2018年8月31日金曜日

つれづれ語り「原発をめぐるもう1つの神話」(田中淳哉弁護士)

 田中淳哉弁護士ご夫妻が『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」に「原発をめぐるもう1つの神話」が載りました。
 
 記事は、2016年に新潟日報「原発問題特別取材班」が長期連載した「柏崎刈羽原発に関する記事」が、17年5月に「崩れた原発『経済神話』 柏崎刈羽原発から再稼働を問う」と題されて出版された書籍に関するものです。
 
 限られた字数の中で良くまとめられたという印象で、これから同書を読まれる方の良い指針になるように思われます。
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つれづれ語り(原発をめぐるもう1つの神話)
『上越よみうり』に連載中のコラム「田中弁護士のつれづれ語り」。
 
2018年8月29日付に掲載された第41回は、「原発をめぐるもう1つの神話」です。
 福島第一原発事故が起こったことで、原発の安全性についての多くの言説が「神話」であったことが認識される様になりました。本コラムでは、原発があることで地域経済が活性化するというのも「神話」であることを明らかにした新潟日報特別取材班の調査報道を紹介しています。
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原発をめぐるもう1つの神話
 
因果関係の判断
因果関係の有無を判断するのは、必ずしも容易ではない。
「A」という出来事の後に「B」という出来事が起こると、「A」が原因で「B」が起こったように見える。しかし、たまたま2つの出来事が相前後して起こっただけで、「A」とは別の「C」が原因で「B」が引き起こされた可能性もあるから、それだけで「A」と「B」の間に因果関係があると言い切ることはできない。
 
薬を飲んだら病気が治った、というような場合も同様だ。飲んだ薬が効いたのかも知れないが、自然治癒などの可能性もある。そこで、薬を投与した群と偽薬を投与した群とを比較して、両群の間に統計的な有意差があるか否かによって効果を判定する(比較臨床試験)。この際、「思いこみ」による影響を排除するために、被験者(患者)に対してはもちろん、観察者(医師)に対しても、どちらが本物の薬であるかを伝えない(二重盲検法)。
 
「原発のおかげで地域経済が活性化した」、「原発が止まっているから経済が冷え込んでいる」というのも、多分に「思い込み」の面がある様だ。新潟日報の原発問題特別取材班が、独自調査に基づいて明らかにしている(『崩れた原発「経済神話」柏崎刈羽原発から再稼働を問う』明石書店)。
 
統計データの分析
取材班は、経済学者の協力も得て、各種統計データの推移を、人口規模が近い柏崎市、三条市、新発田市の3市で比較した。
主要4産業のうち、「製造業」(製造品出荷額)、「サービス業」(総生産額)、「卸売・小売業」(総生産額)では、3市の数値はほぼ同じ推移を示しており原発があることによる影響は見られなかったという。「建設業」については、原発の建設期には柏崎市の総生産額が一時的に跳ね上がるものの、プラント建設が終わった後は、残る2市と同水準に落ち着いており、影響は限定的であった。
また、雇用全体の推移(民間事業者の従業員数)を見ても、3市は極めて似通った傾向を示しており、やはり原発による影響は見られなかった。
 
100社の面接調査
取材班は、柏崎市内の企業100社に対する面接調査も行っている。この調査では、原発の再稼働が自社に直接的な好影響をもたらすと考えている経営者が思いの外少ないことが明らかになった。
「再稼働すれば原発作業員が増えて街が活気づく」との言葉に象徴される様に、回り回って景気がよくなるのではないかというイメージが広く共有されている。「建設期の一時的な売上増を原発の稼働による経済効果と思い込んでいるのではないか」というのが、分析にあたった経済学者のコメントだ。
 
しかし実際には、原発は稼働しているときよりも、運転停止中の方が作業員が増える傾向にある。安全対策のための工事が集中的に行われるからだ。東電幹部も、再稼働すると現在よりも作業員が減ることを認めている。
「建設期をのぞいて、街に人があふれていたことがあったのか、なかったじゃないか」という店舗経営者のコメントが現実を的確に言い当てている。シャッターがしまったままの商店街は、原発が長期間停止する前から、柏崎だけではなく多くの地方都市で共通して見られた光景だ。
 
