を起こしてますねえ。
小 出: そうです、はい。
石 丸: これはやはり、船の動力として原子力を使うっていうのは、やっぱり相当やっぱり無理があったっていうことなんでしょうか?
小 出: 考えようだと思いますけれども、潜水艦というのは常時、海に潜っていることができるわけではないのですね。潜ることもできるというそういうものですぐに酸素が動力に、石油とかそういう物を使ってるわけで、酸素がすぐになくなってしまうので、潜ってるけれども、すぐにまた浮かび上がってくるという、それが、かつての潜水艦だったのですけれども、原子力潜水艦ができてからは、例えばノーチラス号が北極の氷の下を潜って潜り抜けるというようなことまでできるようになったわけで、ほんとの意味で、いわゆる潜水艦が初めて可能になったのです。
    ですから軍事的な意味として言えば、圧倒的にもう質の違う兵器ができたわけで、そういう兵器を維持するためには、少しぐらいの危険は我慢すべきだということで、原子力潜水艦がたくさん造られてきたわけです。しかし原子力空母なんていうのは、もともと原子力である必要は私はないだろうと思います。
石 丸: 兵器的に見てもですね。 
小 出: そうです。ですから巨大な危険を抱えながら、そんな空母を造るのであれば、普通の空母で十分燃料でも何でもどこででも補給できるわけですし、空気があるわけですから酸素の供給に困るわけでもないので、原子力空母というものは、私は馬鹿げていると思います。
    ただ原子力潜水艦は今聞いて頂いたように、大変重要な戦略的な意味を持ってるわけで、どんな危険があってもやはりやり続けるということにこれまでもなってきたし、これからもなるだろうと思います。ですから危険はもう承知の上と、無理はもちろんしているという、そういうことで今日まで来たし、これからもやるということになっているのです。
石 丸: なるほど。今日のお話のポイントなんですけれども先程も申し上げましたように、神奈川県横須賀、長崎県の佐世保、そして沖縄県のうるま市に非常に長い期間、1年を通して長い期間、米軍の原子力艦船が寄港していると。それは原発を抱え込んでるのと同じであるという考えを持たなきゃいけないということですね?
小 出: はい。
石 丸: もうちょっとお聞きしたいんですけども、今日は時間が来てしまいました。小出さん、どうもありがとうございます。
小 出: こちらこそ、ありがとうございました。

高浜再稼働に怒り 反原連の官邸前行動

しんぶん赤旗 2016年1月30日
 「高浜原発今すぐとめろ」「安倍はやめろ」―。首都圏反原発連合(反原連)が29日行った首相官邸前抗議行動では、国民の反対を押し切って高浜原発3号機(福井県)の再稼働を強行した関西電力、原発再稼働・輸出へ暴走する安倍晋三政権への怒りの声があふれました。
 
 厳しい冷え込みで雪が降るなか、官邸前には「再稼働やめろ」などのプラカードを手にした参加者が続々と駆けつけました。
 東京都中野区の男性(52)は「高浜原発はプルサーマルという特殊な原発で特別に危ない。福島第1原発の汚染水は燃料棒を取り出さない限り止まらないのではないか。安倍首相は“放射能はコントロールされている”というがうそだと思う」と話します。
 東京都豊島区の女性(64)は「原発事故が起きたらどんなことになるか、福島を見れば分かるはずなのに、原発を再稼働するなんて許されない。誰かが犠牲になるような政策を進める安倍首相は国の指導者として失格です」と憤ります。
 西東京市の年金生活者の男性(71)は「高浜原発の再稼働は許さない。今回の寒波のように自然界では想像できないことが起きる。事故が起きたら誰が責任を取るのか」と語りました。
 
 日本共産党の田村貴昭衆院議員が参加し、スピーチしました。
 
写真
(写真)「高浜原発再稼働反対」と声を上げる人たち=29日、首相官邸前

柏崎刈羽原発 基準地震動 規制委了承へ

 柏崎刈羽原発で想定される地震の揺れ(基準地震動)として、東電が示している最大2300ガル原子力規制委の審査会合で了承される見通しであることが分かりました。
 これは国内の原発で最大の値に当たります。
 因みに柏崎刈羽原発2007年の中越沖地震で最大加速度2058ガルを実測しています。
 
          (関係記事)
2013年3月30日 柏崎刈羽原発敷地内の断層について(続報)
2012年8月11日 柏崎・刈羽原発敷地内に活断層の可能性が
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柏崎刈羽原発 地震の揺れ想定 規制委了承へ
NHK NEWS WEB 2016年1月29日
新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所で想定される地震の揺れとして、東京電力が示している最大2300ガルの揺れが、原子力規制委員会の審査会合で了承される見通しであることが分かりました。福島第一原発と同じタイプの原発では初めてで、柏崎刈羽原発の審査が先行して進むことになります。
 
