2017年6月30日金曜日

東電元会長ら30日初公判 原発事故強制起訴

 検察審査会の再議決により強制起訴された勝俣恒久元会長ら東電旧経営陣3人の初公判が30日、東京地裁で開かれます。
 3人は大津波を予測できたのに原発の運転を継続させたとして起訴されていて、東電子会社が2008年に試算した最大15・7mの津波が襲うとの津波予測データに基づいて、3人が大津波を予見できたかが最大の争点になります。
 指定弁護士は公判で、試算を受けた社内会議の詳細を明らかにし、3人は十分に予見でき、浸水に備えて非常用電源などを配備しておけば事故を防げたと主張すると見られます。
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東電元会長ら30日初公判 原発事故強制起訴
福島民報 2017年6月28日
 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久元会長(77)ら東電旧経営陣3人の初公判は30日午前10時から、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれる。原発事故を引き起こした大津波を予見できたかが最大の争点だが3人は「想定外の大津波だった」と無罪を主張するとみられ、立証のハードルは高い。原発事故の刑事責任を問う初の裁判は、検察官役指定弁護士との激しい攻防が予想される。
 検察審査会の議決に基づいて強制起訴されたのは勝俣元会長のほか社内で原発部門を統括していた武黒一郎元副社長(71)と武藤栄元副社長(67)。
 指定弁護士が有罪を立証するには、巨大津波を具体的に予測し、事故の回避が可能だったのに対策を怠った-という点を明らかにしなければならない。

 大津波の予測で鍵を握るのは、東電子会社が2008(平成20)年に試算した津波予測データだ。マグニチュード8クラスの地震が本県沖で起きたと想定すると、原発敷地南側に最大15・7メートルの津波が襲うとの結果が出た。この試算は武藤、武黒両元副社長にも伝えられ、検察審査会は、勝俣元会長についても「報告を受けたと十分に推認される」と指摘した。
 東京地検は「試算を踏まえても大津波の危険性は認識できなかった」と不起訴としたが、指定弁護士は公判で、試算を受けた社内会議の詳細を明らかにし、3人は十分に予見でき、浸水に備えて非常用電源などを配備しておけば事故を防げた-と主張するとみられる。

 起訴状などによると、勝俣元会長ら3人は大津波を予測できたのに原発の運転を継続させた。2011年3月11日の東日本大震災発生後、原子炉建屋の水素爆発で自衛官ら13人にけがを負わせたほか、大熊町の双葉病院の入院患者に長時間の避難を余儀なくさせるなどして44人を死亡させたとしている。

東電説明に「凍土壁の効果はウソ」規制委が激怒

 福島原発の「凍土遮水壁」の効果を説明する東電に更田規制委員長代理が激怒しました
 1~3号機原子炉建屋に流れ込み汚染水とな地下水の流入量は、主に周辺に増設した井戸ポンプで汲み上げて減らしているのが実態なのに、流入量が400トンから100トンに減じたのは凍土壁による効果だと東電が主張したからです
 ここにも国民をだまそうとする東電の体質が表れています。
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東電説明に「ウソだもん、これ」規制委激怒
日テレ 2017年6月28日
 巨額の税金を投じた福島第一原発の「凍土遮水壁」。その効果を説明する東京電力に原子力規制委員が激怒している。

 原子力規制委・更田委員長代理「(東京電力は)人を欺こうとしているとしか思えない。ウソだもん、これ(遮水壁の効果図)。陸側遮水壁、何も関係ないじゃん」「そんな説明が後から後から出てくるような図を描く限り、東京電力はいつまでたっても信用されませんよ」
  メルトダウンした原子炉建屋に流れ込み汚染水となってしまう地下水は、主に周辺に増設した井戸でくみ上げて減らしているのが実態。
 しかし東電は28日、あたかも主に凍土遮水壁の効果で流入が減ったかのような説明をし、原子力規制委員会の更田委員長代理が激しく怒った。

