2020年8月31日月曜日

柏崎原発の安全協定拡大へ研究会 30キロ圏の地方議員が新設

 東海第2原発の再稼働の際に30キロ圏内の自治体からも同意を得るとした安全協定に倣うべく柏崎刈羽原発30キロ圏内にある自治体の地方議員らが30日、東電と結ぶ安全協定の対象拡大に向け研究会を設立しました。8市町の議員約40人が参加します。
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柏崎原発の安全協定拡大へ研究会 30キロ圏の地方議員が新設
共同通信 2020/8/30
 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)から30キロ圏内にある自治体の地方議員らが30日、東電と結ぶ安全協定の対象拡大に向け、研究会を設立した。再稼働する場合の「事前了解権」の対象を新潟県や立地自治体だけでなく、30キロ圏内の市町も含めた協定締結を目指す。

 茨城県では、日本原子力発電が東海第2原発の再稼働の際に立地自治体に加え、30キロ圏の5市からも同意を得るとする安全協定を2018年に締結。研究会は「茨城方式」を参考に東電に同様の対応を求める方針だ。
 柏崎刈羽原発が立地し、協定を締結した柏崎市や刈羽村のほか、見附市や長岡市など8市町の議員約40人が参加する。

「核のごみ」処分場 全国での説明会を再開

 原発から出る高レベル放射性廃棄物「核のごみ」を地下300mより深く埋める地層処分に向けて、3年前から国などが全国で開いている説明会は新型コロナウイルスの影響で中断していましたが、今週から再開されました。

 そもそも地層処分については、2012年9月に、日本学術会議2年がかりで検討した結果「地中深くに埋める国の最終処分計画は安全とは言えない。地震や火山活動が活発な日本列島で、万年単位で安定した地層を見つけるのは難しい」との結論を出し、埋設処分政策の白紙見直しを求める提言をまとめています。万年は愚か数百年の期間でも無理という結論でした。

 それを2016年、安倍内閣は日本全国の至るところに適地があるとするマップを発表し、経産省と国の認可法人NUMO=原子力発電環境整備機構全国でその明会を始めたのでした。いきなり「適地マップ」として発表されたもので、一体どんな根拠で適地と判断したのかのキチンとした説明はありませんでした。

 地層処分の適地は地球規模でも探し出すのは困難で、処分地が決定したのはフィンランドとスウェーデンの2カ国だけというのが実情です。それなのに地震や火山などの地下活動が活発な日本列島の至るところに適地があるなどということはあり得ないことです。

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「核のごみ」処分場 全国での説明会を再開 コロナで中断
NHK NEWS WEB 2020年8月28日
原子力発電所から出る「核のごみ」を地下に埋める地層処分の実施に向けて、国などが全国で開いている説明会は新型コロナウイルスの影響で中断していましたが、今週から再開されました。

国は原発で使い終わった核燃料から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」を地下深くに埋める地層処分を行う計画ですが、処分場が決まらない状況が続いています。
このため、経済産業省と国の認可法人、NUMO=原子力発電環境整備機構は3年前から全国で説明会を開催していて、新型コロナウイルスの影響で半年間中断していましたが、今週から再開されました
27日は東京・墨田区で開催され、担当者が参加した住民らに廃棄物が発生する仕組みや処分方法について説明しました。
処分場を巡っては今月、北海道寿都町が選定に向けた最初の調査への応募を検討していることを表明し、町内で議論が続いています。
参加した都内の50代の男性は「これまでひと事のように感じていたが、家族とも話してみたいです」と話していました。
NUMOの幹部は「全国の皆さんに関心を持ってもらうことが大事であり、今後、月2回程度のペースで開催していきたい」と話していました。

31- 福島沿岸部の再生へ移住促進を国に要望 知事

福島沿岸部の再生へ移住促進要望 知事、避難解除方針の提示も
共同通信 2020/8/30
 福島県の内堀雅雄知事は30日、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の解除後も住民帰還が進まない県沿岸地域の再生に向け、移住促進や営農再開支援を政府に要望した。帰還困難区域の指示解除方針も早急に示すよう求めた。福島市内で開かれた原発事故からの復興に関する国や自治体との協議会で語った。