「経済神話」を乗り越えて
原発を立てたことで、柏崎市には、国から交付金が、東京電力から税金が、それぞれもたらされた。その額は2016年度までで約2800億円にのぼるという。これらを利用して多くの公共施設が建設された。しかし現在、施設の建設にあたって借りいれたお金の返済や施設の維持管理費が市の財政を圧迫している。
 
原発が地域経済の活性化につながっているというのが「経済神話」だとすれば、地元が原発を受け入れる理由はほとんどなくなるのではないか。原発再稼働の是非を考える際には、「安全神話」や「経済神話」を乗り越えて、事実に基づいた冷静な判断をすることが必要だろう。

原発避難者集団訴訟第2陣 原告ら「放射線量高く帰れない」と

 福島県の避難指示区域外から千葉県内に避難している6世帯19人が国と東電に計約24700万円の損害賠償を求めた集団訴訟(第二陣訴訟)が30日、千葉地裁で結審しました
 30日には原告5人が意見陳述し、「今福島に戻ったとしても、ふるさとの自然は元通りになっていない。放射線量は高いままで、帰れるとも思っていない」「原発事故で築いてきたものがすべて奪われた。自主避難を選んだ国民を補償するのが国の役目だ」と訴えました。
 放射線管理区域の空間線量を4倍も上回る線量20mSv/年を基準に、それ以下の区域から避難した人たちを「自主避難者」として、いまだに事ごとに差別している現状が是認されているのは理解しがたいことです。
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原発避難者集団訴訟第2陣 原告ら意見陳述「放射線量高く帰れない」
東京新聞 2018年8月31日
 東京電力福島第一原発事故に伴い、福島県の避難指示区域外から千葉県内に避難している六世帯十九人が国と東電に計約二億四千七百万円の損害賠償を求めた集団訴訟(第二陣訴訟)が三十日、千葉地裁で結審した。判決は来年三月十四日に言い渡される。
 
 三十日は原告五人が意見陳述。福島市から野田市に避難している原告団長の菅野貴浩さん(56)は「今福島に戻ったとしても、ふるさとの自然は元通りになっていない。放射線量は高いままで、帰れるとも思っていない」と語った。福島県いわき市から県内に避難している四十代女性は「原発事故で築いてきたものがすべて奪われた。自主避難を選んだ国民を補償するのが国の役目だ」と涙ながらに訴えた。
 訴状などによると、原告は当時、いわき市や福島市などの避難区域外に居住。「避難区域の設定に合理性はなく、区域外を理由に賠償額が低くなるのは許されない」として、慰謝料などを求めている。
 
 原告側の代理人弁護士は「国と東電は津波を予見でき、対策をしていれば事故は防げた。今も放射線量は高く、避難には合理性がある」と主張した。
 東電の代理人弁護士は「国の指針に基づいて賠償している」などと反論。これまで国と東電は「津波は予測できなかった」などと主張してきた。
 
 原発事故に伴う避難者の集団訴訟は全国で約三十件あり、国と東電が被告となった訴訟では五件の地裁判決が出たが、昨年九月の千葉地裁の第一陣訴訟判決のみ、国の責任を否定した。
 一陣訴訟の原告十八世帯のうち十三世帯と、被告の東電が控訴している。

31- 日立・英原発 3社連合解散 費用減を視野に

 日立製作所が22日、英国で計画されている原発建設プロジェクトの体制を見直し、日揮、米ベクテルとともに3社でつくった企業連合「メンター・ニューウィッド」を解散し、経費の節減のため、それを介さず工事会社に事業を直接発注する方式に変えるということです。
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日立・英原発 3社連合解散 費用減視野 先行き不透明
東京新聞 2018年8月31日
 日立製作所が二十二日、英国で計画されている原発建設プロジェクトの体制を見直し、エンジニアリング大手の日揮、米ベクテルとともに三社でつくった企業連合「メンター・ニューウィッド」を解散したと発表しました。計画への影響を探ってみました。(吉田通夫)
 
