2021年8月31日火曜日

新天地で孤立、定着に課題 楢葉町が住民との交流拠点整備へ

 原発事故で避難指示などが出た福島県の12市町村と国、県が連携して、帰還の動きが鈍い若い世代の人口回復に向けた移住施策を強化したことで、20年度の12市町村への移住者らが過去最多となるなど効果が表れつつある一方で、地域になじめずに短期間で去ってしまうケースも目立ち始めました。

 楢葉町はその理由を「移住後に地域住民と接点を持てる場が少ない」と分析し、旧南保育所を改修して拠点施設として活用する方針を固めました。調理室を設けて地元の主婦による料理教室の開催や、地域のサークル活動に拠点を利用してもらうことで移住者と住民の交流を促すこととし、移住者向けの市民大学講座を定期的に開地域性などについて学びを深めるほか、ビジネスなどで触れ合いの場となる共同作業スペースを設置します。
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新天地で孤立、定着に課題 楢葉、住民との交流拠点整備へ
                        福島民友 2021年08月30日
 東京電力福島第原発事故で避難指示などが出た12市町村と国、県が連携して、帰還の動きが鈍い若い世代の人口回復に向けた移住施策を強化している。2020年度の12市町村への移住者らが過去最多となるなど効果が表れつつある一方で、地域になじめずに短期間で去ってしまうケースも目立ち始めた。新天地でいかに豊かな人間関係を築けるかが新たな課題として浮かび上がる中、楢葉町は移住者と地元住民が交流を深める拠点施設の整備を計画するなど、地域定着を支える取り組みをスタートさせた。
 被災地への移住促進を巡っては、政府が12市町村に移住する人に対し、最大200万円の支援金を支給する制度を創設するなど移住開始に向けた支援は手厚い。各市町村も引っ越し費用の一部負担など独自の施策を打ち出している。県によると、20年度に12市町村に新たに移住または二地域居住したのは155世帯で、19年度の115世帯から40世帯増え、調査を始めた06年度以降で過去最多となった。
 一方、双葉郡で移住促進などに取り組む団体のスタッフは「孤独感から1年未満で去ってしまう移住者もいた。移住促進に向けては雇用の創出や生活環境の充実が重視されがちだが、地域に溶け込んでもらう仕組みが必要」と訴える。
 県地域振興課は短期間で去ってしまった移住者数について「把握できていない」としながらも「地域の文化や慣習になじめなかったことや、思い描いていた生活の理想と現実のギャップに悩み、離れてしまう人はいる」と指摘した。
 楢葉町は「移住後に地域住民と接点を持てる場が少ない」と課題を分析し、交流拠点施設を整備する方針を固めた。来年度の開設を目指し、JR木戸駅から北に約500メートルの旧南保育所を改修して拠点施設として活用する。調理室を設けて地元の主婦による料理教室の開催や、地域のサークル活動に拠点を利用してもらうことで移住者と住民の交流を促す。移住者向けの市民大学講座を定期的に開いて地域性などについて学びを深めるプログラムを用意するほか、ビジネスなどで触れ合いの場となるコワーキング⇒共同作業スペースを設置する。
 町によると、町内の居住者は4131人(7月31日現在)で、避難者を含めた人口に占める割合(町内居住率)は61.26%。避難指示が15年9月に解除され少しずつ住民は戻っているが、この1年の町内居住者の増加数は頭打ちの状況だ。町は本年度から年間80人強の移住者らを呼び込む目標を掲げており、町政策企画課は「交流拠点で絆を紡ぎ、定着できるよう後押ししたい」としている。

31- 前市長の桜井氏が立候補を表明 来年1月告示の南相馬市長選

 任期満了に伴う南相馬市長選(来年1月13日告示、23日投開票)で、前市長の桜井勝延氏(65)が30日、市内で記者会見し、無所属で立候補すると表明しました。
 第1原発の処理水に関しては「海に流せば漁業者らは大きなダメージを受ける。技術開発により無害化できるまで国が(陸上で)保管すべきだ」と海洋放出に反対する姿勢を示しました。
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     ⇒18.01.22)脱原発の櫻井氏 3選ならず
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前市長の桜井氏が立候補を表明 来年1月告示の南相馬市長選
                        河北新報 2021年08月31日
 任期満了に伴う南相馬市長選(来年1月13日告示、23日投開票)で、前市長の桜井勝延氏(65)が30日、市内で記者会見し、無所属で立候補すると表明した。
 桜井氏は「市民がもっと希望を持てるような政策を展開し、東京電力福島第1原発事故からの復興を進めたい。現在の市役所はリーダーシップの欠如で活力が低下している」などと立候補の理由を説明した。
 第1原発の処理水に関しては「海に流せば漁業者らは大きなダメージを受ける。技術開発により無害化できるまで国が(陸上で)保管すべきだ」と海洋放出に反対する姿勢を示した
 桜井氏は南相馬市出身、岩手大卒。旧原町市議1期、南相馬市議2期を経て、2010年市長選で初当選。2期8年務め、前回(18年)市長選で現職の門馬和夫氏(67)に敗れた。

