2014年8月31日日曜日

原発事故避難用バス 川内は必要数の4分の1以下

 
 再稼働に向けた手続きが進む九州電力川内原発の10キロ圏内で、避難に必要なバスの台数は、30~50人乗りで計415台程度なのに対して、すぐに用意できるのは約100台必要数の4分の1以下であることが分かりました
 運転手が被曝する可能性も懸念されるので、調達可能の100台に対しても、実際に運転できるのかは不明です。
 
 さらに10~30キロ圏での運用との兼ね合いも出てきますが、鹿児島県はそこまで調査する予定はないということです。県とバス協会との協定締結も具体化していません。
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原発事故で避難、バスがない? 川内は必要数の4分の1
朝日新聞 2014年8月31日
 原発で重大事故が起きた際、住民の避難に使われる民間のバスが大幅に足りない恐れがある。再稼働に向けた手続きが進む九州電力川内原発(鹿児島県)の10キロ圏内ですぐに用意できるのは必要数の約4分の1。県とバス協会との協定締結も具体化していない。運転手が被曝(ひばく)する可能性も懸念されている。
 
■運転手の被曝も懸念
 川内原発の30キロ圏内の自治体の避難計画では、自家用車がない住民や要援護者は、主にバスで避難する。重大事故が起これば県が県バス協会と結んだ協定に基づいて、派遣を要請する。
 県が原発が立地する薩摩川内市と隣のいちき串木野市に、10キロ圏内の住民の避難に必要なバスの台数を尋ねたところ、30~50人乗りで計415台程度だった。両市とも市所有のバスは数台しかない。
 県バス協会加盟の約80社のバスは計約2200台(昨年末時点)だが、多くは日常的に運行する路線バスで避難に使いにくい。貸し切りバスは約800台あるが、原発周辺で用意できるのは約100台という。10~30キロ圏内のほかの7市町で調べれば、必要台数はさらに増える。だが、県はその予定はないという。担当者は「5~30キロ圏の住民はまず屋内退避するため、全住民が一斉に避難する事態は考えづらい」と理由を説明する。
 

川内原発・適合性審査火山影響評価に関する緊急要請

 発の規制における火山活動のモニタリングに関する検討チームの第回の会合が 月25日に開かれ、そこでは川内原発再稼動に向けての原子力規制委の審査の誤りが、完膚無きまでに批判されました
 ところが原子力規制庁は、検討チームの日の第回の会合において「基本的考え方」をまとめるとしています。どんなに批判されようとも川内原発の審査結果には反映(=修正)させずに、専門家からの批判は聞き流して終わりにするという意図です。
 
 原子力規制を監視する市民の会ほかが、30日、規制委の田中委員長他宛に、「川内原発・適合性審査火山影響評価に関する緊急要請」を行いました。
① 川内原発の火山影響評価を、火山学者を検討の場に加えて一からやり直すこと
② 検討チーム第1回会合における指摘事実から、九州電力の申請はその根拠が失われ、火山ガイドの要求も満たさないことが明らかになったことから、再稼動を許可をしないこと 
③ 9月2日に「基本的考え方」をまとめるのはやめ、第1回会合での指摘事項について、火山検討チームでさらに検討を続けること 
を骨子とするもので、九電と原子力規制の判断の誤りを詳細に指摘する内容になっています。
 
 規制委側の誤りについて噛んで含めるように説明していますので、ご一読ください。
 なお、太字や下線の強調は原文で行われているものです。
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2014 年8 月30 日/9 月2 日
原子力規制委員会委員長     田中 俊一様
原子力規制委員会委員長代理  島﨑 邦彦様
火山活動のモニタリングに関する検討チーム御中
原子力規制を監視する市民の会他
 
原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム第一回会合を踏まえて
川内原発・適合性審査火山影響評価に関する緊急要請
 
要 請 事 項
 
一.川内原発の火山影響評価はこれを白紙とし、審査を一からやり直すこと。火山審査に際して、火山学者を検討の場に加えること
一.検討チーム第一回会合における指摘事実から、九州電力の申請はその根拠が失われ、火山ガイドの要求も満たさないことが明らかになったことから、これの許可をしないこと
一.9月2日に「基本的考え方」をまとめるのはやめ、第一回会合での指摘事項について、火山検討チームでさらに検討を続けること
 