Q 英国の原発プロジェクトはどんな計画ですか。
A 英国中西部のアングルシー島に、二基の大型原発を建設する計画です。日立は二〇一二年に、建設権利を持つ発電会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」をドイツ企業から買収して完全子会社にしました。ホライズンは日本の東京電力のような会社で、発電所を計画して工事を発注する立場です。
 
Q どのように工事体制を見直したのですか。
A 発電所全体の工事を手掛けたことのない日立は、日揮やベクテルと企業連合を一六年から組んでいましたが、その体制を解散しました。日立や日揮はそれぞれ、ホライズンから工事を直接受注することに変えたのです。また、ベクテルは建設のコストや工程を管理する監督役となります。
 
Q 体制を変えたのはなぜですか。
A 原発の建設費が想定より膨らむ中、日立は原発建設の資金を支援する英国政府からコスト削減を求められていました。解散した企業連合を介さず工事会社に事業を直接発注することでホライズンの建設費用の削減が可能だと説明しています。
  一方、原子力の業界内には、ベクテルが、高騰する建設費を懸念して工事主体になることを避けたのではないかという見方もあります。この見方を、日立は「ベクテルはもともと工事を主体的に担う予定がなく、将来的な損失の負担割合は個々の工事契約で決まる」と否定しています。
 
Q このまま着工するのでしょうか。
A 日立は一九年末までに着工するかどうかを決める予定です。総事業費は当初の一・五倍にもなる三兆円に膨らんだとも言われます。日立は見合った利益を得るため英国政府に資金面の支援策を求めていますが、協議は難航しているようです。

2018年8月30日木曜日

東電、柏崎刈羽原発の事故訓練で改善計画を提出

 東電は27日、柏崎刈羽原発で実施した事故対応訓練で情報共有に関する評価が最低ランクだったことを受け、原子力規制に改善計画を提出しました。
「本社が発電所からの情報の入手をためらう状況が生じた」ことに問題があったとして、本社と発電所との間で情報交換を担当する専任の人員を配置するというものです
 電子版では記事の冒頭部分しか公表しないので、「情報の入手をためらう状況」ということの意味が不明ですが・・・。
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東電HD、柏崎刈羽原発の事故訓練で改善計画
日経新聞 2018年8月27日
 東京電力ホールディングスは27日、新潟県の柏崎刈羽原子力発電所で実施した事故対応訓練で情報共有に関する評価が最低ランクだったことを受け、原子力規制委員会に改善計画を提出した。評価結果を巡り、立地自治体の首長らから厳しい意見が相次いでいた。
 
 計画では、本社と発電所との間で情報交換を担当する専任の人員を配置する。「本社が発電所からの情報の入手をためらう状況が生じた」と問題点を指摘。「個人の役割を明確化し、情報が抜けなく流れる体制を目指す」とした。
 本社と同原発ともに熟練チームを編成し、繰り返し訓練を実施。情報共有の最適な手段や改善策を見つけ、他の社員にも広く浸透させる。
 3月に柏崎刈羽原発で実施した訓練の情報共有に関する評価で、3段階の最低だった。規制委から「福島第1原発事故を起こした東電が低い評価となったのは許しがたい」など厳しい意見が出た。
 
 2日に東電HDの小早川智明社長と会談した新潟県の花角英世知事は「非常に残念だ。強い意思で改善に努めてほしい」と語った。柏崎市の桜井雅浩市長も「市民の不安を増大させないでほしい」と注文を付けていた。

徴候ベース手順書を参照しなかったため重大事故に

 福島原発事故で宮城県などに避難した福島県浜通りの住民が東電と国に損害賠償を求めた訴訟で、日本原子力研究開発機構研究者「東電が徴候ベース手順書を参照しなかったため事故が深刻化した」と証言しました。
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<原発事故避難者集団訴訟>「手順従わず炉心溶融」専門家が証言
   河北新報 2018年8月29日
 東京電力福島第1原発事故で宮城県などに避難した福島県浜通りの住民が東電と国に損害賠償を求めた訴訟で、日本原子力研究開発機構の元研究者で社会技術安全システム研究所(茨城県ひたちなか市)の田辺文也所長の証人尋問が28日、仙台地裁であった。田辺氏は「東電が手順通りに対応せず炉心溶融が起こり、事故が深刻化した」と証言した。
 