 門馬氏は「今は新型コロナウイルスの対策に全力を注ぎたい」とし、態度を明らかにしていない。 

2021年8月30日月曜日

政府と東電は責任放棄・卑劣と、地元民が海洋投棄阻止に立ち上がる

 菅首相は今春、福島原発を視察後、いきなりトリチウム汚染水の海洋放出を決めました。それは15年8月に政府と東電それぞれ福島県漁業協同組合連合会に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と書面で約束していたことを一方的に破るものでした。地元民が怒るのは当然のことで、もしも菅首相が、約束を勝手に破ることも決断力の一つだと己惚れているのであれば大間違いです。地元民を説得できる自信も皆無の筈です。

 地元の人たちが、原発汚染水の海洋投棄阻止へ立ち上がったのは当然の成り行きです。
 東京新聞が伝えました。
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<民なくして> 政府と東電は「責任放棄」「卑劣」
      原発汚染処理水の海洋投棄阻止へ被災地立ち上がる
                         東京新聞 2021年8月29日
 東日本大震災から10年を迎えた直後の2021年4月、菅政権は東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理した後の水を、2年後をめどに海洋放出する方針を決めた。新たな風評被害を懸念する地元の反対を押し切っての判断で、過去に政府や東電が漁業関係者と文書で交わした「約束」を裏切る行為でもあった。市民側では新型コロナウイルスの影響で往来に制約がある中、インターネットを活用した反対の署名集めの動きが起きている。 (市川千晴、中根政人)

◆ネットで署名呼び掛け
 震災で被災した宮城、福島両県の3つの生活協同組合が19年に合併して運営されているみやぎ生協(仙台市)の副理事長で、処理水海洋放出の反対署名集めに取り組んでいる野中俊吉さん(62)は「手に負えないから海に流してしまえ、というのは責任放棄だ。福島の問題に矮小化するのでなく、国民全体に訴える必要がある」と語る。
 活動は、みやぎ生協など4団体が呼び掛けて21年6月から始まった。野中さんが講師となり、全国の生協でオンライン学習会を計5回開催。3000筆近いオンライン署名が集まっている。同時に行っている用紙署名も1400筆近い。野中さんは「年内に政府と東電に署名を提出したい」と意気込む。

◆反対の声は無視
 福島第一原発の処理水に関して政府と東電は15年8月、それぞれ福島県漁業協同組合連合会に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と書面で回答。処分方法を決める前に、地元漁業者の同意を丁寧に得るかのような姿勢を示した。
 一方、政府の小委員会は20年2月、海洋や大気への放出が現実的な選択肢であり、海洋放出の方が「確実に実施できる」とする報告書を公表した。
 全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は21年4月7日、官邸で菅義偉首相と面会した際、海洋放出に反対の意思を伝えたが、政府は6日後の4月13日、関係閣僚会議で海洋放出方針を正式決定した。
 野中さんは「反対の声を確認しておきながら、卑劣なやり方にあぜんとした」と憤る。

◆世論でストップを
 政府は放射性物質トリチウムを含む処理水を海に流しても、人体や環境への有害な影響はないとする。だが、中国や韓国は環境への影響などを挙げ批判を繰り返す。首相は国会答弁で、処理水の海洋放出について「安全性に問題がないことを理解してもらえるよう、引き続き努力したい」と強調するものの、メッセージが国内外へ十分に伝わっているとは言い難い
 原発政策全般に関しても、政府は「依存度を低減させる」としながら、電源構成上の重要性は維持したまま。新規制基準に適合した原発を「地元の理解」に基づき再稼働させる方針を継続している。一方、世界最悪レベルとなった原発事故の収束作業は終わりが見えない。
 野中さんは処理水を巡る政府の一連の対応について「乱暴で、一般的な国民の感覚で取り組んでいない」と指摘。「反対の世論が高まれば、海洋放出しない方向で決着する可能性だってある」と力を込める。

核燃料サイクル延命の論理倒錯 「本意」はどこに(河北新報)

 政府は昨年10月、青森県と原子力政策を話し合う場で「核燃料サイクルは国の基本的方針」と明言したため、経産省の有識者会議としては核燃料サイクル計画の検討を始めた直後に、「堅持」すると打ち出されて外堀が埋められました。これによってもともと「サイクル」の意義が不明確という基本問題は放置されることになりました。

