2017年9月30日土曜日

福島原発 汚染水漏洩の恐れ 水位計指示に70cmの誤差

 福島原発1~4号機建屋周辺の地下水をくみ上げる井戸のうち、4月以降新設された6か所で水位計の設定に誤りがあり、実際の地下水位が指示値よりも約70cm低かったことがわかりました。
 地震によって建屋の地下(階)部分が損傷したため、建屋内の汚水が建屋外部の地下水と流通する状態にあります。建屋内の濃厚汚染水が周囲に漏れないようにするには、常に建屋内の水位を周囲の水位よりも低く保つことが必要で、水位計は地下水の水位を把握するために設置されています。

 建屋内外の水位差を大きくとれば周辺への汚染の拡散量は減りますが、水位差を大きくするとその分周囲の地下水が建屋内に流入し汚染水の発生量が増えます。そこで内外の水位差を一定量にかつ安定的に制御するために設置した水位計に70cmもの指示誤差があれば話になりません。技術的に難しい筈もないので明らかなケアレスミスです。
 全6か所で同じような誤差を示したというのは分かりにくいことですが、いずれにしても海域を直接汚染することを防止するための重要な計器であるにもかかわらず、5か月間もミスが放置されたのは信じられません。改めて東電の安全文化が疑われる話です。
 猛省が促されます。
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福島第一原発 水位計の設定誤りで汚染水漏れのおそれ
NHK NEWS WEB 2017年9月29日
東京電力福島第一原子力発電所で、周辺の地下水の水位が建屋内にたまっている高濃度の汚染水の水位より一時、低い状態になっていたことがわかりました。水位が逆転したことで汚染水が漏れ出したおそれがあり、東京電力が当時の状況を詳しく調べています。

福島第一原発では1号機から4号機の建屋周辺の地下水をくみ上げる井戸のうち、ことし4月以降、新設された6か所で水位計の設定に誤りがあり、実際の地下水の水位はこれまで把握していたよりもおよそ70センチ低かったことがわかりました。

建屋周辺の地下水の水位が建屋内の地下にたまっている高濃度の汚染水の水位を下回ると汚染水が外に漏れ出すおそれがあります。
このため東京電力が実際の水位を調べたところ、1号機の建屋周辺の井戸1か所で、少なくともことし5月17日から21日までに8回にわたって水位の逆転があったということです。

水位は1時間ごとの計測データで、逆転の幅は最大でおよそ2センチだったということですが、逆転した状態がどれだけ続いていたかはわかっていません。

東京電力は、今のところ周辺の地下水に含まれる放射性物質の濃度に異常はなかったとしたうえで、引き続き汚染水が漏れ出していないかなど当時の状況を詳しく調べています。

30- 大洗センター放射能物質飛散事故 原子力機構が最終報告書

 日本原子力機構「大洗研究開発センター」で起きた被曝事故で、機構は29日、保安規定に抵触する恐れがあるとした最終報告書をまとめ、原子力規制委員会に提出しました。
 核燃料物質の貯蔵・保管のガイドラインを年内をめどに定め、管理の改善を図るとしています
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【放射性物質事故】
茨城・大洗の被曝「保安規定に抵触」 
産経新聞 2017年9月29日
 日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(茨城県大洗町)で起きた被曝(ひばく)事故で、機構は29日、添加した樹脂を取り除かずに核燃料物質を貯蔵容器に封入し、その情報を引き継がなかったことが保安規定に抵触する恐れがあるとした最終報告書をまとめ、原子力規制委員会に提出した。核燃料物質の貯蔵・保管のガイドラインを年内をめどに定め、管理の改善を図るとしている。

 事故は6月に発生。作業員が点検で貯蔵容器を開けた際に中のビニールバッグが破裂し、飛散したプルトニウムなどを吸って5人が内部被曝した。容器は21年間開封されていなかった。

 機構は添加されたエポキシ樹脂が放射線で分解され、ガスが発生したと断定。作業員は会話や汗で生じたマスクと皮膚の隙間から放射性物質を吸い込んだとみられ、着用するマスクの種類も再検討する。

2017年9月29日金曜日

原子力規制委が東電に「背徳のお墨付き」 のウラ事情(現代ビジネス)

 柏崎刈羽原発の再稼働について、20日の原子力規制委の定期会合で事実上の合格が決まりました。
 田中委員長は前回の会合で、「安全文化向上に関する事項を東電が保安規程に明記するようであれば本気度が認められる(要旨)」と述べており、小早川・東電社長が同委員会の求めに応じその旨を「保安規程」に明記すると表明したことが決め手になったということです。