 津波で原子炉の冷却機能が失われた同原発2、3号機に関し、東電は2011年10月に原子力安全・保安院(当時)に報告書を提出。想定事象に対応する「事象ベース」と、炉心損傷時の「シビアアクシデント」の各手順書のみを使ったと明記している。
 田辺氏は、東電が原因不明の原子炉の状態に対応する「徴候(ちょうこう)ベース手順書」を参照しなかった点を問題視。同手順書に従わず、原発内の現地対策本部が格納容器のベントを優先させた結果、「原子炉を減圧し(原子炉水位の異常低下時に行う)低圧注水に切り替えるタイミングが遅れた」と強調した。
 訴えでは、福島県から避難を余儀なくされた93人が原発事故で古里を失い、精神的苦痛を受けたとして、慰謝料など計39億2460万円の支払いを求めている。

30- 「サン・チャイルド像」福島駅から撤去へ 批判相次ぎ

 福島市は、福島原発事故からの再生をテーマにJR福島駅近くに設置した子ども像「サン・チャイルド」を近く撤去すると発表しました。
 防護服のようなものを着用した姿が「風評被害を助長する」などと批判が相次いだためということです。
   関係記事
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福島第1原発事故 「防護服像」撤去へ 福島駅近く設置 批判相次ぎ
毎日新聞 2018年8月29日
 福島市は28日、東京電力福島第1原発事故からの再生をテーマに、JR福島駅近くに設置した子ども像「サン・チャイルド」を近く撤去すると発表した。今月3日に設置されたばかりだが、防護服のようなものを着用した姿が「風評被害を助長する」などと批判が相次いでいた。 
 
 現代美術作家のヤノベケンジさんが、原発事故後の2011年に制作。高さ約6・2メートル、重さ約800キロで、困難な状況の下、未来を見据えて立ち上がる姿を表現したという。 
 
 寄贈を受けて設置したが、市には「福島は防護服が無ければ生活できないという印象を与える」などの批判が相次いでいました。.

2018年8月29日水曜日

太陽光発電優遇53万世帯終了へ 来年、買い取り価格大幅低下

 政府は0911月、住宅用太陽光の余剰電力10年間、1kwh当たり48円での買い取りを義務付け、それ以後の契約では段階的に価格を引き下げてきました。
 48円で契約した家庭・全体の22%に当たる53万世帯が、2019年に10年の買取期限を迎え、それ以後の買い取り価格は12円程度に落ちるという試算もあります。
 
 太陽光発電のコストは、いまや世界では1kw当たり10円を切るという趨勢にあるのでそれもやむをえないかもしれません。買い取り終了後の対応を明示することが求めらます。
 いずれにしても今後一般家庭での太陽光発電の普及にはブレーキがかかりそうです。
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太陽光発電優遇53万世帯終了へ 来年、買い取り価格大幅低下
東京新聞 2018年8月28日
 住宅用の太陽光発電を導入した家庭のうち、二〇一九年中に大手電力会社に電気を最も有利な固定価格で買い取ってもらえなくなる家庭が全体の22%に当たる五十三万世帯に上ることが二十七日、経済産業省資源エネルギー庁の調べで分かった。制度開始時に申し込んだ世帯が十年間の買い取り期限を迎えるためだ。改めて申し込めば大手電力は買い取りを続けるが、価格を大幅に下げる見通し。収入はピーク時の四分の一に落ち込むとの試算もあり、太陽光普及にブレーキがかかる可能性がある。
 
 政府は〇九年十一月、普及を後押しするため住宅用太陽光の余剰電力について大手電力に十年間、一キロワット時四十八円で買い取りを義務付け、段階的に引き下げてきた。固定価格で電気を買い取ってもらっている家庭は全体で二百四十万世帯。期限切れを迎える家庭は二三年までに累計で百六十五万世帯に達する見込みだ。今後も申し込みを受け付けるが、買い取り価格低下の影響で鈍化するのは必至だ。
 