 東電は近く、遮水壁の凍結作業を完了する予定だが、350億円の国費を投入し期待した効果があったのか、検証する必要がある。

30- 南相馬市ADR申し立てへ 10億円超、原発事故損害

 福島県南相馬市は、福島第1原発事故による損害約10億8千万円の支払いを求め、原子力損害賠償紛争解決センターにADRを申し立てることを決めました。
 内訳は、市が被災住民に見舞金として支払った約8億6千万円や、住民が避難したことによるたばこ税の減収分約1億6千万円などですが、東電は事故との因果関係を確認できないとして賠償の対象外としてきたものです。これまでに市は東電に計約46億円の損害賠償を請求しましたが支払いを受けたのは、計約4億1千万円でした。
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南相馬市ADR申し立てへ 10億円超、原発事故損害
日経新聞 2017年6月29日
 福島県南相馬市は29日までに、東京電力福島第1原発事故による損害約10億8千万円の支払いを東電に求め、国の原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てることを決めた。市としての申し立ては初めてで、28日の市議会で議案を可決した。

 内訳は2011年度に発生した損害のうち、市が被災した住民に見舞金として支払った約8億6千万円や、住民が避難したことによるたばこ税の減収分約1億6千万円などで、7月中に申し立てる予定。東電は事故との因果関係を確認できないとして賠償の対象外としてきた。

 これまでに市は東電に計46億円の損害賠償を請求し、計約4億1千万円の支払いを受けた。今回の申し立て決定以外に、東電が請求内容の審査を進めているものや市との協議を続けているものが計約24億3千万円ある。残り約6億8千万円も東電が賠償の対象外としており、市は対応を検討中だ。
 南相馬市は昨年7月、放射線量の高い帰還困難区域を除き、避難指示が解除された。〔共同〕

2017年6月29日木曜日

東海第二原発 運転延長するには防潮堤の地盤安全対策を

 東海村の原電東海第2原発については、当初原電側は防潮堤の構造について、セメントを固めて盛り土する構造としていましたが、その後地盤を調査した結果液状化しないことを確認したとして、鋼管のくいを打ち鉄筋コンクリートで壁を造る構造に変更しました(4月)。
 規制委は27日、原電の村松衛社長と面談し、期限内に審査を終えるには防潮堤を設ける地盤の安全性を高めて、地盤改良などの対策を行うことが必要だと指摘し29日に開かれる審査会合で、原電が液状化対策を行うかどうか判断を示すよう求めました。
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東海第二原発 運転延長するには防潮堤の地盤安全対策を
NHK NEWS WEB 2017年6月27日
茨城県にある東海第二原子力発電所をめぐり、来年に迫った運転期間の期限内に運転延長の手続きを進めるため、原子力規制委員会は、日本原子力発電に対し、審査の焦点となっている防潮堤について、安全性を高める取り組みを早急に決めるよう求めました。
東海第二原発は、来年11月で運転開始から40年となり、運転期間をさらに延長する場合、それまでに原子力規制委員会の審査に合格し、さらに認可を得る必要があります。

一方で、日本原電は津波対策のための防潮堤について、盛り土から地中に鋼鉄のパイプを打ち込んでコンクリートで固める方式に変更する方針を示していて、地盤や防潮堤の安全性の評価が長期化すれば、運転延長の手続きが間に合わなくなるおそれが出ています。

このため規制委員会は日本原電の村松衛社長と面談し、期限内に審査を終えるには、防潮堤を設ける地盤の安全性を高めて、地盤改良などの対策を行うことが必要だと指摘しました。
これに対し、村松社長は、「トップとして指摘を重く受け止め、より安全の余裕が高いものを基本方針にしたい」と述べ、対応を検討する考えを示しました。

規制委員会は、29日に開かれる審査会合で液状化対策を行うかどうか判断を示すよう求めていて、日本原電の対応が注目されます。


東海第2原発、延長運転できない可能性も
「議論に1、2年」原子力規制委が審査長期化指摘
産経新聞 2017年6月27日
 原子力規制委員会は27日、日本原子力発電の村松衛社長を呼んで臨時会を開き、津波対策施設をめぐって東海第2原発(茨城県)の審査が長期化すれば、来年11月で運転40年となる同原発の延長運転ができなくなる可能性を示唆した。