 プルトニウムの分離・利用はまったく意味がないどころか有害であり、ウラン等のガラス固化は必要なことですが、これまで海外に委託できていたものを狭小な日本でしかも近海を大々的に汚染させながら行う必要はありません。
 河北新報は、サイクル事業を延命させる本意が、廃棄物の「処分」方策と処分候補地の選択肢を残すためではないかという疑念が拭えないと述べています。
 いずれにしても何もかもが分かりにくいことです。
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社説 核燃料サイクル延命  論理倒錯 「本意」はどこに
                        河北新報 2021年08月29日
 秋に閣議決定される次期(第6次)エネルギー基本計画で、政府が原発政策の要とする核燃料サイクルは現行の内容がほぼ踏襲される。計画策定の経緯で、青森県六ケ所村での使用済み核燃料再処理を基軸とするサイクル事業を巡る議論は低調だった。
 理由の一つは、政府が事業継続の姿勢を早々に示したことだ。昨年10月、経済産業省の有識者会議が計画の検討を始めた直後、政府は青森県と原子力政策を話し合う場で「核燃料サイクルは国の基本的方針」と明言。この時点で堅持への外堀が埋まった。
 加えて、菅義偉首相が同月の所信表明演説で、2050年までに国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを宣言した。「脱炭素」一色となった計画の検討過程で、「結論ありき」のサイクル事業は隅に追いやられた。
 「50年カーボンニュートラル」という前例のない高い目標に向かう次期計画で、各分野の内容は従来から様変わりした。原発利用に関しては新増設やリプレース(建て替え)の方針が盛り込まれず、先行きの不透明感が増した。そうした中でサイクル政策の不動ぶりは奇異にも映る。
 政策が維持されているのは、重点が「資源の有効利用」から「放射性廃棄物の処理・処分」に移りつつあることが大きい。
 原発の燃料となるウランの有効利用はサイクル事業の主目的だったが、14年策定の第4次計画以降、「ウラン」の文字が計画から消えた。代わりに次期計画では、使用済み燃料の再処理で生じるプルトニウムの有効利用を掲げる。
 再処理は、それ自体が高レベル放射性廃棄物にもなる使用済み燃料を「資源」として扱うための措置だ。プルトニウムは現状、ウランと混ぜたMOX(混合酸化物)燃料を利用するプルサーマル以外に使い道がない
 使用済み燃料とプルトニウムを廃棄物化させないためには、とにかく再処理とプルサーマルを実施し、サイクルを回しておく必要がある。「ウラン燃料のリサイクル」の旗印を「廃棄物対策」にすげ替え、倒錯した論理で続けられているのが実情だ。
 次期計画には使用済みMOX燃料の再処理技術を、30年代後半に確立させる方針が加わる。新たな再処理工場が必要という非現実性や、プルサーマル炉の立地自治体が原発敷地内での使用済みMOX燃料の長期保管を懸念している点を踏まえると、この方針も廃棄物対策の一断面として捉えるべきだろう。
 第4次計画以降、サイクル政策は「中長期的な対応の柔軟性を持たせる」とされ、趣旨が今後さらに変わる可能性がある。サイクル事業を延命させる本意が、廃棄物の「処分」方策と処分候補地の選択肢を残すためではないかとの疑念が消えない。

原発事故の処理水や除染廃棄物問題を討議 オンラインシンポ(続報)

 福島民報が、日本新聞博物館のオンラインシンポジウム「福島の伝え方 東京電力福島第一原発事故から10年」に関する記事を出しましたので続報として紹介します。
 併せて福島民友の記事を紹介します。
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原発事故の処理水や除染廃棄物問題を討議 日本新聞博物館がオンラインシンポ
                            福島民報 2021/08/29
 日本新聞博物館のシンポジウム「福島の伝え方 東京電力福島第一原発事故から10年」は28日、オンラインで開かれ、福島民報社の紺野正人論説委員会幹事らが、政府が決定した放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出方針や、中間貯蔵施設に搬入された除染廃棄物の福島県外最終処分などを巡る課題や論じ方について討議した。
 具体的な風評抑制策を示さないまま政府が海洋放出方針を決定したことについて、紺野幹事は「本来であれば方針決定前に対策を示して漁業者をはじめとする県民の理解を得るべきで、後先が逆ではないか」と指摘。国民がトリチウムをどれだけ理解しているかについても疑問視し、「理解が進まず、『福島だけの問題』として矮小(わいしょう)化されるとしたら、風評の再燃は避けられないだろう」と述べた。
 除染廃棄物の県外最終処分については、処理水と同様に国民理解の醸成を図る必要性を強調し、「県外でも再生利用の実証事業を進めるべきだ」と訴えた。ホームページに「東日本大震災・原発事故10年」のコーナーを設けるとともに、県内の話題を英訳して海外に発信する福島民報社の取り組みも紹介した。
 紺野幹事の他、福島民友新聞社の高橋満彦論説委員長、処理水の扱いを議論する政府小委員会の委員を務めた関谷直也東京大大学院准教授(福島大食農学類客員准教授)が登壇し、共同通信社の高橋宏一郎編集局次長が進行役を務めた。
 シンポジウムは、横浜市の同博物館で9月26日まで開催中の企画展「伝える、寄り添う、守る―『3・11』から10年」に合わせて開かれた。