 大手電力は期限切れ後の具体的な買い取り価格を提示していないが、一九年度の固定買い取り価格の二十四円を下回るのは確実な情勢だ。例えば、年間発電量が四千四百キロワット時の家庭が七割を売電すると、一キロワット時四十八円では年約十四万七千円の収入が見込めた。仮に買い取り価格が二十四円の半分程度に下がると収入は三万数千円に落ち込む。
 政府は三〇年度の再生エネルギーを22~24%とする目標を掲げる一方で、再生エネの買い取り費用の一部を電気料金に上乗せする国民負担の抑制も目指している。買い取り価格は引き上げない方針だ。
 
 家庭は期限終了後、余った電力を売るか使うかの選択を迫られる。余剰電力を売らず、蓄電設備や電気自動車(EV)のバッテリーにためて自家消費する方法もあるが、蓄電設備の導入には費用がかかる。
 経産省は今秋にもインターネット上で専用のページを立ち上げ、本格的に告知を始める。関係者は「制度が複雑で、どうすれば家庭に利益となるのかが分かりにくい」と指摘しており、買い取り終了後の対応を明示することが求められる

福島県 住宅の無償提供を2020年3月に終了

 福島県は県の仮設住宅や借り上げ住宅の無償提供を2020年3月で終了します。帰還困難区域の住民への提供完了を決めたのは初めてです。
 災害公営住宅9割超完成し、帰還困難区域の避難者を受け入れる体制が整ったこと背景にあるということですが、それは災害公営住宅強制的に住まわせることを前提にしたものです。
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無償提供20203月終了 県の仮設・借り上げ住宅
福島民報 2018年8月28日
 (福島)県は東京電力福島第一原発事故による帰還困難区域の住民に対する仮設住宅と借り上げ住宅の無償提供を富岡、浪江、葛尾、飯舘の四町村については二〇二〇年三月末に終了する。帰還困難区域の住民への提供完了を決めたのは初めて。富岡、浪江両町は避難指示が解除された地域も含めて全域の住民を対象にする。期限までに避難指示が解除されず、避難者が帰還できない場合などは個別に延長などの対応を検討する。
 
 二十七日に県庁で開いた新生ふくしま復興推進本部会議で決めた。県は国や対象市町村と協議し、役場再開など復興の進み具合を踏まえて判断した。災害公営住宅は計画戸数の九割超が完成し、帰還困難区域の避難者を受け入れる体制が整ったことも背景にある。
 仮設住宅、アパートなど借り上げ住宅の市町村ごとの提供完了時期と二〇一八(平成三十)年四月時点の提供世帯数は【表】の通り。二〇二〇年三月末に提供を完了する浪江、富岡両町は計三千二百五十三世帯が借り上げ住宅などに居住し、このうち約二割の六百四十一世帯が帰還困難区域から避難している。葛尾、飯舘両村は帰還困難区域から避難した計四十五世帯が無償提供を受けており、同じ時期に完了する。
 
 大熊、双葉両町では計千六百六十一世帯が無償提供を受けているが、全域での避難が続いており、提供完了時期は今後判断する。南相馬、川俣、川内、葛尾、飯舘の五市町村で既に避難指示が解除された地域では合わせて二千三百八十九世帯が無償提供を受けているが、予定通り来年三月末で終える
 
 県は年内にも帰還困難区域の住民を中心に新たな住居確保の意向調査を始め、支援策を講じる。住民が帰還困難区域に戻る意向であっても、期限までに特定復興再生拠点の新たな居住先などの工事が完了しない場合も予想される。県は帰還や転居ができない被災者に対しては個別に相談に応じ、提供期間延長などを検討する。
 県生活拠点課は「仮設住宅など一時的な住まいでの生活が長期化する中、健康や防犯などさまざまな面に課題が生じている。避難者が早期に新しい住居に移れるよう支援を強化したい」としている。

29- 会報No19 を掲示します

 28日付で「原発をなくす湯沢の会会報 NO.19」が発行されました。会員の皆様には、別途送付しましたが、そのテキスト版を掲示します。
 本号は、5月総会以降の新潟県内の情勢に触れた後、「なくそテ2018柏崎大集会」と「原発被災地フクシマツアー」の案内が主体となっています。
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原発をなくす湯沢会会報 N0.19  2018.8.28
 
