2018年4月30日月曜日

日本の原発産業は 輸出で技術・雇用の維持狙う

 国内の原子炉メーカーは日立製作所と東芝、三菱重工業の3社です
 福島第1原発事故以降、多くの国内原発再稼働のメドがたたず、新増設も見込めません。原子炉メーカーが海外で原発受注に乗り出すのは、原発技術と雇用を維持したいという狙いが背景にあります
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きょうのことば 
日本の原発産業 輸出で技術・雇用維持狙う
日本経済新聞 2018年4月30日
▽…日本には42基の原子力発電所がある。国内の原子炉メーカーは日立製作所と東芝、三菱重工業の3社だ。関連ビジネスとして核燃料事業や建設、保守点検、廃炉事業などを手がける企業が多数ある。福島第1原発事故以降、国内原発のほとんどは再稼働のメドがたたず、新増設も見込めない。炉メーカーが海外で原発受注に乗り出すのは、原発技術と雇用を維持したいという狙いが背景にある。
 
▽…原子力産業の裾野は広い。日本原子力産業協会の会員に登録されているだけで422社・自治体にのぼる。例えば日立の英原発プロジェクトに参画する日本原子力発電は原発建設、運転操作事業を手がける。IHIは原子炉の格納容器や圧力容器など原発の中核機器を製造。三菱電機は原子炉を冷却するポンプ用モーターなどを生産し、富士電機は核燃料設備などの製造をしている。国内の再稼働が進まないなか、こうした関連企業も苦境が続く。
 
▽…国内では耐用年数を超えた原発の廃炉作業が今後増えていく。再稼働に向けた作業や保守点検もあり、技術者不足の状況が続いているという。ドイツが脱原発を宣言するなど先進国では市場が冷え込むが、中国やインド、中東では新設計画が相次ぐ。こうした新興国の需要が炉メーカーの原発輸出の後押しになっている。

水戸で脱原発首長会議 「事前了解権」拡大を 

 28日、「脱原発をめざす首長会議」が開かれ、全電力会社に対し東海第二原発と同様に周辺自治体への「事前了解権」を認める安全協定の速やかな締結を求める決議などを採択しました。近く各社に提出するということです
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脱原発首長会議 「事前了解権」拡大を 
水戸で総会 全電力会社に要求へ
茨城新聞 2018年4月29日
 脱原発を求める全国の市区町村長やその経験者ら100人でつくる「脱原発をめざす首長会議」は28日、水戸市千波町の県民文化センターで総会を開いた。日本原子力発電東海第2原発の再稼働や運転延長を巡り、立地自治体に加え周辺5市に「実質的な事前了解権」を認める新協定が結ばれたことを踏まえ、全電力会社に対し同様に周辺自治体への「事前了解権」を認める安全協定の速やかな締結を求める決議などを採択、近く各社に提出する。
 
 初の水戸市開催となった総会には14人のメンバーが出席。冒頭、世話人の一人で元東海村長の村上達也さんが「東海第2の30キロ圏内は96万人、20キロ圏内だけでも80万人いる。福島では20キロ圏の8万人が今も悲惨な状況にある中で東海を動かそうとしている。再稼働を阻止しよう」と呼び掛けた。
 
 総会では、
事前了解権拡大を認める安全協定締結を全原発事業者に求める決議
事前了解権を再稼働などの要件とする法整備を求める決議
新エネルギー基本計画で脱原発への工程を示すとともに電源構成で再生可能エネルギーを44%以上とするよう求める決議
の3本が採択された。「原発ゼロ基本法案」の速やかな審議入りと成立を求める緊急声明も出した。
 
 総会後、村上さんは「日本は地震大国であり、津波の危険性、火山列島で火山灰の影響もあり原発にとって危険。本来原発を持ってはならない国土」と語った。静岡県の元湖西市長、三上元さんは「原発30キロ圏に約100万人が住むこの地でぜひ開催したかった。ここで(原発が)動いたら他でも動いてしまうのではとの危機感を感じている」と話した。(三次豪)

30- 福島原発2号機の原子炉格納容器の内部の画像公開

 東電は26日、福島原発2号機の原子炉格納容器の内部について、詳細解析した画像や動画を公開しました。
 格納容器の上部にある原子炉圧力容器の底が複数箇所で損傷し、燃料が溶け落ちた可能性があるとしています
 