 原電は4月、津波対策を鉄筋コンクリート防潮壁に変更、液状化対策は不要としたが、規制委側は「議論するなら1、2年かかる」と指摘した

原発3号機 核燃料取り出しに向け 屋根カバー部材搬入

屋根カバー部材搬入 第一原発3号機燃料取り出し
福島民報 2017年6月28日
 東京電力は27日、福島第一原発3号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出しに向け、原子炉建屋上部に設置する屋根カバー部材の原発構内への搬入を始め、報道陣に公開した。8月から取り付けを開始し、2018(平成30)年度半ばにも燃料の取り出しに着手する
 カバーは燃料取り出し作業時の放射性物質の飛散を防ぐ。全16個の部材で構成され、かまぼこ状に組み上げる。完成すると高さ約17・5メートル、縦約23メートル、横約57メートル、重さは約450トンとなる。初日はこのうち2個を搬入した。いわき市の小名浜港から船で運び、原発構内に陸揚げした。6回で全ての部材を搬入する予定。
 視察した経済産業省資源エネルギー庁の木野正登廃炉・汚染水対策官は「燃料取り出しに向けた作業はおおむね順調に進んでおり、取り出しに向けた新たなステップに入った」と述べた。
 3号機の原子炉建屋は水素爆発で激しく損傷し、プール内には未使用と使用済みの燃料計566体が残されている。東電と国は当初、2017年度中の取り出しを目指していたが、建屋上部の放射線量が想定通りに下がらず、計画を先延ばししていた。

29- 東電社長「早く進めたい」 自治体財物賠償基準

 東電の小早川智明社長ら幹部は27日、全町避難が続く双葉、大熊など双葉郡6町の町長を訪ねました。双葉町の伊沢史朗町長との会談では、福島原発事故に伴う自治体の所有財産に対する損害賠償基準を早急に示すよう求められましたが、小早川社長は「時期は明言できないができるだけ早く進めたい」と述べるにとどめました。
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東電社長「早く進める」 自治体財物賠償基準
福島民報 2017年6月27日
 東京電力の小早川智明社長ら幹部は27日、東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く双葉、大熊など双葉郡6町の町長を訪ねた。双葉町の伊沢史朗町長との会談では、福島第一原発事故に伴う自治体の所有財産に対する損害賠償基準を早急に示すよう求められたが、小早川社長は「時期は明言できないができるだけ早く進めたい」と述べるにとどめた。
 富岡町の宮本皓一町長からは、町内の東電旧エネルギー館を住民の不安払拭(ふっしょく)に向けた情報発信拠点として活用するよう要望され、「拠点整備に向け、しっかり検討する」と約束した。
 楢葉町の松本幸英町長からは福島第二原発の廃炉を要請され、「第二原発の廃炉は非常に重要な判断を伴う。引き続き検討したい」と話した。
 広野町の遠藤智町長、大熊町の渡辺利綱町長、浪江町の馬場有町長とも面会した。28日はいわき、南相馬、川俣、川内、飯舘の各市町村、7月4日には田村、葛尾の両市村の首長を訪問する。

■「一部避難解除」誤認発言し訂正
 小早川社長は双葉町の伊沢史朗町長との会談後、記者団の取材に対し「双葉町の避難指示が一部解除された」と事実と異なる発言をした。
 小早川社長は「(双葉町では)一部避難が解除された地域があるので、そちらに帰還してもらえるようしっかり取り組みたい」と発言。記者団から「まだ誰も帰還していない」と誤りを指摘されると、「認識が違っていたら申し訳ない」と訂正した。
 双葉町は全面積の96%が帰還困難区域で、沿岸部北側の避難指示解除準備区域を含め全域で避難指示が続いている。