 いずれにしても、はじめの頃 田中委員長の任期は18日までとされていましたが、それがいつの間にか22日に延ばされ、任期内の20日に事実上合格したことには、どうしても「予定調和」の感をぬぐえません。
 規制委これまでは東電の適格性の判断所管外としていましたが、東電に関しては「適格性が乏しい」という評価で、それを合格見合わせての根拠にしてきました。
 現代ビジネスの町田 氏は、それが一転して保安規定に盛り込めば大丈夫だとして
お墨付きを与えたことは、今後の展開に大きな影響をおよぼすことだろう
と述べていますそして
企業の適格性という大きな問題を矮小化して、技術基準に過ぎない保安規程に落とし込んだうえ、柏崎刈羽原発の運転再開にお墨付きを与えることは不適切な対応
であり、最後の段階で田中委員長がその判断を下したことは
東電の安易な原発再稼働を助長し、新たな原子力事故の発生リスクを膨らませ、それを国民に負わせることになりかねない」と警告しています
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原子力規制委員会が東電に「背徳のお墨付き」を与えたウラ事情
柏崎刈羽原発「適格」に異議アリ!
町田 徹 現代ビジネス 2017.09.26 
 経済ジャーナリスト
「所管外」の判断に踏み込んだ 
柏崎刈羽原子力発電所(6・7号機)の再稼働へ向けて、東京電力が最大のハードルの一つをクリアした。
決め手になったのは、原子力規制委員会が開いた定期会合(9月20日)で、小早川智明・東電社長が同委員会の求めに応じ、安全文化を向上させる方針を「保安規程」に明記すると表明したことだ。
保安規程は、電力会社が作成して規制委が認可するもので、電力会社に遵守義務が発生する。規制委は小早川発言を評価して、東電を原子力事業者として適格とみなし、今週半ばにも事実上の運転再開の“お墨付き”となる審査書案をまとめるという。

規制委がお墨付きを与えると、再稼働に向けて残る大きなハードルは、原発の地元である新潟県の同意だけとなる。ただし、新潟県の米山隆一知事はかねて、「同意の判断には福島第1原発事故の検証が欠かせない。少なくとも3~4年かかる」との立場をとっており、ただちに再稼働が実現するわけではない。
一般の電力会社と違い、チェルノブイリ原発事故と並ぶ過去最悪の原子力事故を起こした東電に、原子力事業を継続する資格があるか否かは、いまなお世論の分かれるところだ。そうしたなかで、規制委がこれまで所管外としてきた東電の適格性の判断に踏み込み、お墨付きを与えたことは、今後の展開に大きな影響をおよぼすことだろう。
それにしても、任期満了をわずか2日後に控えた田中俊一・前原子力規制委員会委員長は、なぜ退任直前になって、東電の適格性審査に踏み込んでお墨付きを与えたのだろうか。さまざまな憶測が飛び交う背景を大胆に推論してみたい。

絶対的な安全を保証するものではない
原子力規制委員会は、福島第1原発事故をきっかけに、業界とのなれ合いを批判された原子力行政を是正するため、環境省の外局として2012年9月に発足した。
設置目的として、国民の生命・健康・財産の保護、環境の保全、そしてわが国の安全保障の確保が明記されている。委員長と4人の委員は中立公正な立場で独立して職権を行使し、原子力事故などを予防する使命を担っている。
同委員会は2013年7月、原発再稼働審査の事実上の尺度となる「新規制基準」を制定。これまで九州電力・玄海原発、四国電力・伊方原発、関西電力・高浜原発など、西日本各地の加圧水型原子炉(PWR)の再稼働を容認してきた。

ただ、規制委員会はこれまで、再稼働容認の拠りどころとしてきた新規制基準を、建築基準法のような強度に関する指針と位置付け、これを満たしたからと言って絶対的な安全を保証するものではないし、電力各社が原子力事業者として原発を運転する資質(適格性)があると判断したわけでもないと説明してきた。田中前委員長も、一貫して「(新規制基準に合格しても)安全とは私は言わない」とくり返してきた。
そのように現実を真摯に説明する規制委員会の姿勢は、原子力エネルギーそのものへの信頼回復に欠かせないとみられていた。加えて、原子力に関する問題を規制委員会がすべて背負い込むスタンスを取らないことは、電力各社が自ら地元の同意を得る必要があることの、裏付けの一つになっていた。

また、そうした規制委員会の存在は、煮え切らない歴代政権に対して、エネルギー政策における原子力の位置づけを明確化するよう、あるいは、万が一の事故に備えて周辺住民の避難対策を整備する責務を果たすよう、促す役割も果たしていた。

再稼働が安易に実現しかねない
ところが、原子力規制委員会は今回唐突に、技術面に限定して審査してきたこれまでの姿勢をかなぐり捨て、東電が保安規程に安全文化を向上させる方針を書き込めば、原子力事業者としての適格性が保てるとの判断を打ち出した。5年にわたって委員会をリードしてきた田中委員長の任期が9月22日に迫っており、ぎりぎりのタイミングでの決断だった。
田中委員長はかねて「福島出身者として、福島第1原発事故を風化させないために委員長職を引き受けたと公言してきた。オフレコでは、東電には原子力運転の資格なしと発言したこともある人物」(電力会社関係者)。
それだけに、原子力や電力業界のウォッチャーの間では、「越権ととられかねない行為を自ら犯すのはおかしい。何らかの強い政治的圧力が背景にあるのではないか」(原子力問題に詳しいエコノミスト)と、規制委員会の“変節”に首をかしげる向きが多い。