 下記の太字部分をクリックすると原記事にジャンプします。
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福島第1原発2号機  溶融燃料、複数から落下か
毎日新聞 2018年4月26日
 東京電力は26日、福島第1原発2号機の原子炉格納容器の内部について、詳細解析した画像や動画を公開した。底部2カ所で周囲より高く降り積もった溶融燃料(燃料デブリ)とみられる堆積(たいせき)物が確認され、格納容器の上部にある原子炉圧力容器の底が複数箇所で損傷し、燃料が溶け落ちた可能性があるとしている。 
 
 東電は1月、格納容器内にカメラ付きのパイプを入れ、広範囲で燃料デブリとみられる堆積物を確認。今回は当時の画像を鮮明化した。さらに詳細を把握するため、ロボットアームで調査する方針。 【岡田英、岩間理紀】 
 
 【画像説明】福島第1原発2号機の原子炉格納容器底部を詳細解析した画像。周囲よりも高く降り積もった堆積物が2カ所で見つかった=国際廃炉研究開発機構提供
 

2018年4月29日日曜日

佐賀県庁前の「原発反対」金曜抗議行動が300回に 

 玄海原発に反対する市民20127月から毎週金曜夕方に佐賀県庁前に集まり、再稼働反対を訴える活動を続けています。
 300回目を迎えた27にも約20人が集まりました
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「原発反対」300回に 佐賀県庁前の金曜抗議行動
佐賀新聞 2018年4月28日
 九州電力玄海原発(佐賀県東松浦郡玄海町)に反対する市民が毎週金曜夕方に佐賀県庁前に集まり、再稼働反対を訴える活動が27日、300回目を迎えた。玄海3号機が再稼働し、4号機も5月に原子炉起動を控える中、約20人が「原発反対」「命が大事」と声を合わせた。
 
 活動は福島第1原発事故の翌年、2012年7月に始めた。呼び掛け人の1人が亡くなり、4人だけの参加だったときもあったが地道に続けてきた。
 
 主催する「さよなら原発!佐賀連絡会」事務局の杉野ちせ子さん(66)は「県への申し入れも重ねたが、3号機が再稼働したときは『届かないんだなぁ』と感じた」と漏らした。それでも「すぐに蒸気漏れが起こり、改めて恐ろしさを感じた。大事故が起こる前に止める。そういう気持ちで頑張り続けたい」と話した。

初めて2原発同時事故を想定 国が防災訓練

 ことしの国の原発総合防災訓練は、福井県の大飯原発と高浜原発で、事故が同時に起きたことを想定して行われることになりました。両原発は直線で13キロの距離にあり、2つの原発で同時に事故が起きたことを想定して国が訓練を行うのは初めてです。
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2原発で同時に事故が起きたら… 国の防災訓練で初想定へ
NHK NEWS WEB 2018年4月27日
原子力発電所の事故を想定した、ことしの国の総合防災訓練は、福井県の大飯原子力発電所と高浜原子力発電所で、事故が同時に起きたことを想定して行われることになりました。2つの原発で同時に事故が起きたことを想定して国が訓練を行うのは初めてです。
これは、中川原子力防災担当大臣が、27日の閣議後の記者会見で明らかにしました。
 
それによりますと、訓練は、福井県の大飯原発と高浜原発で、同時に事故が起きたことを想定して、ことしの夏をめどに行われ、国や自治体、それに住民なども参加して避難の手順などを確認します。
大飯原発と高浜原発は、直線距離で13キロしか離れておらず、巨大な地震や津波で同時に事故が起きた際の住民の避難などが課題となっていて、2つの原発で同時に事故が起きたことを想定して国が訓練を行うのは初めてです。
 
中川原子力防災担当大臣は「緊急時の対応の実効性をより高いものにして、大飯・高浜地域の原子力防災の体制を強化したい」としています。訓練の日程や内容については、今後、関係機関が協議し、決めることにしています。