要 請 理 由
原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チームの第一回の会合が8 月25 日に開催されました。会合は、実質的に川内原発の適合性審査火山影響評価(以下「火山審査」)についての検討の場となりました。
会合の中で、藤井敏嗣東大名誉教授からDruitt et al.(2012)(以下「ドルイット論文」)の紹介とコメントがありました。「ドルイットのこの論文は、3,500 年前のサントリーニ火山のミノア噴火では、準備過程の最終段階の100 年間に数~10kmのマグマ供給があったということを述べただけで、カルデラ一般について述べたものではない、これは本人にも確認をしましたけれども、一般則を自分は述べたつもりはないというふうに」との発言がありました。
さらに藤井氏から、ドルイット論文に即して、マグマ溜まりが沈降するなどし、マグマの供給に見合うだけの地表の隆起が起こるとは限らないこと、マグマ中の水の量について議論をしておらず、将来結論が変わる可能性があること、岩石学的調査では追試は行われないことから、ドルイット論文に反論がないからといって、それが正しいとみなされたわけではない旨の指摘がありました。
これは、川内原発の火山審査の結論を左右する重大な指摘です。というのも、まず、これも藤井氏が会合で指摘していたように、ドルイット論文は、火山審査に関する九州電力の以下の主要な3つ主張の根拠とされています。
(1) 原発の運用期間中に巨大噴火が発生する可能性は十分に小さい
(2) モニタリングにより巨大噴火を知ることができる
(3) 予知をしてから噴火までに核燃料を搬出するための十分な時間がある
そして、そのいずれもが、ドルイット論文に書かれていることがカルデラ噴火一般に適用でき、よって南九州のカルデラにそのまま適用できること、そしてマグマの供給がそのまま地表面の地殻変動に現れることを前提としているからです
火山影響評価ガイドは、立地評価において、「設計対応不可能な火山事象が原子力発電の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分に小さいと評価できない場合には、原子力発電所の立地は不適と考えられる」とし、十分に小さいと評価された場合でも「火山活動のモニタリングと火山活動の兆候把握時の対応を適切に行うこと」を条件としています。九州電力の申請内容は、巨大噴火の可能性が十分に小さいこと、兆候把握時の対処方針のいずれについても、その根拠が崩れたのです。よって、火山ガイドの要求を満たしているといえず、申請を認めることはできません
 
原子力規制庁は、検討チームの9 月2 日の第二回の会合において「基本的考え方」をまとめるとしています。第二回でいきなり「まとめ」というのは非常に不可解です。これがもし、川内原発の火山審査に関わる事項はさっさと終わらせてしまおう、あるいは、川内原発については審査書が確定する前に火山学者の意見を聞く場を設けたことを既成事実にしよう、ガス抜きの場としようというのであればとんでもないことです。
第一回の会合で明らかになったことは、川内原発の火山審査について、九州電力の申請内容には根拠がなく、火山ガイドの要求も満たしていないこと、審査を白紙とし、一からやり直す必要があること、そして、これまで火山の専門家を排除してきたことにやはり問題があったということです
 
◆原発の運用期間中に巨大噴火が発生する可能性について
原子力規制委員会による審査書案において、申請者が巨大噴火の活動可能性が十分に小さいと評価する根拠の一つとして記載されています。「Druitt.et al.(2012)がVEI7 以上の噴火直前の100 年程度の間に急激にマグマが供給されたと推定している知見、…に基づき、国土地理院の電子基準点間基線距離の変化率からマグマ供給の状態を推定し、…現在のマグマ溜まりがVEI7 以上の噴火直前の状態ではないと評価し、…運用期間中のVEI7 以上の噴火の活動可能性は十分に小さいとしている。」(P63)とあります。
しかし、藤井氏がドルイット氏本人に確認した結果から、ドルイット論文を巨大噴火一般についての知見として扱っている点に誤りがあることになります。また、マグマ供給の状態を地表面の地殻変動(電子基準点間の距離の変化率)から推定することにも疑問が呈されています。なお、ミノア噴火はVEI6 レベルであり、審査書案の記載はその意味でも誤りです。
 
◆噴火の兆候の把握について
兆候の把握について、九州電力の申請はドルイット論文に依拠しています。100 年程度前にマグマ供給速度が増えたことを地殻変動で捉えればよいという理屈です。
さらに、適合性審査会合の場で提示した兆候把握時の判断基準案にも用いています。すなわち、ドルイット論文によると、100 年程度前から、マグマの供給速度が上昇し年間0.05 立キロ以上となるが、これが姶良カルデラにおける現在の供給速度の5 倍であることから、姶良カルデラ周辺で、地殻変動の速度が現在の5 倍以上になれば警戒体制に入る…といった具合です。ミノア噴火によるマグマ供給の知見を、全くそのまま姶良カルデラに当てはめています。しかも、マグマの供給速度が地殻変動の速度に完全に一致することも前提にしています。しかし、その根拠が崩れたことになります
原子力規制委員会による審査書案には、「兆候を把握した場合の対処方針を示している…火山ガイドを踏まえていることを確認した」とあるだけです。詳細は保安規定で確認するとしています。しかし、対処方針の根拠が失われた以上、「確認」の意味はありません
検討チームの会合では、他の委員からも、噴火予知の困難さ、特に何年、何十年もかかる核燃料の搬出を考慮した場合に、それに対処できるだけのモニタリングが可能であるかについて疑問の声が出ました。藤井氏の指摘については、原子力規制庁を含む他の委員から反論はありませんでした。
以 上
 