田中氏は委員長退任後、被災地(福島県飯館村)で復興に尽くすと漏らしている人物だ。東電の適格性に関して「田中委員長自身が、自ら何らかの留保をつけておきたかったのではないか」(電力会社関係者)という肯定的な見方がないわけではない。
しかし、足元の状況は、(口先だけとはいえ)「脱原発」を掲げていた民主党政権時代とはだいぶ違う。
安倍首相は再稼働問題に無関心とされるが、官邸や経済産業省は野放図な積極論者が占めている。これから唯一の歯止め役となる新潟県の米山知事についても、「抵抗は次回の知事選までだろう」というのがもっぱらの見方で、柏崎刈羽原発の再稼働が安易に実現しかねない状況にある。

ゾンビ企業に「お墨付き」は不適切
そこで、田中委員長らが一計を案じたとの見方が出てくるのだ。
福島第1原発の廃炉に取り組む覚悟や、原発の運転にあたって経済性よりも安全性を優先することなどを、順守義務のある保安規程で明文化しておけば、どんな些細なことでも法令違反に問えるようになる。
高速増殖炉「もんじゅ」の事例で、文科省に対して「日本原子力研究開発機構ではダメだ」と運営主体の変更を勧告し、最終的に廃炉に追い込んだように、田中委員長らは原子力事業者を実質的に規制する道を担保できると踏んだに違いない、というわけだ。
実際、田中委員長は9月20日の定例記者会見で、「もんじゅは、自分たちが決めた保安規程が守れないから勧告を出した」「東電は頭から適格性がないと否定する状況にない」と述べている。

しかし、動機は何であれ、規制委員会がこれまでより大きく踏み込んで東電の柏崎刈羽原発にお墨付きを与える行為は、大きなリスクを伴うものだ。
本来、原子力事業者の適格性というのは、その企業の経営が信頼に足るか、企業としてのガバナンスが効いているかなどを含めて総合的に判断すべき問題だ。その意味で、東電は、自ら負担しきれない賠償を抱える事故を起こし、破たん処理が避けられなかったにもかかわらず、国策救済を受けたゾンビ企業である。
広瀬直己前社長を擁護する気は毛頭ないが、意に反して解任され経営陣にも残れなかった同氏の解任劇を見ても、国有化が仇となって経営陣が経営責任を果たせない実情は明らかである。

そもそも、東電は未曽有の事故を引き起こした企業だ。その計り知れない悪影響を考えれば、もんじゅのように数限りないトラブルを起こしたら適格性を否定するという発想そのものに、大きな疑問を感じずにはいられない。
はっきり言って、企業の適格性という大きな問題を矮小化して、技術基準に過ぎない保安規程に落とし込んだうえ、柏崎刈羽原発の運転再開にお墨付きを与えることは不適切な対応だ。
こうした安易な発想をしてしまうこと自体、あの未曽有の事故を引き起こした安易な「原子力ムラ」のもたれ合い体質から抜け出していないことの証左と受け止められてもおかしくはない。
田中委員長の最後の判断は、東電の安易な原発再稼働を助長し、新たな原子力事故の発生リスクを膨らませ、それを国民に負わせることになりかねないものなのだ。

29- 「希望の党」綱領で「原発30年ゼロにむけて工程表」と

小池氏、消費増税凍結を公言 希望の党綱領、原発も「30年ゼロ」
Sankei Biz  2017年9月28日
 小池百合子東京都知事が代表を務める新党「希望の党」のメンバーは27日、都内のホテルで設立の記者会見を開き、消費税増税の凍結を訴えた。小池氏は「原発ゼロ」も打ち出し、原発を推進する自民党との対立軸が鮮明になった。

 同日公表の党綱領に掲げた経済政策は「税金の有効活用」「民間のイノベーションの最大活用」。今後、アベノミクスの対案となり得る具体的な構想を提示できるかどうかが有権者から問われることになる。

 これまで安倍晋三首相は消費税率10%への増税を2度延期した。2019年10月の実施にも先送り観測が強まる中で、増税分を財源にした教育無償化を首相自ら提唱。26日のテレビ番組では、「リーマン・ショック級の事態が起こらない限り基本的に引き上げていく」と言及した。民進党が唱える消費税収の教育財源化も増税実施が前提となる。