東京電力は、柏崎刈羽原発6号機と7号機で想定される地震の揺れについて、北西側の沖にある活断層を震源とする地震による、最大2300ガルという、国内の原発で最大の値を示し、原子力規制委員会の審査会合で議論が続けられています。
この想定について、規制委員会が29日の審査会合で了承する見通しであることが分かりました。
想定される地震の揺れは最も重要な審査項目の1つで、事故を起こした福島第一原発と同じ「沸騰水型」と呼ばれるタイプの原発で了承されるのは初めてとなります。
柏崎刈羽原発を巡っては、津波の高さの想定もすでに了承されているほか、施設の重大事故対策の審査も、同じ沸騰水型の原発の中で最も進んでおり、地震の揺れの想定が了承されれば、審査がさらに先行することになります。
ただ、敷地内の防潮堤の下を走る断層の活動性を巡る議論では、東京電力の「将来動く可能性はない」という主張に対して、規制委員会が「データが足りない」と指摘して、追加の調査が行われており、今後の焦点になっています。 

30- 伊方原発再稼働問題 住民投票条例案を否決

 八幡浜市議会は28日、四国電力伊方原発の再稼働の是非を問う住民投票実施をめぐり、市民グループの直接請求を受けて大城一郎市長が提出した住民投票条例案を賛成少数で否決しました。
 八幡浜市伊方町の東側に隣接(20キロ圏)していて、直接請求には市民有権者の3分の1に当たる9939人が署名しました。
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伊方原発再稼働問題 住民投票条例案を否決
愛媛新聞 2016年01月29日
 四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の再稼働の是非を問う住民投票実施をめぐり、八幡浜市議会は28日、臨時議会を開き、市民グループの直接請求を受けて大城一郎市長が提出した住民投票条例案を賛成少数で否決した。有権者の3分の1に当たる市民9939人が署名して実施を求めた住民投票は行われないこととなった。 
 大城市長は「制定しないよう求める」との反対意見を付けて条例案を提出。条例制定を請求した「住民投票を実現する八幡浜市民の会」の代表による意見陳述や討論の後、議長を除く市議15人による採決で6人が賛成、9人が反対した。 
 閉会後、大城市長は「(自身の反対)意見の趣旨が議員に理解されたと考えている」と条例案否決を評価。「市民の間に原子力に関して不安があれば説明の場を設けたい。避難計画も住民と話し合ってより良いものを作っていきたい」と述べた。市民の会共同代表で市議の石崎久次氏(無所属)は「大変残念。民意が反映されなかった」と話した。 

2016年1月29日金曜日

原発事故時の避難 自治体職員がバス運転へ 福井・高浜町

NHK NEWS WEB 2016年1月28日
29日再稼働する関西電力・高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町は、原発事故が起きた際の住民の避難にバスを運転できる免許を持つ町の職員を活用することになりました。
 
福井県は原発事故が起きた際、学校にいる子どもやお年寄りなど自力で避難することが難しい人たちをバスで避難させる計画です。
このうち高浜町はバス会社や関西電力と取り決め、必要な車両の台数を確保したとしていますが、計画どおりバスの運転手を確保できないときに備えてバスを運転できる免許を持つ町の職員を活用することになりました。町によりますと、職員の7%にあたる11人が大型免許を持っているということです。
町は今後、こうした職員が定年退職することも踏まえて、国や県と協議しながら職員が免許を取得する費用を補助したいとしています。
原子力防災を担当する内閣府によりますと、原発の立地自治体の避難計画で、住民の避難に使うバスの運転に職員を活用する例はないということで、高浜町の野瀬豊町長は「いざというときに備え、町でもできる準備はしておきたい」と話しています。
住民の避難を支援するバスの運転手や自治体の職員には被ばくのリスクや業務の具体的な内容についての事前の研修などが必要とされ、内閣府は今後、被ばく対策の手引きを示すことにしています。 

高浜原発再稼働、法廷闘争は続く

 高浜原発3号機の再稼働を29日に控えて、福井新聞が高浜原発再稼働に対する差し止め訴訟の状況についてまとめました。
 昨年4月、福井地裁の樋口裁判長によって3、4号機の運転差し止め仮処分決定が出されましたが、その異議審では林裁判長によって仮処分が取り消されました。4月の決定後樋口裁判長は家裁に転出させられ、代わりに最高裁事務総局のメガネに適った林氏が着任しました。その時点でこの決定の取り消しは決まったと言えます。
 
 福島原発事故以前の段階で、20数件の運転差し止めの訴訟が出されましが、裁判所は一貫して国・電力側に軍配を上げてきました(地裁で差し止め判決が出た1例はありましたが上級審で覆りました)。
 原発事故後の2012年1に行われた全国の裁判官研修会でそうした国追随の姿勢を反省する意見が相次いだということでしたが、僅か3年余りで司法は再び従来の姿勢に戻ってしまいました。
 