 8/30 現在9 団体(鹿児島・佐賀・関西・首都圏)賛同募集中
原子力規制を監視する市民の会/反原発・かごしまネット/避難計画を考える緊急署名の会/玄海原発プルサーマルと全基を止める裁判の会/グリーン・アクション/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/国際環境NGO FoE Japan/グリーンピース・ジャパン/福島老朽原発を考える会
 
<連絡先> 原子力規制を監視する市民の会:東京都新宿区下宮比町3-12-302
TEL:03-5225-7213/FAX:03-5225-7214/090-8116-7155(阪上まで)

2014年8月30日土曜日

[原発]塩谷町 日光・矢板市に署名要請|塩谷町下流4市町に協力要請|大熊・双葉町中間貯蔵受入へ

 指定廃棄物の最終処分場の詳細調査候補地に塩谷町の国有地を選んだことを受け、同町の見形和久町長と反対同盟会長は28日、日光、矢板両市を相次いで訪れ、候補地選定の白紙撤回を求める署名活動に自治会などを通じた協力を要請しました。
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 塩谷町の見形和久町長は27日、荒川などの下流に当たるさくら、高根沢、市貝、那須烏山の4市町を訪れ、候補地選定の白紙撤回を求める署名活動に、自治会などを通じた協力を要請しました。反対同盟会長らも同行しました。
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 除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設をめぐり、福島県と建設候補地のある大熊、双葉両町は9月1日にも政府に対し、施設の受け入れを伝える方向で調整に入りました
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【指定廃棄物の行方】日光、矢板両市にも協力要請 白紙撤回署名で塩谷町長と同盟会
下野新聞 2014年8月29日 
 環境省が放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場の詳細調査候補地に塩谷町上寺島(寺島入)の国有地を選んだことを受け、同町の見形和久町長と同町民指定廃棄物最終処分場反対同盟会の和気進会長は28日、日光、矢板両市を相次いで訪れ、候補地選定の白紙撤回を求める署名活動に自治会などを通じた協力を要請した。
 
 日光市の斎藤文夫市長は「この場ですぐには結論が出せない。旧藤原町(の地域)が一番(候補地から)近いので非常に懸念している」と述べた。
 矢板市の遠藤忠市長は「話はお聞きし、区長会長に伝えたい」と答えた。
 遠藤市長は取材に「国は住民の理解がないと処分場を造らないと言っている。(いったん候補地となった)矢板市は風評被害や住民の不安を経験している。『処分場は安全』という国がどう対処するのか問われる」と述べた。
 和気会長らは今後、茂木、大田原、那須塩原3市町も訪問予定。訪問先は計9市町になる予定。
 
 
【指定廃棄物の行方】白紙撤回署名、下流4市町に協力要請 塩谷町長
下野新聞 2014年8月28日
 環境省が放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場の詳細調査候補地に塩谷町上寺島(寺島入)の国有地を選んだことを受け、同町の見形和久町長は27日、同町を源流とする荒川などの下流に当たるさくら、高根沢、市貝、那須烏山の4市町を訪れ、候補地選定の白紙撤回を求める署名活動に、自治会などを通じた協力を要請した。同町民指定廃棄物最終処分場反対同盟会の申し入れを受けたもので、和気進会長らも同行した。
 
 加藤公博高根沢町長に見形町長は「候補地を適地とする環境省と、住民の思いの溝を埋めるのは難しい」と述べた。
 加藤町長は「環境省は県内全首長が納得する、より丁寧な説明をさらにするべきだ。その上で選定した塩谷町と交渉するべきだ」と指摘した。署名活動への協力要請には「預かる」と、回答を留保した。
 市貝町の入野正明町長は「町として自治会に要請することは難しいが、漁協など関係団体に(要請があったことを)伝える」と回答した。
 