 これに対して小池氏は、景気回復に実感が伴っていないとアベノミクスの効果に疑問を呈し、増税凍結を公言した。
 一方、原発再稼働をめぐっては、小池氏は「30年の(原発)ゼロに向けて工程表を作る」とし、25日には脱原発を説く小泉純一郎元首相と面会するなど、脱原発を求める世論の受け皿作りを狙う
 民進党も原発ゼロを目指すものの、実現時期は「30年代」とやや遅めだ。自民党は原発を重要な電源と位置付けて一定程度活用する方針を明確にしている。

2017年9月28日木曜日

東電柏崎原発 事実上「合格」へ

 原子力規制委27定例会合で、柏崎刈羽原発67号機が新規制基準を満たしているとする「審査書案」を提示し、取りまとめの議論を始めました。
 来月4日の次回定例会合で了承する方針です
 審査書は聞きなれませんが、事実上の審査合格す。
 そなると、今後意見公募や東電の適格性についての経産相への意見照会を経て、年明け以降に正式合格の見込みです
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柏崎刈羽原発6・7号機 再稼働審査 来週にも事実上合格へ
NHK NEWS WEB 2017年9月27日
新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機について、原子力規制委員会は27日、再稼働の前提となる審査に事実上合格することを意味する審査書の案を取りまとめる作業に入りました。早ければ来週にも取りまとめが行われる見通しです。
27日開かれた原子力規制委員会では、柏崎刈羽原発6号機と7号機について、東京電力の地震や津波の想定や重大事故対策に対する評価などを示した審査書案が提示されました。

この中で、想定される最大規模の地震の揺れは原発の北西の沖合にある活断層を基に2300ガル、津波の高さは海抜8.3メートルとし、原発の耐震や浸水対策は妥当だとしています。

また、核燃料を冷やせなくなり、格納容器などが壊れ、放射性物質が外に放出されるのを防ぐ重大事故対策として、新たに設置した冷却や電源設備を使って対応する手順などが示され、こうした対策が新たな規制基準に適合していると評価しています。

6年前に事故を起こした福島第一原発と同じタイプの原発の審査書案が示されるのは初めてで、委員からは、事故の際の態勢や設備の機能などについて、質問が相次いだため議論は27日で終わらず、来週も議論を続けることになりました。

柏崎刈羽原発の審査をめぐっては、東京電力が原発を運転する適格性について前回の会合で了承されていて、規制委員会は、早ければ来週の会合で審査書案の内容に問題が無いことを確認し、適格性があることを条件付きで認める文書とともに取りまとめる見通しです。
委員長「まとまるかは はっきり言えない」

27日の原子力規制委員会の会合で、柏崎刈羽原発6号機と7号機が事実上合格することを意味する審査書案が示され、次回の会合でも議論することになったことについて、更田豊志委員長は記者会見で、「次回も各委員から質問があるだろうし、納得や共通理解が得られなければ、議論を続けるということもあるだろう。きょう、ずいぶん時間を取ったので次回、取りまとめになると考えることもできるが、今、まとまるかどうか、はっきりしたことは申し上げることはできない」と述べました。

28- ジェット水流技術で福島原発の廃炉作業に参画

 スギノマシンと国際廃炉研究開発機構(IRID)は27日、福島原発の廃炉作業向けに開発している障害物の切断技術や多関節ロボットを富山県滑川市で報道陣に公開しました。
 研磨剤を混ぜたジェット水流で金属を切断するジェット切断技術で、格納容器内にある障害物をジェット水流で切断するものです。
 同機構は、燃料デブリの取り出し作業が始まる2021年に向け、開発作業を加速させるとしています
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ジェット水流技術で福島原発の廃炉参画 スギノマシン
日経新聞 2017年9月27日
 スギノマシンと国際廃炉研究開発機構(IRID)は27日、福島第1原発の廃炉作業向けに開発している障害物の切断技術や多関節ロボットを富山県滑川市で報道陣に公開した。廃炉作業の最初の難関といえる溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し作業が始まる2021年に向け、開発作業を加速させる。

 11年に放射能漏れ事故を起こした福島第1原発の1~3号機内部には800トン超の燃料デブリが残っているとみられ、除去できなければ30~40年とされる廃炉作業が進まなくなる。

 スギノマシンは「アブレシブジェット切断」という研磨剤を混ぜたジェット水流で金属を切断する技術を使い、格納容器内にある障害物を切断する。炉内の状況はわかっていないことも多く、「非接触で切ることに意味がある」(同社の酒井英明執行役員)。研磨材を含まない水だけの切断技術も福島第1原発への応用を目指している。

 同社が参画するデブリの取り出しはIRIDと日立GEニュークリア・エナジーが主導。デブリの位置に応じて建屋の上と横から取り出す方針で、手法を詰めている。

2017年9月27日水曜日

福島第一原発 1・2号機の核燃料取り出し 3年遅れに

 福島原発の廃炉工程において、当面の課題である燃料プールから核燃料の取り出しの開始時期を1・2号機については前回決定よりも3年遅らせ、2023年度をめどとすることを決めました。3号機については、これまでどおり来年度中頃から取り出しを始めるとしています。