 田中和徳復興相は「本格的な復旧復興の動きが進みつつある。来年度以降も国が前面に立って取り組む」と強調した。
 帰還困難区域の指示解除方針について、梶山弘志経済産業相は「遅れることなく時間軸を示しながら、政策の方向性を検討していきたい」と述べた。

2020年8月30日日曜日

Jヴィレッジの指定廃、東電が搬出遅れを陳謝(続報)

 サッカー施設Jヴィレッジで指定廃棄物2年間内密のまま保管していた問題で、東電の牧野茂徳原子力・立地本部長は25日の定例記者会見で「施設所有者との搬出に向けた調整が不十分で、保管が2年間も続いたことを深くおわびする」と陳謝しましが、保管の事実を積極的に公表しなかったことに関しては、「安全管理上の観点から差し控えている」と従来の主張を繰り返しました。
 続報として紹介します。
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Jヴィレッジの指定廃、東電が搬出遅れを陳謝
河北新報 2020年08月26日
 東京電力福島第1原発事故の対応拠点だったサッカー施設Jヴィレッジ(福島県楢葉町、広野町)で指定廃棄物が保管されていた問題で、東電の牧野茂徳原子力・立地本部長は25日の定例記者会見で「保管が2年間も続いたことを深くおわびする」と陳謝した。
 指定廃の搬出遅れについて、牧野本部長は「どういう役割分担で搬出するか確認し対応すべきだった」と釈明。施設所有者との搬出に向けた調整が不十分だったことを反省点として挙げた。

 保管の事実を積極的に公表しなかったことに関しては、「安全管理上の観点から差し控えている」と従来の主張を繰り返した
 東電は原発事故対応で県から施設を借り受け、原状回復工事を経て2018年に返還。工事で生じた廃プラスチックと汚泥計72立方メートルを返還後も施設内に保管したままにしていた。

コロナ中の2原発事故を想定し訓練 福井県おおい町

 福井県は27日、新型コロナ流行中に、大飯原発と高浜原発で同時に事故が起きたと想定し避難訓練をしました。
 新型コロナ対策と原発広域避難を並行した事故訓練は全国初ということです
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コロナ中の原発事故想定し訓練 福井県おおい町
共同通信 2020/8/27
 福井県は27日、新型コロナ流行中に、関西電力大飯原発(おおい町)と高浜原発(高浜町)で同時に事故が起きたと想定し、住民避難や屋内退避の訓練をした。原発の立地するおおい町大島地区の住民らが、同県敦賀市の施設まで避難。県によると、新型コロナ対策と原発の半径30キロ圏外への広域避難を並行した事故訓練は全国初という。

 訓練には大島地区の住民やおおい町内の他地区の区長ら約50人が参加。同町の一時集合施設では受付で検温し、感染の疑いがある人と濃厚接触者の部屋や行動範囲を分離する手順を確認した。施設近くの駐車場では、避難バスの座席をシートで覆うなどの感染対策を取った。

寿都町町長 国に「町が反対すれば調査は中止」の明記要望

 原発の高レベル放射性廃棄物の埋設処分場選定に向けた文献調査に応募を検討している北海道寿都町の片岡春雄町長は、資源エネルギー庁に町が反対すれば次の段階の調査に進まないことを文書で明記するよう申し入れたと29明らかにしました。
 これは「一度調査を始めれば町が反対しても、処分場建設まで国に押し通されてしまう」との懸念があるためです。
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町が反対で手続き中止の明記要望 北海道寿都町、核のごみ調査問題
共同通信 2020/8/29
 原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査に応募を検討している北海道寿都町の片岡春雄町長は29日、町が反対すれば次の段階の調査に進まないことを文書で明記するよう、資源エネルギー庁に申し入れたと明らかにした。

 片岡町長は取材に「反対派は一度調査を始めれば町が反対しても、処分場建設まで国に押し通されてしまうと心配している。文書を出してもらえば安心してもらえる」と話した。文書の作成時期については「(9月に予定する)町民説明会の前にはできるんじゃないか」と推測した。