2017年6月28日水曜日

福島原発 凍土壁 最後の7m区間を凍結へ

 東電は建屋の周囲の地盤を凍らせて地下水の流入を防ぐ「凍土壁」で、これまで凍結させずにおいた残りの7m区間を凍結させる認可を規制委に申請しました。
 残りの全区間を凍結させるのはまず無理と思われますが、東電によれば、当初1日400トンであった建屋への地下水の流入量が現時点で100トンに減じたとしていますので、それがさらにどれほど減じるのか注目されます。
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福島第一原発 凍土壁最後の1か所凍結申請
NHK NEWS WEB 2017年6月26日
東京電力福島第一原子力発電所の汚染水対策として、建屋の周囲の地盤を凍らせて地下水の流入を防ぐ「凍土壁」について、東京電力は凍らせずに残していた1か所を凍結するための認可を原子力規制委員会に申請しました。
福島第一原発では、地下水が建屋に流入して汚染水が増加するのを防ぐため、建屋の周りに埋めた「凍結管」と呼ばれるパイプに氷点下30度の液体を流して、およそ1.5キロの氷の壁、凍土壁を造る計画が進められています。

ただ、予定している範囲のすべてを凍結した場合、建屋の周りの地下水位が急激に下がり、かえって建屋内の汚染水が漏れ出すおそれがあるため、運用が始まった去年3月からこれまで1年以上かけて凍らせる範囲を徐々に広げ、慎重に流入する地下水の量を減らしてきました。

これについて東京電力は検討の結果、すべての範囲を凍結したあとも汚染水が漏れ出すおそれはないと考えられるとして、凍らせずに幅7メートルにわたって残していた山側の最後の1か所について凍結を開始するための認可を26日、原子力規制委員会に申請しました。

建屋への地下水の流入量は凍結を始めた当初の1日400トンから現在は100トン余りに減っています。東京電力はすべての範囲を凍結することでさらに減らせるとしていて、認可されしだい凍結を始めることにしています。

東電新経営陣が福島訪 第二原発の廃炉は「検討」と

 23日に就任した東電の川村会長や小早川社長など新しい経営陣は26日、就任の挨拶のため福島県の内堀知事を訪ね、その後福島民報のインタビューを受けました
 内堀知事は、「福島県内原発の全基廃炉は県民の強い思い」と述べ第二原発の廃炉を改めて要請しましたが、小早川智明社長「会社としての重い経営判断になるので、引き続き検討したい」、「国のエネルギー政策全体がどうなるかを含めて総合的に判断する必要がある」」と述べるに留めました。
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「できる限り早く判断」 第二原発廃炉時期は示さず 東電新会長
福島民報 2017年6月27日
 23日の株主総会を経て新体制となった東京電力の川村隆会長、小早川智明社長は26日、福島民報社のインタビューに応じ、福島第二原発の廃炉の可否について「できる限り早く判断する」と述べ、早期判断を目指す考えを示した。ただ、具体的な時期は明言しなかった。内堀雅雄知事は同日、川村会長、小早川社長と県庁で会談し、福島第二原発の廃炉を求めた。小早川社長は「引き続き検討する」と述べるにとどめた。

 福島第二原発を巡っては、県や県議会などが再三にわたり全基廃炉を求めてきたが、東電は「総合的に勘案して判断する」と存廃に関する言及を避けている。福島民報社はインタビューで、福島第一原発事故から6年3カ月余り過ぎたが、結論を先延ばしにするならば県民の信頼回復は不可能だと指摘した。川村会長は「我々としてはできる限り早く判断をして次に進みたい。あらゆるもの(案件)が延びに延びている状況を一つずつ脱したいと思っている。東京電力の企業文化の問題など含め、一つずつ直して指摘のような方向に持っていきたい」と廃炉可否の検討を急ぐ考えを示した。

 また、川村会長は柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働、福島第一原発事故を踏まえた新規制基準への対応などといった経営課題に触れ、「(経営上の)変数が多くなり、経営判断がすぐに決められなくなっている。福島第二に関してはもう少し待ってもらえれば我々の結論を出せると思う」と述べたが具体的な時期は提示しなかった。
 昨年は福島第一原発事故当時の社長が「炉心溶融という言葉を使うな」と指示していたことが発覚するなど、東電の隠蔽(いんぺい)体質が指摘されてきた。小早川社長に打開策を問うと「うそをつかない、隠さない、忖度(そんたく)しないというのを役員の中できちんと意識付けしていくのが取り組みの端緒だと考える」と話した。