29- 6月総会で脱原発提案へ、四国電の個人株主ら

 四国電力の個人株主らでつくる「未来を考える脱原発四電株主会」は、記者会見で、627四国電の株主総会で原発からの撤退などを求める4議案提案すると発表しました同様の提案はこれで12回目になります。
 同会は全国の株主127人から約132000株を集めました(発議権は3万株)。
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6月総会で脱原発提案へ、四国電の個人株主ら
産経新聞 2018年4月28日
 四国電力(高松市)の個人株主らでつくる「未来を考える脱原発四電株主会」(事務局・徳島市)は27日、高松市で記者会見し、原発からの撤退や佐伯勇人社長らの解任を求める4議案を、6月27日に開催予定の四国電の株主総会で提案すると発表した。
 
 四国電は既に伊方原発1、2号機(愛媛県伊方町)の廃炉を決定。3号機は昨年12月の広島高裁による運転差し止め仮処分決定を受け、停止中だ。
 
 四国電の発行済み株式総数は約2億2300万株で、議案提案には3万株が必要。同会は約13万1800株を全国の株主127人から集めたという。過去にも同様の株主提案を12回しているが、いずれも否決されている。

2018年4月28日土曜日

原子力開発 民間主導は可能なのか と関係者困惑

 高速増殖炉の開発は事実上困難であることや、核燃料サイクルはもともと採算が取れないものであることが周知されるようになりました。
 高速増殖炉もんじゅは先日ようやく廃炉にすることが決まりましたが、1995年に液体ナトリウム漏れの事故を起こしてから20数年間殆ど動かなかったにもかかわらず、1日当たり5500万円もの維持費を要していたということです。常識をはるかに超えた信じがたい実態がそこにあったのでした。
 
 国の原子力委員会が25日、「原子力の研究開発電力会社やメーカーなどが主導し、国が支援する仕組みを導入すべきだ」との見解を示したことに対して、原子力研究開発機関や立地自治体からはそんなことが可能なのか」などの困惑の声が上がっているということです。
 要するに、原子力の研究開発については、国から潤沢な資金の提供が保障されないことには民間はとても手が出せないという、当初から採算性を度外視したものであるという実態が明らかになりました。
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新型炉の開発、国主導見直しを 原子力委が見解
佐賀新聞 2018年4月24日
 国の原子力委員会は24日、高速増殖炉などの新型原子炉の研究開発について、国主導で進める現在の仕組みを見直し、今後は電力会社やメーカーなど民間が主導して進めることを検討するよう求める見解をまとめた。
 
 政府は、2016年の高速増殖原型炉もんじゅの廃炉決定を受け、今後の高速炉開発の目標などを盛り込んだ工程表の年内策定を目指して議論を進めており、25日に開かれる会合で原子力委が経済産業省などに提案する。
 
 見解によると、電力自由化が進んだ現在、原子力の発電方式は「市場の需要で決められるもの」と指摘。電力会社が「多様な選択肢と戦略的な柔軟性を維持すべき」と強調した。
 
 
 原子力研究開発  
原子力委が見解 「民間主導、可能なのか」県内関係者困惑 /茨城
毎日新聞 2018年4月26日
 原子力の研究開発を巡り、国の原子力委員会が25日、「電力会社やメーカーなどが主導し、国が支援する仕組みを導入すべきだ」との見解を示したことに対して、県内にある研究開発機関や立地自治体からは「官民一体で取り組んできたのに」「そんなことが可能なのか」などと、反発や戸惑いの声が上がった。【吉田卓矢】 
 
 県原子力安全対策課の担当者は「研究規模や安全性などを考えると民間主導になじむのか」と首をかしげたうえで、「『主導』の範囲が分からない。国に確認し、県として何らかの要望や対応を考えたい」と話した。 
 
 原子力の研究開発を巡っては、大洗町や東海村など研究開発施設の立地する全国4町村が24日、国や立地自治体同士の連携を強化するための協議会を設立したばかりだった。 
 大洗町の担当者は「予算が限られる中、民間で研究開発を進めるのは一つの考えだが、全てを民間に任せ、国が支援するというのは違う」と批判。さらに「原子力政策は国がビジョンを示し、責任を持って取り組む国策であるべきだ。これでは安全対策での国の責任が薄れる」と懸念をあらわにした。 
 東海村の担当者も「国が中長期ビジョンを示し、その中で民間を活用するのなら分かるが、負担なども含めて民間主導でどこまでできるのか」と疑問を呈した。 
 