 
中間貯蔵受け入れへ 県と大熊、双葉両町 1日にも政府に表明 
福島民報 2014年8月28日
 東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する政府の中間貯蔵施設をめぐり、県と建設候補地のある大熊、双葉両町は9月1日にも政府に対し、施設の受け入れを伝える方向で調整に入った。県は29日に庁内会議を開き県としての受け入れを決め、同日中に佐藤雄平知事が渡辺利綱大熊町長、伊沢史朗双葉町長と会談し、地元としての合意を求める方針。県などの受け入れ判断を受け、政府は地権者への説明会を開き、用地交渉に入る。
■政府近く地権者交渉
 1日にも行われる政府への中間貯蔵施設受け入れ表明では、県、大熊、双葉両町が政府に対し、除染廃棄物の県外最終処分法制化を確実に実現するなどの条件を付けた上で地権者との交渉を認めるとみられる。政府側は石原伸晃環境相と根本匠復興相(衆院本県2区)が出席する予定。県などの表明を受け、安倍晋三首相が政府としての決意を示すことが想定されている。 
 大熊、双葉両町は27日、前日の両町議会全員協議会に続き、それぞれ行政区長会を開いた。井上信治環境副大臣ら政府側の担当者が中間貯蔵施設交付金の内容などについて説明し施設建設に理解を求めた。出席者からは「受け入れはやむを得ない」などの意見が出た。 
 県と両町は、議員や住民代表の行政区長に対する政府の説明が終わり、一定の理解を得られたと判断。29日の合意に向けた協議に入った。合意後の30日は立地町以外の双葉郡の周辺町村の首長に受け入れ判断を報告する方針。 
 県と両町の受け入れ表明を受け、政府は約2千人に上る地権者を対象とした説明会の開催準備を急ぐ。ただ、自治体としての受け入れ判断とは別に、地権者が用地補償など政府の説明内容に納得するかは不透明だ。 
 この日の行政区長会は大熊町が会津若松市の町役場会津若松出張所、双葉町がいわき市の町いわき事務所でそれぞれ冒頭を除き非公開で開かれた。 
 出席者によると、地権者以外の住民にも説明を求める意見や、補償額の算定方法に関する質問があった。施設建設計画に反対する意見はなかったという。 
 渡辺町長は「いろいろな意見が出たが、(施設受け入れに関して町に)早く方向性を示してほしいという意見が多かった」と語った。伊沢町長は地権者への説明会開催について「県や大熊町と協議していく」と述べた。 
 27日、県庁で開かれた定例記者会見で佐藤知事は施設受け入れに向け、「安全性や住民の生活再建策などを精査し、地元の意見をしっかりと聞いていきたい」と話した。 
 

福島、親子88人、被ばく対策不十分と提訴

 福島原発事故時に福島県に住んでいた親子88人が29日、国や県に対し1人当たり10万円の慰謝料を求め、福島地裁に提訴しました。
 訴状によると、国や県は事故発生後、空間放射線量の正確なデータを速やかに伝えないなど、住民の被ばくをできる限り抑える職務上の義務を怠り、子どもに無用な被ばくをさせたとしています
 担当の弁護士は、国や福島県がとった安全対策が違法であることを司法ではっきりさせると述べています
 
※ 8月29日 甲状腺がんで「子ども脱被ばく裁判」 福島地裁に提訴へ 
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福島、被ばく対策不十分と提訴 親子88人、健康に深刻な不安
東京新聞 2014年8月29日
 原発事故の被ばく防止対策が不十分で精神的苦痛を受けたとして、事故時に福島県に住んでいた親子88人が29日、国や県に対し、1人当たり10万円の慰謝料を求め、福島地裁に提訴した。
 
 訴状によると、国や県は事故発生後、空間放射線量の正確なデータを速やかに伝えないなど、住民の被ばくをできる限り抑える職務上の義務を怠り、子どもに無用な被ばくをさせた。その結果、親子に今後の健康へ深刻な不安を抱かせたとしている。
 原告のうち、今も福島県に住み小学校や中学校、特別支援学校に通う計24人は、居住地の自治体に対し安全な環境で教育を受ける権利があることの確認も求めた。(共同)
 

福島高専 廃炉研究の連携協議会を提唱

 福島高専は11月にも全国の高専でつくる「廃炉に関する連携協議会(仮称)」を発足させるということです
 廃炉に関わる人材育成を目指し、福島高専の他、富山高専や茨城高専などが参加する予定ですが、全国約50の高専に参加を呼び掛けます
 
 福島原発については、原子炉を突き破って落ちた核燃料の残骸(燃料デブリ)が現在どこに存在して今後どうなるのかなど、まだ何も掴めていません。地球の地下鉱脈を資源衛星で探査できるという時代なのに、地表の直ぐ近くにある筈の核燃料デブリのありかを探る「方法論」すら持っていないというのが現状です。
 