新聞の役割議論 震災10年シンポ、福島民友新聞社論説委員長ら
                         福島民友 2021年08月29日
 ニュースパーク・日本新聞博物館(横浜市)は28日、同館で開催中の企画展「伝える、寄り添う、守る―『3・11』から10年」に合わせ、福島民友新聞社など地元紙2紙の論説委員会などによるシンポジウムをオンラインで開催した。風評被害対策や、新聞などメディアの役割について議論した。
 企画展関連シンポジウムの第2弾として、「福島の伝え方 東京電力福島第1原発事故から10年」をテーマに、福島民友新聞社の高橋満彦論説委員長、福島民報社の紺野正人論説委員会幹事、東京大大学院情報学環准教授の関谷直也氏が登壇し、共同通信社の高橋宏一郎編集局次長が進行役を務めた。
 シンポジウムでは、第1原発で発生する処理水の海洋放出方針決定や中間貯蔵施設、風評被害対策などについて意見を交わした。高橋委員長は処理水の海洋放出による風評対策について、「安全性をどれだけ説明しても、安心は理屈ではないことを理解する必要がある。人と人の信頼関係をしっかり構築することが大切だ」と述べた
 関谷氏は「コメの全量全袋検査など、データを積み上げてきたからこそ、県内で理解が進み安心感が生まれている。県外の人たちにも、きちんと事実を伝えていかなければならない」と強調した。
 企画展は9月26日までで、震災当時の紙面や特集記事などを展示している。

地方紙の使命、報道を考える
 創刊140年を迎えた岐阜新聞社は27日、記念シンポジウム「つたえる、つながる~地方紙の使命と地方創生」を岐阜市で開いた。
 パネル討論で、矢島薫社長は、多様なメディアがある中、地方紙が互いに切磋琢磨(せっさたくま)することが重要だと指摘。「これからも地方で生きる人に根差し、地方の物差しでニュースを伝えていく」と強調した。
 岩手日報社の東根千万億(あずまねちまお)社長・主筆は、力を入れてきた震災報道に関し「経験した教訓を次の災害に生かす思いで続けていく」とした上で、「各地方紙が得意分野を増やし多様性を広げることが、地方紙全体の存在意義を高める」と語った。
 作家の安部龍太郎さんは「地方紙は日本の宝。地域の意見を集めて発表の場を与えることは、地域を支える力になっている」と話した。コーディネーターは岐阜新聞社の国本真志登・統合編集局長が務めた。

30- 葛尾・野行地区でも野菜試験栽培開始

 葛尾村の野行地区復興拠点で29日、営農再開に向け初めてとなる野菜の試験栽培が始まり、関係者がブロッコリーホウレンソウ、キャベツ、コマツナ、カブなど計240株を植えました。10月ごろの収穫予定で、放射性物質検査を行い、安全性を確認します。

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野菜試験栽培も開始 帰還困難区域の葛尾・野行地区農地3カ所
                        福島民友 2021年08月30日
 東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域となっている葛尾村の野行(のゆき)地区で29日、営農再開に向け初めてとなる野菜の試験栽培が始まり、関係者がブロッコリーなどの苗や種を植えた10月ごろの収穫予定で、放射性物質検査を行い、安全性を確認する。
 試験栽培が始まったのは野行地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)内の農地3カ所で計6アール。地元コメ農家らでつくる野行農業生産組合がブロッコリー、ホウレンソウ、キャベツ、コマツナ、カブの5品目、計240株を栽培する。組合員や篠木弘村長ら約15人が参加し、除染された農地に手作業で苗を植えたり、種をまいた。
 組合は今年5月、野行地区の復興拠点にある水田約5アールでコメの試験栽培も始めている。野行地区でコメと野菜の栽培が行われるのは11年ぶり。収穫したコメと野菜は放射性物質の検査後に全量廃棄する。
 組合長の半沢富二雄さん(68)は「避難先から集まって、みんなで古里で栽培を始めたことが何より大事だ。元気に育つことを願う」と話した。野行地区は村の北東部にあり、約1600ヘクタールが帰還困難区域。村はこのうち、主要道の周辺など約95ヘクタールを復興拠点として整備し、来年春ごろの避難指示解除を目指している。