■全基廃炉改めて要請 知事
 川村会長、小早川社長と県庁で会談した内堀知事は「県内原発の全基廃炉は県民の強い思いだ」と強調し、福島第二原発の廃炉を改めて要請した。県の東電に対する県内原発全基廃炉の要請は口頭と文書を合わせて今回で18回目となった。
 廃炉要請に対して小早川社長は「非常に重く受け止めている。会社としても大きな経営判断になるので、引き続きしっかりと検討していく」として前経営陣と同様の見解を述べた。
 川村会長は「我々の原点は福島であることは変わらない。第一原発の廃炉作業や復興事業、それを下支えする財政事情の改善、持続的な成長を新たな体制で進めたい」と抱負を語った。
 会談で内堀知事は福島第二原発の廃炉要請の他、福島第一原発の廃炉の着実な進展、原子力損害賠償の迅速・確実な実施を求めた。
 会談後、報道陣の取材に応じた川村会長は、記者から廃炉の判断主体を問われ「政府に相談する場面はあると思うが判断は東電が行う」と語った。小早川社長は「国のエネルギー政策全体がどうなるかを含めて総合的に判断する必要がある」と慎重な姿勢を示した。
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 小早川社長は27日から前社長の広瀬直己副会長らとともに、福島第一原発が立地し全町避難が続いている双葉、大熊両町と、福島第二原発が立地する富岡、楢葉両町など被災した13市町村の首長と面会する。

28- 大洗センター被曝事故 再入院の5人全員が退院

 18日に再入院した原子力機構大洗センターで被爆した作業員5人は、26日までに全員が退院しました。
 放射線医学総合研究所の上部組織の量子科学技術研究開発機構は6月末を目途に、1度目の治療の結果をまとめ、今後の治療の判断材料にしたいとしています。
      (関係記事)
6月20日 作業員5人の尿からプルトニウム 原子力機構被ばく事故
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被曝事故で再入院の5人全員が退院
産経新聞 2017年6月27日
 日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県大洗町)の被曝事故で、作業員5人の治療を行っている放射線医学総合研究所(千葉市)の上部組織、量子科学技術研究開発機構は26日、尿からプルトニウムが検出されたとして放医研に再入院していた5人全員が同日までに退院したと発表した。

 量研によると、5人は事故翌日の7日から13日まで入院したが、18日に再入院。血液中の放射性物質の排出を促す投薬治療を受けていた。量研は6月末を目途に1度目の治療の結果をまとめ、今後の治療の判断材料にしたいとしている

2017年6月27日火曜日

27- デブリ調査 水中遊泳ロボットでも運転10時間が限度

 産経新聞が、福島原発の原子炉の3号機のデブリの調査に新たに用いられる水中遊泳ロボット(ミニマンボウ)について報じました。

 2号機ではサソリ型ロボットが投入され、空中に露出しているグレーチング歩廊上を走行する(イメージ)画像などが流されました。しかしデブリ近傍の空間放射線量があまりにも過大であるために遠隔操作ロボットの寿命は数時間しかなく、次々と停止しました。これにより「ロボットによりデブリを撤去する」という構想そのものが夢想に等しいということが証明されました。

 3号機の格納容器には6mの水深があるので水中遊泳ロボットの使用が可能です。水には放射線を遮蔽する機能があるため水中であれば実用に耐えるロボット操作が可能なのではないかと期待されましたが、記事によるとそれほど甘いものではありませんでした。
 やはり放射線量からロボットの活動は連続10時間が限度で、それ以上はロボット内部の制御用基盤などの半導体が損傷するということです

 生物体が近づけずに、その代わりになるロボットも耐用時間が数時間程度であるということであれば、もはやデブリの取出しや廃炉は絵空事になります。
 原子力ムラのメンバーが明言しなくてもそのことには疑いを入れる余地がありません。
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デブリに挑む 優雅な「ミニマンボウ」が過酷な福島第1の3号機原子炉へ
産経新聞 2017年6月26日
 LEDをともして水中をゆっくりと泳ぎ回る姿には、小柄ながらも「優雅」という言葉が似合っていた。だが、その投入先は、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)がどこにあるのかも分からない、東京電力福島第1原発3号機の原子炉格納容器。内径13センチのボディーに技術の粋を集めた水中遊泳ロボット(愛称・ミニマンボウ)が7月、過酷な現場でデブリに挑む。(社会部編集委員 鵜野光博)