 高浜原発の再稼働差し止めについては、現在福井の他に、大津、京都、大阪地裁でそれぞれ係争中です
 弁護団は住民の主張を認める裁判官に出会うまで闘いを続けると述べています。
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高浜原発再稼働、続く法廷闘争 住民側「主張を認める裁判官に出会うまで」
福井新聞 2016年1月28日
「司法が再稼働を止める」と書かれた垂れ幕が掲げられると、福井地裁前に集まった約300人は「歴史的瞬間だ」と大いに沸いた。昨年4月14日、福井県住民らが申し立てた関西電力高浜原発3、4号機の再稼働差し止め仮処分で同地裁は再稼働を認めない決定を出した。
 約8カ月後の12月24日。今度は、同地裁前は静まり返った。関電が申し立てた異議審で差し止め決定が取り消された。
 
 仮処分は、通常の訴訟は時間がかかることから、判決が出るまで当事者の権利を守る目的で行う暫定的な手続き。4月の地裁決定で、住民側弁護団は「大きな武器を手に入れた」と力を込めた。決定の効力は即時発揮し、不服申し立て中も継続する。原発を止める有効な手段として、各地の原発に対して請求していく構えを見せた。
 原発訴訟はこれまで、国の手続きが適切かどうかが司法判断の中心で、住民側が敗訴してきた歴史があった。変化の兆しが現れたのは福島第1原発事故後の2012年1月。最高裁が全国の裁判官を集めて開いた研修会で、原発の安全性を本格的に審査していくべきだとの意見が相次いだ。従来の審理の在り方は行政に追随しているだけ、という反省といえた
 
 ただ、福井地裁が正反対の判断をしたように、司法の判断はまだ分かれている。4月の決定を出した樋口英明裁判長(現名古屋家裁)は新規制基準を「合理性に欠く」と断じ、独自の基準を示して「ゼロリスク」を求めた。
 この決定を覆した林潤裁判長は、危険性が社会通念上、無視できる程度にまで管理されているかを重視し、新基準に「不合理はない」と結論付けた。
 林裁判長は「絶対的安全性を想定することはできない」とも指摘し、いわゆる安全神話に陥らない姿勢を厳しく求めた。福島事故を機に、司法が原発の安全性に向ける目は確実に厳しさを増している。それでも、判断基準をどこに置くのかは、裁判官によって異なっているのが現状だ。
 
 脱原発弁護団全国連絡会によると、現在係争中の原発訴訟、仮処分は少なくとも30件ある。関電に対する訴訟は名古屋高裁金沢支部での大飯原発3、4号機運転差し止め訴訟控訴審を含め五つある。
 
 高浜2基ついては、大津、京都、大阪地裁でそれぞれ係争中。中でも注目されているのが、滋賀県の住民らが運転差し止めを大津地裁に求めた仮処分だ。
 審尋はすでに終結し、年度内にも決定が出る見込み。同地裁が14年11月に出した仮処分決定では住民側の請求を却下したが、基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定など一部の不合理さを指摘。“住民側の実質勝訴”の内容ともいわれている。
 
 決定が出るころには3号機は再稼働している。4号機も動いている可能性がある。仮に差し止めを命じた場合、実際に動いている原発を即時止めることになる。
 福井地裁では覆されたが住民側は闘う姿勢を崩していない。弁護団の河合弘之共同代表は会見で「われわれの主張を認める裁判官に出会うまで続ける」と語気を強めた。今月16日には本県の反対派住民が新たな民事訴訟を起こすことを表明。原発をめぐる法廷闘争は続く。 

29- 浜岡原発3号機に「フィルター付きベント」搬入

 中電は27日、浜岡3号機用の「フィルター付きベント」を構内に運び込みました。浜岡原発は沸騰水型の原発なので「フィルター付きベント」の設置が義務付けられています。

 サイズは直径約5m高さ約11mで、放出する放射性物質は千分の1以下に抑えられるということです。海外では放出量を1万分の1以下にするのが普通で、設備の規模も5階建てのビル並みと言われています。それに比べると日本のフィルターは随分とチャチなものです。
 
追記 柏崎刈羽原発でも、「フィルター付きベント」の計画に当たり当初は放出量を千分の1に抑えるということでスタートしましたが、過酷事故時の放射能の拡散状況をシミュレーションするに当たり、仮定された放出量はなんと「6分の1」という桁外れの量に増えていました。どういう経過でそんな貧弱なことになったのかは不明で、大いに問題にされるべきことです。
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「ベント」3号機に搬入 28日から据え付け工事
静岡新聞 2016年1月28日
 中部電力は27日、原子力規制委員会の適合性審査を受けている浜岡原発3号機(御前崎市佐倉)に設置する事故対策装置「フィルター付きベント(排気)」を、構内に運び込む様子を報道陣に公開した。
 中電によると、ベント設備は原発の新規制基準で設置が義務付けられている。3号機用は金属製の筒型で直径約5メートル、高さ約11メートル、重さ約95トン。原子炉建屋付近の地下34メートルに設置する。重大事故で原子炉格納容器内の圧力が高まった際、ベント設備を介して排気することで、放射性物質を取り除きながら内部の圧力を下げ破損を防ぐ。放出する放射性物質は千分の1以下に抑えられるという。
 横浜市内のメーカーで製造した。御前崎港に陸揚げされ、特殊車両で慎重に運んだ。28日に据え付け工事に入り、来年9月ごろの完成を目指す。先行して適合性審査を受けている4号機のフィルター付きベントは、ことし9月末に設置が完了する見込み。