2021年8月29日日曜日

漁業者、拭えぬ不信 トリチウム水放出の風評対策

 トリチウムを含む処理水の海洋放出をめぐり、政府と東電は風評被害対策や賠償などの計画を地元向けの説明会で示しましたが、基金を活用して冷凍した魚を買い取る方針については、「鮮度の良い魚を生で出荷してこそだ。これでは後継者にとって魅力的な職業にならない」との指摘があったほか、15年に国、東電と交わした「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束をほごにされたことで「風評対策も信用できない」とりが示されました。
 福島大の小山良太教授は「より具体的な数値目標を立て、達成するまで放出しないといった条件を課さなければ理解は得られない」と話しました。(時事通信より)
 福島民報の記事を併せて紹介します。
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漁業者、拭えぬ不信 「口だけでなく成果を」 原発処理水放出の風評対策
                         時事通信 2021年8月28日
東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出をめぐり、政府と東電は風評被害対策や賠償などの計画を地元向けの説明会で示した。しかし、福島県内の漁業者の不信感は根深く、「口だけでなく成果を」と訴える声が上がる。
 政府は風評被害が生じた場合、基金を活用して冷凍した魚を買い取る方針だが、相馬双葉漁協の立谷寛治組合長は「鮮度の良い魚を生で出荷してこそだ。これでは後継者にとって魅力的な職業にならない」と訴える。
 漁業者の不信感の背景には、2015年に国、東電と交わした「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束をほごにされたという思いがある。同県新地町の漁師小野春雄さん(69)は「現場が納得する説明もなく放出を決めるのはおかしい。風評対策も信用できない」と憤る。
 風評被害に詳しい福島大の小山良太教授(農業経済学)は「政府案はこれまでの風評対策の延長にとどまっている。より具体的な数値目標を立て、達成するまで放出しないといった条件を課さなければ理解は得られず、『結論ありき』という印象を持たれても仕方がない」と話した。


海洋放出反対改めて主張 処理水評議会で福島県漁連など 政府に風評対策要請
                            福島民報 2021/08/28
 政府は28日、「廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会」をオンラインで開き、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に伴う当面の対策を福島県内の地元自治体や関係団体の代表らに説明した。出席者からは風評抑止に向け、対策の実効性を高めるよう求める声が相次いだ。福島県漁連は海洋放出反対の立場を改めて主張した。
 JA福島中央会の菅野孝志会長は「政府の拙速な放出方針決定によって処理水への疑念が国内外で拡大している」と切り出し、農業にもさらなる風評が生じるとの危機感を訴えた。風評対策の実効性を高めるため、国内外における処理水の理解度を定期的に検証し、進捗(しんちょく)を把握するべきと伝えた。
 鈴木正晃副知事は「正確で分かりやすい情報を政府一丸となって強く発信してもらいたい」と念を押し、南相馬市の門馬和夫市長は「風評を発生させない万全な対策を進めてほしい」と求めた。
 県漁連の野崎哲会長は「海洋放出には反対」と、以前からの主張を固持した。
 東電の対応への不信感を示す出席者も。いわき市の新妻英正副市長は東電による具体的な放出手法の検討状況の発表に際し、地元関係者への意見聴取が不十分だったとし「非常に憂慮される」「国民の理解を得るのが困難になるのでは」と吐露した。浪江町の吉田数博町長は「東電への信頼は心もとないと言わざるを得ない」と語った。
 風評が発生した場合の賠償基準に関し、東電のこれまでの賠償姿勢には問題があるとし、政府や専門家が関わって基準を決めるべきとの指摘もあった。
 NPO法人ハッピーロードネットの西本由美子理事長は処理水の理解促進に向け、教職員や自治体職員に情報発信に協力してもらう取り組みを提案した。
 政府が教職員や自治体職員ら対象の研修会を開き、研修を受けた人が住民にトリチウムや処理水の性質を伝える方法を例示。「身近で信頼できる人に、なじみのある言葉で話してもらえば理解が深まるはず」と期待した。
 終了後、江島潔経済産業副大臣は取材に対し、「意見をしっかりと受け止め、対策の充実に取り組む」と語った。

新聞の役割議論 震災10年シンポ、福島民友論説委員長らが発言

 ニュースパーク・日本新聞博物館(横浜市)28日、同館で開催中の企画展「伝える、寄り添う、守る―『3・11』から10年」に合わせ、福島民友新聞社など地元紙2紙の論説委員会などによるシンポジウム第2弾、「福島の伝え方 東京電力福島第1原発事故から10年」が行われました。