 また、今回の見解は、高速炉などの新型炉の研究開発を担う日本原子力研究開発機構に対して、「産業界との連携が弱く、知識基盤の構築や共有化が行われていない。ニーズ対応型の研究開発を行うことが求められている」などと指摘した。 
 
 これに対して、原子力機構は加速器施設「J-PARC」(東海村)などを例に挙げ、「生命科学、物質・材料科学など幅広い分野の研究開発に貢献し、産学官の研究者などによる施設の共用を促進している」と主張。さらに「これまでも社会ニーズに対応した研究開発をしている。高速炉開発についても、官民一体で取り組み、民間の技術力維持・向上や専門家育成に努めてきた」と反論した。
 
 
新型炉の開発、国主導見直しを 原子力委が見解
佐賀新聞 2018年4月24日
 国の原子力委員会は24日、高速増殖炉などの新型原子炉の研究開発について、国主導で進める現在の仕組みを見直し、今後は電力会社やメーカーなど民間が主導して進めることを検討するよう求める見解をまとめた。
 
 政府は、2016年の高速増殖原型炉もんじゅの廃炉決定を受け、今後の高速炉開発の目標などを盛り込んだ工程表の年内策定を目指して議論を進めており、25日に開かれる会合で原子力委が経済産業省などに提案する。
 見解によると、電力自由化が進んだ現在、原子力の発電方式は「市場の需要で決められるもの」と指摘。電力会社が「多様な選択肢と戦略的な柔軟性を維持すべき」と強調した。

米山新潟県知事の辞職 臨時県議会で決定

 27日、臨時の新潟県議会が開かれ、議員全員の同意で米山知事の辞職が決まりました。
 このあと米山知事議場で最後のあいさつを行い、県民の皆様に失望と政治への不信を与え県政を混乱させてしまい、心よりおわび申し上げます」などと、改めて謝罪しました。
 このあと米山知事は、300人の職員らに見送られて、時折、立ち止まって涙ながらにあいさつをしながら県庁をあとにしました。
 福島事故の検証を行うことが原発再稼働の大前提になる、と筋を通そうとしていた米山知事が、思いがけないことで退陣に至ったのは残念なことです。
 新潟県知事選挙は、来月24日に告示され610日に投票が行われます。
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新潟県の米山知事の辞職 臨時県議会で決定
NHK NEWS WEB 2018年4月27日
新潟県の米山知事がみずからの女性問題を理由に辞職願を提出したことを受けて、27日、臨時の県議会が開かれ、議員全員の同意で米山知事の辞職が決まりました。
米山知事の辞職願の提出を受けて開かれた新潟県議会の臨時議会では、辞職について同意するかどうか採決が行われました。
そして、議員全員の同意で米山知事の辞職が決まりました。
 
このあと9日ぶりに登庁した米山知事が議場で最後のあいさつを行い、「県民の皆様に失望と政治への不信の目を抱かせ県政を混乱させてしまい、心よりおわび申し上げます」などと述べ、改めて謝罪しました。
そのうえで原発問題や人口減少問題など県政が抱える課題への思いを述べ、最後に「新潟県民の皆さんの力と、新潟の未来を信じています」と述べて、議場をあとにしました。
 
米山知事の辞職に伴う新潟県知事選挙は、来月24日に告示され、6月10日に投票が行われます。
 
米山知事「期待にかなうことできず申し訳ない」
米山知事は議場であいさつしたあと、報道関係者の取材に応じ、任期途中の辞職について「残念です。申し訳ありませんでした」と述べて、改めて陳謝しました。
米山知事は議場で一部の議員から拍手が起きたことなどに触れて、「期待にかなうことができず、申し訳なかった。本来の拍手は仕事を成し遂げて得られるべきものであり残念だ」と述べ、無念さをにじませました。
一方、今後の政治活動については「現段階ではすべてについて何も考えていません」と述べ、明言しませんでした。
 
このあと米山知事は、およそ300人の職員らに見送られて、時折、立ち止まって涙ながらにあいさつをしながら県庁をあとにしました。

28- エネ計画 議論尽くしたか 経産省審議会の骨子案判明

 政府が改定する「エネルギー基本計画」については、これまでも概要を伝える記事を紹介して来ましたが、東京新聞が27日の記事でかなり詳しく解説していますので、改めて紹介します。
 