構内に運び込まれた3号機用のフィルター付きベント=27日午後、御前崎市佐倉の浜岡原発
構内に運び込まれた3号機用のフィルター付きベント=27日午後、御前崎市佐倉の浜岡原発

2016年1月28日木曜日

最後の熊取6人組 今中哲二さんが退職へ

 京都大学原子炉実験所(大阪府熊取町)に研究者として勤めながら原発の危険性を訴えてきた研究者集団6人は「熊取6人組(または 熊取6人衆)」と呼ばれています。
 メンバーは年齢順に、海老澤徹小林圭二瀬尾健川野眞治小出裕章今中哲二の各氏です。
 
 昨年3月には小出裕章氏が退職し、最後の一人となった今中哲二氏がこの3月末に退職します。彼はチェルノブイリ原発事故の災害研究の第一人者で、その報文はインターネットでも読むことができます。
 
 かつては大学にはある程度のおおらかさが残っていて、差別は勿論あったものの川野眞治氏(1942年生まれ)までは助教授にまでは進むことができました。しかし小出裕章氏(1949年生まれ)以降は徹底的に差別や嫌がらせを受けて、生涯 助教(以前の助手に当たる)に留め置かれました。言うまでもないことですが助教の給与は低レベルです。
 
 今中さん 本当にお疲れさまでした。
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熊取の6人組 唯一の現職、今中さんが退職へ
毎日新聞 2016年1月27日
京都大原子炉実験所から原発の危険性を指摘 
 京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)から原発の危険性を指摘してきた研究者集団「熊取の6人組」で唯一の現職、今中哲二助教(65)が3月末で定年退職する。旧ソ連・チェルノブイリ原発事故の災害研究の第一人者として事実上の退職講演がある。来月10日には6人組が創設した自主講座「原子力安全問題ゼミ」で講演。今後も福島第1原発事故の放射能汚染の実態などの研究を続ける。 
 
 同実験所には、今中さんをはじめ、小出裕章さんや小林圭二さんら原発に批判的な研究者6人が研究グループを作り、市民参加が可能な「安全問題ゼミ」を開くなどしてきた。昨年3月に小出さんが助教で定年退職し、今中さんが「6人組のしんがり」になっていた。 
 今中さんは広島市出身。祖母を原爆で亡くし、母親も被爆した被爆2世だが、「それとは関係なく、当時は最先端技術とされ面白そうだったから」と大阪大の原子力工学科に進学。東京工業大大学院を経て1976年に京大原子炉実験所の助手(現助教)になった。原子力開発のありように疑問を抱き、「原発をやめるのに役立つような研究」をするようになった。 
 86年のチェルノブイリ事故では90年から6人組の故瀬尾健助手と現地入りした。以降、20回以上訪れ調査。2011年3月11日に福島事故が起こると、同月内に、後に計画的避難区域となる福島県飯舘村で放射性物質の測定などをして、住民らへ判断材料を提供してきた。 
 学術講演会の問い合わせは同実験所(072・451・2300)。来月の自主講座は希望者が140人を超え、申し込みを締め切った。【大島秀利】

28- 子ども甲状腺エコー検査 4月から我孫子市も費用助成

東京新聞 2016年1月27日
 我孫子市の星野順一郎市長は二十六日の記者会見で、子どもの甲状腺エコー検査と血液検査の費用助成を四月から始める方針を明らかにした。東京電力福島第一原発事故の放射性物質による健康不安を和らげる目的。血液検査にも助成するのは県内で初めて。
 
 市は事故時に十八歳以下だった市民を対象に、五千円程度の助成を予定している。具体的な助成内容や受診方法は、地元の医師会などと調整して今後決める。
 県内では松戸、柏両市がエコー検査の費用を一部助成している。我孫子市が二〇一六年度予算の新規事業で意見公募した際「我孫子でも子どもの健康を守るために費用助成が必要」との要望が十二件寄せられた。
 市は意見を反映するため、予算に約三十万円を盛り込み、エコー検査に血液検査を加えて、がんや甲状腺の病気を調べられるようにする。
 市では一三年から、市内の小学校入学直前の子どもと、すべての小中学生の健康診断で、甲状腺の視診と触診をしている。市によると、その中から毎年十人程度が精密検査を受けるが、これまでにがんと診断された人はいない。
 星野市長は「視診と触診を継続した上で、健康への不安を解消をしたい」と話した。 (三輪喜人)