 福島民友の高橋論説委員長は、トリチウム水の安全性をどれだけ説明しても、安心は理屈ではないことを理解する必要がある。人と人の信頼関係をしっかり構築することが大切だ」と述べました。
 企画展は9月26日までで、震災当時の紙面や特集記事などを展示しています
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新聞の役割議論 震災10年シンポ、福島民友新聞社論説委員長ら
                        福島民友 2021年08月29日
 ニュースパーク・日本新聞博物館(横浜市)は28日、同館で開催中の企画展「伝える、寄り添う、守る―『3・11』から10年」に合わせ、福島民友新聞社など地元紙2紙の論説委員会などによるシンポジウムをオンラインで開催した。風評被害対策や、新聞などメディアの役割について議論した。
 企画展関連シンポジウムの第2弾として、「福島の伝え方 東京電力福島第1原発事故から10年」をテーマに、福島民友新聞社の高橋満彦論説委員長、福島民報社の紺野正人論説委員会幹事、東京大大学院情報学環准教授の関谷直也氏が登壇し、共同通信社の高橋宏一郎編集局次長が進行役を務めた。
 シンポジウムでは、第1原発で発生する処理水の海洋放出方針決定や中間貯蔵施設、風評被害対策などについて意見を交わした。高橋委員長は処理水の海洋放出による風評対策について、「安全性をどれだけ説明しても、安心は理屈ではないことを理解する必要がある。人と人の信頼関係をしっかり構築することが大切だ」と述べた。
 関谷氏は「コメの全量全袋検査など、データを積み上げてきたからこそ、県内で理解が進み安心感が生まれている。県外の人たちにも、きちんと事実を伝えていかなければならない」と強調した。
 企画展は9月26日までで、震災当時の紙面や特集記事などを展示している。

地方紙の使命、報道を考える
 創刊140年を迎えた岐阜新聞社は27日、記念シンポジウム「つたえる、つながる~地方紙の使命と地方創生」を岐阜市で開いた。
 パネル討論で、矢島薫社長は、多様なメディアがある中、地方紙が互いに切磋琢磨(せっさたくま)することが重要だと指摘。「これからも地方で生きる人に根差し、地方の物差しでニュースを伝えていく」と強調した。
 岩手日報社の東根千万億(あずまねちまお)社長・主筆は、力を入れてきた震災報道に関し「経験した教訓を次の災害に生かす思いで続けていく」とした上で、「各地方紙が得意分野を増やし多様性を広げることが、地方紙全体の存在意義を高める」と語った。
 作家の安部龍太郎さんは「地方紙は日本の宝。地域の意見を集めて発表の場を与えることは、地域を支える力になっている」と話した。コーディネーターは岐阜新聞社の国本真志登・統合編集局長が務めた。

29- 福島原発事故ふまえ可燃性ガス対策を検討 原子力規制委

 福島原発の事故で建屋を損壊させた爆発について、原子力規制委は、爆発の原因となった水素のほかに可燃性のガスが発生していた可能性があるとして、爆発を防ぐ対策を年内にまとめ、原発の規制基準への導入を検討することにしています。

 同委は爆発時の画像を分析した結果、炎や煙の色などから、水素のほかに可燃性のガスがかなりの分量で含まれていた可能性があると推定しました。
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福島第一原発事故ふまえ可燃性ガス対策を検討 原子力規制委
                    NHK NEWS WEB 2021年8月29日
東京電力・福島第一原子力発電所の事故で建屋を損壊させた爆発について、原子力規制委員会は、爆発の原因となった水素のほかに可燃性のガスが発生していた可能性があるとして、爆発を防ぐ対策を年内にまとめ、原発の規制基準への導入を検討することにしています。
10年前の福島第一原発の事故では、核燃料が溶け落ちるメルトダウンが発生し、1号機・3号機・4号機では発生した水素が原因で原子炉建屋が爆発しました。
原子力規制委員会は爆発を捉えた画像を分析した結果、炎や煙の色などから、水素のほかに、可燃性のガスがかなりの分量で含まれていた可能性があると推定しました。
このため、水素の漏えいとともに、水素以外の可燃性ガスによる爆発を防ぐための対策を年内をめどにまとめ、原発の規制基準への導入を検討することを決めました。
爆発を防ぐ対策が規制基準に導入されれば、再稼働に必要な審査で審議されるほか、稼働中の原発についても電力会社に追加対策として求められるため、原発の運転に影響する可能性があります。