 これは日本原子力研究開発機構をはじめとして各大学の原子力学科などの「原子力ムラ」のメンバーたちが、これまで原発事故の後始末などは全く研究の対象にしてこなかったことの反映です。
 遅まきとはいえ、原発事故の後始末に向けて「役に立つ」研究を進めて欲しいものです。
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福島高専 廃炉に関する人材育成へ
福島民報 2014年8月26日
 東京電力福島第一原発事故を受け、福島高専は11月にも全国の高専でつくる「廃炉に関する連携協議会(仮称)」を発足させる。今後、全国約50の高専に参加を呼び掛ける。 
 中村隆行校長が25日、いわき市の同校で記者会見して明らかにした。
 
 廃炉に関わる人材育成が目的で、福島高専の他、富山高専(富山県)や茨城高専(茨城県)などが参加する予定。各高専をテレビ会議システムで結び、福島高専は廃炉などに関する講義を配信する。さらに、原発事故で溶解した燃料(燃料デブリ)が原子炉建屋や格納容器に与える熱の影響などについての研究を進める。 
 記者会見で中村校長は「福島高専が中核となって人材を育成し、廃炉に貢献していきたい」と述べた。佐藤正知専攻科特命教授、鈴木茂和機械工学科准教授、堀川俊行事務部長も出席した。 
 

2014年8月29日金曜日

「福島 被曝と健康管理 専門家会議」に要請書

 被曝と児童の甲状腺がんの関係をいまも一貫して認めない福島県民の健康管理に関する専門家会議」は、初めのころに「秘密会議」の存在が暴露されて改組されるなど改善が図られた筈ですが、この8月に入ってからも市民団体から長瀧座長解任を求める要請書が出されるなど、国民の不審は高まるばかりです。
 25日、市民団体が「専門家会議」に対して「専門家会議の議論の進め方に対する意見ならびに要請」とする要請書を提出しました。
 要請書は会議の進め方・まとめ方などに対して、具体的に厳しい指摘をしています。
 
ブログ:「避難の権利」の記事を紹介します。
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【プレスリリース】環境省「専門家会議」に要請書~恣意的な議論・運営を改め、省庁横断的な取組を
避難の権利 2014年8月27日
8月25日、「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」(事務局:FoE Japan)は、環境省に対して要請書を提出し、同省が設置している「専門家会議」の意見の取りまとめの具体的な内容に関して、意見を提出しました.。
この要請書は、あらためて「子ども・被災者支援法」の理念に立ち返り、福島県民にとどまらす、住民の健康支援のあり方を予防原則に立って検討すること、不確実な線量評価に基づいた健康リスク評価を強引に推し進めないこと、「専門家会議」座長と事務局による恣意的な議論のまとめと運営を改めることを求めた上で、現在、専門家会議で取りまとめられようとしている取りまとめに対して、具体的な指摘を行っています。
 
注)「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」
 
以下は要請書の内容です
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2014年8月25日
環境大臣          石原伸晃 
環境副大臣    .   .井上信治 
環境大臣政務官. 浮島智子 
 
「福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」御中
 
「福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」の議論の進め方に対する意見ならびに要請
 
放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会
 
「福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」(以下「専門家会議」と呼ぶ)は、「子ども・被災者支援法」(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」)第13条に基づき設置が策定され、これまで9回の会議が行われてきました。未曽有の原子力災害により国民の多くが長期にわたって無用な被ばくを強いられる事態が生じているということは、国の保健対策を抜本から構築しなおさなければならないほどの課題であり、この「専門家会議」の責任は重大なものです。であるにもかかわらず、その議論は線量評価を中心とした狭い範囲に終始してきました。さる8月5日の第9回会議開催日には井上環境副大臣、浮島環境省政務官あてに市民団体より「長瀧座長解任を求める要請」が出されるに至りました。このような由々しき事態に至ったのは、「専門家会議」の議論の方向性やまとめ方を含む、座長と事務局の会議運営のために多々の問題が噴出しているからです。
あらためて「子ども・被災者支援法」の理念に立ち返り、福島県内に留まらず、福島第一原発事故により無用な放射線を被ばくし、今度も被ばくし続ける可能性のある住民の健康支援のありかたを、予防原則にもとづき論議されますよう、以下の点を要請いたします。
 
1. あらためて「子ども・被災者支援法」の理念に立ち返り、福島県民にとどまらす、住民の健康支援のあり方を予防原則に立って検討すること。未曽有の原子力災害に対応するには、抜本から国の保健対策を構築しなおすほどの課題であるということを認識して論議していただきたい。
 
