2013年10月22日火曜日

東電 米穀販売業者への賠償金を打ち切る

 東電は7月になってから、取手市の米穀販売業者に対して、米の販売量激減に対する賠償金の支払いを3月で停止すると、事後通告しました。

 原発の事故が起きるまでは、全国約7500世帯の顧客に対して年間2000万円超の売り上げがありましたが、現在は月に10万円程度の収入に落ち込んでいます。
東電はそれに対して、売り上げ減少の原因「自身の経営判断による事業縮小によるもので、風評被害ではない」として、支払いを拒否しました事故発生後、年が経過し、風評被害も徐々に緩和している」と述べたということです。

政府は米も1キロあたり100ベクレル以下であれば安全であるとして、それ以上の情報は何も出していません。そんななかではどうしても国民は、100ベクレル以下ではあったとしても、かなり高いレベルのものが含まれているかも知れない産地の米を買おうとはしません。東電の主張は現実から遊離した身勝手なものです。
その上東電は、公には各事業者に了解を得て打ち切りを通告していると言っていますがこの事例では通知なしに一方的に打ち切られました。

 東電は自分が生き延びるために、いまは銀行への借金返済と利払いを最優先させています。そのためにはこうした弱者への支払いなどは、口実さえ得られれば真っ先に停止してしまいます。そういうことにこそ監視の目を光らせなくてはならないメディアも、東京新聞などを除き、それを見て見ぬふりをしています。
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東電原発風評 賠償金打ち切り
 取手の業者 売り上げ回復せず「顧客 元に戻して」
東京新聞 2013年10月21日
 東京電力福島第一原発事故による風評被害の賠償金打ち切り問題で、事故による風評被害で売り上げが大幅に減ったと訴える茨城県取手市の米穀販売業者も対象となった。東電側は、業者が自主的に事業を縮小したことが減少の原因とするが、業者にしてみれば事故がなければ、自ら事業を縮めることなどありえなかった。「被害者を切り捨てるのか」。怒りは募る。 (林容史)

 この業者は菅谷栄(すがやさかえ)さん(53)。菅谷さんは事故前、県内や新潟県産のコシヒカリを農家から仕入れ、宅配で販売していた。東京都内など全国に約七千五百世帯の顧客を持ち、年間一億二千万円超の売り上げがあった。
 しかし、二〇一一年の事故後は売り上げが激減。何とか新規客を開拓しようと、同年秋には都内で新聞折り込み広告を入れたが、購入申し込みはわずか十世帯だった。
 その後も回復は見られず、菅谷さんはやむなく、仕入れを大幅に減らすなど事業を縮小。現在は、知人の米を売る程度で、収入は月十万円ほどだ。
 菅谷さんは東電に売り上げ減少分の賠償を求め、東電は支払いに応じていたが、ことし七月、同年三月分から打ち切ることを通告してきたという。

 東電が菅谷さんに送付した文書は、売り上げ減少の原因について「自身の経営判断による自主的な事業縮小によるもので、風評被害ではない」として、支払いを拒否している。
 文書は「事故発生後、二年が経過し、風評被害も徐々に緩和している」とも記している。
 一方で、東電はこれまで、打ち切り対象の条件として「三月以降に業績が回復した事業主」と説明しているが、菅谷さんの売り上げは回復していない。
 「事故がなければ事業を縮小させることもなかった。食料品の風評被害は元には戻らない。顧客を原状回復させるだけの費用を出してほしい」と訴える菅谷さんは「東電を許そうという人は一人もいない」と憤る。

  <東京電力による賠償金打ち切り>
    東京電力福島第一原発事故による風評被害で売り上げが著しく落ちた農家や食品加工業者、旅館・ホテル業者などの一部に対し、東電が売り上げ減少分の賠償金支払いを今年3月ごろから打ち切った問題で、少なくとも茨城、栃木両県で確認されている。東電は事業者に了解を得て打ち切りを通告しているとするが、一方的に通告されたり通知なしに打ち切られたとする事業者も出ている。