2016年1月27日水曜日

原発の「安全神話」訴訟 東電が和解金1100万円支払い

 原発事故で損害を受けた茨城県のホテル経営者が、原発は絶対安全という「神話」に頼って対策を怠ったからだとして、国と電力9社に約2800万円の損害賠償を求めた訴訟が、2013年6月、福岡地裁で1100万円の支払いで和解していたことが26日分かりました
 なぜこれまで公表されなかったのか分かりませんが、それが和解の条件になっていた可能性があります。
 
 福島県のゴルフ場経営企業「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」が、2012年、東電を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、東電が「原発から飛び散った放射性物質は『無主物』であって東電の所有物ではない。したがって東電は除染に責任を負わない」と拒否しました。余りにも横暴な主張で世間をあきれさせましたが、そういう話だけが流布されて東電が支払いに応じた話が伝わらなければ、被害者側が訴訟を起こす意欲をそぐことになってしまいます。
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原発の「安全神話」訴訟和解 東電1100万円支払い
東京新聞 2016年1月26日
 東京電力福島第1原発事故でホテル経営が損害を受けたのは、原発は絶対安全という「神話」に頼って対策を怠ったためとして、茨城県北茨城市の男性(90)が、国と電力9社に約2800万円の損害賠償を求めた訴訟が、福岡地裁(高橋亮介裁判長)で和解していたことが26日、分かった。
 
 東電が事故による損害と認め、和解金1100万円を支払う。残る8社と国に対する請求は男性側が取り下げた。和解は2013年6月に成立した。 (共同)

滋賀県、高浜原発と安全協定を結ぶ

 関電高浜原発について、滋賀県と関電が25日安全協定締結しましが、県が求めてきた立地自治体並みの協定ではなく、既成の敦賀原発などと協定に比べ現地確認の権限がないなど一段階弱い内容となっています。三日月大造知事は調印後「残された課題にしっかり当たる」と表情を引き締めました。今後さらなる協議進展が求められています。
 
 協定が結ばれたこの日は高浜3号機の29日再稼働決定し、締結式があった県公館前では「再稼働反対」と訴える県民の声きました
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「再稼働反対」の声響く 高浜原発安全協定で県民 (滋賀)
中日新聞  2016年1月26日
 関西電力高浜原発(福井県高浜町)について、県と関電が二十五日締結した安全協定。これで、県は若狭地域すべての原子力施設と協定を結んだが、求めてきた立地自治体並みの協定は一つもなく、さらなる協議進展が求められることになった。この日は高浜3号機の二十九日再稼働も決定。締結式があった県公館前では「再稼働反対」と訴える県民の声も響いた。
 
◆締結式の会場前に集結
 今回の協定は既に県などが敦賀原発(福井県敦賀市)などと結ぶ協定に比べ、現地確認の権限がないなど一段階、弱い内容。それでも三日月大造知事は調印後「唯一、協定未締結だった状態を解消できる」と述べ、まずは締結に至った意義を強調した。
 半面、求めてきた立地自治体並みの協定に至らなかった点、高島市が協定当事者にならなかったことを課題とし、今回の締結を事実上の再稼働容認と見る市民がいることも受け止めて「残された課題にしっかり当たる」と表情を引き締めた。
 
 八木誠社長は締結式終了後の取材に「三日月知事が立地自治体並の協定を求めていることは承知している。いま約束はできないが、安全の実績を積み重ねながら引き続き内容を協議していく」と語った。
 
 協定を三年以上求め続けながら、対象とされなかった高島市の福井正明市長は「一刻も早く、周辺自治体はどこまでかという枠組みの法制化を国がするべきだ」と語気を強めた。
 
 締結式があった県公館前には、原発再稼働や今回の締結に不満を持つ市民二十人以上が集い、「原発いらない」などと連呼した。福島県南相馬市から大津市内に避難する青田勝彦さん(74)は「原発の新規制基準は不十分な上、滋賀に立地自治体並みの協定も認めない。そんなばかな話はない」と憤った。
 
◆再稼働の同意権と協定範囲再検討を 越・大津市長
 大津市の越直美市長は25日、関西電力高浜原発(福井県高浜町)に関して県と関電が原子力安全協定を結んだことを受け、「一歩前進だが、県が安全性を確認できるよう、(再稼働の)同意権もあった方が良い」と内容充実を求めた。
 大津市が協定の当事者にならなかったことには「原発から30キロで線を引くのではなく、福島での事故を顧みて被害がおよぶ範囲を検討してほしい」と注文した。高浜原発から市までは42キロ。 (井上靖史、井本拓志)