 工程の見直しでは、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が構想しているデブリ取出しの気中工法について、その危険性が改めて指摘されました。
 水中でデブリを取り出すのと気中で取り出すのでは、周囲への放射線の照射量(=危険性)は天と地ほども違うので、具体的方法の検討に当たっては、あらゆるケース(予期しない作業時の事故)について漏れなくしかも十分に検討しておくことが必要です。凍土遮水壁のような無様なことは絶対に避けなくてはなりません。
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福島第一原発 1・2号機の核燃料取り出し 3年遅れに
NHK NEWS WEB 2017年9月26日
福島第一原子力発電所の廃炉の工程表が2年ぶりに見直され、1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期について、政府は、がれきの撤去や除染などを慎重に進めるとして、前回の工程表より3年遅らせ、2023年度をめどとすることを決めました。
福島第一原発の廃炉への道筋を示す工程表は、対策や調査の進展を踏まえ政府の会議で26日、2年ぶりに見直されました。この中で、議長を務める菅官房長官は「福島第一原発の安全で着実な廃炉は、福島の復興、再生の大前提だ。今後も困難な作業が発生することも想定されるが、しっかり進めていただきたい」と述べました。

新たな工程表では、1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期について、がれきの撤去や除染などを慎重に進めるとして、前回の工程表より3年遅らせ、2023年度をめどとするとし、3号機については、これまでどおり来年度中頃から取り出しを始めるとしています。

一方、1号機から3号機の溶け落ちた核燃料が構造物と混じり合った「燃料デブリ」の取り出し方の方針については、格納容器を完全に水で満たさずに取り出す「気中工法」と呼ばれる方法を軸に進め、「燃料デブリ」を最初に取り出す号機や方法を確定する時期は、来年度上期から2019年度に遅らせますが、実際に始める時期は変えず、4年後の2021年としています。
気中工法は、放射性物質が飛散するおそれがあるため、安全対策の徹底を図ることが必要で、今後、追加の調査結果などを踏まえ、具体的な計画を立てられるかが課題になります。

一方、すべての廃炉作業を終える時期については、これまでと同じく廃炉作業を始めてから30年から40年後(2041~2051年)としています。
経済産業省は「廃炉作業を終える時期は燃料デブリの取り出しを4年後に始められる見通しがあることから、現時点では変更する必要はないと考えている」としています。

日本原子力学会の「廃炉検討委員会」の委員長で、法政大学の宮野廣客員教授は、「工程表では、これからの5年ほどは見えているが、そのあとがはっきりせずに30年から40年で終えるとなっている。せっかく見直すのなら、廃炉作業全体を通してもっとしっかり検討してほしかった」と話しています。

東電社長「責任持ち廃炉やり遂げる」
東京電力の小早川智明社長は、「地元の皆さまとの対話を重ね、地元の思いや安心、復興のステップに配慮しつつ、さまざまな課題を克服し、事故を起こした当事者として、責任をもって廃炉を安全にやり遂げてまいります」というコメントを出しました。

世耕経産相「安全確保を最優先 今後も長い道のり」
世耕経済産業大臣は閣議のあとの会見で、「安全確保を最優先に、リスク低減を重視する姿勢を堅持して、廃炉汚染水対策をしっかり進めていく。ここまで6年かかり今後も長い道のりがあると思うが、しっかり取り組んでいく」と述べました。

また、世耕大臣は1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期を前回の工程表より3年遅らせたことについて、「1日も早い廃炉を期待している地元の皆さんにとっては決して喜ばしいことではないが、やはり安全を重視しながら着実に進めることが重要だ」と述べました。

専門家「自然災害リスクも考慮した具体的な設計を」
2年ぶりに見直された福島第一原子力発電所の廃炉の工程表について、日本原子力学会の「廃炉検討委員会」の委員長で、法政大学の宮野廣客員教授は「これまでの工程表もそうだが、今回の工程表でも直近の5年ほどは見えているがそのあとがはっきりせず、30年から40年で終えるとなっていて、全体の工程が見えない。廃炉を通じて必要な人材育成もしなければならず、せっかく見直すのであれば、廃炉作業全体を通してどの工程がどう続くのか、もっとしっかり検討して見通しを示してほしかった」と話していました。

また、燃料デブリの取り出しに向けて「気中工法」を軸に検討を進めるとしたことについて、「気中状態ということは、放射性物質が飛び出すおそれがあるということで、閉じ込めるための設備をどうするのかが非常に難しい問題になる」と指摘したうえで、実際にそうした設備を作るには、燃料デブリの取り出し中の事故を防ぐために、「台風や地震、津波のリスクをどう考えるかということまで評価し、具体的な設計を考えないといけない」と話し、気中工法を実現させるには検討すべき課題は多いと指摘しています。