 特に「原子力より再生エネのコストのほうが安いというのは間違いだとか、「再生エネルギーは響きがいいが、安定していない」などの誤った言説に対しては、丁寧に反論していますので記事に目を通していただきたいと思います。
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エネ計画 議論尽くしたか 経産省審議会の骨子案判明
東京新聞 2018年4月27日
 政府が改定するエネルギー基本計画の骨子案が二十六日、分かった。原発は、二〇一四年に策定した前回計画と変わらず「重要な基幹電源」と位置付けた上で、新たに安全性向上などの「原子力政策の再構築」を明記。原発維持の姿勢を鮮明にした。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは主力電源化を進めるとした。
 三〇年度の総発電量に占める原発比率を20~22%、再生エネを22~24%とする数値目標は変えなかった。
 原発は「依存度を可能な限り低減する」とのこれまでの方針を維持しながらも、人材や産業基盤の強化を打ち出した。焦点となっている原発の新増設については触れなかった。
 再生エネは大量導入により主力電源化が期待されるとした。太陽光はさらなる発電コストの削減を促し、洋上風力の拡大に向けて、海域利用のルール整備を進めるとした。
 
 経済産業省が二十七日に開く審議会で骨子案を示す。五月にも計画を取りまとめ、今夏に閣議決定を目指す。
「エネルギー基本計画」策定の前提となる経済産業省の審議会の議論は原発推進派の委員が大勢を占め、再生可能エネルギーへの批判が目立つ。世界が再生エネに大きくかじを切る中、原発にこだわり続ける日本。審議会の外にいる専門家に聞くと、異なるエネルギーの未来図が浮かび上がった。 (伊藤弘喜)
 
◆再生エネ高コスト前提→廃炉費増計算せず
 「原子力より再生エネのコストのほうが安いと言われるのは明らかに間違っている」 (二月二十日、地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾氏)
 「原発は安い」の根拠は政府が二〇一五年に行った試算。一四年に原発を新設した場合の発電コストを一キロワット時当たり「一〇・一円以上」と推計した。火力発電の石炭(一二・三円)も下回る最も安い電源と位置付けた。その後、廃炉や除染費用など原発事故費用は増大した。「安い」の論拠は崩れたが、政府は試算を見直さず、エネルギー基本計画をつくろうとしている
 これに対し、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は四月に独自の試算を公表。建設費や事故リスク対応費が政府試算より二~三倍増えた結果「一七・六円以上」に膨らんだとした。
 
 太陽光発電は二千キロワット以上の大規模型の場合、再生エネの普及を目指す「固定価格買い取り制度」に基づく買い取り価格が一七年度は一七・二円。ここから利益を除いた分が発電コストになるためさらに安くなる。太陽光パネルの価格下落を受けて、世界平均は一〇・五円とのデータもある。
 
 審議会では、消費者が大半を負担する買い取り費用が一七年度に約二兆七千億円に上ることを挙げ、「再生エネは高い」といった意見も出た。だが、これらの負担は再生エネ発電所の建設や運営に使われ、二酸化炭素(CO2)排出を削減する「投資」でもある。関西学院大の朴勝俊教授(環境経済学)は「再生エネ投資は景気を後押しする。負担ばかり強調するのは一面的だ」と指摘する。
 
◆再生エネは不安定→IT駆使し出力変動予測
 
 「再生エネは響きがいいが、安定していない」(三月二十六日、日本電鍍(でんと)工業の伊藤麻美社長)
 メッキ加工会社を経営する伊藤氏は「製造業は精密なものづくりを要求されている。万が一、停電が起きると品物すべてがだめになる」とも発言。他の経済界関係者も「再生エネの導入が進むと、電気が不安定になる」との懸念を示した。
 しかし、電機大手シーメンスなどが生産拠点を置くドイツは再生エネの発電比率が日本の倍の三割に上るが、停電時間は特段増えていない。国内総生産(GDP)も伸びている。
 