2. 現時点での線量把握・評価の不確実性と限界性を認め、不確実な線量評価に基づいた健康リスク評価を強引に推し進めないこと。存在の可能性が指摘されている初期の被ばく線量に関わるデータや情報の収集と分析に努める体制をつくること
 
3. 「専門家会議」座長と事務局による恣意的な議論のまとめと運営を改めること
 
以下、各項目に関する意見および要請を申し述べます。
 
1. あらためて「子ども・被災者支援法」の理念に立ち返り、福島県民にとどまらす、住民の健康支援のあり方を予防原則に立って検討すること。未曽有の原子力災害に対応するには、抜本から国の保健対策を構築しなおすほどの課題であるということを認識して論議していただきたい。
 
「健康管理のあり方に係る各論点に関するこれまでの意見(概要)」(第9回会議・資料3)に関連して、次のような点が指摘できる。
 
・ 放射線被ばくと健康管理のあり方について政府の基本的考え方といえる「被爆者援護法」の健康管理に関する施策(総合的保健・医療・福祉政策)を参考に議論すべきである。被爆者援護法では周知のとおり「被爆者健康手帳」を所有する人は全国どこででも無料で健康診断ならびに無料で医療を受けることができ、種々の要件を満たせばそれに該当する手当が支給される。国の推定で1mSvをはるかに下回る被ばく線量でも被爆者健康手帳交付例は存在する 。
・ 資料3では、福島県民健康調査の甲状腺以外の項目について「調査項目や調査結果について、被ばくと健康リスクの関係からは、委員からの特段の指摘はない」とされているが、石川委員は「原爆被爆者検診等を参考に、今回の事故の特殊性に基づく検査項目を設定してもらいたい」(第7回)と発言している。
・ 第7回会議で外部専門家(木村真三氏、菅谷昭氏)から現在のチェルノブイリの住民の健康状態の報告があった。長期慢性的被ばく下での健康管理についてすでに28年以上取り組んできたチェルノブイリの具体的対策(健診、医療、保養、補償、研究など)についても検討を尽くすべきである。チェルノブイリにおける健診は「被災住民の健康状態の科学的観察、病気の早期発見、診断を確定し、治療を組み立てる基盤情報、病気の発症や悪化のリスクのある人の発見、予防的またリハビリや健康増進的手段の実施基盤的情報とする」といったことが目的として構成されている(20周年および25周年ベラルーシ・ナショナルレポート)。
・ 健康管理のあり方に関して要望を出している被災者団体や自治体のヒアリングを行うべきである。復興庁が「子ども・被災者支援法」基本方針策定の際に実施したパブリックコメント(第4回会議、崎山比早子氏提出資料のひとつ)に対応するものとして本「専門家会議」が開催されるに至っていることを踏まえれば、当然の手順とすべきである。ICRPのPub.111は、原子力事故後の現存被ばく下においては政策決定において利害関係者などステークホルダーの役割を重要視している。第5回会議外部専門家の甲斐倫明氏もICRPの考え方として様々な計画策定のときにステークホルダーの関与が望ましいことを述べている。
・ 「検診をすることが最善の回答か十分な検討が必要(第7回鈴木委員)」「検診項目を増やすことで不安を増長させるおそれもあり、むやみに項目を増やすべきではない(第1回祖父江委員)」という意見が挙げられているが、最善か否か、何によって不安が増長するのかは他人が決めるべきことではない。なお長崎大学は原爆被爆者の健康診断について、その意義を認める研究報告を行っている 。
・ 外部専門家からも健康管理のあり方についての意見が表明されている。
福島県以外でも被ばく線量年間1mSv以上の地域の住民に対し、健康に対する権利が保障されるべき。日本医師会の提案のように厚生労働省に一本化して、体系的な検診体制を整えるべき」(第4回崎山比早子氏)
「住民の健康管理は国の直轄事業と位置づけ、国による健診事業の一元管理をすべき。ある一定の線量超えた部分については、やっぱりきちっとフォローアップしていくという体制が必要」(第8回木田光一氏)
「甲状腺被ばく量に関連して事故直後の高校生など呼吸量の差異について検討すべき。大人への甲状腺検診も充実すべき。」(第8回木村真三氏)
甲状腺癌にのみ対応した健診ではなく、幅広い疾病に対応したもので、長期にわたる検査をすべき」(第8回菅谷昭氏)
「県内各地域の比較においても甲状腺がんの多発が観測されていることを前提に今後の対策を検討すべき」(第8回津田敏秀氏)
・ 福島県県民健康調査の甲状腺検査について、福島県立医大からも「当初3年で一巡してその後は20歳まで2年に1回、20歳以降は5年に1回と決めていたが、本当にそれでいいのか、3年間の検証をして、今後どういうふうにすれば一番県民のためにいいのかを議論していただければいい」(第9回阿部委員)との再検討の発言も出されている。
 