廃炉への工程表は
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉への道筋を示す工程表は、作業の期間を第1期から第3期までの3つに分けていて、現在は、燃料デブリの取り出しを始める前の第2期に当たります。
第1期は、福島第一原発1号機から4号機のいずれかの使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始めるまでとされていて、4号機で平成25年11月にその作業が始まったことをもって第1期は終了しています。
第2期は、第1期の終了から、溶け落ちた核燃料と構造物が混じった「燃料デブリ」の取り出しを1号機から3号機のいずれかで始めるまでとされ、4年後の2021年までに取り出しを始めるとしています。現在は、第2期に当たります。
第3期は、燃料デブリの取り出しや汚染した建屋の解体を終え、放射性廃棄物を敷地の外に運び出すなどすべての廃炉作業が終わるまでとなっていて、廃炉作業を始めてから30年から40年後までに終えるとしています。

27- 御殿場、小山のキノコから基準オーバーのセシウム

野生キノコから基準超えセシウム 御殿場、小山
静岡新聞 2017年9月26日
 静岡県は25日、富士山周辺地域で採取した野生キノコ7検体の放射性物質検査を実施した結果、御殿場市のキノボリイグチと小山町のシロヌメリイグチから食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。県によると、1キロ当たりの放射性セシウムは御殿場市のキノボリイグチが210ベクレル、小山町のシロヌメリイグチが130ベクレル。県は関係機関や事業者に採取や出荷の自粛を呼び掛けるとともに、県民に注意喚起している。
 両市町の野生キノコは2012年に基準値超えの放射性物質が検出されて以来、原子力災害対策特別措置法に基づき出荷制限が継続中。県は11年の東京電力福島第1原発事故を受け、富士山周辺地域で定期的に放射性物質検査を行っている。

2017年9月26日火曜日

映画 反原発の「知事抹殺」を問う 沖縄名護で上映

 福島県の佐藤栄佐久・元知事が逮捕され、有罪が確定した汚職事件の背景を追ったドキュメンタリー映画「『知事抹殺』の真実」が24日、名護市民会館で上映され200人が駆けつけました。名護に映画館を復活させようと活動するやんばるシネマの主催です。

 2016年の公開以来、全国各地で話題を呼んでいる映画で、原発政策を疑問視していた佐藤さんや関係者の証言を基に取り調べや公判の場面を再現しています

 やや詳しい解説は下記の記事(レーバーネット)に載っています。

   (関係記事)
9月5日 「知事抹殺」の真実 佐藤栄佐久元知事のたたかい
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映画 反原発の「知事抹殺」を問う 名護で上映 /沖縄
毎日新聞 2017年9月25日
【名護】福島県の佐藤栄佐久・元知事が逮捕され、有罪が確定した汚職事件の背景を追ったドキュメンタリー映画「『知事抹殺』の真実」が24日、名護市民会館で上映された。
 名護に映画館を復活させようと活動するやんばるシネマの主催。佐藤さんは06年に東京地検特捜部に逮捕され、同年に辞職した。同じく有罪になった実弟は取り調べで、検事から「なぜ知事は原発反対なのか」と問われていた。伊是名村出身で福島県に住む名嘉幸照さんが沖縄の基地問題と原発を「負の遺産」と指摘する場面もあった。

 安孫子(あびこ)亘監督(58)は東日本大震災後、福島県を拠点に活動し佐藤さんの取材を続けた。安孫子監督は「この事件は県民や国民に正しく伝わっていない。本当の真実はどこにあるのか。1人でも多くの人にこの事件を知ってほしい」とあいさつした。

 安孫子監督と対談した琉球新報社読者事業局の松元剛次長は「国にたてつく知事を威圧する検事の姿が表れていた」と指摘した。映画を見た野村務さん(77)は「沖縄と福島のつながりを感じ、心の底から気を引き締めた」と感想を述べた。

 25日は沖縄市民劇場あしびなー、26日は南風原中央公民館で上映される。安孫子監督のあいさつやトークイベントもある。(琉球新報)

浜岡建設受け入れ50年 今も原発マネーに依存

 中日新聞が、浜岡原発立地時に浜岡町長を務めた鴨川義郎氏にインタビューしました。
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浜岡建設受け入れ50年 原発マネー依存 今も静岡
中日新聞 2017年9月25日
 旧浜岡町(御前崎市)が中部電力浜岡原発の建設を受け入れてから二十八日で五十年を迎える。地元は事故やトラブルと向き合いながら、原発が落とす交付金などに頼ってまちづくりを進めてきた。しかし、二〇一一年三月の福島第一原発事故以降、南海トラフ巨大地震の想定震源域に立つ浜岡原発は全炉停止したまま。先行きは見通せない。
 町は一九六七(昭和四十二)年九月二十八日、安全確保などを条件に原発計画を受け入れた。約八年半後に1号機が営業運転を開始。二〇〇五年一月までに2~5号機も続いた。