原寸大“原子炉内部”でお披露目
 6月15日、神奈川県横須賀市の港湾空港技術研究所。原発メーカーなどでつくる国際廃炉研究開発機構(IRID)が公開したのは、重さ約2キロ、長さ約30センチのロボットだ。同研究所には燃料デブリ調査に向けて3号機内部の原寸大の模型が作られており、この日は報道陣向けに、操作員が訓練を重ねた遠隔操縦を実演。水中を泳ぐミニマンボウの姿を、報道陣のカメラが追った。

 ボディーの前部には上下に180度動くカメラがあり、その両側にLEDを装備。スクリュー(スラスタ)は後部に4つ、上部に1つあり、後部につながれたケーブルで後ろに引っ張る力も合わせて水中を移動する。1秒間に50センチ程度の移動が可能だが、実際の調査は周囲を観察しながら行うので、秒速5センチ程度になるという。
 ほかに線量計と、ケーブルが障害物に引っかかった場合に備えて後部にも固定カメラを搭載している。

デブリ取り出し方針決定前に調査
 「燃料デブリがどこにとどまっているのか。小さな山のようになっているのか、ごつごつ岩状のものなのか、ぱらぱら小石状なのか。そういった映像情報をまずは提供できれば」
 開発に当たった東芝原子力事業統括部の露木陽機械システム設計第三担当グループ長は、調査の狙いをそう話した。
 福島第1原発では、2月に2号機、3月に1号機でロボットによる格納容器内部の調査が行われたが、いずれも燃料デブリの姿は明確には捉えられていない。東電などは今夏にも燃料デブリの取り出し方針を決めるとしており、ミニマンボウは方針決定直前に投入される。

 3号機は1、2号機と違って格納容器内に約6メートルの水がたまっている。そのために泳げるロボットが開発されたが、東芝は「干渉物があったときに、3次元的にかわすことができる」と水中のメリットを説明する。
 一方で、開発の最大のハードルは「小ささ」だった。格納容器内部に投入する際に利用する貫通部は、直径約15センチしかなかった。「内径は13センチで、ボディーを長くすれば旋回性が悪くなる。前後のカメラ、照明、線量計、スラスタ5つと、その制御基盤をあの大きさに収めることには大変苦労した」と露木さんは振り返る。赤外線カメラや温度計、浮遊物を持ち帰る機構などは備えていない

原子炉直下の撮影にも挑戦
 計画では、貫通部から投入されたミニマンボウは、制御棒駆動機構交換用レール(CRD)に沿って約10メートル泳ぎ、圧力容器を支持する構造物(ペディスタル)にたどり着く。その開口部から、燃料デブリがあるとみられるペディスタル内部をカメラで撮影。可能であれば、さらに内部に入り込み、原子炉直下の様子などの撮影を試みる
 作業は1日で終える予定。内部の放射線量から活動は連続10時間を見込んでおり、それ以上は制御用基盤などの半導体が損傷するという。

 原子炉内部は暗闇で、操作訓練は港湾空港技術研究所で夜間、照明を消した状態でも行っている。「このモックアップ(模型)環境と異なる干渉物があったときにどうするか。通過できるスペースがあるかどうか判断しながら進んでいくのが難しいところだ」と露木さん。

 東芝原子力事業統括部の竹内努部長は「最高の成果は燃料デブリを発見すること。まずはペディスタルの入り口で、中をカメラで確認したい」と話した。
 ミニマンボウは、万一操作不能になった場合に備えて、ケーブル切断機能も搭載している。「基本的には回収したいが、状況によっては投棄も考えている」と竹内部長。燃料デブリ取り出しに役立つ映像情報を提供し、無事に帰還できるのか。ミニマンボウの出動は7月中旬以降となる見通しだ。