関電の社長と会長は2日に2回目の会見を行い、一部を黒塗りした報告書を公表し、「原発マネーの流れ」について説明しました。
会見では、元助役の森山氏から受領した金品は簡単には返せなかったという言い訳に終始し、社長・会長の役職を辞めることは考えていないというものでした。
福島民友は社説で、「八木誠会長、岩根茂樹社長は辞任を否定しているが経営責任は明白だ。倫理を欠いた経営陣は即刻辞任すべきだ」と述べました。
同じく河北新報は、「当事者である経営トップが(自ら)うみを出し切れるのか。小手先の再発防止策ではなく、組織を根本的に見直さない限り、信頼回復はおぼつかない」と述べました。
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社説 関電の金品授受/倫理欠いた経営陣は退場を
福島民友 2019年10月04日
関西電力の役員らが高浜原発の立地する福井県高浜町の元助役(故人)から多額の金品を受領していた問題で、関電が社内調査の詳細を公表した。受領金額が1億円を超える役員が2人いることや、元助役に発注予定の事業の概算額を伝えていたことなど深刻な腐敗が浮き彫りとなった。
いずれも元助役から金品を受け取っていた八木誠会長、岩根茂樹社長は辞任を否定しているが経営責任は明白だ。倫理を欠いた経営陣は即刻辞任すべきだ。
元助役は、関電からの発注額が6年間で約64億円に上る建設会社「吉田開発」と関わりが深かった。取引業者の関係者から、現金のほか、菓子袋に入った金貨や破格のスーツ仕立て券などが次々と贈られていたのは異様だ。
関電は電力を供給する公益性の高い会社だ。社会儀礼の範囲を大きく逸脱して金品を受け取っていたのは癒着と指摘されて当然だ。
問題に絡む社内調査は約1年前に終了している。関電は「違法とは言えない」として調査結果を取締役会に諮らず、公表や筆頭株主である大阪市、監督官庁である経済産業省、資源エネルギー庁への報告もしていなかった。組織的な隠蔽(いんぺい)を否定するのは難しい。
元助役がなぜこのように多額の金品を供与できたのかは解明されなければならない問題だ。関電は否定しているが、吉田開発が関電から受注した金の一部が還流したとの疑いはぬぐいきれない。
関電は2日の記者会見で、吉田開発への発注総額のみを説明し、個々の発注の内容や金額について明らかにしなかった。しかし適正な取引だったのかを検証するには、事業内容と金額が欠かせない。関電はきちんと公開すべきだ。
記者会見では、元助役によるどう喝など、事案の特殊性を強調する場面が目立った。元助役との間には、本人や家族への危害をほのめかすやりとりなどがあった。それでも元助役との関係を絶たなかったことからは、関電側にも関係を続ける利点があったことが透けて見える。
金品の授受は高浜原発が再稼働した時期にもあった。この問題は原発の再稼働や関連工事が巨大な利権であることを裏付けている。特殊な事案とは言い切れない。
関電は第三者委員会を設けて問題を再調査するとしているが、どこまで踏み込めるかは疑問だ。経産省や国会による徹底した調査で癒着の全容解明が望まれる。
他の電力会社で同様の事案がないかの調査も必要だ。うみをしっかりと出し切る機会にしたい。
関電の再会見/組織の根本的刷新が必要だ
河北新報 2019年10月04日金曜日
肝心の「原発マネー」の流れや金品の趣旨について納得できる説明はなく、真相の解明からは程遠い。不信感がさらに募った。
関西電力の役員ら20人が、関電高浜原発の立地する福井県高浜町の元助役(故人)から多額の金品を受け取っていた問題で、関電の岩根茂樹社長らが再び開いた記者会見。金品を受け取っていた幹部の氏名や役職、金額などを公表したが、氏名公表は12人にとどまった。原発マネーが還流したのではないかとの疑念も晴れなかった。
9月27日の記者会見で岩根社長は、役員らの金品受領額が計約3億2000万円相当に上ると説明したが、詳細は明かさず、批判が強まっていた。遅まきながら2度目の会見で、昨秋の社内調査報告書を開示した。
現金のほか商品券やスーツの仕立券、米ドル、小判形の金…と、金品の種類はさまざまだ。一度に1000万円の現金授受もあり、スーツは1着50万円という高級品だった。役員2人はそれぞれ、総額が1億円を超えている。
「手土産」としては常識のたがが外れている。岩根社長は会見で「返還しようとしたら激高された」などと釈明したが、理屈になっていない。まるで関電が被害者であるかのような言い分だった。
関電幹部は、元助役からの高額品の提供が常態化している事態を認識しながら、対応を個人に任せていた。組織として対処してこなかった危機管理の甘さ、ガバナンス(企業統治)の不備は隠しようがない。
今回の問題は、原発工事を受注した高浜町の建設会社への国税局の調査が発覚の契機となった。元助役が建設会社から、受注に絡む手数料として約3億円を受領し、関電側に金品を提供していた。
関電は昨年9月に社内調査の結果を把握しながら、取締役会に報告せず、1年以上も公表しなかった。隠蔽(いんぺい)体質とのそしりは免れない。
浮き彫りになったのは、原発関連工事に絡む関電と地元有力者とのいびつな関係だ。元助役は、原発関連工事を請け負う会社の要職に就いていた。発注者側である関電の子会社の顧問も務めていた。
報告書によると、関電側は元助役に対し、予定される工事の情報を提供していたという。金品授受の見返りではないと関電は主張するが、にわかには信用できない。
さらに金品の元が関電の原発関連事業の費用であれば、「原発マネー」が元助役を介して関電の役員ら個人に還流したことになる。新たに設置される第三者委員会に全容解明を求めたい。
岩根社長と八木誠会長は続投の意思を示した。だが、当事者である経営トップがうみを出し切れるのか。小手先の再発防止策ではなく、組織を根本的に見直さない限り、信頼回復はおぼつかない。