 半世紀前は、農業が産業の柱だった旧浜岡町。これまでに約五百億円の電源三法交付金が入った。総合病院や図書館などが次々と建ち、道路も整備されて街並みはみるみる変わった。ただ、原発誘致に携わった元浜岡町長の鴨川義郎さん(90)は「裕福になり、職員や住民に知恵がなくなった」と、原発マネーに依存するあまり、自主的な行政運営能力が劣化した状況を憂う。
 御前崎市の一七年度一般会計当初予算百七十一億円に占める原発関連収入の割合は27%に上るが、固定資産税の減少などに伴って減っている。3、4号機の再稼働を巡る原子力規制委員会の審査は、優先した4号機の申請から三年半を過ぎた今も序盤の段階。耐震設計の目安となる地震の揺れなどについて、規制委と中部電力の間で議論が続いている。
(古根村進然)

◆職員や住民自主性失う 鴨川義郎元浜岡町長
 あの日から50年。「原子の火」がすべて消え、岐路に立つ町で、長く浜岡原発を見続けた住民たちに今の思いを聞いた。
 原発の建設を受け入れた当時、福島のような事故が起きるとは思っていなかった。責任は東電にあるだろう。原発立地自治体は財力が華々しかったが、住民は最後、先祖伝来の土地を離れて散り散りになっちゃった。気の毒だよ。
 福島事故後、浜岡原発再稼働の同意範囲を県と御前崎市のみとせず、周辺自治体にも求める声が大きくなった。
 福島という大きな事故があったでしょ。大勢の人が納得しなきゃ再稼働できない。全部が全部同意というわけにはいかんが、(五キロ圏内の)牧之原市が同意の範囲に入るのは当然だね。

 一九六七年四月の旧浜岡町の町長選。当選した故河原崎貢さんはその翌月に初めて原発計画を知った。町企画室長だった鴨川さんとともに、建設候補地の佐倉地区出身で産経新聞社長などを務め「財界四天王」と称された故水野成夫さんに相談に出向き、「泥田に金の卵を産む鶴が舞い降りたようなもの」と受け入れを勧められた

 お茶、たばこ、サツマイモ。町の産業は農業だけだった。貧しいねぇ。新しい事業も道路の舗装も、河川の改修もできません。職員は使用済みの封筒の裏表をひっくり返し、議員に出す通知に使っていた。私は原発計画を、元町長の父啻一(ただいち)から町長選前の六七年三月ごろに聞いていた。町長選の争点にならないように「言うなよ」と口止めされてた。産経新聞に載った七月頃から町民が騒ぎ出した。役場で化学を知っていたのは、専門学校で農芸化学を学んだ私ぐらい。町民には、原爆じゃなく、管理された原子力だから安全だと伝えるのが大変だった。
 浜岡原発1号機が稼働する中、マグニチュード8程度の地震が起きるという東海地震説が七六年に発表。七九年の米スリーマイル島原発事故、八一年には敦賀原発1号機放射能漏れと問題が集中、浜岡原発にも地元住民から冷ややかな視線が注がれた
 八二年に着工した3号機増設の時が一番大変だった。生活もまだ不便で、増設するなら町立病院を造らなきゃという気持ちがあった。中電からは十八億円かな、病院建設費の足りない分をもらった

 原発は五基できた。市は交付金の恩恵を受け、浜岡原発で働く約千五百人が市内で暮らしている。
 依存している。金がなければ何とかして財源を生みだそうとするが、あるからのうのうとするわけだ。職員も住民も。原発がないと日本はやっていけない。地域発展や国策のために協力してきた。浜岡は防潮堤を造り、福島のようにはならないと思う。でも、河原崎町長も言っていたが、一生十字架を背負っている。何かあれば、当時の責任者として、受け入れた側の責任を感じる。(浜岡原発取材班)

 <かもがわ・よしろう> 1927年7月19日、旧浜岡町佐倉出身。同町役場企画課長、総務部長を経て75年、同町長に就任。87年まで3期務めた。職員時代を含めて浜岡原発1~4号機の新増設に携わった。父啻一さんも60~63年に町長だった。

26- 小池氏 新党代表に 「原発ゼロ」を掲げるも

 小池百合子東京都知事は25日記者会見し、これまで自身に近い若狭勝衆院議員らが新党結成を目指して協議してきたものを「リセットして私が立ち上げる。直接絡んでいきたい」と明言しました。党名は「希望のです。

 党の理念として(1)希望の政治(2)希望を守る環境・エネルギー(3)憲法改正を挙げ、具体策に「原発ゼロ」を明記し「ゼロを目指す工程を作成しなければならない」と強調しました。