国民はこの事故によって無用な被ばくを強いられたのであり、今後も強いられることになる。その責任は国と東京電力にある。被害者が健診を望む限り、それに応える義務が国と東京電力には存在している。国民の多くが今後も無用な被ばくを強いられる事態が生じているということは、国の保健対策を抜本から構築しなおさなければならないほどの課題である。原子力事故のもたらす健康への影響は非常に幅が広いものであるから、予防原則に立ち、健康管理の対象も癌や遺伝的影響という狭い範囲にとどまらず観察し、時宜に応じた対策を講じていく必要がある。環境省だけでは対応しきれる問題ではない。厚労省をはじめとする省庁横断的な取り組みが必要である。
 
2. 現時点での線量把握・評価の不確実性と限界性を認め、不確実な線量評価に基づいた健康リスク評価を強引に推し進めないこと。存在の可能性が指摘されている初期の被ばく線量に関わるデータや情報の収集と分析に努める体制をつくること
 
「中間とりまとめに向けた線量評価部分の要点(案)」(第9回会議・資料1)の中の線量把握・評価については、現時点でのデータの不確実性・限界性を明示したうえで判断すべきという指摘が委員からも表明されている。さらに、そうした限界性がありながら、「専門家会議」は評価にとって重要な情報収集の努力を怠っている。
 
・ 甲状腺被ばく実測データは、いまだ被検査者の行動調査との突合もないなどデータの検証の問題、個人間のばらつき、被検査者の代表性の問題など、いくつもの不確実性・限界性を有している。前提条件や限界性を明示したうえでの評価となっていないなど科学性に乏しいことが委員からも指摘されている。
・ 「一般からの情報提供窓口は設置されているか」という質問(第4回春日委員)について事務局および長瀧座長は、この会議が「専門家会議であり、専門家としての議論をしていだたく」として、「情報提供窓口」の設置に関してなんら答えていない。しかし、「さまざまな個人や団体が測定したデータや未公開データの存在の可能性」(第9回森口祐一氏)が指摘されている。実際、厚労省研究班のみならず民間団体が測定した母乳汚染データ、尿検査データなどが存在している。不確実性を少しでも小さくするためにはさまざまなデータの突合が不可欠であるが、「専門家会議」はそうしたデータを積極的に収集し評価しようという姿勢がなく、真実に近づくための科学的態度を有しているとは言えない
・ 現在も続く線量評価、とりわけ初期甲状腺被ばく線量評価の混乱は、1080人で検査を打ち切った政府の不作為による責任であることを自覚して、環境省自らが各方面に呼びかけ、さらなる情報の収集にあたり、初期の被ばく線量に関わるデータや情報の収集と分析に努める体制をつくるべきである。
 
「健康リスク評価の各論点に関するこれまでの議論」(第9回会議・資料2)に関連して、次のような問題点が指摘できる。
 
・ 健康リスク評価についてWHO報告やUNSCEAR報告が挙げられているが、たとえばWHO報告の「「線量の最も高かった地域では、ベースラインの発病率に対する生涯リスクは、小児期に被ばくした男性で白血病が7%増、小児期に被ばくした女性で乳がんが6%増、小児期に被ばくした女性ですべての固形がんが4%増、小児期に被ばくした女性で甲状腺がんが約70%増」といった箇所は示さず、被ばく線量が最も高かった地域の「外側や近隣県」のがんの罹患リスクが小さいことを強調する表現になっている。
・ 環境省などが主催し本年2月21-23日に実施された「放射線と甲状腺がんに関する国際ワークショップ」において、放射線影響研究所のShore博士は、「10歳時の被ばくで60歳までの甲状腺がんのリスクは20mSvまで確認され(20mSv未満では不確か)、がんのリスクは50年以上継続する」と報告している。20mSvのレベルは実測1080名中でも数名に認められた数値であり、この報告についてヒアリングすべきである。
・ 健康リスクについて「放射線の影響でがんになったかどうかという議論は決着がつかない(第5回鈴木委員)」と記されているが、「決着がつかない」ということは、現在の科学ではわからないという、現状の科学の限界性を述べているに過ぎない。またそのことはがんが「増えない」と同義ではない。この限界をどのように克服していこうとするのか努力の方向すら示すことなく「決着がつかない」「検出できない」として切り捨てるのであれば、専門家としての責任放棄でしかない。
・ チェルノブイリ事故の健康影響評価において、どの国際機関も、日本の専門家も、子どもたちの甲状腺がんの激増について予測しえず、ほぼ10年後にいたるまで放射線の影響を否定し続けてきたという歴史的経緯を振り返れば、福島事故においても先入観に基づき安易に楽観的推測を述べることは慎むべきである。
・ 福島事故発生後に発刊されたウクライナ放射線医学研究センターと長崎大学によるHEALTH EFFECTS OF THE CHORNOBYL ACCIDENT: a Quarter of Century Aftermath は、チェルノブイリ事故における健康影響について、がんおよび非がん疾患も含め25年間の研究成果を示している。序文において長崎大学の山下俊一氏は、本書がチェルノブイリ周辺で発見された疾患の因果関係の詳細を明らかにするほど十分あるいは包括的なものとはいえないものの、それはチェルノブイリ事故が「あらゆる年齢層の数百万という人々の被ばくをもたらしたため、健康と放射線環境に関する結果は、比較的短期間の間に信頼性をもって評価することはできなかった」ためであると述べている。
 