2021年8月28日土曜日

福島県産品輸出額が最高額に 約9億円で前年度比124%

 20年度の福島県産品の輸出額は9億0500万円で前年度比124%となり、県が統計を取り始めた12年度以降で最高額となりました。新型コロナ感染拡大による外出控えに伴い、家庭向けの加工食品の輸出額が伸びたとみています
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
福島県産品輸出額が統計開始以来の最高額に 約9億円で前年度比124%
 2020年度
                            福島民報 2021/08/27
 2020(令和2)年度の福島県産品の輸出額は9億500万円で前年度比124%となり、県が統計を取り始めた2012(平成24)年度以降で最高額となった。県は新型コロナウイルス感染拡大による外出控えに伴い、家庭向けの加工食品の輸出額が伸びたとみている。26日発表した。
 輸出額の推移を見ると、2012年度以降、年々増え続け、8年間で約10倍となった。2019年度から2020年度の伸び率は、工芸品の輸出額を統計に含めるようになった2016年度以降で最も大きい。
 輸出額を押し上げた家庭向けの加工食品は、麺類、甘酒、みそなど。加工食品全体の輸出額は8200万円で、前年度比162%。2年連続で減少していたが、コロナ禍で巣ごもり需要が伸び、増加に転じた。
 農畜産物は2億2700万円(前年度比191%)で過去最高となった。県産食品の輸入を規制している中国への花卉(かき)の輸出が好調で、前年度の10倍に当たる1億2600万円に上った。絹織物や木製品などの「工芸品」も過去最高を更新した。
 アルコール類は4億3700万円(前年度比91%)。輸出額は全4品目で最大となったが、前年度を下回った。米国向けの減少が響いた。

 県県産品振興戦略課は「事業者らの支援を強め、さらなる輸出拡大を目指す」としている。



現場から原発の今伝える 河北新報社の連載、本に

 東京電力福島第1原発事故から10年を機に、原子力政策の問題と現状を描いた河北新報社の連載記事が「原発漂流」として出版されました。

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現場から原子力の今伝える 河北新報社の連載、本に
                             共同通信 2021/8/27
 東京電力福島第1原発事故から10年を機に、原子力政策の問題と現状を描いた河北新報社の連載記事が「原発漂流」(河北新報出版センター)として出版された。
 当時、東電や原子力行政のエリートたちが冷静な判断力を失ったのはなぜか。なぜ事故前から大津波の危険が指摘されながら放置したのかを検証。核のごみ最終処分地など、幅広いテーマの今をコンパクトにまとめている。
 福島や青森をはじめとする東北各地は、原発関連施設を受け入れることによって潤ったが、事故から10年たっても廃炉作業など、結局原発に頼らざるを得ない実情が伝わってくる。1650円。

富岡の復興拠点で農作物を試験栽培へ(続報)

 富岡町復興拠点での試験栽培に関する福島民友の記事を続報として紹介します。

   ⇒(8月27日) 富岡町の復興拠点でホウレンソウなど野菜5品目を試験栽培へ
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農作物を試験栽培へ 富岡の復興拠点内2地区、検査データ収集
                         福島民友 2021年08月27日
 県と富岡町の農業者らでつくる町農業復興組合は29日、町内の東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域(復興拠点)で農作物の試験栽培を始める。来年3月まで畑で作った農作物や土壌などの放射性セシウム濃度を継続して調査し、2023年春に予定される復興拠点の避難指示解除後の営農再開につなげる。
 町が26日、町内で同組合との意見交換会を開き、試験栽培について説明した。作付面積は復興拠点内の新夜ノ森、川田両地区の農地3カ所計6アール。ホウレンソウとコマツナ、キャベツ、ブロッコリー、カブの5品目を栽培し、収穫後の検査データを集める。食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えた場合は放射性セシウムの吸収抑制など有効な対策を検討し、来年度から作付面積を12アールに拡大して実証栽培に移る。
 町によると、原発事故前は復興拠点約390ヘクタールのうち、農地が約90ヘクタールを占めていた。避難指示解除を前に来春からは住民が夜間を含め長期滞在できる準備宿泊が始まる予定で、町は再生に向けた新たなステージに入る。町産業振興課は「試験栽培から農作物の出荷制限の解除につなげ、復興拠点での営農再開を後押ししたい」としている。

28- IAEA調査団が報告書 処理水の発生量分析し放出を

処理水の発生量分析し放出を IAEA調査団が報告書

                             共同通信 2021/8/27
 東京電力福島第1原発の廃炉作業を検証するため来日中の国際原子力機関(IAEA)の調査団は27日、処理水の海洋放出に向け、構内に保管している多量の処理水や将来発生する量を分析し、放出の工程を検討する必要があるとする報告書をまとめ、江島潔経済産業副大臣に手渡した
 報告書は、日本政府が処理水処分の基本方針を決定したことが、廃炉計画全体の実行を推進すると評価。調査団のクリストフ・グゼリ団長はオンライン会見で、第1原発1~3号機の溶融核燃料(デブリ)の取り出しが「(廃炉の)最大の課題だ」と指摘し「デブリの最終処分を見据え、研究開発を加速させるべきだ」と助言した。

2021年8月27日金曜日

トリチウム水沖合放出計画に中国と韓国が遺憾の意

 福島原発のトリチウム汚染水を海洋放出することに関し、韓国と中国から遺憾の意が表明されました。日本はIAEAの了解を取ったことで問題ないという考え方のようですが、IAEAは周辺国の同意を得ることを前提にしている筈です。