「原発ゼロ」自体は歓迎ですが、極右として知られている人なので憲法改正をはじめ、どのような具体的政策をもっているのか注目です。
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小池氏 新党代表に 「原発ゼロ」「改憲」掲げる
東京新聞 2017年9月26日
 小池百合子東京都知事は会見で、自身に近い若狭勝衆院議員らが新党結成を目指して協議してきたことに触れ「これをリセットして、私が立ち上げる。直接絡んでいきたい」と明言。党名は小池氏の政治塾「希望の塾」からの引用だと説明し、新党の顔として衆院選に全面関与していく姿勢を鮮明にした。次の衆院選に出馬しない考えも示した。
 小池氏は新党の理念も発表し(1)希望の政治(2)希望を守る環境・エネルギー(3)憲法改正-など提示。具体策に「原発ゼロ」を明記し「ゼロを目指す工程を作成しなければならない」と強調した。会見後、原発ゼロを訴える小泉純一郎元首相と会い、激励されたことも記者団に明らかにした

 ほかの具体策は議員定数・議員報酬の削減、徹底した情報公開など。消費税増税は「景気回復に水を差す恐れがある」と是非を議論すべきだと主張した。
 知事を続けながら、国政政党を立ち上げる意義に関し「都政により磨きをかけ、スピード感を確保していくためには、国政への関与が必要だ」と説明した。
 衆院選の候補者擁立方針では「これまで接点のあった新人の方々、議会経験のある方々に全国各地で出馬していただく」との意向を示した。

◆新党9人が届け出
 関係者によると「希望の党」は25日、政党設立届と国会議員9人の名簿を東京都選管に届け出た。国会議員は以下の通り(五十音順、敬称略)。
【衆院議員】
木内孝胤(比例東京)長島昭久(比例東京)細野豪志(静岡5区)松原 仁(比例東京)
笠 浩史(神奈川9区)若狭 勝(東京10区)
【参院議員】
行田邦子(埼玉)中山恭子(比例)松沢成文(神奈川)


新党で小泉元首相と会談 脱原発めぐり意見交換 小池都知事
時事通信社 2017年9月25日
 東京都の小池百合子知事は25日午後、都庁で小泉純一郎元首相と会談した。自ら代表に就く新党「希望の党」の発足や、脱原発を通じた自然エネルギーの普及などをめぐり意見を交換したという。
 会談時間は20分程度。小池氏は会談後、都庁で記者団に「(小泉氏から)頑張れと励まされた」と述べた。小池氏は会談前に行われた新党結成を表明する記者会見で、「原発ゼロ」を政策の一つに掲げる意向を表明していた。小池氏は2003年の第2次小泉改造内閣で環境相として初入閣した。 

2017年9月25日月曜日

原発事故 被災者の心の傷深く

 事故から6年半が過ぎた現在も約3万5千人が福島県外での避難生活を余儀なくされ、福島県から隣接する茨城県への避難者は約3500人に上ります
 その人たちを対象に昨年末に実施したアンケートで、2割が「最近30日以内に自殺したいと思ったことがある」と回答し、また回答者の4割近くに心的外傷後ストレス障害(PTSD)の疑いがありました。
 東日本大震災と原発事故による被災者の心の傷の深さがあらためて浮き彫りになりました。
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原発事故 被災者の心の傷深く 茨城に避難の2割「最近自殺考えた」
東京新聞 2017年9月24日
 二〇一一年の東京電力福島第一原発事故で福島県から隣接する茨城県に避難した人を対象に昨年末に実施したアンケートで、二割が「最近自殺したいと思ったことがある」と回答したとの結果を筑波大や茨城県、避難者支援団体「ふうあいねっと」などのチームがまとめた。
 回答者の四割近くに心的外傷後ストレス障害(PTSD)の疑いもあり、東日本大震災と原発事故による心の傷の深さがあらためて浮き彫りとなった。
 事故から六年半が過ぎた現在も約三万五千人が福島県外での避難生活を余儀なくされ、茨城県への避難者は約三千五百人に上る。チームの太刀川弘和・筑波大准教授(精神医学)は「二割の人が少しでも自殺を考えるというのは深刻で、引き続き長期的な精神的ケアが必要だ」と話している。

 アンケートは、避難者への支援策を探ろうと、昨年十~十二月、福島県から茨城県に避難している千四百七十人を対象に調査票を郵送。三百十人から回答があった。
 現在の心理状態を問う質問に67%が「何らかの悩みやストレスを抱えている」と答えた。
 心理状態の変化に関する質問では「震災直後は心の状態が悪かった」が72%で、「現在も心の状態が悪い」が42%と回復がみられた。しかし「最近三十日以内に自殺したいと思ったことがある」は20%に上った。
 専用の評価尺度を用いて回答を分析した結果、39%の回答者にPTSDの疑いがあった。
 太刀川さんは「時間がたつにつれて徐々に心の状態が回復する人が増える一方で、現在もさまざまな精神症状に苦しむ被災者がいることを忘れてはいけない」と指摘している。