 スペイン最大手の電力会社で欧州最大の風力発電会社、イベルドローラの国際企業担当、カルロス・ガスコ氏は「再生エネは出力が変動するものだ。変動にきちんと備えれば、使いこなし、安定的に電力を供給できる」と話す。同社はITを駆使し、翌日の需要を精密に予測。電気が足りなくなるとみれば、揚水発電所が発電できるよう水を蓄えておくなど準備する。問われるべきは再生エネの不安定さではなく、使いこなす電力会社の力量だ。
 
◆独は隣国から買電→脱原発後も「電力輸出国」 
 「ドイツは原発をなくすと言いながら、隣国から原発の電力を買わないと産業が成り立たない」(昨年十一月十三日、コマツの坂根正弘相談役)
 確かにドイツは地続きである隣国フランスとの間で電力を融通し合っているが、これは欧州では通常行われていること。それでも、ドイツは二〇〇三年以来、電力の輸出が輸入より多い「純輸出国」だ。
 ドイツは二酸化炭素(CO2)を大幅に削減する「脱炭素」と脱原発の両立を目指す路線。一一年に、当時十七基あった原発すべての運転を二二年までに段階的に停止する方針を決めた。稼働中の原発は現在、七基まで減った。一方で、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力を原発のようには減らせていない。
 ドイツの温室効果ガス排出量は一五年が九億七百万トンで、一九九〇年比で27%減を実現。だが、一六年は九億九百万トンと微増、一七年は九億五百万トン(速報値)と微減するなど横ばいとなっている。
 「ドイツは脱原発と言ったが、壁にぶつかっている」(四月十日、坂根氏)との指摘も出た。だが、ドイツは再生エネ比率を一六年の29・2%から三〇年には50%とする目標を掲げている。温暖化問題が専門の東北大の明日香壽川(あすかじゅせん)教授は「ドイツは、石炭火力を閉鎖するための新たな計画を策定中。行き詰まったというのは時期尚早」と見ている

2018年4月27日金曜日

政府、原発政策を「再構築」 太陽光と風力が主力

 政府が改定するエネルギー基本計画の骨子案で、原発国民に根強い不信感があるとして、安全性向上など信頼回復に向けた原子力政策の再構築を提言したということです。
 しかし安全な原発は少なくとも新規制法の範疇ではあり得ないことです。
 
 温室ガス削減の切り札として原発を考えるというのは、致命的なリスクを無視する一方でメリットのみを強調するに等しいものです。そもそも原発が炭酸ガスを出さないのは、発電の過程に限定されるということは電事連が認めていることです。
 地球の温暖化に関して明らかなことは、原発は熱効率の低さから、火力発電に比べて大幅に(最大で2倍近く)海水温度を上昇させることです。。
 
 温室ガスの削減は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーへの依存度を高めることではじめて達成出来るものです。
 
 東京新聞の記事と併せて、参考までに電気新聞の記事も紹介します。
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政府、原発政策を「再構築」 太陽光と風力が主力
 東京新聞 2018年4月26日
 政府が改定するエネルギー基本計画の骨子案が26日分かった。原発は国民に根強い不信感があるとして、安全性向上など信頼回復に向けた原子力政策の再構築を提言した。太陽光や風力といった再生可能エネルギーは主力電源化を進めると明記。再生エネシフトの世界的な動きを背景に推進する姿勢を鮮明にした。
 
 経済産業省が27日に開く有識者会議で骨子案を示し、今夏に計画の閣議決定を目指す。
 日本は2050年に温室効果ガスを8割削減するとの国際公約を示している。これまでの基本計画は30年に向けた指針だったが、50年の長期戦略を反映させた。(共同)
 
 
米ニュージャージー州、原子力の環境価値を認め経済支援へ
州議会が法案可決。成立すればニューヨーク州、イリノイ州に続き3州目
電気新聞 2018年4月26日 
 米国ニュージャージー州議会は、州の発電量の約4割を占める原子力発電を経済的に支援し、再生可能エネルギーの発電量比率を2030年に5割に引き上げる法案群を賛成多数で12日(日本時間13日)可決した。電源の「脱炭素化」が目的。卸電力取引市場の価格下落で苦境に陥っている原子力の環境価値を認め、市場の枠外で対価を与える制度の導入を目指している。同様の制度はニューヨーク州とイリノイ州で導入済み。ニュージャージー州知事が法案に署名して成立すれば、3州目となる。
 