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原発処理水の沖合放出計画に韓国が反発 公使呼び遺憾表明
                          TBS 2021年8月26日
 東京電力が福島第一原発の「処理水」を海底トンネルを通し沖合から放出する計画を発表したことについて、韓国外務省は26日、日本大使館の公使を呼び遺憾の意を伝えました。
 東京電力は25日、福島第一原発で溜まり続ける放射性物質トリチウムを含む「処理水」について、海底トンネルをつくり、原発の沖合、およそ1キロの地点から放出すると発表しました。
 韓国政府はこれを受けて緊急会議を開き、日本側に処理水の放出計画の中断を要求。さらに翌26日には、韓国外務省の李桐圭(イ・ドンギュ)気候環境科学外交局長が在韓国日本大使館の林誠公使を呼んで深い遺憾の意を表明し、処理水放出に反対する韓国政府の立場を改めて伝えました。


韓国「事前の協議や了解なく遺憾」
                    NHK NEWS WEB 2021年8月26日
(前 略)
韓国政府は25日、対応を協議するための会議を開きました。
この中でク・ユンチョル(具潤哲)国務調整室長は「最も近い隣国である韓国政府といかなる事前の協議や了解もなく、一方的に進められていることに対し改めて遺憾の意を表明する」と述べました。
また「一方的な放出の推進を直ちに中止し、まずは近隣諸国との十分な協議と意思の疎通をしていくことが責任ある国際社会の一員としての望ましい姿勢だ」としています。
そのうえで「国民の安全を最優先として、今後も必要な措置を国際社会とともに取っていく」と強調し、東京電力が発表した計画を詳しく分析する考えを示しました。


中国外務省、「過ち重ねている」と非難 福島第1原発の処理水沖合放出計画
                        時事通信 2021年08月26日
【北京時事】中国外務省の汪文斌副報道局長は26日の記者会見で、海底トンネルの建設により東京電力福島第1原発の処理水を沖合の海に流す計画について「日本は内外の反対を顧みず汚染水の放出という誤った決定をした上、さらに過ちを重ねている」と非難した。

東電がトリチウム汚染水の海洋放出の全体計画を発表

 東京電力は25日、福島原発で発生するトリチウム汚染水の海洋放出に関する全体計画案を発表ました。

 福島民友の記事には全体のフローが分かる絵が掲載されています。下記をクリックして原文にアクセスしていただくとご覧になれます。
      第1原発、処理水放出前に測定 放射性物質、敷地内立て坑新設
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第1原発、処理水放出前に測定 放射性物質、敷地内立て坑新設
                         福島民友 2021年08月26日
 東京電力は25日、福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、全体計画案を発表した。第1原発から海底トンネルを掘削し、沖合の約1キロ先から放出することが柱。トンネルにつながる立て坑を活用し、海に流す前に敷地内で放射性物質量を測定する。周辺海域のモニタリング(監視)も強化して安全の確保につなげる考えだが、海洋放出に反対する漁業者らの理解を得られるかどうかは不透明だ。
 東電が海洋放出に必要となる設備の概要を示したのは初めて。2023年春ごろの放出開始に向け、今秋のトンネル工事着手を目指している。県内外の関係者に説明した上で全体計画を策定し、原子力規制委員会に審査を申請する。
 海底トンネルは直径約2.5メートルで、岩盤を掘り進めて造る。津波の影響を考慮し、配管を敷かずに岩盤を掘削する手法を選んだ。水深約12メートルの海底に放水口を設置する方針。
 第1原発5、6号機の放水口から海水で薄めた処理水を流す案も検討したが、海水を取り込む際に放出後の水と混ざる可能性があるため、ほかの原発や火力発電所などで例がある海底トンネルを採用した。
 トンネル工事に伴い、敷地内に立て坑を新設する立て坑に、海水で希釈した処理水を放出前に一時的にため、放射性トリチウム濃度を測定。1リットル当たり1500ベクレルを下回っていることを確認する。事前に算出した計算値が、実測値と合っているかも点検する。
 第1原発から東1.5キロ、南北3.5キロは日常的に漁業が行われていない海域で、この範囲内に収まるよう海底トンネルの長さを設定した。本格操業を目指す本県漁業への影響を抑える狙いもある。東電は「放出した水が再循環して戻ってくるのを極力避けたい」としている。
 海域のモニタリングでは取水する箇所や頻度を増やす。第1原発から2キロ圏内は3カ所追加して10カ所にする方針。現在は放射性セシウムだけを検査している20キロ圏外でトリチウムを対象に加え、周辺海域の魚の分析件数も増やす。