 処分事業を担うNUMOによると、手続きは文献調査、概要調査、精密調査の3段階ある。

30- セシウム濃度全て下限値未満 福島県産米

セシウム濃度全て下限値未満 福島県産米抽出検査
福島民報 2020/08/29
 福島県産米の抽出検査で県は二十八日、早期出荷米一点の出荷・販売が可能になったと発表した。放射性セシウム濃度は全て検出下限値未満だった。

 出荷・販売が可能となった生産者の地域は次の通り。
    旧熱塩村(喜多方)

2020年8月29日土曜日

「原発ゼロ」明記せず 立・国・連合がコロナ後社会像

 立憲民主党国民民主党などの合流に当たり、新党の綱領案に「立憲主義の深化」「共生社会の構築」と並んで「原発ゼロ」が盛り込まれたことに、連合の神津会長は27、強い懸念を示しました。
 それを受けて同日発表されたコロナ収束後の社会像として共有する「理念」からは、「原発ゼロ」の表現が除外され、代わりに原発廃止か存続かについて「二項対立的思考に陥ることなく、科学的知見に依拠する」と記載されました。いわゆる玉虫色の表現です。

 旧民主党系が電力会社出身の議員を擁したことでこの点がいつも曖昧であったのを、新綱領でスッキリさせた筈なのにこれでは元の木阿弥です。
 いつもこの点で彼らが連合に譲らざるを得ないのは、電力会社出身の議員だけでなく多くの議員が、選挙時に連合組合員の協力(ポスター貼りやビラ撒きなど)を得ているからと言われます。
 この負い目を解消しない限り、旧民主党系は何時までたっても原発問題で筋を通すことが出来ません。
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連合会長、枝野氏に「原発ゼロ」で注文 産別議員に新党参加呼び掛け
時事通信2020年8月27日
 連合の神津里季生会長は27日、立憲民主党の枝野幸男代表と東京都内の連合本部で会談し、国民民主党などとの合流新党結成を支援する考えを伝えた。一方で、新党の綱領案に「原発ゼロ」が盛り込まれたことに強い懸念を表明。神津氏は「枝野氏のような責任ある立場の方は、『原発ゼロ』という言葉を使わないで」と求めた
 立憲、国民両党と連合は同日、新型コロナウイルス感染収束後の社会像として共有する「理念」を発表。民間労組に反発がある「原発ゼロ」の表現は盛り込まなかった。ただ、「原発ゼロ」を含む新党綱領案の修正がなされないことから、複数の国民の産別系議員は合流新党への不参加に傾いている。
 神津氏は、立憲が国会提出した原発ゼロ法案の見直しや、選挙公約での「丁寧な表現への置き換え」も要求。枝野氏は「指摘はしっかりと受け止めながら、われわれが目指す社会を実現する」と応じた。


「原発ゼロ」明記せず=立・国・連合がコロナ後社会像
時事通信 2020年8月27日
 立憲民主、国民民主両党と連合は27日、新型コロナウイルス感染収束後の社会像を発表した。両党合流を前に、立憲が掲げる「原発ゼロ」をめぐる対立が解けていないことを踏まえ、エネルギー政策の中で原発への直接の言及を避けた
 社会像はエネルギー政策の在り方について、原発廃止か存続かという対立を念頭に「二項対立的思考に陥ることなく、科学的知見に依拠する」と記載するにとどめた。立憲主導で原発ゼロを盛り込んだ新党綱領案に国民所属の産別労組系議員が反発していることから、一定の配慮を示した。

核ごみ応募反対署名提出、寿都町 周囲からの批判を受け

核ごみ応募反対署名提出、寿都町 人口の2割超
共同通信 2020/8/28
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定で、文献調査への応募を検討している北海道寿都町の片岡春雄町長に対し、町内の有志による団体が28日までに、応募の撤回を求める署名を提出した。同団体によると署名は7836人分集まり、うち町内は695人分で人口約2900人の2割超に上った。