  法案群は原子力と再生可能エネを温室効果ガス大幅削減への両軸に位置付けるもの。同時に、気象で変動する風力発電や太陽光発電の出力安定化に向け、30年までに200万キロワットの蓄電池導入を目指す。
 
  シェールガス革命による天然ガス価格の下落や、可変費が極めて安い再生可能エネの導入拡大で、米国の既設原子力発電所は卸電力市場でのコスト回収が難しくなり、運転期間を満了する前に閉鎖を決めるケースが相次いでいる。ニュージャージー州の大手エネルギー会社PSEGも、2年以内に支援が得られなければ州内の発電所2基の閉鎖を決断する見通しだった。
 
  同州議会が可決した法案には、原子力が持つ環境価値を金銭化する「ゼロエミッション証書(ZEC)」の導入が盛り込まれた。証書の費用は電気料金で回収する。同州は対価が年間3億ドル(約320億円)になり、顧客に同41ドル(約4300円)程度の電気料金が付加されるとの見通しを示している。
 
  ZECの導入判断には、州の原子力発電量比率の高さが影響している。ニューヨークは約3割、イリノイは約5割に達する。卸電力市場の枠外で支援する州の動きは、あくまでも市場改革で課題の解決を狙う一部の地域送電機関(RTO)の動きと対照的だ。イリノイやニュージャージーなどを管轄するRTOのPJMがそれに該当する。
 
  PJMは、現在の卸電力市場の価格決定手法に不備があり、結果的にベースロード電源のコストが市場価格に適切に反映されていないとして、市場の枠外で同電源に与えている補填金を減らす代わりに、コストを的確に反映するための手法改革の議論を進めている。

東海第二「再稼働あり得ない」 高萩市長・北茨城市長 反対姿勢鮮明に

 人口の97%が東海第二原発の30キロ圏内に住んでいる高萩市と近隣の北茨城市が25日、重大事故時に高萩市の住民5200人を受け入れる協定を結びました。
 北茨城市役所で協定を締結した後、大部市長は「市民の安全安心の担保ができた」と喜ぶとともに「市民の安全を脅かしてはいけない」と再稼働に反対を表明しました。
 豊田・北茨城市長20年以上過ぎた原発の再稼働は危険極まりない。明確に反対」と、ともに再稼働への反対を明言しました。
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東海第二「再稼働あり得ない」 高萩市長 反対姿勢鮮明に
東京新聞 2018年4月26日
 東海村の日本原子力発電東海第二原発を巡り、原発から三十キロ圏に入る高萩市の大部勝規市長は二十五日、「再稼働はあり得ない」と述べ、反対する姿勢を鮮明にした。この日、放射能が漏れる深刻な事故に備え、一部市民の避難先になる北茨城市と協定を結んだ。受け入れる北茨城市の豊田稔市長も、反対する姿勢をあらためて示した。(鈴木学)
 
 北茨城市役所で協定を締結した後、大部市長は「市民の安全を脅かしてはいけない」、豊田市長は「二十年以上過ぎた原発の再稼働は危険極まりない。明確に反対」と、ともに再稼働への反対を明言した。
 
 東海第二は再稼働しなくても、核燃料が保管されており、事故の危険性があることから、三十キロ圏自治体には事故に備えた住民の避難計画が必要になる。
 高萩市によると、市の人口の96・5%に当たる約二万八千六百人が三十キロ圏に暮らしている。事故が起きた場合には、二万三千百人余が福島県いわき市へ、五千二百人余が北茨城市へ、二百人余が高萩市の三十キロ圏外の地域へ避難する計画案になっている。いわき市とは既に昨年十二月に協定を結んでいる。
 
 今回の協定で、北茨城市は学校や市民体育館など五カ所を避難中継所や避難所として提供。避難の期間は原則一カ月以内とするなどと取り決めている。
 大部市長は「市民の安全安心の担保ができた」と喜び、豊田市長は「高萩市民が安心できるよう、十二分に受け入れ態勢を整えたい」と語った。
 ただ、北茨城市、いわき市のいずれにもマイカーや、手配されたバスを使っての避難になり、利用する国道6号などの渋滞や、避難先が被災した場合の対応が決まっていないことなど課題は残す。