 本当に暑い夏でしたが、ようやく少し落ち着いてきました。夏パテせず乗り切りましょう。
 さて、5月の総会以降6月10日には新潟県知事選挙が行われ、ご承知のように反原発を訴えた池田ちかこ候補は、湯沢町では当選した候補より97票多かったのですが、県全体では、約37,000票差で惜敗しました。当選した花角氏が選挙期間中「説原発」を掲げたことは、新潟県ではこれを主張しないと県民の支持を得られないことを示しています。当選後、米山前知事が打ち出した、原発問題での「三つの検証」を引き継いでやっていくと表明しているので、これがぶれないようしっかりと監視していくことが大事です。
 同時に行われた県議会議員の補欠選挙では、原発反対の樋口秀敏氏が全体で15,637票を得ましたが630票差でこちらも惜敗しました。樋口氏は、来年4月の統一地方選挙で再び立候補する予定で準備を進めています。定数2を3人で争うことになる予想ですが、今度こそ必勝を期して力を合わせましょう。
 
くそ原発 2018 柏崎大集会 のご案内
 
今年度事業の柱である柏崎大集会の日程が近づいてきました。今年で5回目となる集会です。今まで同様、湯沢からマイクロバスで参加しますので是非ご参加ください。
 
 ■日 時 9月16日(日) 12:45~15:30
 ■場 所 柏崎市文化会館アルフオーレ
 ■出発等 湯沢町公民館前 9:20集合 9:30出発  参加費 1,500円(子供無料)
 ■連絡先 南雲敏夫090 - 2674 - 9414
  ・詳細は同封のビラを参照ください.ビラはお誘い用に複数枚同封してあります.
 
 
■もう一つの大きな事業である「原発被災地フクシマツアー」は、総会で10月の実施が決まっています。
 詳細はまだ決まっていませんが、実施日が決まりましたので、ご案内しておきます。
 
  実施日 10月14日(日)~15日(月) 1泊2日
 
      ・福島県富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、南相馬市方面
      ・例年通りマイクロバスで行く予定  ・幹事 南雲敏夫 佐藤綾子
 
  ■2018年度の会費の納入をお願いします。
 年会費1人1,000円をまだ納入されていない会員は、5月にお届けした払込取扱票により最寄りの郵便局でお支払いいただくか、直接事務局にお届けください
 
(会報責任者 代表 高波菊男 Tel787-3268事務局 南雲敏夫Tel787-3569)~

2018年8月28日火曜日

柏崎刈羽原発の液状化対策などを調査

 東電は、柏崎刈羽原発の再稼働について、規制委員会から再稼働の「合格」をもらった後で、地盤の液状化などの惧れを今年2月になって認めました。
 共産党の藤野保史衆院議員井上哲士参院議員、武田良介参院議員らが現地を訪れ、担当者の見解を糾しました。
 現場では現在地盤改良などの工事を行っていますが、それで完全な補強が可能なのか疑問です。
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柏崎刈羽 原発の液状化対策など調査
再稼働認められない 藤野・井上・武田議員ら県議予定候補が同行
 しんぶん赤旗 2018年8月27日
 藤野保史衆院議員と井上哲士、武田良介の両参院議員は24日、新潟県の東京電力・柏崎刈羽原子力発電所を訪れ、同原発の液状化対策を中心に構内や建屋内部を視察しました。渋谷明治県議、武田勝利、遠藤玲子、平良木哲也、藤ノ木浩子の各県議予定候補、西澤博県政策委員長、地元の柏崎市議らが同行しました。
 
 東電は、規制委員会から再稼働の「合格」をもらった後の今年2月になって、「実は地盤の補強が必要だった」などと言いだしました
 藤野議員は、2007年の中越沖地震では液状化現象により建屋の周りに亀裂が発生するなど深刻な被害が生じたことを指摘した上で、「液状化が分かっていたのに、なぜフィルターベント(排気装置)設備を地下に造らずに、地上から杭(くい)を打つ方式で建設したのか」と質問。東電の担当者は、液状化の評価を見直す前の判断だったとして「今思えば、地下式にしていればよかったと思う」と回答しました。
 建屋脇のサブドレーンからくみ上げる地下水の量について、同原発が他の原発よりも多いことから、液状化が起こりやすいのではないかとの藤野議員の質問には、「地下水が多いのは、敷地が他よりも広く、井戸もより深く掘っているからだ」などと説明しました。
 井上議員は、どのタイミングで液状化の評価を変えたのかと質問し、再稼働審査では「地盤は大丈夫」と主張していた東電の姿勢を批判しました。
 