27- 川内原発の免震棟撤回 規制委が批判

 九電が、川内原発が過酷事故時の対策拠点となる免震重要棟の建設計画を再稼働後に撤回した問題で、原子力規制委は26日、計画変更の具体的な根拠を示すよう九電に指示しました。
 この件については、山口祥義佐賀県知事20日、「やるといったものはやるべき。信頼関係の問題だ」と不快感を示していました。
     (関係記事)
1月22日 当初計画通り 玄海免震棟 建設すべき 知事が表明
2015年12月19日 川内原発、免震棟設置しないことに!?
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川内原発「免震棟撤回の根拠を」規制委が批判、九電に指示
東京新聞 2016年1月26日 
 この日の会合で、九電は、免震棟を新たに建てるより、現在の代替施設と新設する支援施設を組み合わせた方が「早く安全性を向上できる」と説明した。
 これに対し、規制委の更田豊志(ふけたとよし)委員長代理が「早く向上できるというのに、どれだけ早くなるのか説明がない。(なぜ計画を変えるのか)動機の説明がなく、最も重要な根拠を欠いている」と指摘した。
 他の規制委担当者も「審査の中で、免震棟の地震動も検討した。それが無駄になっている。よく考えてもらいたい」などと指摘。計画変更を申請し直すことも視野に、入念に検討した上で対応するよう求めた。
 九電は、規制委で審査中の玄海原発(佐賀県)でも、今年三月をめどに予定していた免震重要棟の新設計画を見直す考えを明らかにしている。これに対し、佐賀県の山口祥義(よしのり)知事は「災害対応の拠点になる免震棟は重要だ。(九電は)信頼関係を築くためにも、自らやると言ったことはやるべきだ」と苦言を呈し、予定通り新設するよう求めている。

2016年1月26日火曜日

1月の例会は26日(火)です


26日(火)は例会です

  下記により「原発をなくす湯沢の会」の1月の例会を行います。
 どうぞお出でください。
  
 と き   1月26日(火) 19:00~21:00 
 ところ  湯沢公民館 3階 会議室2 
         (詳細は事務室前の表示板をご覧ください)
 
 学習会のテキストは「脱原発社会へ-電力をグリーン化する」長谷川公一(岩波新書) です。
 今回は第4章「脱原子力社会に向けて」 第3節で、上記テキストでの最終回になります。
 
 会員外の方でも ご関心・ご興味がありましたら、どうぞお出でください。

放射性廃棄物、海底下も処分場の候補に 経産省

 経産省は、原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場として、沿岸20キロの海底下や島の地下も候補地として検討する方針を決めました。
 これまで陸地の地下に建設する方針でしたが、住民の反対が強く処分地選定難航しているためで、まさに窮余の一策です
 
 かつて原発で使った核燃料から出る高レベル放射性廃棄物地中深くに埋める国の最終処分計画に対して、日本学術会議は2年がかりで調査研究した結果、2012年に、地震や火山活動が活発な日本列島で万年単位で安定した地層を見つけるのは難しいとする報告書をまとめました
※ 2014年1月6日 核のごみの処分地選定急展開か
 
 海底であれば確かに地権者はいませんが、海岸線から20キロ以内の海底地下の安定性については、列島地下の安定性と同じことが言えるのではないでしょうか。
 また海底であれば地下水の流れ緩やかだということですが、緩やかであったとしてもいずれは地下水流に乗って海中に放射性物質が移動する可能性は否定できません。現に福島第一原発の地下を流れる水流(阿武隈山系に降る雨水が水源)は日量1000トンといわれますが、その先は海底を伏流して海岸線から10キロほど離れた海底で海中に放出されているいうことです(現在は地下水を汲み上げているのでその分は減量)。
 
 こうした決定は身内のメンバーで決めるのではなく、省庁から独立した学識経験者のきちんとした審査を経るべきでしょう。
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放射性廃棄物、海底下も処分場候補に…経産省
読売新聞 2016年01月25日
 経済産業省は、原子力発電所の高レベル放射性廃棄物の最終処分場として、沿岸の海底下や島の地下も候補地として検討する方針を決めた。
 今月26日に専門家による研究会を設置して、技術的な可能性の議論を始める。2016年中にも、日本全国を適性に応じて3段階に色分けした「科学的有望地」を提示する。
 これまでは、処分場を陸地の地下に建設する予定だったが、住民らの反対が強く、処分地選定は難航している。海底下は地権者との交渉が不要で、地下水の流れも緩やかといった利点がある。
 経産省の作業部会が昨年12月にまとめた中間整理では、港湾から20キロ・メートル以内の沿岸部を「適性の高い地域」に分類。一方で、火山の周囲15キロ・メートル以内や活断層周辺、地盤が弱い場所などは「適性の低い地域」と位置づけた。研究会はこれをもとに、沿岸海底下と島での最終処分について、最新の研究成果や課題を整理する。

26- 高浜再稼働、許さない 市民団体がデモ

中日新聞  2016年1月25日 
 関西電力高浜原発3号機(高浜町)の再稼働が月末に迫る中、関西地方の市民団体のメンバーら約四百五十人が二十四日、同原発前で再稼働に反対するデモを行った。
 