 町の水産加工業者の若手職員が中心となって呼び掛けた。町外から「文献調査を受けたら商品を買わない」などとする電話やハガキが相次ぎ、危機感を覚えたことから署名活動を始めた。近隣自治体のほか、東京や兵庫からも署名が寄せられたという。

環境省と福島県が再生可能エネルギーの導入促進で連携

復興へ環境省と福島県が連携協定 再生可能エネルギーの導入促進
共同通信 2020/8/27
 環境省と福島県は27日、東京電力福島第1原発事故からの復興を推進する目的で、再生可能エネルギーの導入促進による町づくりや国立公園の拠点整備などに協力して取り組む連携協定を結んだ

 地球温暖化対策として再生可能エネルギーの普及を後押しし、磐梯朝日国立公園や尾瀬国立公園に自然の豊かさをPRする拠点を整備する。休暇中の旅先でテレワークする「ワーケーション」の場所として利用してもらうよう取り組む。環境再生をテーマにしたシンポジウム開催も検討する。
 福島県では第1原発周辺に帰還困難区域が残るなど復興は道半ばで、県は県内を訪れる人を増やすことを目指している。

29- 女川再稼働、不同意求める署名8470筆 石巻の市民団体

女川再稼働、不同意求め署名8470筆 石巻の市民団体が市議会に提出
河北新報 2020年08月28日
 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、石巻市などの15の市民団体は27日、市議会に対し、再稼働に反対する市民の署名8470筆を提出した。
 いのちと郷土を守る市民の会(石巻市)などの関係者7人が大森秀一議長を訪問。再稼働に関する「地元同意」について「市民は原発の安全性や避難計画の実効性を不安視している。慎重に判断してほしい」と求めた
 大森議長は、賛否双方の団体から提出された再稼働に関する請願・陳情計2件が審議中だと説明。「署名の提出を踏まえ、審査の議論をさらに深めてもらう」と述べた。
 団体は署名を菅原秀幸副市長にも提出した。

2020年8月28日金曜日

福島県が東電に職員の人件費の損害損賠求め提訴へ

 福島県福島原発事故に対応するために生じた県職員の人件費など約9千万円の損害賠償を東電に求め福島地裁に提訴します。
 原発事故の賠償で自治体が東電を提訴するのは全国初ということです。
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福島県が東電に損賠求め提訴へ 職員の人件費、全国初
共同通信 2020/8/27
 福島県が東京電力福島第1原発事故に対応するために生じた県職員の人件費など約9千万円の損害賠償を求め、東電を10月にも福島地裁に提訴することが27日分かった。県によると、原発事故の賠償で自治体が東電を提訴するのは全国初とみられる。

 県が東電に求める賠償の一部は、国の原子力損害賠償紛争解決センターによる裁判外紛争解決手続き(ADR)で和解が成立している。今回請求するのは、昨年のADRの和解で対象外とされた人件費だという。
 県によると、事故前の計画では11年度から15年度までの5年間で職員を350人削減する予定だったが、事故対応のため人員を削減できなかった。

復興再生拠点区域外 往来住民の線量管理 放射線防護策示す

 政府は26日、福島県の復興拠点外の地域を巡り、人の居住を想定せずに公園や事業用地に使う場合、往来する住民の被ばく線量を個人線量計で把握して管理するなどの放射線防護策を規制委に示し了承されました。
 これは飯舘村長泥地区の復興拠点外の地域に村営復興公園を整備し、拠点内外の避難指示の一括解除を目指していることに沿うもので、復興拠点を整備する富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾の町村国による除染や家屋解体、解除方針の明示を求めています
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特定復興再生拠点区域外、往来住民の線量管理 政府、放射線防護策示す
福島民報 2020/08/27
 政府は二十六日、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち除染していない地域を巡り、人の居住を想定せずに公園や事業用地に使う場合、往来する住民の被ばく線量を個人線量計で把握して管理するなどの放射線防護策を原子力規制委員会の定例会に示し、了承された。