 視察後、藤野議員は「東電のやり方は後出しじゃんけんだ。前提が崩れているのだから再稼働は到底認められない」、武田県議予定候補は「液状化でフィルターベントが機能しなくなる可能性があるわけで、これは大変なことだと思った」と語りました。

28- 立地以外も再稼働事前了解権「茨城方式」の意義 東海村長に聞く

 河北新報が、東海第2原発の再稼働を巡り、3月事前了解権を全国で初めて周辺自治体へ拡大した協定締結した立地村の東海村長の山田修氏に、「茨城方式」の意義を聞きました。いろいろのことを気づかされ、教えられます。
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<原発再稼動>
立地以外も事前了解権「茨城方式」の意義 山田・東海村長に聞く
  河北新報 2018年8月27日
 山田修(やまだ・おさむ)プロフィール
  高崎経済大卒。1986年に茨城県庁入りし、2010年東海村副村長。13年村長選で初当選し、現在2期目。水戸市出身。
 
 日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働を巡り、事前了解権を全国で初めて周辺自治体へ拡大した協定が3月に締結された。立地する東海村と水戸市など周辺5市による原子力所在地域首長懇談会の座長で東海村長の山田修氏(57)に「茨城方式」の意義を聞いた。(聞き手は報道部・高橋鉄男)
 
◎周辺自治体へ拡大当然
<県は関与せず>
 -首長懇は2012年から事前了解権を周辺5市に広げるよう原電に求めた。
 「事前了解権は県と立地自治体だけにあったが、東京電力福島第1原発事故では周辺自治体も避難を強いられた。再稼働は村だけで負える責任ではない。周辺も事前了解が必要になるのは当然だ」
 
 -協定は原電との事前協議で「実質的に事前了解を得る仕組みとする」と明記した。
 「事前説明や意見交換、現地確認、合意形成を図るための協議会設置を盛り込んだ。自治体は安全対策を要求でき、原電も応じる。これらによって5市も事前了解権を得たということだ。原電も『納得してもらうまで議論する』と言っている」
 
 -事前了解の相手が増えれば再稼働の壁は高まる。他電力が権限拡大を拒む中、なぜ実現できたのか。
 「立地の東海村が他の周辺自治体と足並みをそろえ、権限拡大を要求してきた点が他地域と違う。立地が言えば、事業者も無視できない。よその立地自治体は声を上げていない」
 「県が協議に関与しなかったのも大きい。他地域は県が仲介役に入り、『県が周辺自治体の意見も踏まえる』と言っている。住民の命を守る基礎自治体にこそ権限が必要だ。事業者も周辺自治体と協定を結ばないと前に進めない。粘り強く譲歩を引き出した」
 
<多数決しない>
 -首長懇は1999年のJCO東海事業所臨界事故に対応した村上達也前村長が設立を呼び掛けた。
 「福島の事故で不信感が決定的になったと思う。私は事故当時副村長。村長選では与党村議の支援も受けたが、福島の事故をなかったことにはできなかった」
 
 -6市村の合意形成は協議会で図るとするが、意見が食い違った場合の対応などに曖昧さも残る。
 「調整は今後だが、多数決にはしない。村では実効性ある避難計画と住民の意見も判断材料にする」
 
 -他地域への助言は。
 「住民の生命財産を守る立場として、事業者から常に情報をもらい、懸念を伝えられる関係が何より大切だ。協定で権利を得た以上、自治体も人や予算を付け、知識と覚悟を持って原発と向き合わなければ相手にされないだろう」
 
[東海第2原発]
日本原子力発電が1978年に茨城県東海村で営業運転開始。出力110万キロワットで、電気は東京電力や東北電力に供給してきた。今年11月末に運転期限の40年となるため、再稼働に向けた原発の新規制基準と、20年の運転延長の審査を進める。安全対策工事の完了時期は2021年3月の予定。30キロ圏には14市町村があり、全国最多の96万人が住む。