 関電は二十九日に3号機を再稼働する見通しで、デモは関西地方の住民でつくる「若狭の原発を考える会(代表・木原壮林京都工芸繊維大名誉教授)」が呼び掛けた。
 二十四日は、原発付近の展望台に集まった参加者らを前に、木原さんが「事故時には関西全域が汚染され、避難計画の実効性もない。再稼働を認めてはならない」と訴えた。その後、約十五分間、原発前の県道を「福島は終わっていない」などとシュプレヒコールをあげながら行進した。
 原発の北門前では、同会の高瀬應臣(まかみ)さん(70)=滋賀県栗東市、写真(中)=が「再稼働を断念し、原発の全廃を要求する」などとする八木誠関電社長あての抗議文を社員に手渡した。
 また同会は同日、町文化会館で再稼働に反対する団体の代表者らが講演する集会を開いたほか、町役場周辺でもデモを実施。二十七日には関電の本店ビル前(大阪市北区)でも抗議デモを開く予定。 (平井孝明)

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2016年1月25日月曜日

原発事故後、生徒7割減 福島・避難区域の小中校

 東京新聞 2016年1月24日
 東京電力福島第一原発事故で避難区域となった福島県十二市町村で、移転した小中学校に通う児童・生徒数が、事故前に比べ約七割減少したことが、各教育委員会への取材で分かった。
 二〇一〇年度は一万二千四百二十四人だったが、一五年度は三千六百八十七人となっている。事故から五年近くたっても避難指示解除の見通しが立っていない所があり、避難先で授業を続ける学校も多い。子どもたちは各地に散らばり、大幅減につながっている。今後も減少に歯止めがかからず、休校や統合が加速しそうだ。
 十二市町村は南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町、飯舘村、川俣町、葛尾村、田村市、川内村。原発事故で避難区域となり、一部は解除された。
 避難区域内にあった小学校は三十六校、中学校は十九校の計五十五校で、このうち浪江町の小中六校が休校し、南相馬市の小学校一校が統合。住民票を基にした就学対象者は一五年度で計一万百二十九人いるものの、多くが避難先の自治体にある別の学校に通っているとみられる。
 事故後、減少幅が最も大きい自治体は、千四百八十七人から十九人(1・3%)に減った富岡町。次いで浪江町の千七百七十三人から三十六人(2・0%)、双葉町の五百五十一人から二十人(3・6%)。
 南相馬市の一部、田村市都路地区、川内村、広野町の小中学校はいったん避難したものの、その後、元の場所で再開したが、通学する子どもの数は事故前の三~六割程度にとどまる。
 全村避難が続く飯舘村が昨年十二月、保護者に行った意向調査では、回答者の七割超が元の学校へ戻らないと答えた。
 現在も避難区域がある自治体の教育関係者は「避難先の学校になじんだ子どもは戻らないし、保護者には放射線への根強い不安もある。学校の維持は厳しくなる」と話している。

25- 温暖化対策と核燃料サイクル(小出裕章ジャーナル)

 今回の小出裕章ジャーナルは温暖化対策と核燃料サイクルがテーマです。
 
 小出氏はまず「高速増殖炉」は完成する見込みがないこと、「核燃料の再処理システム」もこれまで投じた2兆円はドブに捨てたようなもので完成の見通しが乏しいことを述べ、それでも政府がしがみついているのは実は核兵器を作る能力を保有することが目的だからとしています。 
 そしてウランというのはもともと地球上にはわずかな量しか存在していないので、これからの未来のエネルギー源にはならないと明言しています。
 
追記 文中の太字箇所は原文で行わているものです。また原文では小出氏には「さん」がついていましたが、この紹介文では外しました。
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温暖化対策と核燃料サイクル
〜第159回小出裕章ジャーナル 2016年01月23日
「ウランというのはこの地球上には貧弱な量しか存在していませんので、いずれにしても原子力なんかにしがみついていても未来のエネルギー源にはならないのです」
 