 政府は除染して居住再開を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域でも、年間積算線量が二〇ミリシーベルト以下であれば、地元が土地利用を望む場合には面的な除染をしなくても避難指示を解除できる仕組みを検討している。
 今回の防護策を基に政府は近く、具体的な解除要件を決定する方針。飯舘村が長泥地区の復興拠点外の地域に村営復興公園を整備し、拠点内外の避難指示の一括解除を目指している事例に適用させたい考え。
 防護策は内閣府原子力被災者生活支援チーム、復興庁、環境省、原子力規制庁が取りまとめた。特定復興再生拠点区域から外れた地域の土地利用で往来する住民の放射線防護対策の主な内容は【下表】の通り。個人の線量把握・管理をはじめ、住民の行動パターンに合わせた被ばく低減策の検討、住民の相談窓口の確保などを盛り込んだ。

 復興拠点から外れた地域の土地利用としては公園のほか、物流施設などの事業用地を想定。これまでのような面的な除染をしない場合、用地造成などの際に線量を低減させる方法などを軸に検討している。
 居住を前提としない土地利用で避難指示を解除した地域について、将来、居住したいという方向へ住民意向が変わった場合、内閣府の担当者は「地元と協議することになる」との考えを示した。
 復興拠点を整備する富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の六町村のうち、飯舘村を除く五町村は国による除染や家屋解体、解除方針の明示を求めている

【住民の放射線防護対策】
▼個人線量の把握・管理(個人線量計を貸し出し、住民が自ら確認する)
▼蓄積された個人線量データを活用した行動パターンごとの被ばく線量の推計
▼個人線量計の測定結果や行動パターンごとの被ばく線量推計を、被ばく線量低減策や放射線不安対策の検討に活用
▼震災当初と現在の空間線量率の比較図を経時的に提示するなど情報提供の促進
 環境省と福島県連携協定 国立公園にPR拠点整備

玄海原発 テロ対策施設 全工事計画が認可

玄海原発 テロ対策施設、全工事計画が認可 原子力規制委員会
佐賀新聞 2020/8/27
 九州電力が玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)に建設するテロ対策施設「特定重大事故等対処施設(特重施設)」について、原子力規制委員会は26日、新たに設置する設備などの工事計画を認可した。九電は工事計画の申請を3分割して行っており、今回で全ての項目が認可された

 玄海原発の特重施設の設置期限は、3号機が2022年8月24日、4号機が同年9月13日となっている。九電は「安全を第一に、引き続き早期完成に向け努力する」としている。
 九電によると今回認可されたのは、3分割目の「新たに設置する設備等」で、新設する建屋に設置する緊急時制御室や発電機などが該当する。1分割目の「原子炉補助建屋等に設置する設備」は昨年11月、2分割目の「新たに設置する建屋等」は3月に認可された。1、2分割目は既に工事に入っており、3分割目も準備ができ次第、着工する。

 特重施設は、原子炉建屋に航空機を衝突させるなどのテロ攻撃があった場合、遠隔操作で原子炉の冷却を維持し、放射性物質が漏れるのを抑制するための施設。期限までに完成しなければ、原発は原則運転停止になる。(中村健人)

28- 六ケ所村・高レベル貯蔵施設 新基準適合

青森・原燃の高レベル貯蔵施設は新基準適合 規制委決定
河北新報 2020年08月27日
 原子力規制委員会は26日の定例会合で、日本原燃の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(青森県六ケ所村)が新規制基準に適合していると認める「審査書」を委員5人の全会一致で決定した。
 審査書は、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)を最大加速度700ガルと設定。火災対策や火山灰、竜巻対策も盛り込んだ。敷地は海抜55メートルにあり、津波の影響は受けないとした。
 同センターは高レベル放射性廃液を固めたガラス固化体を空冷貯蔵する施設で、1995年に操業を開始した。国内の原発から生じた使用済み核燃料の再処理を英国とフランスに委託し、それぞれ520本、1310本のガラス固化体が返還されている
 最大容量は2880本。英国からさらに約380本が返還される予定。同センターで最長50年間保管する。新基準に対応するため、原燃は一時受け入れを中断。耐震補強など安全対策工事などを講じた上で再開する。
 原燃は審査書の決定を受け、11月としていた安全対策工事の完了時期を2021年度上期に延期すると発表した。