チェルノブイリ事故による慢性的被ばくの健康影響はがんに留まらず、さらなる研究が進められている。福島においても長期的視点に立った健康評価の体制を構築することが必要である。
 
3. 「専門家会議」座長と事務局による恣意的な議論のまとめと運営を改めること
 
・ 市民団体が長瀧座長解任を求めた理由については要請文 の通りであり、ここでは繰り返さないが、そのほかにも問題となる発言がなされている。
・ 長瀧座長は健康診断、とりわけ子どもの甲状腺スクリーニング検査について個人的な予断をもって議事の進行を図っていると思われる。同氏の2013年の講演では「甲状腺がん検診を行えば微小がんが発見され、微小がんの手術をすれば最終的に人口の10%になるまで微小がんが増加する」「福島で3万人になるまで毎年甲状腺がん患者が増加する」といった持論を展開している (添付資料)。
 第7回会議においては、被災者の不安を払拭するためにも「検診の体制と補償の体制を実現したい」(石川委員)との意見と対比させる形で「がん検診の利益と不利益」と題した祖父江委員の報告が行われた。その意図は「ゆっくりしたがんでは過剰診断の不利益というものが大きいということを指摘するため」(祖父江委員)であった。長瀧座長は「検査をすればそれでいいのかというと、そうでもない」と述べている。
 さらに座長は、第9回会議外部専門家の宮内明氏(甲状腺専門医)に対し、「スクリーニングをすれば必ず癌が見つかる」「全部取って、最終的には福島県の10人に一人、あるいは100人に一人は甲状腺の手術をしたということであっても、安心であればそれでもいいのではという考え方があるとしたらどう思うか」と質問した。宮内氏はこの数値に関し「ちょっと極端な数字かと思います」としたうえで、福島県民健康調査甲状腺健診では50の手術例のうち7割は1㎝以上かリンパ節や肺などの転移を認める症例であり、残り3割程度は1㎝以下の微小がんであるものの反回神経や器官に接しているなど、同様にリスク症例であったとの福島医大の報告を紹介した。同時に甲状腺の微小がんが発見された場合、同氏が所属する隈病院では、経過観察を選択する例が最近では8~9割に増えてきていることも紹介した。
座長の予断に基づく議事運営は明らかである。
・ 「外部の専門家の意見を聞く」として何人ものヒアリングのために招請しているが、外部専門家の意見が「議論のまとめ」に登場したのは第2回栗原氏と第3回新山氏だけであり、そのほかの専門家の意見とそれに対する「専門家会議」の意見は「議論のまとめ」に反映されていない
・ 傍聴者に対する規制は異常なほどで、度を過ぎている。
 「専門家会議」の傍聴者に対する環境省職員の対応は異常なものである。席を指定し、傍聴席の周囲を職員が歩き回り傍聴者をチェックし、その意に沿わない者は次回から傍聴も制限するというのは行き過ぎである。座長は審議の最中に何度も「被災者に寄り添って」とか「被災者のために考える」といった発言をするものの、実際の運営は事務局ともども被災者の心情を逆なでするような対応を続けている。
上述した例は一部を抜粋したに過ぎない。こうした運営を進めてきた座長は自ら退かれるべきであり、「専門家会議」事務局は恣意的な「議論のまとめ」を行うことなく、また市民や被災者敵視とも言える、傍聴者に対する態度をただちに改めていただきたい
以  上
           要請者 (省略
 
放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会
事務局  国際環境NGO FoE Japan 内