谷岡理香: 今回は、去年12月に開かれた温暖化対策パリ会議COP21から見えてきた日本の環境対策、それからエネルギー政策、原発政策について、小出さんに伺っていきます。今日も電話が繋がっています。小出さん、よろしくお願い致します。
小 出: こちらこそ、よろしくお願いします。
谷 岡: COP21が終わって、脱化石燃料の時代へと、世界は一気に加速していくように感じています。が、残念ながら日本はどうも方向が逆行しているように感じます。特に高速増殖炉へのこだわりと核燃料サイクルの中核となる再処理事業に、なんと政府が強く関与することになりましたね。
小 出: はい。これまで日本の国は、原子力発電所を動かして、そこから出てくる使用済みの燃料、その中からプルトニウムという物質を取り出して、それを高速増殖炉という特殊な原子炉で燃やすことで、原子力を意味のあるエネルギー源にしたいと言い続けてきたわけです。
   そのためには高速増殖炉という特殊な原子炉と、そこから出てくる使用済みの燃料を再処理してプルトニウムを取り出すということを実現させなければいけないのです。しかし高速増殖炉、それの非常にプリミティブな実験炉である「もんじゅ」という原子炉は、ずっと止まったままで、事故続きで、つい先日は原子力規制委員会自身が「もうこんなものはダメだ。なんかもっとちゃんとした組織が引き受けてやらなければいけない」という最後通告を突きつけるというそんな状態になってしまっていて、高速増殖炉自身もおそらくはもう実現できないというところに追い込まれているのです
   そしてもうひとつが、今聞いて頂きましたように、使用済みの燃料の中からプルトニウムを取り出すという再処理という技術なのです。それを何とか実現しようとして、これまで六ヶ所村で再処理工場というのをつくろうとしてきました。それを担っていたのは、日本原燃という会社なのですが、それは会社というよりは、むしろ日本の原子力発電を担っている電力会社が、みんなでとにかくお金を出し合って支えようということでやってきたのです。
   しかしその再処理という事業も全く実現できないまま、既に2兆円を超えるお金をドブに捨ててしまったという状態になっているのです。もうこんな物は、到底民間の企業では引き受けることができないわけですし、電力会社としても、いつまでもそれを抱えていることができなくなるかもしれないということで、日本の政府は、それを民間の会社からいわゆる国が強く関与するような特殊な機関に、民間法人と言うのですけれども、してしまってもう電力会社にも逃げさせないと、国が協力に関与するというような形になろうとしているわけです。
谷 岡: でも小出さん、その高速増殖炉もうまくいかない。再処理工場もうまくいかない。2本柱が機能していないのにも関わらず、どうして政府はここまで、ここにしがみつこうとしているのでしょうか?
小 出: はい。日本の皆さんは、これまでずっと原子力というのは平和利用に限って進めてきたんだ。原子力発電だって平和利用だし、核燃料サイクルでプルトニウムを取り出すことも発電というための燃料に使うのであって、平和利用なんだとずっと聞かされてきて、ほとんどの方がそれを信じているのだと私は思います。
   しかし実はそれが嘘だったのです。日本というこの国が原子力というものに関わった、その一番初めの当初から、別に発電をやりたいわけではない、原子力というものを平和利用だと言いながら、実は核兵器をつくる能力を保有したいんだということが一番の動機だったのです
   再処理という技術も、使用済みの燃料の中からプルトニウムという物質を取り出すための技術なのですが、プルトニウムは長崎原爆の材料であったわけで、日本というこの国は何としても原爆材料を懐に入れる。その技術を自分のものとしたいということで、これまで進めてきたわけですし、六ヶ所村で今つくろうとしている再処理工場も決して諦めることがないだろうと思います
   そして高速増殖炉の方も、この原子炉というのが非常に特殊な役割を持っていまして、この原子炉を動かすことができれば、その炉心を取り巻いているブランケットという部分にプルトニウムが溜まってくるのですが、そのプルトニウムは核分裂性のプルトニウムの割合が98パーセントにもなるという超優秀な核兵器材料なのです。
   これまで日本は、原子力発電所で出来たプルトニウムをすでに48トンも懐に入れてしまって、それで長崎型の原爆をつくれば4000発もつくれるだけになっているのですけれども、今日までに懐に入れてた普通の原子力発電所の使用済み燃料から出てくるプルトニウムは、核分裂性のプルトニウムの割合が約7割しかなくて、優秀な原爆はつくれないという、日本の国から見れば、困った状態にあったわけです。
   それを突破する為には、何としても高速増殖炉を動かして、超優秀な核兵器材料を手に入れたいと、彼らは思っているはずだと思います。そのため彼らは再処理も諦めなければ、高速増殖炉も諦めないということになっているのです
谷 岡: エネルギー問題と言えなくなっているっていう感じがしますが、まず最初にお話したように、世界はすでに再生可能エネルギーに転換を進めているわけです。「もうドブに捨てている」というように小出さんがおっしゃったような莫大な維持費は、それこそ再生可能エネルギーの方に投資すべきだと思うんですが。このままでは日本は本当にエネルギー問題としては、世界に取り残されていってしまうのではないでしょうか?
小 出: はい。おっしゃる通りです。原子力の燃料であるウランというのは、残念ながらと言うか、この地球上には貧弱な量しか存在していませんので、いずれにしても原子力なんかにしがみついていても、これからの未来のエネルギー源にはならないのです
   化石燃料も少しずつ使用を減らさなければいけませんし、それを補うのはやはり再生可能エネルギーしかないのです。一刻も早く原子力の夢からさめて、再生可能エネルギー資源の効率的な利用、環境を破壊しないような利用の仕方という所に本当は進まなければいけないわけで、今のような日本の姿勢を続ける限り、世界の潮流から取り残されてしまうということになると私は思います
谷 岡: はい。なんか本当に戦争したい国に着々と歩みを進めているっていうことがもう残念でなりません。小出さん、どうもありがとうございました。
小 出: こちらこそ、ありがとうございました。