2020年8月27日木曜日

廃炉相次ぐ福井の原発 経済効果への期待「空回り」

「原発銀座」と呼ば4原発13基と研究炉2基が集るで福井県の若狭湾沿岸部では、2008年に始まった敦賀市の新型転換炉ふげんの廃炉工事を皮切りに廃炉が相次ぎますが、それでも地域の経済を大きく底上げするものではなかったということです。
 廃炉工事は約20年から30年と長い時間をかけるので1年あたりの工事費用10億円程度と少なく、うま味のある原子炉周りは技術のある大手企業が担当し、地元企業にもうからない隙間的(ニッチ)な仕事しか回ってこないためです。
 また廃炉は工事箇所ごとに工事開始のおよそ1カ月半前発注されますが、不慣れで仕事の段取りが間に合わず、受注できない地元企業も多いとみられます

 東京新聞が廃炉工事の地域経済に及ぼす影響を取り上げました。
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廃炉相次ぐ福井の原発 経済効果への期待「空回り」
東京新聞 2020年8月26日
 原発が集中立地する福井県の若狭湾沿岸部。敦賀半島にある日本原子力発電の敦賀原発1号機が、初の商用原発として動きだしてから半世紀が過ぎた。4原発13基と研究炉2基が集まり、「原発銀座」と呼ばれるこの地も、東日本大震災後は廃炉が相次ぐ。地元にとって、廃炉とは何か。行き場を失った使用済み核燃料はどこで保管されるのか。地域の現状と課題を報告する。(藤共生、今井智文)

◆地元企業の参入進まず
 「廃炉は嶺南(福井県の若狭湾沿岸地域)の経済を大きく底上げするものではなかった。地域経済への効果は薄い」。敦賀商工会議所の伊藤敬一常務理事は、これまでの「廃炉ビジネス」の広がりのなさをため息交じりに振り返る。
 2008年に始まった敦賀市の新型転換炉ふげんの廃炉工事。ビジネスチャンスになると、地元経済界にとって期待は高かった。しかし、徐々に「さめた空気」が広がったという。
 なぜ経済効果が薄いのか。元関西電力大飯原発の所長で、現在は原発廃炉工事のコンサルティングを行う「若狭原子力技術シニアコンサルティング」(敦賀市)の肥田善雄代表は「廃炉工事は約20年から30年と長い時間をかけるから、1年あたりの工事費用が少ない」と指摘する。

◆「もうからないニッチな仕事」
 13カ月に1度の原発の定期検査は数十億円の費用をかける。一方、廃炉は敦賀1号機の場合、1年で10億円ほど。加えて、お金のかかる原子炉周りは技術のある大手企業が担当する。「地元企業にとって、もうからないニッチな仕事」と肥田代表は話す。
 廃炉工事の進み方がよく分からないことも地元企業参入の壁だ。企業の参入を後押しする若狭湾エネルギー研究センター(敦賀市)産業育成部によると、地元企業へのアンケートで「先のことが知りたい」という意見が上がった。
 廃炉は工事箇所ごとに発注されるが、その時期は工事開始のおよそ1カ月半前。仕事の段取りが間に合わず、受注できない地元企業も多いとみられる。

◆企業の熱意、住民との話し合いがカギ
 廃炉ビジネスの可能性を評価する声もある。まちづくりやエネルギーの関連事業に取り組む株式会社「PTP」(福井市)の福嶋輝彦代表は「廃炉は地元企業でも熱意があれば関われる。もうからないなら、大手は参入しないということ。息の長いビジネスとして期待できる」と話す。
 厚生労働相の政務秘書官などを務めたことがあり、海外の廃炉措置を研究した。英中部セラフィールドの原子力施設では、地元の住民と企業が廃炉を話し合う仕組みがあった。「廃炉と同時に地域経済をどうしていくかも話し合う。同じような仕組みが、福井でも必要ではないか」。その先に廃炉ビジネスの広がりもあるとみる。
 県が今年の春に策定したエネルギー政策「嶺南Eコースト計画」は、廃炉ビジネスを柱の一つに据えた。「大きな一歩」と評価する福嶋代表は「地元企業、住民、県。廃炉に向けてみんなが一歩前に出ていかないと」と話した。

◆原発の建屋を「産業遺産に」
 廃炉原発を「産業遺産」にー。若狭原子力技術シニアコンサルティングの肥田善雄代表は、原発の建屋の一部を除染し、見学施設にすることを提案している。「全て壊して更地に戻しては何も残らない。次世代への教育や観光資源として活用してはどうか」と話す。
 肥田代表は「廃炉半島敦賀戦略」と名付けた廃炉に向けた提言をしてきた。県内には、沸騰水型と加圧水型の軽水炉、新型転換炉、高速増殖原型炉などさまざまな種類の原発がある。「日本の各種炉型がそろっている。福井は廃炉技術の中心地になれる」と語る。
 通常の廃炉は、建屋を壊して更地にして返還する。「遺産として残していくには、地元から声が上がらないと実現しない」と、議論の盛り上がりを期待する。

◆たまる使用済み核燃料の保管場所 関電約束果たせる?
 「使用済み核燃料の中間貯蔵施設の候補地がいまだに決まらない。関西電力の原発はすべてごく近い将来にふん詰まりだ」
 6月25日に開かれた関電の株主総会で、筆頭株主の大阪市の代理人として出席した河合弘之弁護士がそう訴えると、他の株主たちから拍手が起きた。
 関電が県内に建設した三つの原発(美浜、高浜、大飯)では、使用済み核燃料プールの容量の約7割が埋まった。原発が稼働を続けるためには、プールが満杯になる前に核燃料を搬出する必要があるが、搬出先を巡る議論は進んでいない
 関電の岩根茂樹社長(当時)は2017年に大飯原発(おおい町)の再稼働の同意を求めた際、西川一誠知事(当時)に中間貯蔵施設の県外候補地を18年中に提示すると明言。だが約束を果たせず、「20年を念頭にできるだけ早く示す」と修正した。その後に関電役員らの金品受領問題が明らかになり、関電には厳しい目が注がれている。
 中間貯蔵施設の候補地とうわさされた和歌山県白浜町では、昨年12月に核のごみの持ち込みを禁じる条例が制定されるなど、阻止の動きも広がった。関電の約束実現には、懐疑的な見方が強まっている。

◆原発立地自治体は核燃料への課税で「抵抗」
 県外の原発立地自治体では、使用済み核燃料の長期保管に「異議」を唱える動きも出ている。東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県柏崎市は、使用済み核燃料に課す税について、燃料搬出を促そうと保管期間が長くなるほど税額を高くする「経年累進課税」にし、10月に開始予定だ。
 中間貯蔵施設や使用済み核燃料の再処理工場(青森県)に搬出できるようになるまでは課税を見合わせるという条件付きだが、桜井雅浩市長は「使用済み核燃料を長期保管することは認めないという市の意思表明だ。累進課税化で、国にも強いメッセージを伝えることができる」と訴える。

 福井県は「発電は引き受けたが、核のごみまでは引き受けていない」とし、使用済み核燃料の県外搬出を求めてきた。杉本達治知事も6月30日、県庁で関電の森本孝社長に「(県外候補地提示の期日まで)あと半年しかない。具体的な形にして早く報告してほしい」と迫ったが、関電の出方を待つ姿勢にとどまる。
 龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「中間貯蔵施設は受け入れる自治体に利益がなく、地元の議論を経ないで決めることは難しい」と、関電の置かれた立場の厳しさを指摘する。
 県内の原発立地の首長からは、専用容器に核燃料を入れて空冷する「乾式貯蔵」の議論を容認する意見も出ており、大島教授は「県として燃料の問題を踏み込んで議論する委員会があってもいい」と提案した。